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第1話 明るく元気に頑張ります
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「おかえりなさいませ、ご主人様! 」
「ご注文は何になさいますか? 」
「おいしくなぁれ♫ 萌え萌えキュン 」
古風な街並みが残るこの商店街の隅に、ひときわ異彩を放つ喫茶店があった。いわゆる『メイドカフェ』である。そこは若者の人口が多い割に、娯楽施設が少ないこの町でかなり繁盛していた。そしてこの店で1番人気の店員はというと…
パリンッパリンッパリンッ!!!
店内に大量の皿が割れる音が響く。
「す、すいませ~ん!お怪我はありませんか? 」
近くにいた2人組の客にメイドが駆け寄る。
「あぁ、大丈夫さ!俺はこれを見越して防弾チョッキを着てるからね! 」
「お前なぁ… 」
防弾チョッキを見せびらかす男の向かいの客が呆れる。…最も、彼の頭にはヘルメットが乗っかっているのだが。
「うぅ~、いつも申し訳ないです 」
ガックリとうなだれる古風な出で立ちのメイド。
「いいって、わざとじゃないってみんな知ってるからさ。な? 」
あたりを見渡すとみんなヘルメットを被りながらメイドの方に視線を送っていた。中には胃薬を準備している人もいた。この店の常連さんたちだ。
…そう、彼女こそがこの店の看板娘、通称"破壊神"、鷹華なのだ!
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「ハァ、今日も失敗しちゃったなぁ… 」
帰り道、制服に着替えた鷹華はため息をこぼした。
「お客さ…じゃなかった、ご主人様たちは皆さんいい方ばかりですけどわたしだってちゃんとしたいのに… 」
曰く、彼女が作った料理を食べて生きて帰った者はいないと。
曰く、彼女が皿を割った回数がその日にやってきたお客の数だと。
「うぅ、家事ぐらい出来るようにならないとなぁ… 」
そんなことを考えていると彼女の家に到着した。大きい玄関門を抜け、戸を開ける。そしてやや大きめの声で鷹華は…
「桃華です。ただいま戻りました 」
「おかえりなさいませ、お嬢様 」
彼女の本名は鷹司 桃華。この地域に代々続く名家、鷹司家の一人娘である。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
いつものように召使いに迎え入れられ、自分の部屋に入ろうとすると、後ろから呼び止められた。
「…桃華、こんな時間までどこに行っていたんだ? 」
「お、お父様…。今日は帰られていたのですね 」
筋骨隆々、鋭い瞳をもった長身の男性。彼こそが現鷹司家当主にして私の父だ。
「御託はいい。こんな時間まで何をしていたのか答えなさい 」
ギロッ、と睨まれる。
「その…テストも近いので、学校の図書館で勉強しておりまして… 」
声を絞るように出す。するとお父様は
「…まぁいいだろう。もう少し次から早く帰ってきなさい 」
フン、と視線を外し寝室の方に向かった。よ、よかったぁ。
「…時に桃華、まさかとは思うがアルバイトなどはしていないだろうなぁ? 」
お父様が背中越しでの問いかけてくる。ビクッ、と私の背筋が凍った。
「わかっていると思うが桃華、アルバイトで金を稼ぐあまり、若いうちにしかできないことを疎かにする、なんてことは鷹司家の名のもと、決してするなよ? 」
「…肝に銘じています 」
去っていくお父様をふるえる足を抑えて見送った。
…そう、わたしの家ではアルバイトが禁止されている。お父様は、わたしがまだ幼い頃に亡くなったお母様の分まで精一杯わたしを育ててくださった。家を空けることが多いけど、桃華が寂しくないように、と召使いまで雇ってくれて(そのおかげで家事スキルが壊滅的になってしまったのだが…)、本当にわたしは愛されているのだと思う。だから本当はお父様の言うことを素直に聞くべきだ。…聞くべきなのだが。
「やっぱりメイドさんは辞めたくないなぁ 」
ベッドに寝転びながら考える。
わたしはずっと召使いさんを見てきた。彼女は自分でできないことをなんでもやってのけたし、自分の知らないこともなんでも知っていた。そんな彼女の側で育ったわたしが果たしてメイドという職業に憧れを抱かずにいられるだろうか。いや、いられない。(これ反語。)
そんな時に見つけたのが例の『メイドカフェ』の求人広告だった。店長さんはとてもいい人でわたしをみるや否や、(謎の奇声を発しながら)即採用してくれた。メイド服まで支給していただいて、実家の事情を話すと、じゃあ本名はマズイよね流石に、と鷹華というハンドルネームまでつけていただいた。それでもやっぱり家事なんてしたことないから今日みたいに失敗ばかりして恩を返しきれてない。
「…よし!明日から頑張るぞー!おー! 」
小さく腕をあげる。わたしだってやればできるはずだ。店長さんだって、「キミのいいところは前向きで明るいところだよ。だから失敗しても明るく微笑んでくれればそれでいいからね。…デュフフ 」と言ってくださってるし。
パリンッパリンッパリンッ!!
