96 / 200
風の国編
ガウロ・グローバル
しおりを挟む風の国 中央レイメル
クローバル家 屋敷門前
アルフィスはカゲヤマが残した手紙を読んだ。
その手紙の内容にナナリー、ワイアット、アンジェラは首を傾げた。
それは何の変哲もない内容で、特に変わったところは無かった。
アルフィスは手紙を裏返したり、入っていた封筒の中をのぞいたりしたが特に何もない。
「ただのアゲハへの別れの手紙に見えるが……」
「……アルフィス、もう一回読んでくれ」
ワイアットの言葉にアルフィスは頷き、もう一度その手紙を読んだ。
「何かわかったのか?」
「……」
ワイアットは黙って考え事をしている。
その姿をアルフィスとナナリー、アンジェラの三人が見守る。
「わからん。まぁ何の意味もない手紙だろう。俺は行くぜ……あばよ」
そう言ってワイアットはアルフィス達に背を向けて歩き出した。
それを見た3人は唖然としている。
「はぁ?行くってどこにだよ!」
「情報収集さ。またアーサルにでも行ってみるさ」
ワイアットはそれだけ言うと背中越しに手を振って去って行った。
「なんだよアイツ……」
「ここでの情報はこれ以上望めないわね……」
アルフィスとナナリーは手詰まりだった。
この手紙が唯一の手がかりと言っていいほどだったが、ワイアットの言う通りなんの意味もない手紙だとすれば振り出しに戻ってしまった。
2人がこれからのことを悩んでいるとアンジェラが口を開いた。
「あ、あのー」
「ん?どうした?」
「何か情報が必要なのであれば、ガウロ様に会ってみてはどうでしょうか?」
「ガウロ?……ってアゲハの親父か?」
「はい。聖騎士団宿舎にいらっしゃいます。お話しすれば何かわかるかもしれません」
アンジェラの提案にアルフィスとナナリーは顔を見合わせて同時に頷く。
そして2人は聖騎士団宿舎に向かった。
________________
聖騎士団宿舎の地下にはいくつか牢獄があった。
そこに1人だけ捕らえられていたのがガウロ・クローバルだった。
アルフィスとナナリーの2人は二つ名持ちということで面会を許された。
二人は一つの鉄格子の前にいた。
ガウロは奥にあるベッドに座りアルフィスを睨んでいる。
ガウロは初老でオールバックの黒髪、布の軽い服を着ていた。
恐らくこの世界の囚人服なのだろうとアルフィスは思った。
「なんだ?今度の相手は魔法使いのガキか?」
「あんたがアゲハの親父か。あんまり似てねぇな」
その言葉にガウロは少し驚いた。
だがすぐに鋭い眼光をアルフィスへ向ける。
「お前、アゲハを知ってるのか?」
「そりゃ。学校ではバディだったからな」
「なに?……そうか、お前がアルフィス・ハートルか。アゲハの手紙で読んだよ。この世界では珍しい前衛の魔法使い。こんなに華奢だったとは……」
アルフィスはその言葉にムッとした。
水の国ではヴェインに体のことで馬鹿にされた気がする。
アルフィスはどうも大貴族というのは気に食わなかった。
「そんなことはどうでもいいんだよ。あんたカゲヤマがどこに行ったのかわかってるんじゃないか?」
「……またその質問か。聞き飽きたぞ。私は知らん」
「じゃあ質問を変えるが、カゲヤマリュウイチは転生者だな?」
「転生者?あの聖騎士団長が勝手にこじつけた話しだろ?転生術なぞおとぎ話しだろ」
ガウロは鼻で笑う。
その言葉を聞いたアルフィスは頭を掻いた。
そしてため息混じりに口を開く。
「ここだけの話だが俺も転生者だ。カゲヤマと同じ日本という国から来た」
ガウロの衝撃は凄まじいものだった。
アルフィスの後ろにいたナナリーも驚いている。
「ま、まさか……ありえない……」
「いや、本当さ。俺は10年ほど前にアルフィス・ハートルという少年に呼び出されてここにいる。アゲハが使ってる剣は俺の国の剣で"刀"と言う。剣技は居合い術。流派は知らねぇけど」
ガウロはアルフィスの話を聞いて言葉を失っていた。
まさか転生された人間が他にもいたのに驚いた。
「俺はカゲヤマの行き先を知りたいだけだ。まぁ何のために呼び出したのか、目的もわかりゃ嬉しいが」
アルフィスの言葉にガウロは天井を見ながら深呼吸した。
そしてガウロは静かに語り始めた。
「……この国は何年もの間、聖騎士、魔法使い共に人材不足だった。だからこの国の宝具を完全に使いこなせる最強のシックス・ホルダーを生み出すために呼び出した」
「最強のシックス・ホルダーだと?」
「そうだ。そして水の国のように、最強のシックス・ホルダーが率いる最強の戦闘部隊を作ることこそ私の目的であり、夢だった」
「なるほど。確かにリヴォルグのところは精鋭揃いだったな」
「……だが、無理だった」
アルフィスはその言葉に首を傾げた。
後ろで聞いていたナナリーも疑問に思った。
宝具と転生者の組み合わせなら可能性はある。
「どういうことだ?」
「魔剣レフト・ウィングのデメリットだ」
「ああ、宝具にはデメリットがあるんだったな……」
「私がそのデメリットを知ったのは、宝具を手に入れてからだった。まさかこれほどのデメリットだとは思わなかったんだ……」
「なんなんだ?そのデメリットって?」
「魔剣レフト・ウィングのデメリットは……」
ガウロが語った魔剣レフト・ウィングのデメリットを聞いたアルフィスは絶句した。
それはリヴォルグ・ローズガーデンが持つ魔竜眼の杖クイーンズ・クライとはまた違った、凄まじいデメリットだった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
ブックマーク・評価、宜しくお願いします。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる