47 / 58
47
しおりを挟む
その後、皆でウォータースライダーに行ったり、波のプールで遊んだりと満喫するうちにあっという間に時間が過ぎていった。そして夕方になると、全員が疲れた様子でそろそろ帰るかと話になり。帰りの電車に揺られているうちに正史がうとうとし始めた。
「正志、眠いか?」
そう聞かれて正志はハッとすると、慌てて首を振る。
「ううん、全然大丈夫だよ!」
(ヤバい……今寝ちゃったら彰久に笑われちゃうよ……!)
そんな思いとは裏腹に、瞼がどんどん重くなってくる。
「眠いなら寝てていいぞ。ほら、おいで」
そして正志は、いつの間にか彰久に膝枕されていた。
(ああ……やっぱり寝ちゃいそうだよ……)
そう思いつつも、正志の意識はだんだんと遠のいていったのだった。
その様子を見ていた小百合がくすり、と笑みをこぼす。
「なんか彰久君、お父さんみたい」
「おいおい……。俺はこんな大きな子供がいるようには見えないだろ」
正志を膝枕しながら彰久が苦笑いすると、雄介と千里も笑い声を上げる。
「確かに!彰久って大人っぽいから、お父さんに見えなくもないわね」
千里がからかうようにそんなことを言うと、正志はくすりと笑った。
「確かに、こんなお父さんだったら楽しそうかも……」
「え?正志?」
その言葉に彰久が驚きの声を上げる中、雄介が「そうだな」と賛同する。
「彰久だったら、安心して任せられるな!」
「おいおい、何言ってるんだよ……」
そんなやりとりをしているうちに、いつの間にか正志はすやすやと寝息を立て始めていたのだった。
「ふぁー……。俺もなんだか眠い……。なあ小百合、俺にも膝枕してくれよ」
雄介がそう言うと、小百合は顔を赤くしながら慌てふためく。
「ええ!?雄介君、何言ってるの!?」
そんな小百合の反応に雄介は首を傾げた。
「ん?だって、正志が彰久に膝枕して貰ってるから、俺も小百合に膝枕してもらおうと思ったんだが……駄目か?」
「さすがにここじゃ恥ずかしいよ……」
小百合がそう言うと、雄介は残念そうにうなだれる。
「そっかー。じゃあ、また今度頼むな!」
「う、うん……考えとくね……」
そんな会話をしているうちに、今度は雄介がウトウトし始めた。そして程なくして寝息を立て始めたのを見て小百合と千里は顔を見合わせると、くすりと笑う。「みんな疲れてるんだね」
そんな小百合の言葉に、千里は頷いた。
「そうだね。今日は思いっきり遊べたもんね!」
そんな会話をしながら、二人は幸せそうに眠る雄介と彰久を見つめるのだった。
電車の窓から夕日が差し込んでいた。電車は長い川に差し掛かり、川を跨ぐ橋を渡っている。そしてその水面に夕日が反射してキラキラと輝いた。
その輝きが妙に心に残ったのは、きっと今日という日が特別だったからだろう……そんなことを考えていた彰久の耳に届いたのは、小百合の声だ。
「すぅー……」
(え?もしかして寝ちゃったのか?)
そう思いながら彰久は小百合を見る。小百合と雄介はお互いにもたれ掛かって、気持ちよさそうに寝息を立てていた。
(ま、さすがに疲れるよな……)
そう思いながら、彰久は今日の出来事を振り返る。
(まさかこんなに一日が長く感じるとはな。夏休みっていつもあっという間に過ぎていくけど、今日は本当に色々なことがあった気がする)
そんな彰久の耳に聞こえきた声があった。
「彰久」
その声はもちろん千里のものだ。どうやら彼女も寝ていたらしく、眠そうな声で彰久に話しかけてくる。
「なんだ?千里」
そう返事を返すと、千里は欠伸混じりに言った。
「んー……なんか幸せだなって思ってただけ」
(幸せ……?)
