自称泣きゲーのモブに転生~メーカーは泣けるとかほざいてるけど理不尽なヒロイン死亡エンドなんていらねぇ!!

荒星

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イザナギ学院一年生編

第17話 人の家の物は勝手に触れるべからず

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「ねえ悠馬。今度の日曜日、私の家に遊びに来ない?」

 食堂で昼食を取っていると、ソフィアが急にそんな事を言い出した。

「……どうした急に?」

「い、いや。この前の騒ぎで私の国の貴族が悠馬に迷惑かけたし、それに……」

「それに?」

「ッ! なんでもない! うん! なんでもないよ! ほ、ほら! 友達を家に招待するのって憧れてたんだ!」

「なるほど……それじゃあお邪魔しようかな」

「うん!」

 そうして俺は日曜日、ソフィアの家へ遊びに行くこととなった。



 日曜日。

「ソフィアの家は……」

 俺はソフィア宅の住所の書かれたメモを頼りに、スマホで道を検索しながら歩いていた。

 ーーまだ着かないのか? 悠馬……

 ーーあともう少しなハズ……

「あったあった。ここだ! ってデカ!」

 ーー流石王女様、立派なご住まいで……

 住宅街の一角で場違いに佇む豪邸に気おされながら、インターホンを押す。

「はい、ご用件は?」

「えっと……ソフィアの友達で、遊びに来たんですけど」

「……少々お待ちくださいませ」

 ーーoh……滅茶苦茶不審がられてる。

 大体三分後。屋敷の中から人が出てきた。

「申し訳ございません、大変お待たせ致しました。お客様、どうぞこちらへ」

「ど、どうも」

 出てきたのは、金髪碧眼の滅茶苦茶綺麗なメイドさんだった。
 その人は門を開けて俺を中に入れると俺に一礼し、自己紹介する。

「お初にお目にかかります、ソフィア第一王女殿下のお付きをしているエミリー・ホワイトと申します。気軽にエミリーとお呼びくださいませ」

「あ、はい……鈴木悠馬です。悠馬って呼んで下さい」

「鈴木悠馬様ですね。よろしくお願いいたします。それでは悠馬様、王女殿下の元までご案内致します。こちらへ」

「あ、はい……よろしくお願いします」

 エミリーさんは笑顔でそう言うと屋敷の方を手で指し示し、歩き始めた。

 ーー滅茶苦茶綺麗な人で焦った……それにしても、噴水まであんのかよ。

 ーー全く。噴水を作るくらいなら、アニメのグッズやゲームを買った方が有効活用だろうに……

 ーー違う、そうじゃない。それにしても、俗世に染まりすぎだろ。この邪神様。

 ーーだから我は邪神では!!!

 俺は騒ぐロトの声を無視して、エミリーさんの後を追う。

「失礼します。お客様をお連れしました」

 エミリーさんはある部屋の扉の前に止まると、ドアをノックしてから開けた。

 ーーうっわ、部屋広っ!

 部屋の中に入るとソフィアが礼儀正しく挨拶してくる。

「ようこそ私の屋敷へ、この屋敷の主のソフィア・シャーロット・オリビア・オブ・サンチェスです。貴方を歓迎いたします」

 そしてニコッと笑うと、ソフィアは手を後ろに組みながら言った。

「それじゃあ遊びましょう! 悠馬!」



 その後。ソフィアはエミリーさんに下がるように言うと、クローゼットの中をゴソゴソと探りゲーム機やコーラ、お菓子などを取り出してきた。

「なんでそんなとこに……」

「だってこういうのはやれ王女殿下に相応しくないだの、やれ栄養学的に云々だの言われて回収されちゃうんだもん」

「あぁ、そう……」

 ソフィアは楽しそうに鼻歌を歌いながら、ゲーム機のセットをして一緒にやるソフトを選び始めた。

「どれにしようかな~」

 ーーそれにしても。なんか高そうな宝石とか飾ってあんな……

 ーーあれ一つでいくらになるのだろうな……

 ーーおい。

 ソファに座り俺達が部屋の隅にに飾ってある、色とりどりの宝石を見ながら話していると、ソフィアがゲーム機を設置し終えて戻ってきた。

「ゾンビ系のシューティングゲームか」

「ふふ。最近ハマっちゃって、夜中にエミリー達から隠れて夜更かししながらやってるの!」

 ーーお姫様が目に隈を作りながらゾンビゲームか……

 俺はソフィアが夜中隠れてゲームしている姿を想像して笑うと、差し出されたコントローラーを握る。

「俺は上手いぞ?」

「それじゃあ期待してるね! 頑張ろう!」



 30分後。

「なんだコレなんだコレなんだコレ! なんでこんなに難しいんだよ!」

 俺は襲い掛かるゾンビに揉みくちゃされ叫んだ。

「高難易度だもん、そりゃあね!」

 あっという間に救援待ちになる俺とは対照的に、ソフィアは淡々とゾンビにヘッドショットを決めながら、俺の叫び声に答える。

 ーー悠馬! 我に貸せ!

 ーーいや、お前は表に出てきちゃダメだろ!

