共学の学校にもしも男子が1人しかいなくなったら?

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14 二人の関係、三人の距離

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月曜日の朝、登校するとすぐに美咲が涼の隣にやってきた。いつもより少しだけ距離が近くて、それが嬉しくもあり、少しだけ照れくさくもある。

クラスメイトたちはすぐに気づいた。

「ねえねえ、朝倉くんと七瀬さんって…もしかして、付き合ってる?」

「まじで?え、あのふたりが!? ちょっと前まで演技だったじゃん?」

「いやいや、あれガチだったんじゃん!」

休み時間にはちょっとした“発表会”のような騒がしさになったが、美咲は笑って受け流していた。涼も、顔を少し赤らめながらも堂々としていた。

(なんか…こんな普通のことが、すごく幸せに思える)

だが、そんな中でただ一人、静かに教科書をめくる男がいた。

――真田蒼。



放課後、涼は真田を校舎裏に呼び出した。

「…すまん。言うの、遅くなって」

「気にすんな。お前ら、似合ってたしな」

真田は、そう言って小さく笑った。

「でも正直、悔しかったよ。俺、今まで誰にも気持ちなんて話したことなかった。美咲と話すことで、自分が少しだけ普通になれた気がしてたんだ」

その言葉には、どこか自嘲めいた響きがあった。

涼は黙って聞いていた。だが、次の瞬間、思いきって言った。

「じゃあ…これからも友達でいてくれるか?」

真田は少しだけ目を見開いた後、ため息をついた。

「…はぁ、仕方ねぇな。そっちがその気なら、俺もまだ負ける気ねぇし」

「おい、もう勝負ついただろ!」

「そうでもねぇぞ?気が変わるかもしれないし」

二人は、笑い合った。

その笑いは、心の距離をまた少し近づける音のように、温かかった。



翌日、美咲が涼にぽつりと言った。

「真田くん、ちゃんと話せたみたいだね」

「うん。意外と、すっきりした」

「なんか、三人で話せるといいなって思ってたの。これからも、友達としてね」

涼は美咲の手を握った。

「俺も、そう思う。恋人も、友達も、大切にしたいから」

これまでの不安や孤独を思えば、今ある関係の尊さが胸に染みた。

そうして涼は――男子が一人しかいない教室で、ひとりぼっちではなくなっていた。
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