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5 龍神界と限界突破
36 自分に打ち勝つには
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「はぁ……はぁ……駄目だ勝てねえ」
再現体も恐らくスタミナは削れているはずだ。それでも決定打が出ない。疲労こそあれどそれで倒せるほど俺は弱くないのだろう。その点は自信が持てる。
俺が自信が持てる要素は、今この状況ではそのまま厄介な点になるわけだけども。
能力が拮抗しすぎているために戦っていて面白くも無い。新たな発見なども無いために戦闘自体に魅力が無いんだよな。
待てよ。新たな発見……?
俺は新たな付与魔法の開発も得意としている。だが再現体にはそれを使う素振りが無い……どういうことだ?
思えば再現体は最初何もしてこなかった。俺が攻撃をし始めて、初めて行動を開始していた。これはもしや、再現体は能動的に動いているわけでは無いのか?
それだけじゃない。再現体は俺の行動に対して最善の策を取って来た。だから鼬ごっこが終わらなかった。でもそれなら俺の先を読んで行動すれば、いつか俺を出し抜けるタイミングが来たかもしれない。実際はそんなことは起こらず、常に拮抗状態が続いた。いくら同じ能力を持っているとは言え不自然じゃないか?
「なるほどね。なら少しでも再現体を超える力を持てればいいわけだ」
俺は能力の一部を新しい付与魔法の開発に回す。そのせいで能力が一時的に減少してしまうが、致し方ない犠牲だ。
それを察知したのか再現体は攻撃を激しくした。もし先の事を考えているのなら、急に能力が下がったら何かしているかもしれないと警戒するだろう。だがこの再現体はそれをしない。能力が下がったのを良いことに、このタイミングのみを切り取った場合の最善策である総攻撃を仕掛けてきた。こうなれば再現体が今の状況しか見ていないのは明らかだ。何としてでも付与魔法を完成させて再現体よりも強くなってやる。
ただ、下がった能力で総攻撃を仕掛けて来る再現体に対処するのは至難の業だ。状態異常耐性などのかければそれで解決するようなものならともかく、攻撃力上昇や防御力上昇などの上限の無いものに関しては向こうの方が一枚上手になる。
恐らく避け続けることにもその内限界が来る。そうなれば体力勝負だ。可能な限り体力上昇魔法をエンチャントして、少しでも時間を稼ぐ。
全身に傷が増え出血量も放っておけない程に追い詰められたその時、魔法の開発が終了した。
「やっとか。……これで俺の勝ちだな」
開発したのは重ね掛けの出来る付与魔法。効果時間は短いが、この戦いにおいて効果時間は重要ではない。再現体の能力を超えることさえ出来ればそれで良いのだ。
付与魔法の効果は絶大で、着実に再現体を追い詰めていくことに成功した。再現体は防御に回るが、こちらの能力の方が高くなっているために時間が経てば経つほど俺の方が優勢になっていく。
そして、俺は再現体を倒すことに成功した。
「やっと終わったか……ってなんだぁっ!?」
体中に力が溢れる。何事かとレベルを確認すると、230まで上昇していた。しかし少し妙で、200+30という風に認識されるのだ。
疑問に思っていたところで、戦いが終わったことを確認した龍神が結界を解いた。
「勝ったのだなサザンよ」
「はい、何とか……。それにしても、レベルが少し上昇しただけで能力がとてつもなく上昇しているようなのですが」
「限界突破をするとその分だけ補正がかかる」
「補正……?」
「そうだ。その補正が何よりも限界突破の強みなのだ」
確かにレベル30程度にしては能力が上昇しすぎている。溢れ出る力も感じる。恐らくこれが補正の力なのだろう。
「さあ、行くのだサザンよ! 新たな力を存分に奮うのだ!」
「……はい! 色々とありがとうございました!」
俺は龍神に伝えられた通り強く念じ、元の世界に戻ろうとした。
そして気が付くと、ルガレア王国の近くで目が覚めた。倒れたにしては奇麗に寝ているため、恐らく誰かが寝かせてくれたのだろう。
「そうだ、太食龍は!? ルガレア王国はどうなった!?」
辺りを見回すと、今まさに強大なブレスを放とうとしているところであった。
「これで……終わるのか。俺に力が無かったばかりに……」
「今からでも逃げるのは……もう間に合わないよね」
「そうね。それに私は逃げる位なら戦って死ぬことを選ぶわ」
壁の上の3人は皆、最期を迎える覚悟をしていた。今から逃げても間に合わない。それを理解したうえで、国と共に死のうと決めていた。
イル・クロマは魔力をため終わり、口を大きく開く。そして今にもブレスを放とうと言うその時、突如として大きな土煙と轟音と共に巨大な龍が現れた。
その龍の纏う魔力をから何かを感じ取ったメル、リア、そしてイル・クロマの足元にいるラン、ファルの4人は希望を取り戻す。
「サザン……良かったぁ生きてたぁぁ!」
「全く、こんな時まで何やってんのよ……!」
「サザン……君と言うヤツは。いったいどれだけ待たせるんだ」
「戻って来たのだな、サザン……!」
こうして巨大な龍と化したサザンは、イル・クロマへと戦いを挑んだのだった。
再現体も恐らくスタミナは削れているはずだ。それでも決定打が出ない。疲労こそあれどそれで倒せるほど俺は弱くないのだろう。その点は自信が持てる。
俺が自信が持てる要素は、今この状況ではそのまま厄介な点になるわけだけども。
能力が拮抗しすぎているために戦っていて面白くも無い。新たな発見なども無いために戦闘自体に魅力が無いんだよな。
待てよ。新たな発見……?
