共学の学校にもしも男子が1人しかいなくなったら?

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13 想い

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五月の終わり、初夏の気配が混じり始めた空気の中、朝倉涼は決意を固めていた。

(ちゃんと伝えよう。もう、あやふやなままじゃいられない)

思えば、文化祭の“彼氏役”から始まった二人の関係。たしかに近づいた。でも、それが友情なのか、恋なのか――涼自身、わからなくなっていた。

けれど、真田蒼がやってきて、美咲が笑顔を向けるたび、涼の心は揺れた。

(それはきっと、恋なんだ)



放課後、校門前で美咲を待つ。今日は一緒に帰る約束をしていた。

数分後、制服の袖を揺らしながら美咲がやってきた。

「お待たせ、涼」

「うん、行こっか」

歩き出してから、涼の鼓動は速くなっていた。何度もタイミングを見計らうが、言葉が出ない。

公園の前を通り過ぎる頃、ようやく彼は口を開いた。

「美咲、ちょっと寄り道していい?」

「…うん、いいよ」

二人は小さな公園のベンチに腰を下ろした。夕焼けが街を包み込む。

風が涼しく吹いたあと、涼は静かに口を開いた。

「俺さ、美咲のことが好きだ。ずっと前から。最初は頼られてうれしかった。それが、いつの間にか“ただの友達”じゃなくなってた」

美咲は目を見開いたまま、何も言わなかった。

沈黙が続いたが、涼はまっすぐ見つめていた。

「…真田のことも、わかってる。あいつ、いいやつだし、かっこいい。でも、俺は――負けたくない」

ふと、美咲が小さく笑った。

「…知ってたよ。涼がそう思ってること」

「え?」

「私も、涼のこと…好きだよ。ずっと、でも怖かった。“男子一人”で頑張ってる涼に、私が寄りかかるのはダメなんじゃないかって…」

言葉を重ねるうちに、美咲の目にはうっすら涙がにじんでいた。

「でも、涼がいてくれたから、私も強くなれた。…だから、ちゃんと言うね。私も、涼が好き」

その瞬間、涼の中の不安や揺れは、すっと消えた。

何も言わず、二人はただ、微笑み合った。



帰り道、いつもと同じ道が、少しだけ輝いて見えた。

「じゃあ、これからは“演技”じゃなくて…本当の彼氏彼女ってことでいいの?」

「うん、“本物”で」

照れくさそうに笑う美咲の横顔を見ながら、涼は心から思った。

(この学校でひとりだった時間も、全部無駄じゃなかった)
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