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風の国編
剛剣のヴァイオレット
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アルフィスとエイベルは休憩のため、セントラルから二日ほど進んだ風の国の町であるモルナアトラに到着していた。
町は小さいながら活気があり、露店などが多く立ち並び、アルフィス達が到着した昼頃には人の多さは常軌を逸していた。
人混みが苦手というエイベルは宿で先に休養を取るとアルフィスと別れた。
逆に都会っ子のアルフィスはこの人混みもまた楽しんでいた。
母から頼まれたハーブティーと火の魔石の補充でアルフィスが露店が密集する中央広場へ向かっている途中のことだった。
何やら騒ぎのようで先の中央広場には人だかりができていた。
「なんの騒ぎだ?」
アルフィスが気になって中央広場に急いで向かおうとしていた青年に話しかけた。
「聖騎士と聖騎士の喧嘩だ!」
「マジか」
アルフィスは青年が走り去る後ろ姿を見ながらニヤリと笑った。
"喧嘩と言ったら俺"のアルフィスは胸躍らせながら中央広場へ向かった。
________________
中央広場は人だかりができていた。
真ん中にいる2人の聖騎士を取り囲み、緊張感が漂う。
2人の聖騎士は向かい合いあっており、互いの距離は5メートルほどだった。
一人は金髪のロングヘアの聖騎士でショートソードを抜剣して握っている。
鎧も装備している。
もう一人の聖騎士は身長が180センチほどの長身でブラウンに少し金色が混ざったのショートヘア、薄い褐色肌の女性。
服装は聖騎士学校の制服に似た服だが、リボンをしておらずブレザーの下のワイシャツのボタンを幾つか外し、胸元が少し見える。
ミニスカートの下はスパッツのようなものを身につけており、鎧を全く装備していなかった。
何よりもアルフィスはこの聖騎士が持つ剣を見て驚いた。
その剣は超がつくほどの"特大剣"でこの女性の背丈ほどある長さだった。
その剣を肩に乗せて、金髪の聖騎士を睨んでいた。
「貴様!私がどこの貴族だか知っての無礼か!」
金髪の聖騎士も長身の聖騎士を睨みながら怒声を放つ。
「そんなの知るか」
金髪の聖騎士のその言葉を聞いた瞬間に猛ダッシュした。
長身の聖騎士は特大剣を軽々と片手で持ち上げ構える。
金髪の聖騎士はジャンプし、縦一線の斬撃を放つ。
そのスピードを見たアルフィスは、この聖騎士が強者であることを悟った。
同じく長身の聖騎士は特大剣を右下に構えて、相手のジャンプ斬りに振り上げ斬りで対応した。
その威力はとてつもないもので、引っ掻かれた地面は斬り裂かれ、さらに金髪の聖騎士の剣に当たった瞬間、それが一撃で半分に折れる。
「ぐあぁ!!」
金髪の聖騎士は悲痛な表情を浮かべ、数メートル上空に打ち上げられた。
長身の聖騎士はさらに特大剣を上に振り上げ、落ちてきた金髪の聖騎士に縦一線の振り下ろし斬撃を放つ。
ズドン!という轟音と共に砂埃が辺りに舞う。
金髪の聖騎士は膝を片膝をつき、なんとか折れた剣でその攻撃を耐えたが、もう戦意喪失していた。
「ほう……」
長身の聖騎士は不気味に笑った。
そしてもう一度、特大剣を振り上げ、それを縦一線に振り下ろそうとしていた。
「ありゃマズイな……複合魔法・下級魔法強化……」
長身の聖騎士は渾身の力を込めて特大剣を振り下ろした。
ズドン!という轟音が再び周囲に広がる。
だが先ほどとは違い、なぜか長身の聖騎士は仰け反っていた。
「なんだ!」
長身の聖騎士は驚愕する。
金髪の聖騎士の前にはアッパーモーションで立つアルフィスがいた。
アルフィスは特大剣に拳を当てて、長身の聖騎士を仰け反らせていた。
長身の聖騎士は特大剣の重さで背後に倒れそうになるが、それを踏ん張り、特大剣を再び肩に乗せた。
「もう充分だろ。こいつはもう戦う気はない」
アルフィスは金髪の聖騎士を見るが、両手両膝を地面につき項垂れていた。
