魔族に愛される私(※聖女)

諫山杏心

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1話 異世界転移、そして※

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 私、美作 愛梨(みまさか あいり)は目の前の光景に言葉も出せず、ただただ座り込んだままでいた。

「おお、召喚は成功だ!」
「なんと美しい…! これが異界の聖女!」
「これでロウナ王国も安泰だ!」

 ローブを着て、フードを深く被った男性達が口々にそう言っている。誰も彼が私を称賛するような事を言っている事はわかる。
 プチパニックに陥っている私は、ここがどこであるか、今がどういう状況なのかを知るために口を開く。

「あ、あの! …貴方達は、誰ですか? そして、ここはどこなんですか!?」
「おお、聖女様。説明もなく、申し訳ありません。…ここはロウナ王国の王城の一室。貴女はこの国を救う聖女として、我々魔術師の手によって異界から召喚されました。美しい聖女よ、貴女のお名前を教えてはいただけませんか?」
「あ、愛梨…。美作、愛梨です…」

 目の前の男達は私の目の前で跪いた。そしてその先頭にいる男が、その瞳を真っ直ぐに私に向ける。その瞳は、どこか情熱的だ。

「アイリ様。名前まで、なんと美しい。…ここはアイリ様の世界とは違う世界です。ここに貴女を引き摺り出したのは、私達だ。この責任は、我々が取ります。貴女の衣食住、全て私達が賄います。…だからどうか、我々に力をお与えください」

 そう言ってその男は私に手を差し出してきた。…どうしよう。
 この人達が本当の事を言っているとしたら、ここは私がいた所とは違う世界。家族や友達が一人もいない、孤独な世界だ。
 そんな世界で、私はきっと一人で生きていけないだろう。…この人達に、頼るしかないんだ。

 私は差し出された手に自身の手を乗せた。
 その日から私はロウナ王国の聖女となった。







 ロウナ王国での世界はとても快適だった。
 
 私には聖なる力があった様で、その力で病気の人や怪我人を癒していく。それ以外の時間は、監視と護衛は付いているがほぼほぼ自由だ。お昼寝をしようが、おやつを食べようが、読書をしていようが。私を咎める人は一人もいない。

 そして、この世界に来て分かったことはもう一つ。それは…。

「本当にアイリ様は美しいですね…。まるで、神話に出てくる女神様の様ですわ」

 私の髪を梳きながら、私に付けられた侍女──マーサが熱い視線で私を見つめ、呟く。
 そう、私の地味~な顔が、この世界だととんでもなく美しく見えるらしい。

 瞼が厚めの一重、低く小さな鼻、薄い唇。それが私の顔付きだ。
 それはこの世界の人からしたら「女神レベル」で美しいとか。…マジか、この世界。

 この世界の女性の美しさは薄い顔つきと、ナイスバディな事らしい。私は顔つきは薄いが、体の方は…自分で言うのもなんだが、かなりいい体をしている。
 ちなみに男の人は顔の薄さに加えてチビデブな事が条件らしい。なんだこの世界。

 マーサの呟きに「ありがとう」と微笑めば、彼女はその顔を真っ赤にさせる。

「アイリ様付きの侍女になれて、幸せてございますわ」

 真っ赤な顔のまま、マーサは呟く。その視線は、先ほどよりも熱いもので。

「あ、ありがとう…」

 私はちょっと怖くなった。他人からこの様な視線を向けられた事など、元の世界では全くなかったのである。しかも、女性からだなんて余計にだ。

 なんとかマーサの視線に耐えながら外出の支度を終えた私は、逃げ出す様に自室を後にした。
 マーサが残念そうな顔をしていたのは気にしないでおこう。







「うーん、いい天気!」

 私は背伸びをして、外の空気を思いっきり吸い込む。ここはロウナ王国を囲む森の中で、魔物などが一切入ってこない安全な場所だ。

「アイリ様、あまり気を抜かれませんよう。最近は魔人らしき物も目撃されています。もう少し、緊張感を持って…」
「あー、はいはい。分かりましたよぉ」

 私に小言を言ってくるのは私の護衛であるグレイだ。短い茶髪のそこそこのイケメンだ。…つまり、この世界ではそこそこのブサイクなんだけど。
 それにしても、魔人か。あんまり聞きなれない言葉だ。私はグレイに視線を向けた。

「最近よく聞くけど、魔人ってなあに?」
「アイリ様の世界にはいませんでしたか? …魔人というのはその名の通り、魔に取り憑かれた元人間の事です。姿は人間に近いのですが、頭には魔族の象徴であるツノを生やしています。元人間と言っても、奴らは魔王の支配下になったため、人間に敵対心を持っている。…言わば、我々人間にとっての敵であり、滅ぶべき存在なのです」