その言葉が何を指しているのかわからなかったが、すぐにその答えを知ることになる。
「ねえ、彰久。彰久ってうちの道場継ぐんだよね?」
「え?ああ。そのつもりだけど」
「でもそうすると、彰久の実家の酒屋さんを継げなくなっちゃうじゃん。だからもしかしたら、格闘家になるのか迷ってるんじゃない?」
「それは……」
図星だった。本当は、まだ決断できずにいたのだ。もし家を継ぐのなら、格闘技なんてやめておいた方がいいだろう。そうすれば家族に迷惑を掛けることもないし、道場だって継がなくても良くなるのだから……
「やっぱりね」
そんな彰久の考えを見透かしたように千里はそう呟くと、続けた。
「ねえ、彰久。彰久は一人で頑張り過ぎだと思うの。なんでも一人で背負い込んで。あたしのことだって……」
「千里……?」
そこで、千里の言葉は途切れてしまった。千里は何か言いかけたまま黙り込んでしまう。
「千里、もしかして迷惑だったか?」
千里の言うとおり、彰久は一人で突っ走りすぎるきらいがあった。だから、千里を困らせてしまったのではないかと思ったのである。しかし――
「ううん、違うの!そうじゃなくて……その……」
千里は慌てたように否定をすると、彰久に向き直って言った。
「あたしは……もっと頼って欲しいって思ってる」
「千里……。大丈夫だよ、十分頼りにしてるから」
「違うの!そういうんじゃなくて、その……。あたしが彰久のおうちを継ぐ、って手もあると思うの!」
「え……?」
その言葉に、思わず驚きの声を漏らす。
(千里が俺の実家を継ぐ……?)
そんな彰久の考えを見透かしたように、千里は続けた。
「そう!うちのお父さんとお姉ちゃんも『好きなことやっていいよ』って言ってくれると思うし!それに、ほら!彰久がうちの道場を継ぐなら、あたしが彰久の酒屋を継いだら平等かなー、って!」
そう言ってから、千里は恥ずかしそうに顔を赤らめた。
そんな突拍子もないことを言われて呆気に取られていると、千里が慌てた様子で続けた。
「あ、えっと……もちろん今すぐってわけじゃないよ!まだ大学もあるし、お互い将来のことも考えなきゃいけないし!でも、もしそうするなら……あたしと一緒に頑張ってくれる?」
その言葉が、素直に嬉しかった。自分のことをこんなにも思ってくれている。それがたまらなく嬉しかったのだ。
だから――
「ああ、そうだな」
そんな返事をしていたのだった。
その後しばらく沈黙が続いた後――千里は不意に口を開いた。
「……彰久の鈍感」
「え?なんで?」
彰久が聞き返すと、千里は拗ねたような表情を浮かべる。そして――
「もう、わかってるくせに……」
そんな呟きを漏らした。しかしその言葉は電車の音にかき消されて、彰久の耳に届くことはなかった。
「正志、眠いか?」
そう聞かれて正志はハッとすると、慌てて首を振る。
「ううん、全然大丈夫だよ!」
(ヤバい……今寝ちゃったら彰久に笑われちゃうよ……!)
そんな思いとは裏腹に、瞼がどんどん重くなってくる。
「眠いなら寝てていいぞ。ほら、おいで」
そして正志は、いつの間にか彰久に膝枕されていた。
(ああ……やっぱり寝ちゃいそうだよ……)
そう思いつつも、正志の意識はだんだんと遠のいていったのだった。
その様子を見ていた小百合がくすり、と笑みをこぼす。
「なんか彰久君、お父さんみたい」
「おいおい……。俺はこんな大きな子供がいるようには見えないだろ」
正志を膝枕しながら彰久が苦笑いすると、雄介と千里も笑い声を上げる。
「確かに!彰久って大人っぽいから、お父さんに見えなくもないわね」
千里がからかうようにそんなことを言うと、正志はくすりと笑った。
「確かに、こんなお父さんだったら楽しそうかも……」
「え?正志?」
その言葉に彰久が驚きの声を上げる中、雄介が「そうだな」と賛同する。
「彰久だったら、安心して任せられるな!」
「おいおい、何言ってるんだよ……」
そんなやりとりをしているうちに、いつの間にか正志はすやすやと寝息を立て始めていたのだった。
「ふぁー……。俺もなんだか眠い……。なあ小百合、俺にも膝枕してくれよ」
雄介がそう言うと、小百合は顔を赤くしながら慌てふためく。
「ええ!?雄介君、何言ってるの!?」
そんな小百合の反応に雄介は首を傾げた。
「ん?だって、正志が彰久に膝枕して貰ってるから、俺も小百合に膝枕してもらおうと思ったんだが……駄目か?」
「さすがにここじゃ恥ずかしいよ……」
小百合がそう言うと、雄介は残念そうにうなだれる。
「そっかー。じゃあ、また今度頼むな!」
「う、うん……考えとくね……」
そんな会話をしているうちに、今度は雄介がウトウトし始めた。そして程なくして寝息を立て始めたのを見て小百合と千里は顔を見合わせると、くすりと笑う。「みんな疲れてるんだね」
そんな小百合の言葉に、千里は頷いた。
「そうだね。今日は思いっきり遊べたもんね!」
そんな会話をしながら、二人は幸せそうに眠る雄介と彰久を見つめるのだった。
電車の窓から夕日が差し込んでいた。電車は長い川に差し掛かり、川を跨ぐ橋を渡っている。そしてその水面に夕日が反射してキラキラと輝いた。
その輝きが妙に心に残ったのは、きっと今日という日が特別だったからだろう……そんなことを考えていた彰久の耳に届いたのは、小百合の声だ。
「すぅー……」
(え?もしかして寝ちゃったのか?)
