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風の国編
鉄壁のエイベル
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アルフィスは風の国へ向かうためにセントラル北東門まで来ていた。
北東門では何故か検問が張られており、通行人を一人一人調べている。
アルフィスはここでも真面目に列に並び、順番を待つ。
列が中間くらいになった時、列を無視してアルフィスの横を通り過ぎようとしていた魔法使いがいた。
アルフィスとその魔法使いは目が合った。
黒い長髪で少し銀が混ざり、その長い髪を後ろで結っている。
服装はローブ姿で大きめの杖を持ち、涼しい顔をした若い青年魔法使いだった。
「ん?君は……アルフィス・ハートル?」
「ん?誰だあんた」
黒髪長髪の魔法使いは笑みを浮かべ、アルフィスを手招きした。
「二つ名は検問や列待ちは免除だ。こっちへ」
「え、マジか……」
そんなのは全くわからなかったアルフィスはずっと馬鹿真面目に列に並んでいた。
アルフィスはその魔法使いと共に検問すら通過し、風の国へすんなり入国できてしまった。
「いやぁ、まさかそんなシステムだったとは……正直に並んでたぜ……これが日本男児の性か」
「君は面白い男だな。ここからどうやって中央まで?」
「い、いや考えてなかった……」
アルフィスはまたもやそのことは考えていなかった。
入国すれば成り行きでなんとかなるだろうと思っていたのだ。
「私の用意した馬車で一緒に行くかい?」
「おお!助かるぜ!」
アルフィスは満面の笑みで、目の前の人物が何者なのかわからずに、この魔法使いと共に中央を目指すこととなった。
____________________
アルフィスと黒髪長髪の魔法使いは向かい合って座っていた。
アルフィスはここで初めて、何故この魔法使いが自分の名前を知っていたのか気になった。
「あんた、なんで俺の名前を?」
「そりゃ知ってるさ。対抗戦見ていたからね」
アルフィスはその言葉に驚いた。
確かにあの会場には生徒以外の人間も沢山いた。
この目の前の魔法使いはその中の一人だった。
「なんで、俺の目的地が中央だとわかったんだ?」
「ああ、申し遅れたね、私はエイベル。エイベル・ノアールだ。君と同じ二つ名持ちで、"鉄壁"を名乗らせてもらってる。君と目的地は一緒だ」
そう言ってエイベルは握手しようと手を出した。
アルフィスは二つ名という言葉に反応するが、それでもエイベルの手を握る。
「そういうことか」
アルフィスは落ち着いて対応しているが、エイベルを見る眼光は鋭い。
もしかしたらいつか戦うことになるかもしれない相手だったからだ。
そんなアルフィスにお構い無しのエイベルはアルフィスの手を離そうとしない。
握った右手をずらし、アルフィスの付けているグローブを見た。
エイベルは笑顔だが眼差しは笑っていない。
「なかなかいいグローブだ。どこで手に入れたんだい?」
「水の国のリヴォルグに貰ったんだよ。いい加減離してくれるか?」
アルフィスがそう言うとエイベルはゆっくり手を離した。
アルフィスを見る表情はやはり涼しげだ。
「本当に面白い男だな。火の国のセレン・セレスティーから二つ名を、水の国のリヴォルグ・ローズガーデンから黒獅子のグローブを貰うとは……」
「何か悪いかよ」
アルフィスはエイベルを睨む。
そのアルフィスを見たエイベルはニヤリと笑った。
「シックス・ホルダーからここまで認められる人間は珍しい。対抗戦でも見たが、君の戦いをもっと近くで見れることが楽しみだ」
「別にここで戦ってもいいんだぜ」
アルフィスの言葉にエイベルは驚くが、すぐに涼しげな顔に戻る。
「私もそうしたいが、今回の目的は君と戦うことではない。宝具奪還が最優先だ」
「確かに……しかしまさかシックス・ホルダー討伐とはな」
アルフィスは馬車の窓から外を見た。
エイベルも続いて外を見るが、進む先は曇り空で今にも雨が降りそうだった。
「以前も無かったわけではない。宝具が盗まれてそれを取り戻すということは何度かあったらしいが、今回は妙だ」
「妙?」
アルフィスはエイベルを見る。
その表情は外の天候のごとく曇っていた。
「通常ならノアだけで充分な任務だ。普通の人間が宝具を持ったところで対して脅威ではない」
「……」
「だが、まさか今いる二つ名全員を集めての奪還作戦なんて聞いたことがない。何かあると考えて当然だろう」
シックス・ホルダーが敵という時点で異質といえば異質だが、わざわざその候補者を集めて戦わせる意味はなんなのだろか。
「ただ強いだけなんじゃないのか?」
「私もそれは考えた。だが、それでもノアだけで充分だろう」
「どういうことだ?」
「ノアは唯一、大賢者シリウスから二つ名を貰った聖騎士だ。強さもシリウスに次いで、現在いるシックス・ホルダーの中では2番目に強い。そのノアが苦戦するなんて只事ではないだろう」
アルフィスはノアの強さがそこまでだったことに驚く。
まさかあの小柄で自分より華奢なノアがシックス・ホルダーナンバー2だったとは。
エイベルの話にアルフィスが絶句している時だった、馬車の外で轟音と共に雷が鳴り始める。
ドン!と落ちたような音も聞こえた。
それはアルフィス達が進んでいる方向の西側にある森の方だった。
「すげぇ雷だな。あんなの見たことないぜ」
「……ワイアットの奴、暴れてるな。相当頭にきてるのか」
アルフィスはエイベルを見る。
だがその瞬間にまた落雷が森に落ち、アルフィスはすぐに窓の外を見た。
