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イザナギ学院一年生編
第18話 イレギュラー
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休日、俺達はリビングでダラダラしていた。
「ロトー、そのポテチ取ってくれー」
「だが断る、我が食べてるからな。おいソフィア! もう一面行く……」
「ロトォ? お前の食費やらおやつ代やらは弁償に当てると言ったハズだが……?」
「もうドッグフードのみの食生活はうんざりなのだ! だから……!」
「あ、アハハ……大丈夫ですよ円華さん。住まわせてもらってるし、弁償なんて……」
「ソフィア!」
ロトは目をキラキラさせ、ソフィアを見る。
「いや、それはダメだ。甘やかせばつけあがるのがロトだからな。さてロト?」
「へ? い、嫌だ! アイアンクローはもう嫌なのだ! た、助けてくれソフィア!」
ロトは頭を姉さんに両の拳で頭を挟まれながら、今度はソフィアを懇願するように見つめるが、目を逸らされロトは絶叫した。
「あ、あぁ! 頭が……頭がァァァァ!」
ーー南無三。
「ところで、学園ダンジョンでの実習ってどうだった? 俺明日あるんだけど」
俺は床でピクピクと痙攣しながら泡を吹くロトと、ロトを一瞥した後食器洗いに戻って行く姉さんを尻目に、ソフィアに問いかける。
「悠馬は明日からなんだね。私達SクラスはCクラスとだったよ? ……CクラスよりSクラスの方が人数少ないから、Cクラス五人の中にSクラス一人って感じだったんだけど」
「けど?」
「その……なんて言えばいいのかな? 一部のクラスの子があんまり……」
「OKわかった。モンスターは?」
「うーん……少なくとも悠馬が苦戦するモンスターは居なかったかな」
「ふーん……」
ーーワープゲートは見つかってないか……そりゃそうか、あれが出現するのは3年生からだもんな。
イザナギダンジョンは学園ダンジョン、通称チュートリアルダンジョンの地下深くにある。
イザナギダンジョンへ行くための方法は、学園ダンジョンの最深部に出現するワープゲートのみだが、しかしそれは三年生編に突入するまで現れない。
ゲームでは始めてこのダンジョンに潜ると、文字通りチュートリアルが始まる。ちなみに解説役は、Sクラス担任の茜だ……まぁ、この世界では茜は学園長なので違うが。
「EクラスはAクラスとなんだよな……」
「Aクラスかぁ。良くも悪くも実力主義ってクラスだよね」
「あー……」
「大丈夫だよ、悠馬なら」
そう言ってはにかむソフィアに、俺は微笑む。
「ま、そうだな。気楽に行くとするよ」
「そうそうその調子! それじゃロト君気絶しちゃったし一緒にゲームしよ!」
「おうよ!」
「……で、どうしてこうなった」
「なんですの? 文句がおありでして?」
学園ダンジョン。死にかけた目でゴブリンを切り裂く俺の目の前には、火属性の魔法スキルで敵を焼き尽くすAクラス首席、エミリーヌ・ミシェルが居た。
話は一時間前まで遡る。
「先生! どうしてわたくしの班はこのEクラスの殿方しかいませんの!」
そう言って天音先生に抗議するのは、A-1クラス所属のAクラス首席でM&Wストアの社長令嬢にしてサブヒロイン。エミリーヌ・ミシェルその人だった。
「あー……それなんだけどね。ほら、ちょっと前Aクラスから欠員が出たでしょう?」
その欠員というのは、ジェームズと取り巻き達のことだ。言わずもがなジェームズは死亡、取り巻き達は真っ二つになったジェームズを見たり、ルシファーやグレゴリーを間近で見たせいで心が折れて退学したそうな。
「え、えぇ。そうですわね」
「それで二人余りが出たんだけど、このダンジョンで大人数にすると楽勝過ぎて実習にならないから、二人だけでも問題なさそうな人選で組ませようって話になったわけ」
「ぐぬぬぬ……し、仕方がないですわね」
エミリーヌはそう言うと、ビシッと俺に指を突き付けこう言った。
