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「それじゃあ、彰久の優勝を祝って……かんぱーい!!」
「「「かんぱーい!!」」」
武道館近くのファミレスの中。千里の音頭で、彰久たちはグラスをぶつけ合った。
「いやー、まさか優勝するとは思わなかったぜ!」
「そりゃあ彰久だもん!優勝くらいやってくれるよ!」
「ま……まあな。このくらい余裕だよ!」
雄介と正志に口々に褒められて、彰久は顔を赤くしている。
「でも、これで彰久君もプロ格闘家になれるのかー。なんか感慨深いなー」
「まあ、本当にスカウトが来るのかはまだわかりませんけどね」
「いやいや、なにを言ってるんだ。大丈夫に決まっているだろう!」
真理と正義がしみじみと語る。小百合は微笑んでその光景を見ている。
(なんかこういうのいいな……)
友達や家族と笑い合って、みんなで優勝を祝う。彰久にとっては初めての経験というわけでもないが、それでもいつかは失われてしまう光景でもあるのかと思うと心が痛んでくる。
なにしろ、来年には真理がいなくなってしまうのだから。そう考えると心にちくりと痛みを覚えるが、彰久はそれに気が付かないふりをした。
「さて、そろそろお腹空いてきましたし、注文しますか?」
「そうだな。俺も腹減ったわ……」
「俺はとりあえず肉食いたい気分だなー」
「お祝いなんだし、ケーキ頼みたいなー」
「あー、いいな。さすがに今日は疲れたし、甘いものが欲しい気分だ」
「甘いものもいいけど、ちゃんとごはんもたべなさいよ?」
「わかってるって、真理姉!」
和気あいあいと騒ぐ若者たちを見つめながら、正義はその光景を微笑ましそうに見ている。自分にもこういう時代があったのだと、そう思い出して懐かしんでいるのだろう。
「正義さんはどれにしますか?」
「ん?私か。そうだなあ……」
彰久が正義にメニューを渡す。正義はそれを受け取って眺めると、
「やっぱり肉かな……。若い連中に合わせておくべきなんだろうが、やはり歳を取ると油ものは胃に来るからな」
「ははは。正義さんだってまだまだ若いじゃないですか」
「そう言ってもらえるのは嬉しいんだけどね。体の不調というものはどうしようもないものだ。無理をして怪我をしたり、体を壊すよりは素直に年長者の意見を聞いておきなさい」
「はい、わかりました」
「うむ。それでいい」
彰久の言葉に満足げにうなずく正義。彼はそれから店員を呼ぶと、全員分の料理を注文した。
「ねえ、正義さん」
「なんだい?」
「俺は正義さんのこと好きですよ」
突然の彰久の言葉に、正義は目を丸くする。
「俺はまだ若いからわからないけど、正義さんがいままでの人生を一生懸命に生きてきたことはわかります。だって、あれだけ強いんですからね。だから……人生の中で失ってしまったものがどれだけのものか、なんとなくはわかるつもりです。でも、正義さんには俺がいる。千里や真理姉だっている。俺の親父や母さんだって。だから……」
彰久の頭に正義の手が置かれる。そしてぐりぐりと頭を撫で回される。
「私はそんな顔をしていたかね?」
「ええ……。俺たちがうらやましい、っていう顔をしてましたよ?」
「まったく。君にはかなわないな。確かにそうだね。君たちの若さからくるエネルギーはうらやましく思うよ。友達と騒いでいる姿もな。今を精一杯に生きる。それは年を取れば失われる輝きだ。うらやましくないといえばうそになるね」
「でも……」「うん?」
「俺は、自分の道を精一杯生きてきた正義さんみたいな人って、格好いいと思います」
「ははは。そんなことを言われたら自分を語りたくなってしまうよ」
「はい!一杯聞かせてください!正義さんの人生を!」
彰久の真摯な言葉に、正義は顔をほころばせた。
「君は本当に人が好きなんだな」
「ええ、大好きですよ!人の話を聞くのって!……人がどうやって生きてきたのか、成功体験も失敗した経験も。なにもしなかったことでさえも。その積み重ねが人を作っていくんです。嫌いなわけがないじゃないですか」
正義にはわかっていた。彰久がこうしてセンチメンタルに浸っているのは、十郎太の件があるからだということを。自分が優勝することで十郎太の夢を邪魔してしまった。それを後悔する気持ちがないわけではない。いや、だからこそ本気で勝ちに行ったのだということを。
(もしもあそこで彰吾の奴が来なかったらあきらめていたんだろうな)
自分が応援されていることが分かったからこそ、前を向いて歩くことを決められたのだろう。それこそが若さゆえに何も考えずに前を向いて歩いていける、馬鹿正直な部分なのだろう。
できれば生涯忘れないでほしい輝きだとは思うが、それは無理なはずだ。年を取れば疲れを感じやすくなるし、立ち止まれば周囲の状況に押しつぶされそうになる時もある。
俺たちがいるから。彰久の言葉は、そんな疲れやすい正義の心を温めてくれる。
だからこそ。
「それなら、今は君の仲間たちとおしゃべりをしなさい。その積み重ねが将来の君を作り上げていくんだからな」
「……ですね」
彰久はそう言うと、みんなに混ざりにいった。
(さて、私も負けていられないな)
正義も立ち上がり、みんなの輪の中に入っていく。
それからしばらく、ファミレスでは笑い声と楽しげな雰囲気に包まれるのだった。
