自称泣きゲーのモブに転生~メーカーは泣けるとかほざいてるけど理不尽なヒロイン死亡エンドなんていらねぇ!!

荒星

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イザナギ学院一年生編

第26話 男には、時として負けられない戦いがある。

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 日曜日。俺は男として負けられない戦いへと、臨もうとしていた。

「あれ? 悠馬、どこに行くの? もしかして、選抜戦に向けてダンジョン?」

「いや、友達と遊びに行ってくるだけ」

「あ、悠馬。私と冬香、エミリーヌで遊ぶ約束してるの。だから今日円華さんが学園祭の準備会議終わって帰ってくるまで、多分誰も家に居ないから」

「了解。それじゃ」

 そして俺は靴を履き終えると、玄関ドアを開けていざ男たちの戦場へと向かう。

「あとそれと悠馬! その服装はやめた方がいいと……行っちゃった」



 
 話は数日前まで遡る。

「彼女が欲しい」

「藪から棒になんだ急に」

「ホントにいきなりだね……」

 俺と龍斗は放課後、和人の家で集まってゲームをしていた。

 和人はコントローラーをベットに投げ捨て、大の字に寝そべる。

「だってさ、もうすぐ学園祭だぜ? 彼女と学園祭ってシチュエーション、憧れるだろ? それに折角の高校生活、楽しまなきゃ損だろ。いや、うちの学校正確には高校じゃないけど」

「まあわかるけどさ」

「けどまだ一年生だよ?」

 前世にて、彼女いない歴イコール年齢だった俺には耳が痛い話だ。それは今も変わらないが。

「甘い! 龍斗! 確かにお前はイケメンかもしれん、だが! そんな事では灰色の学校生活を卒業まで送る羽目になるぞ!」

 ――いや、大丈夫。コイツにはフラグが自然発生するから。

「んじゃどうすんだよ」

 俺がそう言うと、和人はニヤリと笑った。

「そなもん決まってんだろ、ナンパすんだよナンパ!」

「ハァ」

 俺はため息をつくと、コントローラーを握りなおした。

「おい龍斗。そこのバカは放っておいて、さっさともう一ラウンド行くぞ」

「そうだね」

 ――待て待て悠馬! いいじゃないか一回位!

 ――そうだぞ悠馬! 我も一回ナンパしてみたい!

 ――黙れ不思議生物二匹、お前らが参加してどうすんだよ。マスコットキャラクター選手権でもすんのか?

「自信が無いのか?」

 和人がその言葉を発した瞬間、俺と龍斗は固まった。

「自信が無いから逃げるんだろ? 良いぜ? 逃げなかった俺がこの中で一番男らしいってことで」

「今の言葉は聞き捨てならないかな」

「……いつも廊下でナンパして失敗した後、グラビア雑誌に逃げてる奴の言う事はちげえなぁ?」

「なんだと?」

「やんのか?」

「落ち着きなよ二人共」

「「うるせぇ! このイケメン野郎!」」

「お前なら女子だって選び放題だろ!」

「そうだそうだ!」

「それをよりにもよって悠馬に言われるのか……そこまで言われたら、僕も黙ってる訳にはいかないな」

「良いぜ! その戦い乗った! 全員かかって来いよ、コレは男の尊厳を掛けた戦争だッ!」

「ルールは簡単。まずは今週日曜日、10時に駅前のファミレス集合。その後駅前でナンパして5時までにファミレスでお茶出来た人数を競う! 良いな!」

「ああ、受けて立つ! 全員コテンパンにしてやる!」

「望むところだよ!」




 そして今、俺達は駅前のファミレスの一角で集まっていた。

 ウェイトレスのお姉さんは俺達のテーブルまで注文を聞きに来ると、顔を引きつらせる。

「えーと、ご注文は……?」

「「「かつ丼で」」」

 そしてウェイトレスのお姉さんが引きつった笑みで去っていくのを見ると、俺達は一斉に怒号を上げた。

「ウェイトレスの姉ちゃん引いてたぞ! お前らの服装のせいだからな! なんだその格好! お前らホントにナンパする気があんのか!」

 全面的に和人と龍斗の服装がおかしいせいなのに、まともな服装をしている俺に責任を被せようとしてくる和人に向かって、俺は気炎を吐いた。

 ――ふざけんな! どう考えてもコイツラの服装のせいだろ! 俺はコイツらほど変な服装してねえし!

 ――いやー、五十歩百歩だぞ思うぞ。我は。

 ――全くだ。

「お前こそなんだ! お前は正月の初詣にでも行くつもりか!」

 和人は、着物に羽織、袴。そして胴にふさふさした羽織紐を付けた、どう見ても正月の初詣に来た人のような服装だった。

「俺、ってドデカくプリントしてあるクソダサTシャツに言われたくねえ!」

「なんだと! 俺の勝負服をバカにすんのか!」

「なんの勝負をするつもりだお前は!」

「落ち着いて、僕以外二人共変な格好だから」

「「ホストスーツのお前にだけは言われたくねぇ!!!」」



「あ、ありがとうございましたー……」

 そしてかつ丼を食い終わり、俺達はいよいよ決戦の場にて並び立つ。

「改めて確認するが。これから六時間半、さっきのファミレスに一人でも多くお茶に連れ込めた奴の勝利。良いな」

「ああ」

「勝つのは僕だよ」

「それじゃあ……始め!」

 ――この戦い、絶対に負けてやるもんかよ!

