夢にまで見たあの世界へ ~女性にしか魔法が使えない世界で、女神の力を借りて使えるようになった少年の物語~

ゆめびと

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43話「動く木」

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 ミーチェがシロを撫でていると、シロが立ち上がり滝つぼを見だした。

「ん?どうかしたのか?」

 ミーチェも見ると、アシュリーがこりらへと駆けてきていた。
 急な斜面を器用に跳ね上がりながら上ってくるアシュリー。

「お、お主も身体能力がよいのだな……」

 上り終え、膝に手をつき息を荒くしているアシュリーに、ミーチェがすこし引き気味に話しかけた。

「え?なんのことですか?」

 何事もないかのように答えるアシュリー。
 ミーチェは、苦笑いを浮かべながら言った。

「い、いや。なんでもないのだ、忘れてくれ」

 頭を押さえながら話すミーチェに対し、首を傾げるアシュリー。
 だが、シロが見ていたのはアシュリーではなかったようだ。
 アシュリーに見向きもせず、ニケを見つめているようだった。

「ニケに、ついていかなくて良かったのか?」

 ミーチェは、シロの背中を撫でながら問いかけた。
 シロは尻尾を振りながら、ニケの背中を見守っている。

「ふむ。アシュリー、なぜ駆けてきたのだ?」 

 ミーチェは、立ち上がりながらアシュリーに問いかけた。
 アシュリーは頬を少し赤くしながら答える。

「ニ、ニケさんに……その、裸体を見られたといいますか……」

 俯きながら喋るアシュリーに、ミーチェは頭を掻きながら申し訳なさそうに言った。

「あー。私が、ニケに行けと言ったのだが……間が悪かったな、すまない」

 そう言うと、頭を下げるミーチェ。

「い、いえいえ。少し、恥ずかしかっただけですから。大丈夫です」

 アシュリーも、へこへこと頭を下げた。

「さて、あの馬鹿弟子が出てくるまで待つか」

 ミーチェは、川に足をつけながらアシュリーを横へと誘った。
 川辺に座ると、ミーチェはアシュリーと話し耽るのだった。
 少ししてからシロが、唸り始めた。

「どうかしたのか?」

 ミーチェは、立ち上がるとシロの傍へと向かった。
 アシュリーもそれに続いた。
 シロの見る方向を見るが、裸のニケ以外ほかに異変はないように『見えた』。

「なにかがおかしい」

「わ、私にはなにもわかりません」

「いや、先ほどと何かが違う」

 ニケは、服を着るとこちらへと歩き出した。
 それと同時に、ミーチェは嫌な予感がしていた。

「なにかが……くる」

 ミーチェは何かを察したのだろうか、険しい顔をしていた。
 アシュリーは、ミーチェの顔を伺うが目線はニケの方向へと釘付けだ。

「動き出した!」

 ミーチェが、言うと同時にニケの後ろの木が動き出した。

「あれは、『トレント』ですね……」

 『トレント』――木の形をした魔物。木に化け、実を実らせ動物を誘き寄せて食らう。もちろん人間もだ。
 大きさは、6mほどだろうか。動きは鈍いが、ゆっくりとニケに近づいている。

「ニケ!気をつけろ!」

 ミーチェは叫んだ。

 ――振り向いたらそこには、大きな木が『いた』。
 すると、ミーチェが気をつけろっと叫んでるのが聞こえた。

「な、なんだこいつ」

 少しずつだが、動いているようだ。
 ニケは、距離を置く。だが、後ろは急な斜面。急いで上っている間に迫られるだろ。

「覚悟決めろってかッ!!!」

 左手に魔力を送り込む。
 左手が光を帯びたところで、右手を合わせる。
 イメージを構築、硬く、大きく、切れ味のいい……。
 手を離し始めると、そこにはいかつい大剣が握られていた。

「思ってたより、軽いのがすごいよなぁ」

 両手で握りながら、木に対して構えた。
 すると目の前に影が下りてきた。

 ――ニケが、練成するのを見ていたミーチェ、アシュリー、シロ。
 すぐさまシロが駆け下り始めた。

「わ、私も行ってきますッ!」

 そういうとアシュリーは飛び降りていった。

「この高さを、飛び降りるのは無理だな」

 飛び降りていった、アシュリーを見ながらミーチェはつぶやいた。

「しかたない、後衛に専念するしかないのか」

 ミーチェは、詠唱を始めた。

「″水よ我が元へ来たれ、その力を持って敵を打ち倒せ″ウォーターハンマー!」

 トレントの真上に、魔方陣が展開され水の塊が生成されはじめた。

 ――目の前にいたのは、シロだった。

「シロ、きてくれたのか!」

「あ、あの、私もいます」

 後ろを見ると、アシュリーもいた。

「その大剣、私に貸してくれませんか?」

 アシュリーは、トレントを見ながら横へ歩いてきた。
 トレントは、人が増えたことに驚いているのか動かなくなっていた。

「あ、あぁ」

 歯切れ悪く、ニケは大剣をアシュリーに渡した。
 トレントの真上に魔方陣が展開された。

「師匠の魔法か」

 即座に左手に魔力を送り込む。
 左手が光を帯びはじめたところで、右手を合わせる。
 イメージを構築、大きく、切れ味がいい……レイン兄のあの斧を。
 手を離し始める。
 レインの持っていた斧そっくりの……いや、瓜二つの斧が練成された。
 ニケはそれを握り締めた。

「レイン兄……力借りるぜッ!!!」

 トレントに、水の塊が叩きつけられたと同時に、ニケとアシュリー、シロは駆け出した。
 今は亡き者に対しての気持ちの現われか、斧はまばゆい光を帯び始めた……。
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