「わたくしは貴方をEクラスの生徒としてではなく、一個人として評価しますわ! だから絶対にわたくしの足を引っ張らない事! いいですこと!?」
「へ、へい……」
そして今。
「遅いですわよ! 鈴木悠馬!」
「へいへい」
考え事をしている間に、新手の敵が現れたらしい。コボルトを焼き殺しながら叫ぶエミリーヌへ適当な返事を返しながら、俺は焼き殺される仲間の横をすり抜け、エミリーヌへ襲い掛かろうとするコボルトの首を斬りつけた。
「全く、何をやってますの!? ダンジョンの中でボーっとするだなんて!」
ーーそれについてはなんも言い返せない……いくらチュートリアルダンジョンとは言え、油断しすぎだな。
「ごめん」
「全く、このわたくしと組んでいるのだからしっかりしなさい!」
エミリーヌはそう言うと、足早に奥へと進んでいった。
「何をしているの? 早くついて来なさい!」
「はーい……」
そして、学園ダンジョン最深部。
「ふッ!」
「ファイア!」
俺達は、初心者用に調整されたオークと戦っていた。
「ブモッ!?」
俺に気を取られている隙に、エミリーヌの魔法が直撃する。
そして怯んだオークを、俺は切り裂いた。
「ふう……」
「これで終わりですの? 手ごたえのないダンジョンですわね」
ーーまあそりゃチュートリアルダンジョンですし。
俺達がドロップ品を吟味していると突然部屋の奥が光り、ワープゲートが現れた。
ーーはッ? アレは……! なんでだ!? まだ三年生編じゃないぞ!
現れたのは、イザナギダンジョンへと続くワープゲートだった。
そして俺が絶句していると、エミリーヌがワープゲートの方へと向かった。
「やっぱり手ごたえがなさすぎると思ってましたの! さあ行きますわよ鈴木悠馬!」
「待てッ!」
しかし俺の制止も聞かずに、エミリーヌはワープゲートをくぐってしまった。
「クソッ!」
俺は慌ててエミリーヌの後を追いかける。
ーーおい悠馬! この先からは嫌な感じがするぞ!
ーーわかってる! だけどアイツを見捨てられない!
そうしてロトの忠告を無視して、俺達は高難易度ダンジョン『イザナギダンジョン』へと入ってしまった。
「ロトー、そのポテチ取ってくれー」
「だが断る、我が食べてるからな。おいソフィア! もう一面行く……」
「ロトォ? お前の食費やらおやつ代やらは弁償に当てると言ったハズだが……?」
「もうドッグフードのみの食生活はうんざりなのだ! だから……!」
「あ、アハハ……大丈夫ですよ円華さん。住まわせてもらってるし、弁償なんて……」
「ソフィア!」
ロトは目をキラキラさせ、ソフィアを見る。
「いや、それはダメだ。甘やかせばつけあがるのがロトだからな。さてロト?」
「へ? い、嫌だ! アイアンクローはもう嫌なのだ! た、助けてくれソフィア!」
ロトは頭を姉さんに両の拳で頭を挟まれながら、今度はソフィアを懇願するように見つめるが、目を逸らされロトは絶叫した。
「あ、あぁ! 頭が……頭がァァァァ!」
ーー南無三。
「ところで、学園ダンジョンでの実習ってどうだった? 俺明日あるんだけど」
俺は床でピクピクと痙攣しながら泡を吹くロトと、ロトを一瞥した後食器洗いに戻って行く姉さんを尻目に、ソフィアに問いかける。
「悠馬は明日からなんだね。私達SクラスはCクラスとだったよ? ……CクラスよりSクラスの方が人数少ないから、Cクラス五人の中にSクラス一人って感じだったんだけど」
「けど?」
「その……なんて言えばいいのかな? 一部のクラスの子があんまり……」
「OKわかった。モンスターは?」
「うーん……少なくとも悠馬が苦戦するモンスターは居なかったかな」
「ふーん……」
ーーワープゲートは見つかってないか……そりゃそうか、あれが出現するのは3年生からだもんな。
イザナギダンジョンは学園ダンジョン、通称チュートリアルダンジョンの地下深くにある。
イザナギダンジョンへ行くための方法は、学園ダンジョンの最深部に出現するワープゲートのみだが、しかしそれは三年生編に突入するまで現れない。