「ねえママーあの人達何ー?」

「しっ、人様に指さしちゃいけません!」

 ――泣いていいかな。
 


 三時間後。

「バ、バカな……」

「どうして一人も釣れない!」

 俺と和人は膝から崩れ落ちる。今の所、俺たちの成果はゼロだった。

 皆苦笑いで『ごめんなさい、これからちょっと用事が……』だの『鏡見てきたら? その格好はちょっと……』だの『身の程って知ってる? 私達の事ナンパするならもっとさ……』だの!

 ――俺の一体何が悪いというんだ!

 ――いや、答え出てただろう。

 ――アウァリティアよ。カッコイイ服装をしても、悠馬が悠馬である限り無理かもしれぬ。

 そして俺達は、ナンパ続行中の龍斗を見る。

「すいませーん、僕と一緒にあそこのファミレスでお茶でも……あの、あそこのファミレスでお茶するだけでホテルでは……ちょ、お願いだから引っ張らないで!」
 
 ――まああの服装じゃあまともな人は怖くて寄り付かないだろうな、まともな人は……。

「龍斗もまだ成果ゼロ、まだまだ勝負はこれからだ!」

「おい、龍斗がどこかへ連行されかけてるぞ」

「助けて二人共!!」

  ――よし! まだ全員同点なんだ、俺はまだ諦めねえぞ!

「あ、アァァァァァ!」
 



 更に三時間後。

「クソ!」

「もうダメなのか!」

「まだ、まだだよ……! 僕はまだ諦めない!」

 もう諦めムードな俺達だったが、龍斗はよろよろと立ち上がるとナンパに向かった。

「もう、限界だ……。だって皆一様に俺の服装を一瞥した後鼻で笑うか、変なもん見る目で見た後逃げるように去っちゃうし」

「俺も引きつった笑みで、断られたときは立ち上がれないかと思った」

 俺達がどんよりしながら膝を抱えていると、龍斗の声が聞こえてきた。

「え! ホントに良いんですか!」

「その……この前のお守りを拾ってくれた人ですよね? 良いですよ、私なんかで良ければですけど」

「あ、そういえば君はこの前冬香と入れ替わるように引っ越してきた!」

「ハイ! 如月美優と言います! この前は本当にありがとうございました!」

 ――バカな! あの龍斗がナンパ成功だと!?

 そして勝ち誇った笑みを浮かべながら去る龍斗だったが、龍斗の隣に居る女子に俺は見覚えがあった。

 ――あれ。よくよく見たら、龍斗の監視に付いてる妹系後輩キャラのサブヒロインじゃね?

 如月美優。俺たちの一学年下で、幼いながらAランクエンフォーサー並みの実力を持つ天才少女。ちなみに、赤紙ツインテ―ルで冬香の妹弟子。冬香と二人並ぶとツインテール同士なせいで姉妹に見える。

「なッ! 年下美少女だと!? おのれ龍斗!!」

 ――あれは反則じゃないのか……? けど龍斗本人はなんも知らねえしな。

「ところで悠馬、さっきから居るその不思議な生き物はなんだ」

「……は?」

 俺が振り返ると、アウァリティアとロトが浮遊していた。

「お前らな!」

「ふむ。あまりにもお前達が情けないから、我らが手本を見せてやろうかとな」

「そういう事だ悠馬!」

 そして、アウァリティアとロトは女子高生達相手にナンパし始めた。

「ふむ、そこな者よ! 我らとあそこの店でお茶でもせんか!」

「滅茶苦茶手持ちが少ないから奢ってもらえると俺らも……ってプギュ!?」

「何この子達! 可愛い!」

「離すのだ! 我はこれでも! ……ムグ」

「あそこのファミレス? 良いよー! 私達がお腹いっぱい食べさせてあげる!」

 ――なんだあれ、羨ま……けしからん!

 アウァリティアとロトは女子高生達にもみくちゃにされると、そのままファミレスの方へと消えていった。

 ――助けてくれ悠馬! 

 ――死ね。

 ――ま、待ってくれ悠馬! 息ができぬのだ……!

 ――死ね。

 俺が死んだ魚の目で連行されていくアウァリティアとロトを見送ると、和人が叫んだ。

「どうして……どうして! あのヘンテコな生物二匹にはできて俺らには出来ないんだ!?」

「まだだ……まだ終わらねえ!」

 俺はやけくそになって叫ぶと、顔も確認せずに歩いていた三人組の女の子相手に声を掛ける。

「ねえ君達! これから俺とあそこのファミレスでお茶……で……も……」

「悠馬? 確か今日は友達と遊びに行くって言ってたよね? ナニヤッテルノカナ?」

 ――これは……終わったな。

「待って! 言い訳させてくれ! これには事情が! は、ははは……なんで皆各々スキル発動させてるんだ? ギャァァァァァァァ!」
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