「なんだ?お前は。そいつのバディか?」
「いや、通りすがりの魔法使いだ」
長身の聖騎士は困惑した。
目の前にいる魔法使いと名乗る男は、魔法使いとは程遠い身なりだったからだ。
ローブを着てないどころか魔法具すら持っていない。
なによりも一瞬で目の前に現れたアルフィスに対して警戒心を強めた。
「魔法使い?どこのチンピラかと思ったが……お前はそいつの代わりに私の前に立つのか?」
「お前こそ、俺とやる気か?ただじゃすまねぇぜ……」
アルフィスはニヤリと笑い、左太ももに付けたバック開け、火の魔石を左手に握る。
それを見た長身の聖騎士はただならぬ気配をアルフィスから感じ、剣を前に構える。
周囲の緊張感は最高潮に達していた。
魔法使いが聖騎士と喧嘩とは無謀の一言だが、アルフィスの雰囲気には長身の聖騎士だけではなく、周りのギャラリーも息を呑んだ。
そこに人だかりを掻き分けて、1人の魔法使いが2人に近づく。
「なんの騒ぎかと思ったら……」
アルフィスと長身の聖騎士は横目でその魔法使いを見た。
その魔法使いは宿で休むと言っていたエイベルだった。
エイベルは呆れ顔で長身の聖騎士に話しかける。
「剛剣のヴァイオレット。久しぶりだな」
「鉄壁か……」
アルフィスは驚き、長身の聖騎士を見た。
彼女は二つ名を持つ聖騎士、"剛剣のヴァイオレット・ペレス"だった。
「エイベル、いくらお前でも、この喧嘩は止められんぞ」
「やめておけ。君の目の前にいる魔法使いはただの魔法使いじゃない」
「なに?」
「彼は"魔拳"だ。聖騎士の君でも戦ったらタダじゃ済まないだろう」
ヴァイオレットもエイベルの言葉に驚き、アルフィスを見た。
こんな小柄で華奢な男が"魔拳"の二つ名の男ということが信じ難かった。
「とりあえず私の顔に免じてここを収めてほしい。それに、さっきワイアットもこの町に着いた。あいつがこんなところを見たら収拾がつかなくなるぞ。宿へ行こう」
「確かに……」
3人は周囲の民衆を掻き分けて宿へ移動した。
残されたギャラリー達は顔を見合わせる。
一つの町に二つ名持ちが4人も集まることに只事ならざることを感じていた。
町は小さいながら活気があり、露店などが多く立ち並び、アルフィス達が到着した昼頃には人の多さは常軌を逸していた。
人混みが苦手というエイベルは宿で先に休養を取るとアルフィスと別れた。
逆に都会っ子のアルフィスはこの人混みもまた楽しんでいた。
母から頼まれたハーブティーと火の魔石の補充でアルフィスが露店が密集する中央広場へ向かっている途中のことだった。
何やら騒ぎのようで先の中央広場には人だかりができていた。
「なんの騒ぎだ?」
アルフィスが気になって中央広場に急いで向かおうとしていた青年に話しかけた。
「聖騎士と聖騎士の喧嘩だ!」
「マジか」
アルフィスは青年が走り去る後ろ姿を見ながらニヤリと笑った。
"喧嘩と言ったら俺"のアルフィスは胸躍らせながら中央広場へ向かった。
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中央広場は人だかりができていた。
真ん中にいる2人の聖騎士を取り囲み、緊張感が漂う。
2人の聖騎士は向かい合いあっており、互いの距離は5メートルほどだった。
一人は金髪のロングヘアの聖騎士でショートソードを抜剣して握っている。
鎧も装備している。
もう一人の聖騎士は身長が180センチほどの長身でブラウンに少し金色が混ざったのショートヘア、薄い褐色肌の女性。
服装は聖騎士学校の制服に似た服だが、リボンをしておらずブレザーの下のワイシャツのボタンを幾つか外し、胸元が少し見える。
ミニスカートの下はスパッツのようなものを身につけており、鎧を全く装備していなかった。
何よりもアルフィスはこの聖騎士が持つ剣を見て驚いた。
その剣は超がつくほどの"特大剣"でこの女性の背丈ほどある長さだった。
その剣を肩に乗せて、金髪の聖騎士を睨んでいた。
「貴様!私がどこの貴族だか知っての無礼か!」
金髪の聖騎士も長身の聖騎士を睨みながら怒声を放つ。
