戦国時代の武士、VRゲームで食堂を開く

オイシイオコメ

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第36話 マイマイ

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 虎一郎は再びガチャのジャンル選択画面を表示させると、あごに手を当てながらつぶいた。

「ううむ。何にしようか……」

 虎一郎はガチャのジャンルを見て困っていると茜衣あいが虎一郎にアドバイスした。

「コイっち、ガチャで迷ったらランダムだよ! 何が当たるか分からないから面白いよ」

「ほぅ。何が当たるか分からないとは面白い! ぜひ引いてみよう」

 虎一郎はさっそく「ランダム」を選択して「ガチャを引く」ボタンを押した。

 テッテレー
『回復薬S(回復アイテム)★2』

 テッテレー
『圧力鍋(調理器具)★3』

 テッテレー
『電動キックボード(ライト・モービル)★2』

「……。よく分からぬ物ばかり出てきたが……。数字は『鬼コロッシー』よりも良くなっておるな」

 虎一郎はそうつぶやくと、続けて「ガチャを引く」ボタンを押した。

 テーテレ、テテテ、テーテレ、テテテッテレー!!
『★5大当たり!!』

「おお! なんと、大当たりが!!」

「え、コイちゃん大当たり?」
「すげー!」
「すごぃ」

「はっはっは! これは初陣ういじん大将首たいしょうくびを取ったようなものだな!」

 虎一郎は急いで「大当たりの中身を見る」ボタンを押した。

『1泊2日ワイハー島リゾートホテル宿泊チケット10名様まで(チケット)★5』

「んん?」

 虎一郎が不思議そうな表情をしていると愛芽めめが尋ねた。

「コイちゃん、何が当たったの?」

「わいはー島りぞーと……」

「え!! まさか、ワイハー島リゾートホテル宿泊チケット!?」

「う、うむ。そのようだ。10名様までと書いてある」

 それを聞いたみんなは全員驚いた。

「やば! それ超レアだよ!」
「コイっち、あたし連れてって!」
「ぁたしも行きたぃ」
「こ、虎一郎さん、凄いですね……」

「そ……、そんなに凄いのであるのか」

 すると茜衣あいが答えた。

「ワイハー島は今月できたばっかりの超セレブ・リゾート地で、みんなのあこがれなんだよ!」

「おぉ、それならばみなで行こう。10名まで行けるようだ」

「まじで!? やったー!」

 茜衣あいは飛び上がって喜んだ。

 するとその時、海が笑顔で立ち上がって虎一郎に話した。

「虎一郎さん、ガチャを喜んでもらえているみたいで良かったです。ぼくは、そろそろ仕事に戻りますね。枝豆ごちそうさまでした。絶品でした」

「いやいや、喜んで頂けたようで良かった。ぜひまた来てくだされ」

「ありがとうございます。ではまたお邪魔します」

「海殿、ライラ殿にも宜しくお伝え願いたい」

「はい、わかりました」

 海は頭を下げた虎一郎に頭を下げると、みんなに手を振って家を出ていった。

「ではまた!」

「うむ」
「じゃあね、海おじさん」
「またね」
「お疲れ様です海おじさん」

 みんなで海を見送ると虎一郎はテーブルについて再びガチャを引き始めた。

「よし、あと10回であるな」

 テッテレー
『モコモコ・パジャマ(防具)★2』

 テッテレー
鎖帷子くさりかたびら(特殊防具)★4』

 愛芽めめは次々とガチャを引いていく虎一郎を見て、心配そうに尋ねた。

「コイちゃん、あんまりランダム・ガチャ引くとお酒のガチャ引けなくなっちゃうんじゃない?」

「お、おぉ、そうであった! すっかり忘れておった」

 虎一郎は一旦アイテム欄を戻すと、再びアイテム欄からガチャ・チケットを選択した。

 そしてまた「酒」のジャンルを選ぶと気合を入れた。

