14 / 31
13 想い
しおりを挟む
五月の終わり、初夏の気配が混じり始めた空気の中、朝倉涼は決意を固めていた。
(ちゃんと伝えよう。もう、あやふやなままじゃいられない)
思えば、文化祭の“彼氏役”から始まった二人の関係。たしかに近づいた。でも、それが友情なのか、恋なのか――涼自身、わからなくなっていた。
けれど、真田蒼がやってきて、美咲が笑顔を向けるたび、涼の心は揺れた。
(それはきっと、恋なんだ)
⸻
放課後、校門前で美咲を待つ。今日は一緒に帰る約束をしていた。
数分後、制服の袖を揺らしながら美咲がやってきた。
「お待たせ、涼」
「うん、行こっか」
歩き出してから、涼の鼓動は速くなっていた。何度もタイミングを見計らうが、言葉が出ない。
公園の前を通り過ぎる頃、ようやく彼は口を開いた。
「美咲、ちょっと寄り道していい?」
「…うん、いいよ」
二人は小さな公園のベンチに腰を下ろした。夕焼けが街を包み込む。
風が涼しく吹いたあと、涼は静かに口を開いた。
「俺さ、美咲のことが好きだ。ずっと前から。最初は頼られてうれしかった。それが、いつの間にか“ただの友達”じゃなくなってた」
美咲は目を見開いたまま、何も言わなかった。
沈黙が続いたが、涼はまっすぐ見つめていた。
「…真田のことも、わかってる。あいつ、いいやつだし、かっこいい。でも、俺は――負けたくない」
ふと、美咲が小さく笑った。
「…知ってたよ。涼がそう思ってること」
「え?」
「私も、涼のこと…好きだよ。ずっと、でも怖かった。“男子一人”で頑張ってる涼に、私が寄りかかるのはダメなんじゃないかって…」
言葉を重ねるうちに、美咲の目にはうっすら涙がにじんでいた。
「でも、涼がいてくれたから、私も強くなれた。…だから、ちゃんと言うね。私も、涼が好き」
その瞬間、涼の中の不安や揺れは、すっと消えた。
何も言わず、二人はただ、微笑み合った。
⸻
帰り道、いつもと同じ道が、少しだけ輝いて見えた。
「じゃあ、これからは“演技”じゃなくて…本当の彼氏彼女ってことでいいの?」
「うん、“本物”で」
照れくさそうに笑う美咲の横顔を見ながら、涼は心から思った。
(この学校でひとりだった時間も、全部無駄じゃなかった)
(ちゃんと伝えよう。もう、あやふやなままじゃいられない)
思えば、文化祭の“彼氏役”から始まった二人の関係。たしかに近づいた。でも、それが友情なのか、恋なのか――涼自身、わからなくなっていた。
けれど、真田蒼がやってきて、美咲が笑顔を向けるたび、涼の心は揺れた。
(それはきっと、恋なんだ)
⸻
放課後、校門前で美咲を待つ。今日は一緒に帰る約束をしていた。
数分後、制服の袖を揺らしながら美咲がやってきた。
「お待たせ、涼」
「うん、行こっか」
歩き出してから、涼の鼓動は速くなっていた。何度もタイミングを見計らうが、言葉が出ない。
公園の前を通り過ぎる頃、ようやく彼は口を開いた。
「美咲、ちょっと寄り道していい?」
「…うん、いいよ」
二人は小さな公園のベンチに腰を下ろした。夕焼けが街を包み込む。
風が涼しく吹いたあと、涼は静かに口を開いた。
「俺さ、美咲のことが好きだ。ずっと前から。最初は頼られてうれしかった。それが、いつの間にか“ただの友達”じゃなくなってた」
美咲は目を見開いたまま、何も言わなかった。
沈黙が続いたが、涼はまっすぐ見つめていた。
「…真田のことも、わかってる。あいつ、いいやつだし、かっこいい。でも、俺は――負けたくない」
ふと、美咲が小さく笑った。
「…知ってたよ。涼がそう思ってること」
「え?」
「私も、涼のこと…好きだよ。ずっと、でも怖かった。“男子一人”で頑張ってる涼に、私が寄りかかるのはダメなんじゃないかって…」
言葉を重ねるうちに、美咲の目にはうっすら涙がにじんでいた。
「でも、涼がいてくれたから、私も強くなれた。…だから、ちゃんと言うね。私も、涼が好き」
その瞬間、涼の中の不安や揺れは、すっと消えた。
何も言わず、二人はただ、微笑み合った。
⸻
帰り道、いつもと同じ道が、少しだけ輝いて見えた。
「じゃあ、これからは“演技”じゃなくて…本当の彼氏彼女ってことでいいの?」
「うん、“本物”で」
照れくさそうに笑う美咲の横顔を見ながら、涼は心から思った。
(この学校でひとりだった時間も、全部無駄じゃなかった)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる