SMの世界

静華

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「俺も最初は抵抗があったさ。男ってだけでも戸惑ってんのに、さらにSMなんてマイノリティ中のマイノリティじゃん。とんでもねぇって思った。ケツだけじゃなくて、全身あざだらけになったり、縛られたり、なんで俺がこんなに目に遭わなきゃいけないだって。……正直、もう絶対別れた方がいいんじゃねぇかって悩んだ時期もある」
 颯斗が全身あざだらけになるなんて想像できない。
「でも、まだ付き合ってるんだよね?」
「そう。つーか、ほぼ一緒に住んでるしな」
「そうなの?」
「何人か知ってるスタッフもいるけど、みんな口がかたいからな。翔も言うなよ?」
「う、うん。わかった」
 有聖さんのことも言わないから安心しろよ、と言われて、翔はこくりと頷いた。
「そんでさ、まぁいろいろ悩んだけど、嫌いになるとかもう顔も見たくないとか、気持ちが冷めたっていうことがないんだよな、不思議なことに。結局さ、龍哉さんといるためには我慢しなきゃしょうがない。すんげぇ嫌だって思うことはあるけどな。そんかわり、安心して任せられる。俺がホントに無理なことはしてこないし、愛されてるとも思う。そこらへんは、ちょー信頼できるよ」
「……俺も、お尻叩かれた、一週間前に。ずっと座ると痛くて、有聖さんのことばっか思い出してた。でも、俺、あれにずっと耐えられるのか、とか不安で……」
 今はもうほとんど痛くない。けれど、有聖と付き合っていく上でプレイが不可避なら、またあの痛みを与えられてしまう。それに耐えられるだろうか。
「マジか。平手?」
「ん、それと、パ、パドルも」
 一体なんて話をしてるんだろう。
 そうは思っても、もうここまで話してしまったのだから、一気に聞いてみるしかない。
「うわ、まさか、木のやつ?」
「革のと、両方」
「げ、マジかよ。最初から飛ばしてんなぁ。そりゃ、怖くもなるわ。あれ、ちょー痛ぇもん」
 颯斗が苦虫を噛み潰したような顔をする。
「すげぇな、お前。それでもまだ、お試し、したいんだろ? 俺、あれが初っ端できたら、耐えられる自信ないわ」
「え? やっぱ、相当痛いの、あれ?」
「痛ぇよ。それでもめげないなら、有聖さん相手でもいけんじゃねぇ?」
「そうかな? でも、無理だったら……?」
 どうしたらいいのだろう。
「あのな、無理だったら別れるしかないぞ? むしろ、それを見極めるためのお試し期間だろ?」
「そう、だよね」
「迷ってんなら、今は有聖さんに任せてみてもいいと思うぞ? もうちっといろいろ経験するとわかることもあるしさ」
 確かに今のままだと堂々巡りだ。
「Sの相手は大変だけど、なんつーか、普通の恋愛よりも濃いって感じ? 全部曝け出して泣いたりできんのも悪くないぜ」
 恥ずかしそうに、颯斗はそう言って微笑んだ。


「あの、有聖さんは、その、どういったプレイが、好きなんでしょうか?」
 バイトの後に、翔は有聖のマンションを訪れていた。
 颯斗にアドバイスを貰って、とりあえずいろいろと対話が必要だという結論に至った。翔は初心者過ぎるので、恥ずかしがらずに聞かなければ、一人で悶々としてしまうばかりなのだ。
「んー、そうだなぁ。スパンキングは好きだな。真っ赤に腫れあがったお尻は可愛いと思う」
 それは知っている。
「ほ、ほかには?」
「僕が触れただけでイキそうになるほどいやらしい子に躾けたいね。もちろん、射精やオナニーも全部僕が管理するし、ペニスもアナルもたくさん虐めたい」
 ぼんと、火を噴きそうなくらい翔の顔が真っ赤になった。
「じゃ、じゃあ、あまり好きではないプレイとかは?」
「うーん。針とかピアッシング、窒息系、露出、本格的なスカトロかな」
 有聖の美しい外見に似つかわしくない単語の数々に、翔はそろそろキャパオーバー気味だった。一部、どんなプレイなのかわからなかったが、知りたくもないので聞かなかったことにする。
「有聖さんは、あの、普通のセックスは?」
「普通ねぇ……。やれないことはないと思うけど。ちょっとねちっこくしちゃいそうかな。焦らしたりとかは普通のセックスに入るの?」
「……たぶん」
「じゃぁ、できるのかな。でも、それだけだと欲求不満にはなるだろうね」
 やっぱりそうなのか。
 颯斗の言った『込み込み物件』という言葉がよみがえる。
「あの……もし、だけど……有聖さんとちゃんとお付き合いすることになったら、俺はどうなっちゃうの?」
「うん?」
 翔がききたいことがイマイチ掴めないないのか、有聖は首を傾げている。
「あの、つまり……俺は有聖さんの彼氏になるんだよね? でも、……ち、調教されるの、奴隷に?」
「ああ、そういうことか。彼氏になっても調教はするよ、うん。僕だけの奴隷にね」
「……奴隷って、その……具体的には、どういう……?」
 奴隷ということばの意味はわかるし、なんとなくこういうものだろうというイメージはあるが、それは歴史の時間に習う奴隷制度のようなものでとても漠然としている。
「とても難しい質問だね」
 そう言って、有聖は考え込むようなそぶりをみせた。翔は隣で有聖の答えをじっと待つ。すこしの沈黙の後で、「恋人同士になったら、プレイだけじゃすまなくなるよ」と答えが返ってきた。
「……?」
「今はプレイの時だけ、僕に身を任せてくれればいい。でも、ちゃんと付き合うようになったら、ずっとだ。プレイのときだけじゃない。僕のいいつけを守って生活して、守れなかったら罰を与える」
 全てを支配したいんだよ、とまっすぐに見つめられて、その瞳の強さに、魂まで縛られそうだと思った。
「例えば、言葉遣いや生活態度もチェックする。翔がもし僕に隠れて、学校をサボったり、バイトに遅刻したら、お仕置きをする。わかる?」
「う、ん……たぶん」
 日常生活にも有聖が入り混んでくる、ということなのだろう。ベッドの上にいる時だけ、従うのではない。日常の生活も、有聖を感じながら彼の言いつけを守る。それに反した時は、罰を受けるのだ。
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