自称泣きゲーのモブに転生~メーカーは泣けるとかほざいてるけど理不尽なヒロイン死亡エンドなんていらねぇ!!

荒星

文字の大きさ
19 / 88
イザナギ学院入学前編

第18話 凶兆降臨

しおりを挟む
「あ、姉さん? ゴメンゴメン今俺の家? あーやっぱり。そのさ、言いづらいんだけど今日家に帰れなさそうで……ちょ耳痛ッ! 叫ばないでよ! その悪かったって。え? ケーキ買ってきたのにって? それは、その……冷蔵庫に入れといて。まあ明日くらいなら大丈夫だろうし。うん、うん。それじゃあ明日また」

 今俺は姉さんに今日は家に帰れない旨の連絡を入れていた、明日どう言い訳したものか……

「終わったか?」

「終わった。刑務労働でも夜のお仕事でも墓場の警備でも、なんでも良いからさっさと連れてってくれ」

 そう俺が言うと、茜は苦笑した。

「まぁそう不貞腐れるな、どうせ何も起きんよ。それよりも自己紹介がまだだったな、望月茜だ。普段はここ『望月珈琲店』の店主をやってる。よろしく頼む」

 ーーいえ、十中八九何か起きます。

「知ってますよ。なんなら貴女がSランクエンフォーサーってのもね。鈴木悠馬です。短い間ですがよろしく」

「土井史郎。Aランクエンフォーサーでいつもこの二人に振り回されて……すいませんなんでも無いです。とりあえずよろしく」

「私は自己紹介する必要ないわよね、昼間クラスの皆が自己紹介した時に一回したし。それにしても驚いた、鈴木があの邪神教団の幹部を倒したなんて。強かったんだ、鈴木」

 まぁ実際休み時間ごとに、クラスの皆が自己紹介に来てたからもう今日はお腹いっぱいだな……と思いつつ、目をキラキラさせながら俺を見る冬香にそれは違う、と話した。

「いや、それは違う。たまたまだったんだ。もしアイツが本当に全力でかかってきていれば、多分死んでたのは俺だ」

「ふーん、俺が倒した! って言わないんだ。それでも充分凄いと思うけど」

 俺と冬香が和気あいあいと話していると、茜が呼びかけてきた。

「よしお前ら、行くぞ? 準備は良いな?」

 そして俺たちは、史郎さんの運転する車に乗り込んだ。



「それでは全員車で史郎が話した持ち場に就け、朝の4時になったらココにまた集合すること!」

 茜はそう言って、ものすごいスピードで持ち場まで走って行った。

「それじゃあ鈴木、また後で」

「おう」

「悠馬君。もし何かあったらコレを使ってくれ」

 そうして史郎さんから手渡されたのは、白い札のようなものだった。

「これは?」

「それは使い捨てのスキルカード、スキル名を叫べば使えるから。それには師匠のスキル、今回の場合は攻撃魔法が入ってる。入ってるのはドレイク・バースト。無属性のスキルで、威力がものすごい分射程が短いから注意して。じゃあ俺も行くから」

「わかりました」

 ドレイク・バースト。使用すると当たれば馬鹿みたいな威力の魔力の塊が現れるが、動きは遅いし射程が短くて使いづらい事この上ないスキルだ。
 精々超大型ボス戦で使うか、前のワイバーンみたいに動けなくなった相手にしか使えない。
 使えるのはゲーム時代から知っていたが、どうしてよりにもよってこれなんだ……

 その後、俺はため息をつきながら自分の持ち場へ戻った。



「暇だ」

 俺の予想に反して一切敵も来ず、俺は暇をしていた。

「ああー……まだ6時間もあるよ」

 『名もなき地下墳墓』の東入り口前、俺は石段に座り込んで地面に木の棒で絵を描いていた。

「完成ー照り焼きにされたテュポ君ー! ……暇だ」

 そんな馬鹿な事をして暇をつぶしていると、周りの空気が変わった気がした。

 ーーなんだ?

 俺が身構えていると、遠くからモンスターの鳴き声と悲鳴が聞こえてきた。

「クソッ! 冬香の方からか!」

 急いで駆けつけると、所々傷付いた冬香がライカンスロープ3体と戦闘していた。

 俺はライカンスロープと冬香の間に割込み、飛び掛かってくるライカンスロープの腹部を撫で斬りにする。

 腹部を切り裂かれたライカンスロープは暫く藻搔いていたが、ドロップアイテムを残して魔力に戻って行った。

「大丈夫か?」

 俺は残りのライカンスロープ2体をけん制しながら、少し後ろを見て言った。

「う、うん。大丈夫……」

 恐らく攻撃を避けきれないと身構えていたのだろう、攻撃が来なかったことに少しポカンとした表情で冬香は答えた。

「そんじゃ、悪いけど一体頼めるか? 無理そうだったら言ってくれ」

「わ、わかった」

 片方のライカンスロープは冬香に任せて、俺はもう一体のライカンスロープに突撃した。

 ライカンスロープは飛び上がり、左の爪で俺を切り裂こうと攻撃を繰り出してきたが、その前に俺はレイスラッシュを繰り出してライカンスロープを一刀両断にした。

「ふう」

 とりあえず一体片付けて、一息付くと冬香の方を見た。どうやら冬香も片付け終わったようだ、冬香は血の付いた刀を二つとも鞘にしまうとこちらに駆け寄ってきた。

「ごめん、助かった。ありがとう」

「良いって。それよりもどうしてこんな所にライカンスロープが……」

 その瞬間凄まじい音が鳴り、何か巨大なモノが現れた。

「なッ!?」

「え? ちょ!?」

 俺は殺気を感じて、咄嗟の事で抵抗する冬香を無理やり抱えると全力で後ろに跳んだ。

「ガハッ!」

 どうやら敵の攻撃の様だ。巨大な光球が飛んできてそれ自体は回避することに成功したが、風圧で後ろの木に叩きつけられた。

「鈴木!?」

「だ、大丈夫だ……」

 俺が立ち上がると、俺たちの目の前にピアスをジャラジャラと付けた軽薄そうな男が現れた。

「へぇ、やるじゃん。ザコ虫の癖して、俺っち自慢のベヒーモスの攻撃を避けるなんて」

 その時男の隣に佇む10メートルはあろうかという巨体が、月明かりに照らされて露わになった。

「テメエ、召喚士サモナーか!」

「だいせいかーい。正解のご褒美はベヒーモスの巨体によるミートソース体験でーすっ!」

 ベヒーモス。Aランクエンフォーサー相当になって初めて倒せるかもしれない相手。
 その強さと硬さからダンジョンで忌避され、偶にイレギュラーとして現れBランク以下のエンフォーサーで構成されたパーティーが、バッタリ遭遇して全滅する事が多発したことから死を呼ぶ凶兆と一部では呼ばれている。
 それが俺たちの前に、月明かりに照らされるその巨大な体で威圧してきながら立ちはだかっていた。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...