その雷はアルフィスが乗る馬車が森を通り過ぎても鳴り止むことは無かった。
北東門では何故か検問が張られており、通行人を一人一人調べている。
アルフィスはここでも真面目に列に並び、順番を待つ。
列が中間くらいになった時、列を無視してアルフィスの横を通り過ぎようとしていた魔法使いがいた。
アルフィスとその魔法使いは目が合った。
黒い長髪で少し銀が混ざり、その長い髪を後ろで結っている。
服装はローブ姿で大きめの杖を持ち、涼しい顔をした若い青年魔法使いだった。
「ん?君は……アルフィス・ハートル?」
「ん?誰だあんた」
黒髪長髪の魔法使いは笑みを浮かべ、アルフィスを手招きした。
「二つ名は検問や列待ちは免除だ。こっちへ」
「え、マジか……」
そんなのは全くわからなかったアルフィスはずっと馬鹿真面目に列に並んでいた。
アルフィスはその魔法使いと共に検問すら通過し、風の国へすんなり入国できてしまった。
「いやぁ、まさかそんなシステムだったとは……正直に並んでたぜ……これが日本男児の性か」
「君は面白い男だな。ここからどうやって中央まで?」
「い、いや考えてなかった……」
アルフィスはまたもやそのことは考えていなかった。
入国すれば成り行きでなんとかなるだろうと思っていたのだ。
「私の用意した馬車で一緒に行くかい?」
「おお!助かるぜ!」
アルフィスは満面の笑みで、目の前の人物が何者なのかわからずに、この魔法使いと共に中央を目指すこととなった。
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アルフィスと黒髪長髪の魔法使いは向かい合って座っていた。
アルフィスはここで初めて、何故この魔法使いが自分の名前を知っていたのか気になった。
「あんた、なんで俺の名前を?」
「そりゃ知ってるさ。対抗戦見ていたからね」
アルフィスはその言葉に驚いた。
確かにあの会場には生徒以外の人間も沢山いた。
この目の前の魔法使いはその中の一人だった。
「なんで、俺の目的地が中央だとわかったんだ?」
「ああ、申し遅れたね、私はエイベル。エイベル・ノアールだ。君と同じ二つ名持ちで、"鉄壁"を名乗らせてもらってる。君と目的地は一緒だ」
そう言ってエイベルは握手しようと手を出した。
アルフィスは二つ名という言葉に反応するが、それでもエイベルの手を握る。
「そういうことか」
アルフィスは落ち着いて対応しているが、エイベルを見る眼光は鋭い。
もしかしたらいつか戦うことになるかもしれない相手だったからだ。
そんなアルフィスにお構い無しのエイベルはアルフィスの手を離そうとしない。
握った右手をずらし、アルフィスの付けているグローブを見た。
エイベルは笑顔だが眼差しは笑っていない。
「なかなかいいグローブだ。どこで手に入れたんだい?」
「水の国のリヴォルグに貰ったんだよ。いい加減離してくれるか?」
アルフィスがそう言うとエイベルはゆっくり手を離した。
アルフィスを見る表情はやはり涼しげだ。
「本当に面白い男だな。火の国のセレン・セレスティーから二つ名を、水の国のリヴォルグ・ローズガーデンから黒獅子のグローブを貰うとは……」
「何か悪いかよ」
アルフィスはエイベルを睨む。
そのアルフィスを見たエイベルはニヤリと笑った。
「シックス・ホルダーからここまで認められる人間は珍しい。対抗戦でも見たが、君の戦いをもっと近くで見れることが楽しみだ」
「別にここで戦ってもいいんだぜ」
アルフィスの言葉にエイベルは驚くが、すぐに涼しげな顔に戻る。
「私もそうしたいが、今回の目的は君と戦うことではない。宝具奪還が最優先だ」
「確かに……しかしまさかシックス・ホルダー討伐とはな」
アルフィスは馬車の窓から外を見た。
エイベルも続いて外を見るが、進む先は曇り空で今にも雨が降りそうだった。
「以前も無かったわけではない。宝具が盗まれてそれを取り戻すということは何度かあったらしいが、今回は妙だ」
「妙?」
アルフィスはエイベルを見る。
その表情は外の天候のごとく曇っていた。
「通常ならノアだけで充分な任務だ。普通の人間が宝具を持ったところで対して脅威ではない」
「……」
「だが、まさか今いる二つ名全員を集めての奪還作戦なんて聞いたことがない。何かあると考えて当然だろう」
シックス・ホルダーが敵という時点で異質といえば異質だが、わざわざその候補者を集めて戦わせる意味はなんなのだろか。
「ただ強いだけなんじゃないのか?」
「私もそれは考えた。だが、それでもノアだけで充分だろう」
「どういうことだ?」
「ノアは唯一、大賢者シリウスから二つ名を貰った聖騎士だ。強さもシリウスに次いで、現在いるシックス・ホルダーの中では2番目に強い。そのノアが苦戦するなんて只事ではないだろう」
アルフィスはノアの強さがそこまでだったことに驚く。
まさかあの小柄で自分より華奢なノアがシックス・ホルダーナンバー2だったとは。
エイベルの話にアルフィスが絶句している時だった、馬車の外で轟音と共に雷が鳴り始める。
ドン!と落ちたような音も聞こえた。
それはアルフィス達が進んでいる方向の西側にある森の方だった。
「すげぇ雷だな。あんなの見たことないぜ」
「……ワイアットの奴、暴れてるな。相当頭にきてるのか」
アルフィスはエイベルを見る。
だがその瞬間にまた落雷が森に落ち、アルフィスはすぐに窓の外を見た。
その雷はアルフィスが乗る馬車が森を通り過ぎても鳴り止むことは無かった。
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