 ーーヤダヤダヤダ! 我がやる!

 ーーお前は駄々っ子か! ちょ、待ッ!

「我参上!」

「へ!?」

「おまっ!」

「助太刀するぞ、ソフィアよ!」

 ロトは俺からコントローラーを奪い取ると、猛烈なスピードでゾンビを駆逐し始めた。

「す、スゲェ……」

 ーー流石。夜中に起きてゲームやアニメを見て、姉さんに成敗されてるだけの事はある!

「へぇ……やるね君! 私も負けてられないな!」

「ロトだ! ついてこられるな!」

「勿論だよ! ロト君こそ置いて行かれないでよ!」

 そしてステージをクリアすると、ロトとソフィアはハイタッチした。

「やったぞソフィア!」

「やったねロト君! イエーイ!」

「イエーイ!」

「ところで、ロト君って一体……?」

 ーー素に戻るんかい!

「あー……えっとだな……」

「我はアス……モガッ!」

 俺は馬鹿な事を口走りそうになったロトの口を塞ぎ、慌てて言い訳する。

「俺にもよくわからないんだ! ある日突然現れてさ! 普段はこのペンダントの中に居るんだけど、勝手に出てきたりなんだりする謎生物なんだよな! けどこの通り基本的に無害だから、安心しくれ!」

「そ、そうなんだ……」

 ーー何をする!

 ーー何をするもクソもないわ! ソフィアはあの神聖サンチェス法国の王女で聖女様だぞ! お前がアスタロトって知られたら……! いや、ソフィアの事は信じてるけど! 馬鹿な事はすんな!

 ーーうう、むぅ……我もあのギャルゲーのアニメ化を待たずして死にたくはない。仕方がない、自重しよう。

 ーーそれでいいのか自称魔神。

 ーー自称ではない!

 ロトと言い合いしていると、ドアがノックされた。

「はーい。あ、悠馬とロト君。ちょっと待っててね!」

 ソフィアはそう言い、部屋から出ていく。

「はぁ……お前な……って何してんだ!」

 俺はロトに文句を言おうと振り返ると、飾ってあった赤い宝石を持ち上げて触るロトが目に入った。

「ん? ちょっと興味があってな。ほほう、中々に高度な封印術式だ。だがこの我にかかれば丸裸である!」

「お、おい。下手に触んなって!」

「安心しろ、使い魔で近くに誰も居ないことは見て確認済みだ!」

「あんまスキルとか使ったりすんなよ……」

「バレないから大丈夫だ」

「いやいや、わからないぞ? スキルを感知する結界とかが張ってあったらどうすんだ! それにお前の方こそ覗かれてるかもしれないぞ? 深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだってな」

 俺がそう言った瞬間。ロトは宝石を取り落とし、頭を抑えた。

「お、おいどうした?」

「いや、なんでもない。何故か頭痛が……」

「頭痛? まぁなんでもないなら……あ、オマエ宝石落とすなよ! もし傷でも付いたら……あれ?」

 ロトが落とした宝石を見ると、宝石は赤く輝いている。

「え、ちょ!? なんだコレ!」

 ーーそういえばこの宝石、なんか見覚えが……

 俺がうろたえていると、ソフィアがお茶とクッキーの乗ったトレイを持って帰ってくる。

「ソ、ソフィア! ロトが部屋に飾ってあった赤い宝石落として!」

 そう言うと、ソフィアは笑った。

「火の魔結晶の事? 大丈夫だよ、封印術式があるから落としても爆発しないし傷も……」

 ーー……火の魔結晶って、武器の加工にも使えるレア素材だよな。確か宝石としての価値もあるし爆弾としても使えるっていう……

「いや、なんか赤く輝いてんだけど」

「へ?」

 俺の言葉を聞いたソフィアは、火の魔結晶に目を向ける。

「……封印術式は?」

「ん? あれか? パズルの様で面白かったからな、我が解いたぞ! 中々複雑な術式であった!」

 ロトの言葉を聞き引きつった笑みを浮かべたソフィアは、トレイを傍にあったテーブルに置くと俺に手招きをした。

「悠馬、ちょっとこっちに来て」

「う……お𠮟りですか」

「違う違う。『アイギス』」

 ソフィアがそう呟くと、最上級の防御スキル『アイギス』が俺達の周りに展開された。

「へ? ……もしかして我、マズイ感じ? あの、その。ソフィア! いや、ソフィア様! どうか我も入れ……アッ」

 ロトは自分が何をしでかしたか察し、展開されたアイギスを叩きながら中に入れてくれと懇願する。

 その瞬間。辺りは眩い閃光に包まれ、ソフィアの屋敷の一角が消滅した。




「ただいまー」

「ああ、お帰り! 今日の晩御飯はグラタンだ……ぞ……」

「え、えっと……これからこの家で暫くお世話になります、ソフィア・シャーロット・オリビア・オブ・サンチェスです。よろしくお願いします……」

 俺が帰宅したので、エプロンのまま玄関に出迎えに来た姉さんは、ソフィアのその言葉を聞いて固まる。

「……は?」

 この日、我が家の同居人が一人増えた。
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