ゲームでは始めてこのダンジョンに潜ると、文字通りチュートリアルが始まる。ちなみに解説役は、Sクラス担任の茜だ……まぁ、この世界では茜は学園長なので違うが。
「EクラスはAクラスとなんだよな……」
「Aクラスかぁ。良くも悪くも実力主義ってクラスだよね」
「あー……」
「大丈夫だよ、悠馬なら」
そう言ってはにかむソフィアに、俺は微笑む。
「ま、そうだな。気楽に行くとするよ」
「そうそうその調子! それじゃロト君気絶しちゃったし一緒にゲームしよ!」
「おうよ!」
「……で、どうしてこうなった」
「なんですの? 文句がおありでして?」
学園ダンジョン。死にかけた目でゴブリンを切り裂く俺の目の前には、火属性の魔法スキルで敵を焼き尽くすAクラス首席、エミリーヌ・ミシェルが居た。
話は一時間前まで遡る。
「先生! どうしてわたくしの班はこのEクラスの殿方しかいませんの!」
そう言って天音先生に抗議するのは、A-1クラス所属のAクラス首席でM&Wストアの社長令嬢にしてサブヒロイン。エミリーヌ・ミシェルその人だった。
「あー……それなんだけどね。ほら、ちょっと前Aクラスから欠員が出たでしょう?」
その欠員というのは、ジェームズと取り巻き達のことだ。言わずもがなジェームズは死亡、取り巻き達は真っ二つになったジェームズを見たり、ルシファーやグレゴリーを間近で見たせいで心が折れて退学したそうな。
「え、えぇ。そうですわね」
「それで二人余りが出たんだけど、このダンジョンで大人数にすると楽勝過ぎて実習にならないから、二人だけでも問題なさそうな人選で組ませようって話になったわけ」
「ぐぬぬぬ……し、仕方がないですわね」
エミリーヌはそう言うと、ビシッと俺に指を突き付けこう言った。
「わたくしは貴方をEクラスの生徒としてではなく、一個人として評価しますわ! だから絶対にわたくしの足を引っ張らない事! いいですこと!?」
「へ、へい……」
そして今。
「遅いですわよ! 鈴木悠馬!」
「へいへい」
考え事をしている間に、新手の敵が現れたらしい。コボルトを焼き殺しながら叫ぶエミリーヌへ適当な返事を返しながら、俺は焼き殺される仲間の横をすり抜け、エミリーヌへ襲い掛かろうとするコボルトの首を斬りつけた。
「全く、何をやってますの!? ダンジョンの中でボーっとするだなんて!」
ーーそれについてはなんも言い返せない……いくらチュートリアルダンジョンとは言え、油断しすぎだな。
「ごめん」
「全く、このわたくしと組んでいるのだからしっかりしなさい!」
エミリーヌはそう言うと、足早に奥へと進んでいった。
「何をしているの? 早くついて来なさい!」
「はーい……」
そして、学園ダンジョン最深部。
「ふッ!」
「ファイア!」
俺達は、初心者用に調整されたオークと戦っていた。
「ブモッ!?」
俺に気を取られている隙に、エミリーヌの魔法が直撃する。
そして怯んだオークを、俺は切り裂いた。
「ふう……」
「これで終わりですの? 手ごたえのないダンジョンですわね」
ーーまあそりゃチュートリアルダンジョンですし。
俺達がドロップ品を吟味していると突然部屋の奥が光り、ワープゲートが現れた。
ーーはッ? アレは……! なんでだ!? まだ三年生編じゃないぞ!
現れたのは、イザナギダンジョンへと続くワープゲートだった。
そして俺が絶句していると、エミリーヌがワープゲートの方へと向かった。
「やっぱり手ごたえがなさすぎると思ってましたの! さあ行きますわよ鈴木悠馬!」
「待てッ!」
しかし俺の制止も聞かずに、エミリーヌはワープゲートをくぐってしまった。
「クソッ!」
俺は慌ててエミリーヌの後を追いかける。
ーーおい悠馬! この先からは嫌な感じがするぞ!
ーーわかってる! だけどアイツを見捨てられない!
そうしてロトの忠告を無視して、俺達は高難易度ダンジョン『イザナギダンジョン』へと入ってしまった。
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