俺は新たな付与魔法の開発も得意としている。だが再現体にはそれを使う素振りが無い……どういうことだ?
思えば再現体は最初何もしてこなかった。俺が攻撃をし始めて、初めて行動を開始していた。これはもしや、再現体は能動的に動いているわけでは無いのか?
それだけじゃない。再現体は俺の行動に対して最善の策を取って来た。だから鼬ごっこが終わらなかった。でもそれなら俺の先を読んで行動すれば、いつか俺を出し抜けるタイミングが来たかもしれない。実際はそんなことは起こらず、常に拮抗状態が続いた。いくら同じ能力を持っているとは言え不自然じゃないか?
「なるほどね。なら少しでも再現体を超える力を持てればいいわけだ」
俺は能力の一部を新しい付与魔法の開発に回す。そのせいで能力が一時的に減少してしまうが、致し方ない犠牲だ。
それを察知したのか再現体は攻撃を激しくした。もし先の事を考えているのなら、急に能力が下がったら何かしているかもしれないと警戒するだろう。だがこの再現体はそれをしない。能力が下がったのを良いことに、このタイミングのみを切り取った場合の最善策である総攻撃を仕掛けてきた。こうなれば再現体が今の状況しか見ていないのは明らかだ。何としてでも付与魔法を完成させて再現体よりも強くなってやる。
ただ、下がった能力で総攻撃を仕掛けて来る再現体に対処するのは至難の業だ。状態異常耐性などのかければそれで解決するようなものならともかく、攻撃力上昇や防御力上昇などの上限の無いものに関しては向こうの方が一枚上手になる。
恐らく避け続けることにもその内限界が来る。そうなれば体力勝負だ。可能な限り体力上昇魔法をエンチャントして、少しでも時間を稼ぐ。
全身に傷が増え出血量も放っておけない程に追い詰められたその時、魔法の開発が終了した。
「やっとか。……これで俺の勝ちだな」
開発したのは重ね掛けの出来る付与魔法。効果時間は短いが、この戦いにおいて効果時間は重要ではない。再現体の能力を超えることさえ出来ればそれで良いのだ。
付与魔法の効果は絶大で、着実に再現体を追い詰めていくことに成功した。再現体は防御に回るが、こちらの能力の方が高くなっているために時間が経てば経つほど俺の方が優勢になっていく。
そして、俺は再現体を倒すことに成功した。
「やっと終わったか……ってなんだぁっ!?」
体中に力が溢れる。何事かとレベルを確認すると、230まで上昇していた。しかし少し妙で、200+30という風に認識されるのだ。
疑問に思っていたところで、戦いが終わったことを確認した龍神が結界を解いた。
「勝ったのだなサザンよ」
「はい、何とか……。それにしても、レベルが少し上昇しただけで能力がとてつもなく上昇しているようなのですが」
「限界突破をするとその分だけ補正がかかる」
「補正……?」
「そうだ。その補正が何よりも限界突破の強みなのだ」
確かにレベル30程度にしては能力が上昇しすぎている。溢れ出る力も感じる。恐らくこれが補正の力なのだろう。
「さあ、行くのだサザンよ! 新たな力を存分に奮うのだ!」
「……はい! 色々とありがとうございました!」
俺は龍神に伝えられた通り強く念じ、元の世界に戻ろうとした。
そして気が付くと、ルガレア王国の近くで目が覚めた。倒れたにしては奇麗に寝ているため、恐らく誰かが寝かせてくれたのだろう。
「そうだ、太食龍は!? ルガレア王国はどうなった!?」
辺りを見回すと、今まさに強大なブレスを放とうとしているところであった。
「これで……終わるのか。俺に力が無かったばかりに……」
「今からでも逃げるのは……もう間に合わないよね」
「そうね。それに私は逃げる位なら戦って死ぬことを選ぶわ」
壁の上の3人は皆、最期を迎える覚悟をしていた。今から逃げても間に合わない。それを理解したうえで、国と共に死のうと決めていた。
イル・クロマは魔力をため終わり、口を大きく開く。そして今にもブレスを放とうと言うその時、突如として大きな土煙と轟音と共に巨大な龍が現れた。
その龍の纏う魔力をから何かを感じ取ったメル、リア、そしてイル・クロマの足元にいるラン、ファルの4人は希望を取り戻す。
「サザン……良かったぁ生きてたぁぁ!」
「全く、こんな時まで何やってんのよ……!」
「サザン……君と言うヤツは。いったいどれだけ待たせるんだ」
「戻って来たのだな、サザン……!」
こうして巨大な龍と化したサザンは、イル・クロマへと戦いを挑んだのだった。
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