魔人になった僕だけどそれでも兄上を愛したい

URUR

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第2章:満たされない心

闇の中の呼び声2

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 ――クライス視点

 霧が深く、視界は数歩先すらも霞んでいる。

 空気は冷たく重く、肺に吸い込むたびに咳がこみ上げる。

 黒の地の空は、ただ灰色で、朝も夜もない。
 それでも、今は夜のように感じた。あまりにも暗く、冷たい世界だから。

 

 「リリス……」

 名前を呼ぶたび、胸が締め付けられる。

 あの子は、もう僕のことを忘れてしまったのかもしれない。

 でも、構わない。

 忘れていても、必ず見つける。
 何度でも呼ぶ。思い出してくれるまで。

 

 歩を進めるたび、足元の灰が崩れ、ひび割れた大地が軋む音がする。

 それ以外に聞こえるのは、自分の荒い息づかいと鼓動だけ。

 「どこにいる……リリス……」

 かすれた声で問いかけても、闇は何も返さない。

 

 けれど――確かに感じた。

 遠くで、かすかな魔力の残響が揺れている。

 それはとても微かで、今にも消えてしまいそうなほど脆い光。

 でも、それがあの子の痕跡だと、本能で分かった。

 

 「待ってろ……今、行く」

 声が震えていた。
 自分でも情けないと思うほどに、必死だった。

 でも、それでいい。

 初めてだった。あの子に本気で向き合おうとしているのは。

 

 * * *

 

 ――リリス視点

 胸の奥で何かが震えた。

 冷たいはずの空気の中で、微かに温かいものを感じた気がした。

 「……兄上……?」

 震える声で名前を呼ぶと、涙が溢れた。

 もう思い出せないはずの名前なのに、自然と口をついて出てくる。

 どうして、こんなに恋しいのだろう。

 

 足元の大地にひび割れた石が転がっている。

 ただそれを見つめていると、指先が震えた。

 僕は何をしているんだろう。
 何を、そんなに待っているんだろう。

 誰かの声が聞こえた気がしたのは、夢だったのか。

 それとも、本当に――

 

 「兄上……僕……ここにいるよ……」

 声に出した瞬間、胸の奥で何かが壊れそうになった。

 届かないと分かっていても、言わずにはいられなかった。
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