戦国時代の武士、VRゲームで食堂を開く

オイシイオコメ

文字の大きさ
60 / 89

第60話 パチパチパチパチ!

しおりを挟む
 ―― 塔の最上階 ――

「熊じぃ、茂じぃ!」

 茜衣あいはエレベーターから飛び降りると、一番乗りで大熊笹と茂雄のところへ走っていった。

「おぉ、茜衣あいちゃん」
茜衣あいちゃん、いらっしゃい」

 茜衣あいは嬉しそうに大熊笹と茂雄の間に座ると、アカネも2人に挨拶をした。

「熊じぃ、茂じぃ、久しぶり!」

「はっはっは、アカネさん」
「お久しぶりですね」

「今日は茜香里あかりと面白いお客さんを連れてきたよ」

 すると茜香里あかりとカオリは2人に挨拶をした。

「お久しぶりです、茜香里あかりです」
「初めまして、カオリです。今日はよろしくお願いいたします」

 それを見た大熊笹は、嬉しそうに立ち上がった。

「今日は本格的な稽古ができそうですね。よろしくお願いいたします。はっはっは」

 大熊笹はそう言うと、笑顔でおびを締め直した。


 ―― 虎一郎の城 ――

 ダイゴは虎一郎との相撲で負けてしまったが、コスギがダイゴを気に入り、なぜかダイゴは忍者になってコスギの仲間となった。

 ダイゴは風呂上がりにサイズの合わないピッチピチの忍者装束をもらって身につけると心配そうにコスギに尋ねた。

「ぼ、ぼく……、ほんとに仲間になって……いいのか?」

「あぁ、お主の筋肉は美しい! それだけで仲間だ!!」

「ぼくの筋肉が?」

「Yes! 筋肉仲間だ! はっはっは!」

「は、ははは。仲間! うれしい!」

 パチパチパチパチパチパチ!

 すると忍者たちから拍手が起こった。

「ダイゴさん、今日から宜しく!」
「ダイゴさん仲間!」
「一緒に楽しくやろうよ」
「分からないことは聞いてね」

 ダイゴは忍者たちの言葉を聞くと目に涙を浮かべながら忍者たちに言った。

「ぼく……、仲間が欲しかったんだ。うれしい」

 すると忍者の1人がダイゴの前に出た。

「ダイゴさん。おれたちはみんな落ちこぼれでさ。コスギさんは、そんなおれたちを連れて新しいチームを作ってくれた最高のリーダーなんだ」

「そ、そうなのか?」

「うん。だから、おれたちはコスギさんを信頼してる。だからコスギさんがダイゴさんを認めたなら仲間だ」

「仲間……。ありがとう。ぼく、みんなと一緒に頑張る」

 パチパチパチパチパチパチ!

 再び拍手が起こると、ダイゴは満面の笑みを浮かべて頭を下げた。

 
 みんなはしばらく1階の大部屋で楽しくお喋りしてると、早くとこにつく虎一郎はみんなに挨拶をして天守閣へ上がっていった。

「では、私は休むとしよう。また明日の朝、稽古けいこで会おう」

「「はいっ!」」

 タッ タッ タッ タッ……

 そして少しつと、2階にいた麻衣歌まいかが戦闘準備を整えて階段を下りてきた。

 トッ トッ トッ トッ タン。

「みなさま。わたくしはレアな小麦『北のほなみ』を手に入れるためにバリードレ地区へ向かいます。バリードレまで攻略している忍者はいらっしゃいますか」

 すると、コスギとダイゴとサクラ、そして数人の忍者が手を上げた。

 それを見た麻衣歌まいかは腕を組みながら尋ねた。

「では『北のほなみ』を守るボス・ツキノワグマと戦う自信のある方は?」

 すると、ほとんどの忍者たちは手を下げて動揺した。

「ボス・ツキノワグマって……」
「あぁ、やばい熊だぞ」
「勝てる気がしない……」
「ぼくも」

 結局、最終的にコスギとダイゴ、そしてサクラだけが残った。

 麻衣歌まいかは腕を組むと、少しだけ真剣な表情になってコスギたちに言った。

「ちょっと少ないですけれども行きましょう。アーボンさんのメッセージによると『北のほなみ』があれば最高のメニューができるとの事ですわ」

「「おお~」」

「虎一郎様がお休みの間に手に入れておきますわよ!」

「「はいっ!」」

 こうして麻衣歌まいかたちはバリードレ地区にある『北のほなみ』を手に入れに出発した。


 その頃、大熊笹のいる塔ではアカネとカオリが練習試合を始めようとしていた。

 大熊笹は一礼したアカネとカオリを見ると試合開始を宣言した。

「では、始めましょうか……。試合開始!」

「やぁー!」
「やーー!!」

 バッ!

 2人はお互いに道着をつかみ合って組み合うと、お互いの手の内が見えてしまい、硬直してしまった。

「さっすがカオリちゃん」

 アカネはそう言ってニヤリと笑うと足を一歩後ろに引いた。

 カオリはそのすきを見逃さずに前へ押すと、アカネはその力を利用して体をひるがえし、背負投に持ち込んだ。

 ババッ!

「くっ!」

 カオリは驚いて横に逃れると、アカネは見透かしたように背負投げを止めてカオリを一気に押し込んだ。

 ドンッ!

「えっ!?」

 カオリは予想外の動きに体のバランスを崩すと、アカネは素早く大外刈おおそとがりを繰り出した。

 バッ、ズバン!

「……」

「一本!!」

 大熊笹が一本を宣言すると、アカネはカオリの手を取って引き上げた。

 大熊笹は笑顔で正座すると、カオリに話しかけた。

「カオリさん。あなたの動きは素晴らしいですが……、勝たねばならぬという使命感が強いですね」

「……はい」

「使命感が強いという事は、使命を果たしたいという欲があるという事です」

「欲? ……ですか」

「はい。欲はどんな種類であっても人間の判断を鈍らせます」

「……」

「例えばアカネさんの動きを見れば、執着するほどの欲がないと分かります」

「えっ……。でも培養肉マシーンがほしいって……」

 それを聞いたアカネがカオリに言った。

「ははは、培養肉マシーンは欲しいけど、急ぎじゃないっていうか。無かったら無かったでいいっていうか」

「そ、そうなんですか?」

 大熊笹はそれを聞くと静かにカオリに語りだした。

「欲というものは怖いものです。執着すればするほど周りが見えなくなります」

「はい……」

「負ける事もあると知り、それに打ち勝つという心は強い信念。負ける事があってはならないと勝つことだけを思う心は執着です」

「……なるほど」

「柔道は勝負である前に武道です。技は心についてきます」

 それを聞いたカオリは姿勢を正して大熊笹に礼をした。

「はいっ! お言葉ありがとうございます!」

 カオリは気合を入れ直して道着を直すと、アカネが嬉しそうに声をかけた。

「カオリちゃん、もう1本やるかい?」

「はいっ! おねがいします!!」

「ははっ! そうこないとね!」

 こうしてアカネとカオリは稽古を再開し、稽古は夜遅くまで続いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...