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三人が祭りの会場に着いたのは午後六時を過ごし過ぎた頃だった。
「入口辺りで雄介と小百合ちゃんと合流の予定だっよな?」
彰久がそう尋ねる。雄介は小百合の家で浴衣を着せてもらう予定だ。二人は恋人同士なのだから、少しでも二人の時間を作りたいという雄介の願いにより、小百合の家で合流することになっていた。
「うん、そのはずだけど……まだ来てないみたいだね」
千里の言う通り、待ち合わせをしているはずの二人がいなかった。何かあったのだろうかと心配していると。
「おーい!お待たせ!」
背後からそんな声が聞こえて来たため振り返ると、そこには浴衣姿の雄介と小百合がいた。
「よかった、二人とも来たな」
「うん、そうだね……」
そんな会話をしながら祭りの会場へと入っていく五人。そしてあたりを見渡した正志はふとあることに気がついた。それは!
(ああ……やっぱりこういうところはカップルが多いんだな)
夏祭りということで当然といえば当然だが、どのカップルも男女で浴衣を着てデートをしている。
そんな中、正志の目に飛び込んできたのは手を繋いで歩く一組のカップルの姿だった。
(羨ましいな……)
恋人がいる、というのは正志にとっては正直憧れだった。しかし、自分は女の子に告白する勇気なんてない。そこへいくと雄介は見事に小百合を手に入れたし、彰久は千里と付かず離れずの関係を築いている。
自分には、到底真似できないことだった。
そんなことを考えていると、ふいに雄介に声を掛けられてしまった。
「正志君、どうしたんだ?」
どうやら自分はぼーっとしていたようだ。そんな自分を心配してくれたのだろう。慌てて返事をする。
「な、なんでもないよ!それより、早くお祭りに行こっか!」
「そうだな。あ、小百合。はぐれないように手繋ご?」
雄介はそんなことを言いながら、小百合に手を差し出してくる。
「もう……雄介は甘えん坊さんなんだから」
そんな小百合の言葉とは裏腹に、彼女は嬉しそうにその手を握った。そんな二人を見ていると、なんだか胸がモヤモヤしてくるのを感じるのだった。
そんなことを考えている間にもお祭りは始まっていたようで、辺りは人で溢れかえっていた。
「それじゃあ千里、俺たちも行くか!」
「うん、そうだね!」
そんな二人を見て、正志はなんだか羨ましく感じてしまった。
「ねえ、彰久」
「どうした?」
そんな正志の呼びかけに、彼は不思議そうに首を傾げた。
「えっと……その……」
しかしいざ言おうとなると緊張してしまって上手く言葉が出ない。そんな正志の様子に気がついたのか、
「正志も手を繋ぎたいのか?」
彰久はそんな冗談を言ってくる。正志が慌てて否定しようとすると、雄介がからかうように口を挟んできた。
「あはは、正志は彰久と手を繋ぐの嫌なのか?」
その言葉に、思わずムッとする正志だったが――
(雄介も煽らないで!)
そんな思いを口に出せるはずもなく……結局何も言えなかったのだった。そして雄介はそんな正志の様子を見て悪戯っぽく微笑む。
「冗談だって!な、正志?」
そんな言葉に答えることもできずに俯くだけしかできなかったのである。
(ああもう、最悪だ……)
なんであんな意地を張ってしまったのだろうか?自分はただ、彰久と手を繋ぎたいだけなのに……そんな後悔の念に苛まれていると、不意に声が聞こえて来た。
「正志、大丈夫か?そんなに手を繋ぐの嫌だったか?」
彰久は心配そうな表情を浮かべながら、そう問いかけてくる。そんな彼の顔を見ていたらなんだか自分が子供っぽく思えてしまい恥ずかしくなってしまう。
(ああもうっ!僕の馬鹿……)
そんな自分を誤魔化すかのように大きく首を横に振ったのだった。
「そんなことないよ!ほら、彰久!手を繋ごう!」
そう言って彰久に向かって手を出す。すると彼は、嬉しそうな表情になって正志の手を取ってくれたのだった。
(やった!)