そう思いながら彰久は小百合を見る。小百合と雄介はお互いにもたれ掛かって、気持ちよさそうに寝息を立てていた。
(ま、さすがに疲れるよな……)
そう思いながら、彰久は今日の出来事を振り返る。
(まさかこんなに一日が長く感じるとはな。夏休みっていつもあっという間に過ぎていくけど、今日は本当に色々なことがあった気がする)
そんな彰久の耳に聞こえきた声があった。
「彰久」
その声はもちろん千里のものだ。どうやら彼女も寝ていたらしく、眠そうな声で彰久に話しかけてくる。
「なんだ?千里」
そう返事を返すと、千里は欠伸混じりに言った。
「んー……なんか幸せだなって思ってただけ」
(幸せ……?)
その言葉が何を指しているのかわからなかったが、すぐにその答えを知ることになる。
「ねえ、彰久。彰久ってうちの道場継ぐんだよね?」
「え?ああ。そのつもりだけど」
「でもそうすると、彰久の実家の酒屋さんを継げなくなっちゃうじゃん。だからもしかしたら、格闘家になるのか迷ってるんじゃない?」
「それは……」
図星だった。本当は、まだ決断できずにいたのだ。もし家を継ぐのなら、格闘技なんてやめておいた方がいいだろう。そうすれば家族に迷惑を掛けることもないし、道場だって継がなくても良くなるのだから……
「やっぱりね」
そんな彰久の考えを見透かしたように千里はそう呟くと、続けた。
「ねえ、彰久。彰久は一人で頑張り過ぎだと思うの。なんでも一人で背負い込んで。あたしのことだって……」
「千里……?」
そこで、千里の言葉は途切れてしまった。千里は何か言いかけたまま黙り込んでしまう。
「千里、もしかして迷惑だったか?」
千里の言うとおり、彰久は一人で突っ走りすぎるきらいがあった。だから、千里を困らせてしまったのではないかと思ったのである。しかし――
「ううん、違うの!そうじゃなくて……その……」
千里は慌てたように否定をすると、彰久に向き直って言った。
「あたしは……もっと頼って欲しいって思ってる」
「千里……。大丈夫だよ、十分頼りにしてるから」
「違うの!そういうんじゃなくて、その……。あたしが彰久のおうちを継ぐ、って手もあると思うの!」
「え……?」
その言葉に、思わず驚きの声を漏らす。
(千里が俺の実家を継ぐ……?)
そんな彰久の考えを見透かしたように、千里は続けた。
「そう!うちのお父さんとお姉ちゃんも『好きなことやっていいよ』って言ってくれると思うし!それに、ほら!彰久がうちの道場を継ぐなら、あたしが彰久の酒屋を継いだら平等かなー、って!」
そう言ってから、千里は恥ずかしそうに顔を赤らめた。
そんな突拍子もないことを言われて呆気に取られていると、千里が慌てた様子で続けた。
「あ、えっと……もちろん今すぐってわけじゃないよ!まだ大学もあるし、お互い将来のことも考えなきゃいけないし!でも、もしそうするなら……あたしと一緒に頑張ってくれる?」
その言葉が、素直に嬉しかった。自分のことをこんなにも思ってくれている。それがたまらなく嬉しかったのだ。
だから――
「ああ、そうだな」
そんな返事をしていたのだった。
その後しばらく沈黙が続いた後――千里は不意に口を開いた。
「……彰久の鈍感」
「え?なんで?」
彰久が聞き返すと、千里は拗ねたような表情を浮かべる。そして――
「もう、わかってるくせに……」
そんな呟きを漏らした。しかしその言葉は電車の音にかき消されて、彰久の耳に届くことはなかった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる