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風の国編

ガウロ・グローバル

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風の国 中央レイメル 
クローバル家 屋敷門前


アルフィスはカゲヤマが残した手紙を読んだ。
その手紙の内容にナナリー、ワイアット、アンジェラは首を傾げた。
それは何の変哲もない内容で、特に変わったところは無かった。

アルフィスは手紙を裏返したり、入っていた封筒の中をのぞいたりしたが特に何もない。

「ただのアゲハへの別れの手紙に見えるが……」

「……アルフィス、もう一回読んでくれ」

ワイアットの言葉にアルフィスは頷き、もう一度その手紙を読んだ。

「何かわかったのか?」

「……」

ワイアットは黙って考え事をしている。
その姿をアルフィスとナナリー、アンジェラの三人が見守る。

「わからん。まぁ何の意味もない手紙だろう。俺は行くぜ……あばよ」

そう言ってワイアットはアルフィス達に背を向けて歩き出した。
それを見た3人は唖然としている。

「はぁ?行くってどこにだよ!」

「情報収集さ。またアーサルにでも行ってみるさ」

ワイアットはそれだけ言うと背中越しに手を振って去って行った。

「なんだよアイツ……」

「ここでの情報はこれ以上望めないわね……」

アルフィスとナナリーは手詰まりだった。
この手紙が唯一の手がかりと言っていいほどだったが、ワイアットの言う通りなんの意味もない手紙だとすれば振り出しに戻ってしまった。

2人がこれからのことを悩んでいるとアンジェラが口を開いた。

「あ、あのー」

「ん?どうした?」

「何か情報が必要なのであれば、ガウロ様に会ってみてはどうでしょうか?」

「ガウロ?……ってアゲハの親父か?」

「はい。聖騎士団宿舎にいらっしゃいます。お話しすれば何かわかるかもしれません」

アンジェラの提案にアルフィスとナナリーは顔を見合わせて同時に頷く。
そして2人は聖騎士団宿舎に向かった。


________________



聖騎士団宿舎の地下にはいくつか牢獄があった。
そこに1人だけ捕らえられていたのがガウロ・クローバルだった。
アルフィスとナナリーの2人は二つ名持ちということで面会を許された。

二人は一つの鉄格子の前にいた。
ガウロは奥にあるベッドに座りアルフィスを睨んでいる。
ガウロは初老でオールバックの黒髪、布の軽い服を着ていた。
恐らくこの世界の囚人服なのだろうとアルフィスは思った。

「なんだ?今度の相手は魔法使いのガキか?」

「あんたがアゲハの親父か。あんまり似てねぇな」

その言葉にガウロは少し驚いた。
だがすぐに鋭い眼光をアルフィスへ向ける。

「お前、アゲハを知ってるのか?」

「そりゃ。学校ではバディだったからな」

「なに?……そうか、お前がアルフィス・ハートルか。アゲハの手紙で読んだよ。この世界では珍しい前衛の魔法使い。こんなに華奢だったとは……」

アルフィスはその言葉にムッとした。
水の国ではヴェインに体のことで馬鹿にされた気がする。
アルフィスはどうも大貴族というのは気に食わなかった。

「そんなことはどうでもいいんだよ。あんたカゲヤマがどこに行ったのかわかってるんじゃないか?」

「……またその質問か。聞き飽きたぞ。私は知らん」

「じゃあ質問を変えるが、カゲヤマリュウイチは転生者だな?」

「転生者?あの聖騎士団長が勝手にこじつけた話しだろ?転生術なぞおとぎ話しだろ」

ガウロは鼻で笑う。
その言葉を聞いたアルフィスは頭を掻いた。
そしてため息混じりに口を開く。

「ここだけの話だが俺も転生者だ。カゲヤマと同じ日本という国から来た」

ガウロの衝撃は凄まじいものだった。
アルフィスの後ろにいたナナリーも驚いている。

「ま、まさか……ありえない……」

「いや、本当さ。俺は10年ほど前にアルフィス・ハートルという少年に呼び出されてここにいる。アゲハが使ってる剣は俺の国の剣で"刀"と言う。剣技は居合い術。流派は知らねぇけど」

ガウロはアルフィスの話を聞いて言葉を失っていた。
まさか転生された人間が他にもいたのに驚いた。

「俺はカゲヤマの行き先を知りたいだけだ。まぁ何のために呼び出したのか、目的もわかりゃ嬉しいが」

アルフィスの言葉にガウロは天井を見ながら深呼吸した。
そしてガウロは静かに語り始めた。

「……この国は何年もの間、聖騎士、魔法使い共に人材不足だった。だからこの国の宝具を完全に使いこなせる最強のシックス・ホルダーを生み出すために呼び出した」

「最強のシックス・ホルダーだと?」

「そうだ。そして水の国のように、最強のシックス・ホルダーが率いる最強の戦闘部隊を作ることこそ私の目的であり、夢だった」

「なるほど。確かにリヴォルグのところは精鋭揃いだったな」

「……だが、無理だった」

アルフィスはその言葉に首を傾げた。
後ろで聞いていたナナリーも疑問に思った。
宝具と転生者の組み合わせなら可能性はある。

「どういうことだ?」

「魔剣レフト・ウィングのデメリットだ」

「ああ、宝具にはデメリットがあるんだったな……」

「私がそのデメリットを知ったのは、宝具を手に入れてからだった。まさかこれほどのデメリットだとは思わなかったんだ……」

「なんなんだ?そのデメリットって?」

「魔剣レフト・ウィングのデメリットは……」

ガウロが語った魔剣レフト・ウィングのデメリットを聞いたアルフィスは絶句した。

それはリヴォルグ・ローズガーデンが持つ魔竜眼の杖クイーンズ・クライとはまた違った、凄まじいデメリットだった。
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