心の中でガッツポーズをする正志だった。
「いくら正志でも、彰久の隣は譲らないからね!」
そんな正志に向かって、千里がそう言ってくる。正志はそんな彼女を挑発するかのように、余裕の表情で言葉を返した。
「別に千里に許してもらわなくてもいいんだけど」
その言葉に彼女の表情が一瞬曇るのが分かったけれど、そんなことを気にしている暇はなかった。彰久と手を繫いでいたからだ。
(ああ……幸せだな)
そんなことを考えながら、祭りの中に溶け込んでいった。
「入口辺りで雄介と小百合ちゃんと合流の予定だっよな?」
彰久がそう尋ねる。雄介は小百合の家で浴衣を着せてもらう予定だ。二人は恋人同士なのだから、少しでも二人の時間を作りたいという雄介の願いにより、小百合の家で合流することになっていた。
「うん、そのはずだけど……まだ来てないみたいだね」
千里の言う通り、待ち合わせをしているはずの二人がいなかった。何かあったのだろうかと心配していると。
「おーい!お待たせ!」
背後からそんな声が聞こえて来たため振り返ると、そこには浴衣姿の雄介と小百合がいた。
「よかった、二人とも来たな」
「うん、そうだね……」
そんな会話をしながら祭りの会場へと入っていく五人。そしてあたりを見渡した正志はふとあることに気がついた。それは!
(ああ……やっぱりこういうところはカップルが多いんだな)
夏祭りということで当然といえば当然だが、どのカップルも男女で浴衣を着てデートをしている。
そんな中、正志の目に飛び込んできたのは手を繋いで歩く一組のカップルの姿だった。
(羨ましいな……)
恋人がいる、というのは正志にとっては正直憧れだった。しかし、自分は女の子に告白する勇気なんてない。そこへいくと雄介は見事に小百合を手に入れたし、彰久は千里と付かず離れずの関係を築いている。
自分には、到底真似できないことだった。
そんなことを考えていると、ふいに雄介に声を掛けられてしまった。
「正志君、どうしたんだ?」
どうやら自分はぼーっとしていたようだ。そんな自分を心配してくれたのだろう。慌てて返事をする。
「な、なんでもないよ!それより、早くお祭りに行こっか!」
「そうだな。あ、小百合。はぐれないように手繋ご?」
雄介はそんなことを言いながら、小百合に手を差し出してくる。
「もう……雄介は甘えん坊さんなんだから」
そんな小百合の言葉とは裏腹に、彼女は嬉しそうにその手を握った。そんな二人を見ていると、なんだか胸がモヤモヤしてくるのを感じるのだった。
そんなことを考えている間にもお祭りは始まっていたようで、辺りは人で溢れかえっていた。
「それじゃあ千里、俺たちも行くか!」
「うん、そうだね!」
そんな二人を見て、正志はなんだか羨ましく感じてしまった。
「ねえ、彰久」
「どうした?」
そんな正志の呼びかけに、彼は不思議そうに首を傾げた。
「えっと……その……」
しかしいざ言おうとなると緊張してしまって上手く言葉が出ない。そんな正志の様子に気がついたのか、
「正志も手を繋ぎたいのか?」
彰久はそんな冗談を言ってくる。正志が慌てて否定しようとすると、雄介がからかうように口を挟んできた。
「あはは、正志は彰久と手を繋ぐの嫌なのか?」
その言葉に、思わずムッとする正志だったが――
(雄介も煽らないで!)
そんな思いを口に出せるはずもなく……結局何も言えなかったのだった。そして雄介はそんな正志の様子を見て悪戯っぽく微笑む。
「冗談だって!な、正志?」
そんな言葉に答えることもできずに俯くだけしかできなかったのである。
(ああもう、最悪だ……)
なんであんな意地を張ってしまったのだろうか?自分はただ、彰久と手を繋ぎたいだけなのに……そんな後悔の念に苛まれていると、不意に声が聞こえて来た。
「正志、大丈夫か?そんなに手を繋ぐの嫌だったか?」
彰久は心配そうな表情を浮かべながら、そう問いかけてくる。そんな彼の顔を見ていたらなんだか自分が子供っぽく思えてしまい恥ずかしくなってしまう。
(ああもうっ!僕の馬鹿……)
そんな自分を誤魔化すかのように大きく首を横に振ったのだった。
「そんなことないよ!ほら、彰久!手を繋ごう!」
そう言って彰久に向かって手を出す。すると彼は、嬉しそうな表情になって正志の手を取ってくれたのだった。
(やった!)
心の中でガッツポーズをする正志だった。
「いくら正志でも、彰久の隣は譲らないからね!」
そんな正志に向かって、千里がそう言ってくる。正志はそんな彼女を挑発するかのように、余裕の表情で言葉を返した。
「別に千里に許してもらわなくてもいいんだけど」
その言葉に彼女の表情が一瞬曇るのが分かったけれど、そんなことを気にしている暇はなかった。彰久と手を繫いでいたからだ。
(ああ……幸せだな)
そんなことを考えながら、祭りの中に溶け込んでいった。
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