 声を低くしてそう説明してくれたグレイの瞳は、なんだか憎悪に満ちていて少し怖い。…それほどまでに、魔人というのは人間にとって脅威であって憎むべき相手なんだろう。
 「そうなんだ」と相槌を打つと、彼はその表情を柔らかくさせた。

「アイリ様には聖なる力もありますし、その、俺も付いていますから。…もし魔人なんかに襲われたとしても、この俺が守ってみせます、きっと」

 その言葉に、私は足を止めてグレイを見上げた。その顔は、どこか照れているように少しだけ赤い。
 まさか、グレイは私の事を…。そう思った、その時だった。

「魔人なんか、ねぇ」

 背後から、ねっとりとした低い声がした。
 驚いて振り向けば、そこには赤い髪をした背の高い美しい男がいた。…その頭には、ヤギの様な二本のツノが生えている。

「魔人…!」

 呟いたグレイが、剣を抜いて構える。それを見た目の前の魔人は、まるでその動作を馬鹿にする様に鼻で笑った。

「そんなんで勝てると思われてるなんて、悲しいねぇ」

 そう言うと魔人は手で何かを振り払う様な動作をした。すると、そこから凄まじい風が巻き起こり、ものすごい速さでグレイを吹き飛ばす。

「がっ…!」
「グレイ!!」

 私は叫んで吹き飛ばされた彼に駆け寄ろうとした。しかし、それは叶わなかった。

「あれ。君、噂の聖女様? うわぁ、すんごいかわいいね、君」

 低い声が耳元で聞こえた。魔人はその長い腕を私のお腹に回し、まるで抱きしめる様に後ろから身の動きを封じてきたのだ。
 クスリと笑った魔人は、そのままお腹に回していない方の手で私の腕を撫でる。その手つきはとてもいやらしいもので、私は思わずぶるりと震える。

「や…やめて」
「えー何をぉ?」

 わざとらしい声でその魔人は答える。もちろん、その手の動きは止まらない。
 腕を撫でていたその手は、いつの間にか全身を撫でていた。
 腕、腹、背中、首、…そしてついに、その手は私の胸の谷間でピタリと止まる。

「ここ触ったら、君はどんな反応を見せてくれるのかな?」
「そ、そこは、だめ」
「ふふ、ダメじゃない癖に」
 
 そう言って、耳にふうっと息を吹きかけてくる彼に思わず「あっ」と声が漏れた。
 その声を聞いて気分が良くなったのだろう、彼は微笑むと私の胸の頂を優しく摘んだ。

「あっ!」

 私の口からは嬌声が溢れる。森で知らない人(正しくは魔人だが)に愛撫されて感じるだなんて…。私、こんなに淫乱だったっけ?
 そんな事を思って入れば、魔人はその長い指の腹を使って、私の乳首を摩ってきた。それは優しく、まるで恋人にする様な優しく甘い動き。

「あ、や、だめぇ!」
「ふふ、ダメじゃないでしょ? こんな気持ち良さそうな声出して。…ああ、かわいい」

 甘く耳元で囁く彼は、時に優しく、時に強く引っ張る様にと指を動かしていく。乳首から伝わるその刺激に、私はただただ喘ぐ事しかできない。体の力も抜けていき、私の大事な所も濡れていくのが分かる。とても、恥ずかしい。
 そんな私の様子に気づいたのだろう、彼はその指の動きを止めた。

「ああ、そろそろこっちも触ってあげなくちゃね」

 そう言って手を伸ばした先は…私の股間だ。私はハッとしたが、もう遅かった。

「ダメ、そこはっ…! あ、ああん!!」
「おっと」

 クチュリ。下着の中に差し込まれた指は、私のクリトリスに触れていた。触れられているだけなのに、強い刺激が身体中を駆け巡っていく。身体中から力が抜け、私は思わず倒れ込みそうになる。
 それを後ろから抱きしめていた魔人が引き留めた。そして、彼は座り込むと、その上に私を乗せた。…彼の股間の固くて熱いモノがお尻に当たっているのが分かる。お腹がキュンと切なくなった。

「あーもー、かわいいなぁ。気持ち良すぎちゃったねぇ? …けど、大丈夫。もっともっと、気持ちよくさせてあげるからねぇ」

 それは、大丈夫ではないのでは。そう冷静に突っ込む自分は次の瞬間吹き飛んだ。
 彼はその指をクリトリスに合わせると、前後左右に素早く動かし始めた。ニチャニチャといやらしい音と私の嬌声が森に響いた。

「やっだめっ! だめなのぉ!」
「はいはい、気持ちいいねぇ。…もっともっと、気持ちよくなろうねぇ」

 そう言ってニヤリと笑う魔人は、私のクリトリスを触っていない方の手で自身のズボンのジッパーを下ろし始めた。




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