親の裏切りで幼馴染を買い損ねた奴隷商は、異世界転生者の生まれ変わりの娘と孫と共に彼女を買い戻す旅に出る〜全裸追放から始まる成り上がり生活2〜

仁徳

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第一章

第十三話 依頼者たちの正体

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「さて、そろそろ頃合ですし、本当のことを話してもらいましょうか。ゼッペルとか言う男が現れた以上、もう言い訳はできないでしょう?」

 洞窟の中に避難した後、俺は安全を確認してから小声で騎士爵様たちに語りかける。

 すると騎士爵様とヘイオーが互いに顔を見合わせた。そしてヘイオーが小さく頷くと、騎士爵様が俺に顔を向ける。

「どこから気付いたんだ?」

 小さく低い声で、騎士爵様が訊ねてくる。どこか警戒している様子だったが、俺からすればそんな態度を取らなくても良いのにと思ってしまう。

「違和感を覚えていたのは、ギルドで依頼書を受け取った時からだ。騎士爵様は平民に毛が生えた程度の階級だ。それなのに、報酬金額が500万ギルと言うのは高額すぎる。普通に考えても、それは教会から飛び降りる覚悟のような金額。全財産と思っても良い」

「なるほど、確かに騎士爵の階級からしたら、そんなに高額な報酬金を出すとは思えないよね」

 マヤノが人差し指を頬に当てて小首を傾げる中、俺は説明を続ける。

「それに住んでいた家も、騎士爵様が住むにはボロすぎる。あれはその日暮らしすら困難な人が暮らしているような家だ。まぁ、恐らくカモフラージュが目的だったのだろうな」

 第二の根拠を言い終えると、今度はヘイオーの方を見る。

 彼は堂々としており、俺が全てを言い終えるのを待っているかのような様子だった。

「そして最後の根拠として、ヘイオー、君が子どもらしくないと言う点だ。君くらいの歳であれば、野盗に襲われたあの時、普通なら怯えても良い。だが、あまりにも堂々としている。そして言動も子どもと言うよりも成人の大人に近い箇所があった。そして人に命令を下すかのような言動を考えるに、あなたたちの正体は王族とその関係者なのでは?」

 これまでのヒントから、騎士爵様たちの正体を推理すると、ヘイオーが口の端を引き上げる。そして両手を合わせて拍手をすると、目を大きく見開いた。

「ブラボー、その通りだ。まさか依頼を受けた人物が、ここまで頭のキレる者だとは思わなかった。味方だと頼もしいが、敵だと脅威になるタイプだろうね。トウカイ、後の説明は君に任せた」

「ハッ! お任せください」

 騎士爵だと騙っていた男にその後の説明を任せると告げると、ヘイオーは口を閉ざす。

「では、本当のことをお話ししましょう。私は騎士爵ではなく、王族の第一騎士団長のトウカイ、そしてこちらにおりますのはこの国の王、ヘイオー様です」

「嘘だぁ! だって、この国の王様は五十代のおっさんのはずだよ?」

 トウカイのカミングアウトに、マヤノは驚きの声を上げる。

「マヤノ、それはまだ、表に公表されていないからだ。マヤノが言っている王様は、先週亡くなっている。その事実は、裏の関係者にしか知られていない」

「その通りだ。前国王である我が父は、大臣の送り出した刺客に殺された。そして城に住む殆どの者は、大臣側に寝返っている」

「どうして大臣さんは国王様を殺したの? 仕えるべき人が可笑しいじゃない。パパはみんなに信頼されて、そんなこと一度もなかったよ? 老衰して亡くなるまで、みんなに慕ってもらっていたもの!」

 途中でマヤノが口を挟む。彼女の突拍子な言葉に、会話の流れが変わりそうになったので、今は一部をスルーすることにした。

「君の父親がどれだけ徳のある人物だったのかは別として、人間は欲望で動く生き物だ。自分の欲求を満たすために、時には人を蹴落として成り上がろうと考える輩もいる」

 まぁ、欲と言うものが完全にダメなものではないけどな。欲望は人を動かす原動力、力の源になる。要は、その感情を良い方向に使うことができるかどうか、精神面での話しになってくる。

「そう、フリードの言う通りだ。大臣は自分が王に成り上がり、自分の求める理想の国を作り上げるために、国の宝である王を殺害した。そして今は正統後継者であるヘイオー王子の命を狙っている」

 なるほど、確かにいくら王様を殺したところで、次の継承権はヘイオー王子にある。正式に世間から王と認められるには、彼の存在が邪魔だ。

「その情報を得た私は、ヘイオー王子を城から逃し、反撃の時を待っていた。少しでも安全に目的地に辿り着くために、城に関係のあるギルドに相応しい人物を送り込むように頼んでいたと言う訳だ」

 これまでのトウカイの説明を聞き、ようやく点と点が繋がった。

 あのギルドは城の関係者が一部が働いている。だから受付嬢もあんなことを言っていたのか。

「ヘイオー君がこの国の王子ってことは、襲ってきた野盗たちはもしかして――」

「ああ、俺の同僚でもある第二騎士団長とその部下たちだ。そして大臣に代わって王様を殺害したのはゼッペル」

 マヤノが襲って来た人物を悟ったようで口に出すが、彼女の言葉を遮ってトウカイが答えを言う。

「僕たちは打倒大臣を志す協力者たちがいると言う岬の小屋に向かっている。国の問題に巻き込ませて済まないと思っている。だからここで依頼を放棄しても良い。ここまでの功労を認め、城を奪還して大臣を倒した暁には、必ず報酬の500万ギルを支払うと約束しよう」

 俺たちの答えを待つかのように、ヘイオー王子はジッと見つめてきた。

 今のこの国が落ちぶれているのは、国の頂点である王族が原因だ。だからと言って、大臣が政権を握ったところでこの国が良くなる保証はない。

 むしろ汚れの無い少年であるヘイオー王子の方が、成長した後にこの国を良くしてくれる希望がある。

「俺の方は考えが纏まっているが、マヤノはどうだ?」

 マヤノに語りかけると、彼女は真剣な眼差しでこちらを見て来た。

「そんなの、最後まで協力するに決まっているよ! きっとパパなら、ヘイオー君たちに協力するはずだから」

 ジッと見つめてくる中、彼女は父親の行動を予想してその通りに動く決断をする。

 俺と同じ意見であることにホッとするも、今の言動に彼女の意思が反映されていないことに、少し寂しさを感じてしまう。

 マヤノ、君は父親に縛られすぎだ。たまには自分の意見を言ったらどうだ?

 そう言いたかったが、なぜか頭の中で浮かんだ言葉を口から出すことができないでいた。

 もし、思ったことをそのまま口に出せば、俺たちの関係が良くない方向に進んでしまいそうな気がしたのだ。

「俺もマヤノと同じだ。この国が大臣の手に渡れば、もっと悪い方へと進んでしまいそうな気がしてしまう」

「2人ともありがとう。君たちの協力があれば、きっと大臣を倒して父の仇を討つことができるはずだ」

 ヘイオー王子が礼を言うと、踵を返してこちらに背を向ける。

「では、そろそろ出発しよう。あの男もこの森から離れているかもしれない」
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