…翌日、今日も元気にお皿を破壊する音が店内に響いた。
「ご注文は何になさいますか? 」
「おいしくなぁれ♫ 萌え萌えキュン 」
古風な街並みが残るこの商店街の隅に、ひときわ異彩を放つ喫茶店があった。いわゆる『メイドカフェ』である。そこは若者の人口が多い割に、娯楽施設が少ないこの町でかなり繁盛していた。そしてこの店で1番人気の店員はというと…
パリンッパリンッパリンッ!!!
店内に大量の皿が割れる音が響く。
「す、すいませ~ん!お怪我はありませんか? 」
近くにいた2人組の客にメイドが駆け寄る。
「あぁ、大丈夫さ!俺はこれを見越して防弾チョッキを着てるからね! 」
「お前なぁ… 」
防弾チョッキを見せびらかす男の向かいの客が呆れる。…最も、彼の頭にはヘルメットが乗っかっているのだが。
「うぅ~、いつも申し訳ないです 」
ガックリとうなだれる古風な出で立ちのメイド。
「いいって、わざとじゃないってみんな知ってるからさ。な? 」
あたりを見渡すとみんなヘルメットを被りながらメイドの方に視線を送っていた。中には胃薬を準備している人もいた。この店の常連さんたちだ。
…そう、彼女こそがこの店の看板娘、通称"破壊神"、鷹華なのだ!
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「ハァ、今日も失敗しちゃったなぁ… 」
帰り道、制服に着替えた鷹華はため息をこぼした。
「お客さ…じゃなかった、ご主人様たちは皆さんいい方ばかりですけどわたしだってちゃんとしたいのに… 」
曰く、彼女が作った料理を食べて生きて帰った者はいないと。
曰く、彼女が皿を割った回数がその日にやってきたお客の数だと。
「うぅ、家事ぐらい出来るようにならないとなぁ… 」
そんなことを考えていると彼女の家に到着した。大きい玄関門を抜け、戸を開ける。そしてやや大きめの声で鷹華は…
「桃華です。ただいま戻りました 」
「おかえりなさいませ、お嬢様 」
彼女の本名は鷹司 桃華。この地域に代々続く名家、鷹司家の一人娘である。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
いつものように召使いに迎え入れられ、自分の部屋に入ろうとすると、後ろから呼び止められた。
「…桃華、こんな時間までどこに行っていたんだ? 」
「お、お父様…。今日は帰られていたのですね 」
筋骨隆々、鋭い瞳をもった長身の男性。彼こそが現鷹司家当主にして私の父だ。
「御託はいい。こんな時間まで何をしていたのか答えなさい 」
ギロッ、と睨まれる。
「その…テストも近いので、学校の図書館で勉強しておりまして… 」
声を絞るように出す。するとお父様は
「…まぁいいだろう。もう少し次から早く帰ってきなさい 」
フン、と視線を外し寝室の方に向かった。よ、よかったぁ。
「…時に桃華、まさかとは思うがアルバイトなどはしていないだろうなぁ? 」
お父様が背中越しでの問いかけてくる。ビクッ、と私の背筋が凍った。
「わかっていると思うが桃華、アルバイトで金を稼ぐあまり、若いうちにしかできないことを疎かにする、なんてことは鷹司家の名のもと、決してするなよ? 」
「…肝に銘じています 」
去っていくお父様をふるえる足を抑えて見送った。
…そう、わたしの家ではアルバイトが禁止されている。お父様は、わたしがまだ幼い頃に亡くなったお母様の分まで精一杯わたしを育ててくださった。家を空けることが多いけど、桃華が寂しくないように、と召使いまで雇ってくれて(そのおかげで家事スキルが壊滅的になってしまったのだが…)、本当にわたしは愛されているのだと思う。だから本当はお父様の言うことを素直に聞くべきだ。…聞くべきなのだが。
「やっぱりメイドさんは辞めたくないなぁ 」
ベッドに寝転びながら考える。
わたしはずっと召使いさんを見てきた。彼女は自分でできないことをなんでもやってのけたし、自分の知らないこともなんでも知っていた。そんな彼女の側で育ったわたしが果たしてメイドという職業に憧れを抱かずにいられるだろうか。いや、いられない。(これ反語。)
そんな時に見つけたのが例の『メイドカフェ』の求人広告だった。店長さんはとてもいい人でわたしをみるや否や、(謎の奇声を発しながら)即採用してくれた。メイド服まで支給していただいて、実家の事情を話すと、じゃあ本名はマズイよね流石に、と鷹華というハンドルネームまでつけていただいた。それでもやっぱり家事なんてしたことないから今日みたいに失敗ばかりして恩を返しきれてない。
「…よし!明日から頑張るぞー!おー! 」
小さく腕をあげる。わたしだってやればできるはずだ。店長さんだって、「キミのいいところは前向きで明るいところだよ。だから失敗しても明るく微笑んでくれればそれでいいからね。…デュフフ 」と言ってくださってるし。
パリンッパリンッパリンッ!!
…翌日、今日も元気にお皿を破壊する音が店内に響いた。
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