親の裏切りで幼馴染を買い損ねた奴隷商は、異世界転生者の生まれ変わりの娘と孫と共に彼女を買い戻す旅に出る〜全裸追放から始まる成り上がり生活2〜

仁徳

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第一章

第十七話 大臣捕縛作戦

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 マヤノとヘイオー王子が陽動作戦をしている中、俺とトウカイ騎士団長は大臣の寝室へと向かっていた。

「この先に、城内に入ることが可能な扉がある」

 裏庭を駆け、トウカイ騎士団長の後を走っていると、城内に繋がっているであろうと思われる扉が視界に入る。

「あそこの扉ですか?」

「ああ、あの中から侵入する」

 扉の前に辿り着くと、後方から爆発音が聞こえてきた。振り返ってみると、マヤノが魔法を発動したようで、地面の一部に穴が開き、城壁の一部も壊れている。

 マヤノが陽動作戦を実行したようだな。後数秒すれば警備に当たっていた他の兵士たちが集まって来る。この混乱に乗じて早く中に入った方が良さそうだ。

 そう思った瞬間、脳裏にある不安が過ぎる。

「トウカイ騎士団長、この扉から裏庭に出入りすることができると言うことは、この扉を開けて兵士がやって来ると言うことになるのでは?」

「それは大丈夫だ。この扉にはちょっとしたカラクリがあってだな。ごく一部の人間にしか開けられない。第二騎士団長がゼッペルに殺された以上は、兵士たちの中では俺くらいしか開けることができない」

 一般の兵士では開閉することが不可能だと言うことを知り、少しばかり安堵する。

「よし、扉の近くには人気がなさそうだな」

 トウカイ騎士団長が扉に耳を当て、城内の様子を伺う。

「よし、今から開けるぞ」

 近くに敵がいないことを確認したのち、トウカイ騎士団長はドアノブに手を添えた。

 さて、いったいどんな風にして解錠するのだろうか。扉は両開きになっている。普通なら、扉を押すか引くかで開くものだが。

 お手並み拝見をしていると、トウカイ騎士団長はドアノブを持ち上げるようにして腕を上げる。するとその動きに合わせて扉も上へとスライドしていた。

 単純であるものの、確かに目と脳の錯覚を利用したトリックの扉である。

 両扉を見れば、一般的には押すか引くかのイメージしか持たない。だから無意識に頭のイメージが描く動作しかできない。思い込みを利用した案外使えるトリックなのかもしれないな。

 扉の先には長い廊下が繋がっていたが、視界には兵士の姿は見えない。最低限の護衛は残っているかもしれないが、大部分が裏庭の方に向かっているみたいだ。

「大臣の部屋はいったいどこに?」

「こっちだ。大臣が部屋から抜け出すための隠し通路がある」

 大臣の部屋に通じている隠し通路があると言いながら、トウカイ騎士団長は廊下を歩く。

 隠し通路なんものは、普通は知らされないようにして細心の注意を払いながら利用するものだ。それなのに、どうしてそのことを知っている?

「どうしてそんなことを知っているのですか?」

「それはだな。昔大臣が使ったところを偶然見てしまったんだ。その時の大臣は酒を飲んで酔っ払っていたから、俺には気付かなかったのだろう」

 知っている理由を聞かされ、思わず苦笑いが出てしまう。

 酔っ払っている時に隠し通路を使うなんて、相当気が緩んでいたのだろうな。

 兵士に見つからないまま、廊下を歩いていると、壁沿いに置かれた人の上半身の彫刻の前で、トウカイ騎士団長が立ち止まる。そして頭の部分を掴むと、首を動かすように頭を横向きに変える。

 その瞬間、壁の一部が横にスライドすると、隠されていた通路が姿を見せた。

「この先が大臣の部屋に繋がっている。覚悟は良いか?」

 トウカイ騎士団長の言葉に無言で頷くと、彼はそのまま通路に進んでいく。

 後を歩くと、数秒後には奥から小さい光が見えた。

 部屋の明かりが漏れているのだろう。

 大部分は何かで塞がれているが、完全に光を遮ることができていないみたいだな。

「この壁は棚だ。今から押し倒し、直ぐに部屋の中に侵入する」

 小声でトウカイ騎士団長が説明し、俺は無言で頷いて理解したことを伝える。

 すると、彼は棚だと言っていた壁に向かってタックルをすると、障害物は前に倒れた。食器のようなものが割れる音が聞こえたところから考えるに、本当に棚だったみたいだな。

 先にトウカイ騎士団長が部屋の中に侵入すると、俺も倒れた棚の上を踏んで部屋の中に入る。

「まったく、こんな時間に私の部屋を訪問するとは、どう言う神経をしているのだね。親の教育がなっていないな」

 大臣の寝室に入ったと同時に聞き覚えのない声が耳に入り、声が聞こえた場所に顔を向ける。そこには口髭を横長に、顎髭を縦長に伸ばすインペリアルと呼ばれる髭をしている小太りの男が、剣を構えながらこちらを見ている。

 もしかして、この男が大臣か? ワンチャン棚の下敷きになってくれたら良かったが、さすがにそんな風にはいかなかったか。

「大臣、お前の悪行もここまでだ。お前を捉え、野望を阻止する! 城の兵士のほとんどが裏庭の方に向かっている。残っている護衛程度では、俺たちの敵ではないぞ」

 腰に帯刀している剣を抜き、トウカイ騎士団長は大臣と対峙する。

「私を捕まえる? やれるものならやってみなさいよ! 侵入者が私の部屋の中に入った! 護衛共! 中に入れ!」

 大臣が声を上げると、扉が開いて兵士たちが中に入ってくる。

「さぁ、あいつらを殺せ!」
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