「「「かんぱーい!!」」」
武道館近くのファミレスの中。千里の音頭で、彰久たちはグラスをぶつけ合った。
「いやー、まさか優勝するとは思わなかったぜ!」
「そりゃあ彰久だもん!優勝くらいやってくれるよ!」
「ま……まあな。このくらい余裕だよ!」
雄介と正志に口々に褒められて、彰久は顔を赤くしている。
「でも、これで彰久君もプロ格闘家になれるのかー。なんか感慨深いなー」
「まあ、本当にスカウトが来るのかはまだわかりませんけどね」
「いやいや、なにを言ってるんだ。大丈夫に決まっているだろう!」
真理と正義がしみじみと語る。小百合は微笑んでその光景を見ている。
(なんかこういうのいいな……)
友達や家族と笑い合って、みんなで優勝を祝う。彰久にとっては初めての経験というわけでもないが、それでもいつかは失われてしまう光景でもあるのかと思うと心が痛んでくる。
なにしろ、来年には真理がいなくなってしまうのだから。そう考えると心にちくりと痛みを覚えるが、彰久はそれに気が付かないふりをした。
「さて、そろそろお腹空いてきましたし、注文しますか?」
「そうだな。俺も腹減ったわ……」
「俺はとりあえず肉食いたい気分だなー」
「お祝いなんだし、ケーキ頼みたいなー」
「あー、いいな。さすがに今日は疲れたし、甘いものが欲しい気分だ」
「甘いものもいいけど、ちゃんとごはんもたべなさいよ?」
「わかってるって、真理姉!」
和気あいあいと騒ぐ若者たちを見つめながら、正義はその光景を微笑ましそうに見ている。自分にもこういう時代があったのだと、そう思い出して懐かしんでいるのだろう。
「正義さんはどれにしますか?」
「ん?私か。そうだなあ……」
彰久が正義にメニューを渡す。正義はそれを受け取って眺めると、
「やっぱり肉かな……。若い連中に合わせておくべきなんだろうが、やはり歳を取ると油ものは胃に来るからな」
「ははは。正義さんだってまだまだ若いじゃないですか」
「そう言ってもらえるのは嬉しいんだけどね。体の不調というものはどうしようもないものだ。無理をして怪我をしたり、体を壊すよりは素直に年長者の意見を聞いておきなさい」
「はい、わかりました」
「うむ。それでいい」
彰久の言葉に満足げにうなずく正義。彼はそれから店員を呼ぶと、全員分の料理を注文した。
「ねえ、正義さん」
「なんだい?」
「俺は正義さんのこと好きですよ」
突然の彰久の言葉に、正義は目を丸くする。
「俺はまだ若いからわからないけど、正義さんがいままでの人生を一生懸命に生きてきたことはわかります。だって、あれだけ強いんですからね。だから……人生の中で失ってしまったものがどれだけのものか、なんとなくはわかるつもりです。でも、正義さんには俺がいる。千里や真理姉だっている。俺の親父や母さんだって。だから……」
彰久の頭に正義の手が置かれる。そしてぐりぐりと頭を撫で回される。
「私はそんな顔をしていたかね?」
「ええ……。俺たちがうらやましい、っていう顔をしてましたよ?」
「まったく。君にはかなわないな。確かにそうだね。君たちの若さからくるエネルギーはうらやましく思うよ。友達と騒いでいる姿もな。今を精一杯に生きる。それは年を取れば失われる輝きだ。うらやましくないといえばうそになるね」
「でも……」「うん?」
「俺は、自分の道を精一杯生きてきた正義さんみたいな人って、格好いいと思います」
「ははは。そんなことを言われたら自分を語りたくなってしまうよ」
「はい!一杯聞かせてください!正義さんの人生を!」
彰久の真摯な言葉に、正義は顔をほころばせた。
「君は本当に人が好きなんだな」
「ええ、大好きですよ!人の話を聞くのって!……人がどうやって生きてきたのか、成功体験も失敗した経験も。なにもしなかったことでさえも。その積み重ねが人を作っていくんです。嫌いなわけがないじゃないですか」
正義にはわかっていた。彰久がこうしてセンチメンタルに浸っているのは、十郎太の件があるからだということを。自分が優勝することで十郎太の夢を邪魔してしまった。それを後悔する気持ちがないわけではない。いや、だからこそ本気で勝ちに行ったのだということを。
(もしもあそこで彰吾の奴が来なかったらあきらめていたんだろうな)
自分が応援されていることが分かったからこそ、前を向いて歩くことを決められたのだろう。それこそが若さゆえに何も考えずに前を向いて歩いていける、馬鹿正直な部分なのだろう。
できれば生涯忘れないでほしい輝きだとは思うが、それは無理なはずだ。年を取れば疲れを感じやすくなるし、立ち止まれば周囲の状況に押しつぶされそうになる時もある。
俺たちがいるから。彰久の言葉は、そんな疲れやすい正義の心を温めてくれる。
だからこそ。
「それなら、今は君の仲間たちとおしゃべりをしなさい。その積み重ねが将来の君を作り上げていくんだからな」
「……ですね」
彰久はそう言うと、みんなに混ざりにいった。
(さて、私も負けていられないな)
正義も立ち上がり、みんなの輪の中に入っていく。
それからしばらく、ファミレスでは笑い声と楽しげな雰囲気に包まれるのだった。
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