追放された筋肉魔術師、新たなる野望を抱く

遠野紫

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追放された筋肉魔術師、新たなる野望を抱く

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「お前暑苦しいんだよ。お前もうパーティ降りろ」

 勇者に強制的にパーティを追放されてしまった俺は筋肉魔術師の魔猪スギルだ。
 毎日特性プロテインを振る舞い元気の出る掛け声をかけてやっていたのだが、彼らには鬱陶しいだけのようだった。

 一人ではダンジョンも危険すぎるから潜れない。これから俺はどうやって生きて行けばいいんだ……。

「あら、あなた魔術師よね?」

 全てに絶望していた俺に声をかけてきたのは、華奢な体に不釣り合いな大剣を担いだ少女。赤いショートヘアが美しく、一目で美少女だとわかる。
 だが足りない。圧倒的に、筋肉が足りない。

「ええ、そうですが……何か用ですか?」
「私は戦士のマーガロイド。実は私たちのパーティには魔術師がいなくて……もしよかったらメンバーになって欲しいの」
「そんな、私なんかで良ければ是非とも!」

 こうして俺は彼女のパーティに参加することになった。

「よう、お前さんが新たな魔術師か。これも何かの縁、ポーションを奢ってやろう」
「よっろ~♪ ほら、そんな暗い顔しないで笑顔笑顔」
 
 彼女以外のパーティメンバーは二人。
 一人は銀色の鎧を着こみ片手剣と大きな盾を装備した所謂タンク職のエルフ族の男性、ロン。白髪ショートに褐色の肌そして凛々しい顔立ちと、世間一般では美形と言われるタイプだろう。だが駄目だ筋肉が足りない。

 もう一人は気楽そうな神官の少女、リステ。金髪ロングヘア―が揺れ動くたび目で追ってしまうほどの美しさ。だが、足りない。筋肉が、足りない。

「それじゃ、これからよろしくねスギル」



「クソっ!! なんなんだよこの魔物!」

 勇者パーティはほとんど壊滅状態であった。魔術無効の力を持った魔物の前に勇者パーティは太刀打ちするすべが無かったのだ。

「勇者様、助けて! 私死にたくな……」
「だ、だめだ、俺も体が動かないんだ……!」

 魔物の前で動くことも出来ずただ助けを懇願する勇者パーティの魔術師と、尽きかけた体力を回復させるために他のパーティメンバーを盾にする勇者。

「グオォォォォォ!!!!」
「やだ、助け……」

 魔物の一撃が魔術師を粉砕玉砕しようとした時、その攻撃は何者かに弾かれた。

「大丈夫か?」
「あ、あなたは……」
「お、お前は……スギル?」

 そこには勇者が追放したはずのスギルが二回り程大きくなった体で立っていた。体は世界で一番硬いとされるアダマンタイトをも超える強度にまで鍛え上げられていた。
 そんなスギルの体に魔物の攻撃など通るはずも無い。

「ふんっっ!! 頼んだぞロン!」

 スギルは魔物を持ち上げ、ロンの方へぶん投げる。

「任されたぞ! うおおぉぉぉぉ!!」

 ぶん投げられた魔物は身長2メートルを超えたモリモリマッチョマンと化したロンに抱きかかえられ、そのまま後方へ叩きつけられた。

「後は私たちに任せて!」
「いっくよ~♪」

 地面にめり込むほどの勢いで会叩きつけられた魔物の元に、これまた筋肉モリモリレディと化したマーガロイドとリステがやってくる。

「「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラアァァァァァァァ!!!!!!」」

 二人は固く握った拳を目にもとまらぬ速さでラッシュする。
 魔物の形状は見る見るうちに変形していき、もはや原型がわからない程になっていた。

「ふう」
「一件落着ですな」
「そうだね~」
「な、なんなんだよお前ら! に、人間技じゃねえぞ!?」

 スギルのパーティーメンバーに向かって叫ぶ勇者の元にスギルは近づいていき、囁いた。

「俺が彼らを強くした。アンタらも俺の言うことを聞いていれば苦労することも無かったのにな」

 こうして、勇者パーティがダンジョン探索に苦労する中、スギルたち筋肉旅団は瞬く間に数多くの難関ダンジョンを攻略し時の人となったのだ。
 国王からもその功績が讃えられ多額の報酬を貰い、王国騎士団の顧問教師としての立場も獲得したのであった。

 そしてスギルは誓った。もう魔物に襲われる悲しみを人々に味合わせたくないと。その想いを胸に『全人類マッスル計画』を始めたのだ。

 これは、筋肉魔術師の言うことを聞かなかった哀れな勇者パーティと、素直にスギルを迎え入れたマーガロイドたちの運命の物語。
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