「そんなの知るか」
金髪の聖騎士のその言葉を聞いた瞬間に猛ダッシュした。
長身の聖騎士は特大剣を軽々と片手で持ち上げ構える。
金髪の聖騎士はジャンプし、縦一線の斬撃を放つ。
そのスピードを見たアルフィスは、この聖騎士が強者であることを悟った。
同じく長身の聖騎士は特大剣を右下に構えて、相手のジャンプ斬りに振り上げ斬りで対応した。
その威力はとてつもないもので、引っ掻かれた地面は斬り裂かれ、さらに金髪の聖騎士の剣に当たった瞬間、それが一撃で半分に折れる。
「ぐあぁ!!」
金髪の聖騎士は悲痛な表情を浮かべ、数メートル上空に打ち上げられた。
長身の聖騎士はさらに特大剣を上に振り上げ、落ちてきた金髪の聖騎士に縦一線の振り下ろし斬撃を放つ。
ズドン!という轟音と共に砂埃が辺りに舞う。
金髪の聖騎士は膝を片膝をつき、なんとか折れた剣でその攻撃を耐えたが、もう戦意喪失していた。
「ほう……」
長身の聖騎士は不気味に笑った。
そしてもう一度、特大剣を振り上げ、それを縦一線に振り下ろそうとしていた。
「ありゃマズイな……複合魔法・下級魔法強化……」
長身の聖騎士は渾身の力を込めて特大剣を振り下ろした。
ズドン!という轟音が再び周囲に広がる。
だが先ほどとは違い、なぜか長身の聖騎士は仰け反っていた。
「なんだ!」
長身の聖騎士は驚愕する。
金髪の聖騎士の前にはアッパーモーションで立つアルフィスがいた。
アルフィスは特大剣に拳を当てて、長身の聖騎士を仰け反らせていた。
長身の聖騎士は特大剣の重さで背後に倒れそうになるが、それを踏ん張り、特大剣を再び肩に乗せた。
「もう充分だろ。こいつはもう戦う気はない」
アルフィスは金髪の聖騎士を見るが、両手両膝を地面につき項垂れていた。
「なんだ?お前は。そいつのバディか?」
「いや、通りすがりの魔法使いだ」
長身の聖騎士は困惑した。
目の前にいる魔法使いと名乗る男は、魔法使いとは程遠い身なりだったからだ。
ローブを着てないどころか魔法具すら持っていない。
なによりも一瞬で目の前に現れたアルフィスに対して警戒心を強めた。
「魔法使い?どこのチンピラかと思ったが……お前はそいつの代わりに私の前に立つのか?」
「お前こそ、俺とやる気か?ただじゃすまねぇぜ……」
アルフィスはニヤリと笑い、左太ももに付けたバック開け、火の魔石を左手に握る。
それを見た長身の聖騎士はただならぬ気配をアルフィスから感じ、剣を前に構える。
周囲の緊張感は最高潮に達していた。
魔法使いが聖騎士と喧嘩とは無謀の一言だが、アルフィスの雰囲気には長身の聖騎士だけではなく、周りのギャラリーも息を呑んだ。
そこに人だかりを掻き分けて、1人の魔法使いが2人に近づく。
「なんの騒ぎかと思ったら……」
アルフィスと長身の聖騎士は横目でその魔法使いを見た。
その魔法使いは宿で休むと言っていたエイベルだった。
エイベルは呆れ顔で長身の聖騎士に話しかける。
「剛剣のヴァイオレット。久しぶりだな」
「鉄壁か……」
アルフィスは驚き、長身の聖騎士を見た。
彼女は二つ名を持つ聖騎士、"剛剣のヴァイオレット・ペレス"だった。
「エイベル、いくらお前でも、この喧嘩は止められんぞ」
「やめておけ。君の目の前にいる魔法使いはただの魔法使いじゃない」
「なに?」
「彼は"魔拳"だ。聖騎士の君でも戦ったらタダじゃ済まないだろう」
ヴァイオレットもエイベルの言葉に驚き、アルフィスを見た。
こんな小柄で華奢な男が"魔拳"の二つ名の男ということが信じ難かった。
「とりあえず私の顔に免じてここを収めてほしい。それに、さっきワイアットもこの町に着いた。あいつがこんなところを見たら収拾がつかなくなるぞ。宿へ行こう」
「確かに……」
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残されたギャラリー達は顔を見合わせる。
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