「よし! 次こそはビール10箱! いざ!!」

 虎一郎は気合を入れると連続してガチャを引き始めた。

 テッテレー!!
『鬼コロッシー(日本酒)★1』

 テッテレー!!
『いいこっちワンカップ(焼酎)★2』

 テッテレー!!
『イグラァ・生ビール(ビール)1箱 ★4』

「おおっ! ビールが1箱出たぞ!」

「えっ、すごいコイちゃん! それは当たりだね」

「はっはっは、運が向いてきたようであるな! よぅし!」

 テッテレー!!
『鬼コロッシー(日本酒)★1』

 テッテレー!!
『鬼コロッシー、24個パック(日本酒)★3』

 テッテレー!!
『鬼コロッシー(日本酒)★1』

 テッテレー!!
『鬼コロッシー(日本酒)★1』

「お、おのれ、鬼どもめ!」

 虎一郎は期待に反して鬼コロッシーばかり引当て、ガチャは最後の1回となってしまった。

「ふぅぅううう」

 虎一郎は深呼吸をすると、姿勢を正してつぶいた。

「これで最後の1回であるか……」

 虎一郎は静かに息を吸うと手を震わせながら、静かに「ガチャを引く」ボタンを押した。

 すると宝箱が揺れるアニメーションが映し出され、しばらくすると宝箱のふたが空いた。

 ガチャッ

「頼む!」

 テッテレー!!
『鬼コロッシー(日本酒)★1』

「ぐはっ!」

 虎一郎はその場に両手をついてガックリとうなだれた。


 コンコン

 するとその時、扉を叩く音がした。

 虎一郎はガックリしていたので愛芽めめが扉を開けると、麻衣歌まいかが立っていた。

「あ、麻衣歌まいかさん! もしかして……」

「ええ、高橋さん。お昼休みですわ」

「早っ。あっと言う間に時間が経つなぁ。ははは」

 愛芽めめ麻衣歌まいかと話していると、茜衣あい菜七海ななみがやってきて麻衣歌まいかに挨拶をした。

「こんちわ」
「こんにちゎ」

「あら、こんにちは初めまして。わたくしは鶴井田麻衣歌つるいだまいかですわ。うふふ」

「あたし茜衣あい
「ぁたし菜七海ななみ

 すると茜衣あいは、ガックリしている虎一郎を指さしながら麻衣歌まいかに尋ねた。

「お姉さん、コイっちのお友達? 昨日も来たよね」

「え、ええ」

「じゃあ、お姉さんもワイハー島に行こうよ!」

「ワイハー島って、この間できたリゾート地の?」

 それを聞いた愛芽めめ麻衣歌まいかに説明した。

「さっきコイちゃんがガチャでワイハー島の宿泊チケット当てて、みんなで行こうって……」

「えっ、ええっ!? わたくしも参加してよろしいのかしら??」

 するとまだ少し元気無い虎一郎が麻衣歌まいかに言った。

麻衣歌まいか殿、10名まで行けるようなのだ」

「う、うれしいですわ、虎一郎様! もちろん、お供いたしますわ!」

「うむ……」

 虎一郎が返事をすると、愛芽めめはレポートを麻衣歌まいかに送信して言った。

麻衣歌まいかさん、じゃあお昼休みに行ってきますね」

「ええ。いってらっしゃいませ」

 すると茜衣あい菜七海ななみも虎一郎と麻衣歌まいかに手を振りながら言った。

「じゃ、あたしたちもご飯食べに帰るね。じゃあね、コイっち、マイマイ!」

「またね、コイっち、マイマイ」

 シュゥゥウウウ……

 3人は手を振りながら消えていった。

 麻衣歌まいかは3人を見送ると小さく呟いた。

「マイマイって……、わたくしの事かしら……」

 すると虎一郎はテーブルについて残った枝豆をつまみながら麻衣歌まいかに言った。

麻衣歌まいか殿、豆を煮たのだが食べるか」

「こ、虎一郎様がお作りに!? はい、もちろんでございます!」

 麻衣歌まいかは急いでテーブルにつくと、嬉しそうに枝豆を1つつまみ上げた。
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