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第三話 厳しい口調のルシャール殿下

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 ルシャール殿下はわたしの話を聞くと、さらに厳しい表情になった。

 わたしの婚約を破棄し、妹と婚約をするといった『理解不能』な言葉を撤回するのなら今しかないですわよ」

 わたしはそう思った。

「きみがここまで自分というものについて理解をしていないとは思わなかった……」

 ルシャール殿下は少し落胆をしているようだ。

 なぜ落胆しなければならないのだろう?

 なぜそういうことを言うのだろう?

 自分というものを理解していない?

 誰に対してものを言っているのだろう?

 ルシャール殿下はわたしが自分の素敵な婚約者であることを理解していないのだろうか?

 わたしはこの王国で並ぶもののないぐらい魅力のある女性だと言うことを、自分で理解をしている。

 そんなたわごとを言っているのは、きっと、寝不足かなにかのせいだろう。

 さあ、ルシャール殿下、婚約を破棄し、妹を婚約者にしたなどという冗談を言ったことをわたしに謝りなさい!

「リディテーヌ、冗談を言って申し訳なかった。許してくれ……」

 そう言って、頭を下げて詫びてくれるのであれば、許してあげよう。

 わたしはルシャール殿下の婚約者なのだから、多少のたわごとを言うぐらいなら許容範囲。

 ルシャール殿下がわたしに対して詫びてくることを期待していたのだけれど……。

 ルシャール殿下はまだわたしの期待に応えることを言ってこない。

 黙りこんだままだ。

 しびれをきらせたわたしは、攻勢に出る。

「だいたい、なぜわたしが婚約破棄をされなければならないのですか? 理由はいったい何なのでしょうか? いくらルシャール殿下といえども、適当な理由で婚約破棄をされたのでは、ここにいる出席席者だけではなく、出席されていない貴族だけではなく、王国民全体の笑いものになってしまいますわ。それでもよろしいのかしら。ルシャール殿下がそれでもよろしければ、お止めすることは一切いたしませんけど」

 高らかに笑いながらわたしは強い調子で言う。

 ルシャール殿下はどう出てくる?

 反撃してくるのだろうか?

 いや、いつものルシャール殿下であれば、ここまで強い態度に出てくれば、折れるはずだ。

 そう思っていると、

「リディテーヌよ。今までのわたしであれば、ここで鉾をおさめただろう。しかし、今日のわたしは違うのだ。断固とした決意のもと、この場所にやってきた。わたしは、きみが今まで行ってきたことをこの婚約破棄によって、自分で反省するものと期待をしていた。しかし、そういう人ではなかったようだ。まあ、十分予測できたことではあるが、それでもわたしは少し期待をしていたのだよ。でもどうやらその期待は裏切られたようだ」

 とルシャール殿下はあきれたようにわたしに言う。

「ルシャール殿下が何をおっしゃっているのか、わたしには理解できません。わたしが今まで行ってきたことの、いったいどこに問題があったというのでしょうか?」

 ルシャール殿下の言うことは、どこか遠くで行われていることのように聞こえる。

 ルシャール殿下は、

「そこまで言うのなら教えてやる」

 と言って言葉を一回切った後、続けて、

「きみは、まず学校内で、自分より身分の低い何人かの同級生をイジメていたそうだな。そして、学校の生徒だけではなく、尊敬をすべき先生にまで傲慢な態度を取りまくっていた。学校にいる人たちのほとんどがきみのことを恐れ、嫌っている。つまり人望というものがきみにはない。王太子妃になるべき人というのは、つねに周囲に気配りをし、尊敬されるべき存在で、人望がなければならない。それなのに、きみは全く逆のことをしていた。これだけでも婚約破棄の理由になる」

 と厳しい口調で言った。

 ルシャール殿下は何をおっしゃっているのだろう?

 わたしはすぐさま反撃をし始める。
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