88 / 200
風の国編
チーム
しおりを挟む風の国 中央レイメル
聖騎士団 会議室
会議室には二つ名の6人とノアがいた。
アルフィスは壇上に立つノアからシックス・ホルダーの名前が書かれた資料である紙を奪い読んだ。
「カゲヤマリュウイチだと……?」
アルフィスにはその名前には心当たりはなかったが、それは明らかに自分と同じ日本人だった。
「こら!返せ!」
ノアがジャンプしてアルフィスからその資料を奪い取った。
椅子に座っていたエイベルとワイアットは顔を見合わせていた。
「とにかく座れ!」
そう言ってエリスがアルフィスを睨んでいる。
アルフィスはそんなエリスを見て、一旦自分が座っていた席に座る。
アルフィスは変な汗をかいていた。
水の国でリヴォルグも言っていたが、自分と違って体ごと転生してきてる人間がいる。
それを見届けたノアがコホンと咳払いをして口を開いた。
「この男が現在のシックス・ホルダーのようだ。ガウロの話しだと剣の達人だそうだ」
「へー男なのに剣を使えるとはな」
ヴァイオレットがニヤリと笑う。
今すぐにでもその男と戦いたいという顔をしている。
「動機はまだ不明だが、どうやらクローバル家は"転生術"をおこなってこの男を別の世界から呼び出したらしい」
「まさか……無属性魔法か……まだ書物が残っていたとは」
エイベルが驚いた表情で発言する。
アルフィスは無属性魔法という言葉は聞いた事がない。
「無属性魔法?そんなの聞いたことないぞ」
「まぁ王が禁忌と定めてからだいぶ経つからな。知ってる人間は少ないだろ」
ワイアットの言葉にアルフィスは昔を思い出していた。
猫アルから教わったのは火の魔法だけだ。
そしてこの世界に存在するのは火、土、水、風の四種類の魔法だけだと思っていた。
そこにエイベルが神妙な面持ちで口を開く。
「無属性魔法は時間と空間を操る魔法。例を言えばワープ魔法もその一つだ。この魔法はあまりにも危険なため禁忌として封印された。たまに人里離れた村や町などに文献が残ってたりするが、現在、無属性魔法を使えるのは"王"だけだ」
「あと"魔女"とかな」
ワイアットが発言した瞬間、会議室が凍りつく。
その雰囲気を察したアルフィスは"魔女"というものは、この世界では異質な存在なのだと悟った。
そもそも女性は魔力を持たないのに、"魔女"なんておかしいのではないかとまで思った。
「とにかく、このカゲヤマをなんとかするために我々が動く。情報によると、どうやらクローバル家の別荘にいる可能性が高いということだ」
ノアが発言した後、ノアの後ろ隣にいたエリスが前に出る。
「そこでチーム分けをする。全員でぞろぞろ行ったら敵に気づかれる可能性があるからな。別荘があるマルロ山脈山頂を目指すチームと手前の村のアーサルに残るチームで別れる」
エリスの言葉に皆が無言で聞き入る。
アルフィスも作戦会議なんて参加したことがないので少し緊張感していた。
「まず山頂を目指すのはエイベル、ナナリー、アルフィス。村に残るのはワイアット、ヴァイオレットと私だ」
「はぁ?なんで俺が残るんだよ!」
ワイアットは全く納得がいっていなかった。
それは自分の目的を達成したい思いもあり、またアルフィスへの対抗心もあった。
そこにエリスの後ろに立つノアが口を開く。
「文句を言うな!マルロの山頂付近には強い魔人がいると聞いてる。それを高速で処理して頂上を目指すならこの構成がベストだ。なによりお前の魔法は目立ちすぎる」
「……」
「それにもしかしたら村にカゲヤマが現れる可能性だってある。どちらも大事な役割だ」
そのノアの言葉にワイアットは渋々納得した。
ノアの指揮官としての能力は非常に高いということは二つ名なら皆知っている。
「私はやる事があるから、一旦セントラルに戻らねばならない。早急に用事を済ませて、すぐ合流する。以上だ」
そう言うとノアは退出した。
アルフィス達もそれに続き、レイメルの入り口門前まで来た。
ノアが馬車に乗ろうとした時、思い出したようにアルフィス達を見た。
「そういえば、クローバル家の執事も行方不明だそうだ。恐らくカゲヤマが人質にでもしたのではないかと思っている。だが行方不明になってからもう一年以上経ってるから殺されてるかもな」
それだけ言うとノアは馬車に乗り込みセントラルへ向かった。
アルフィス達は目立たぬようにと、チームで分かれて馬車でマルロ山脈近くのアーサル村を目指した。
0
あなたにおすすめの小説
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
ブックマーク・評価、宜しくお願いします。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる