推しが必ず死ぬゲームのモブに転生した俺は、彼女を救うためにシナリオブレークします〜俺の推し活は彼女を生かすための活動です〜

仁徳

文字の大きさ
1 / 41
第一章

第一話 推しが必ず死ぬゲーム内に転生しました

しおりを挟む
「くそう! このルートでもカレンが死んでしまうのかよ!」

 俺、久礼悠吏くれいゆうりは、パソコンの画面に映る光景を見て嘆いていた。

 キャラクターが救えないことが分かっていながらも、コントローラーのボタンを押してストーリーを進める。

『くそう! このままではこいつは勝てない!』

『クハハハハ!神である俺が下等生物である人間如きに負ける訳がなかろう。お前たちは最初から俺様に負ける運命だったのだ』

『まだよ! まだ可能性は残されている!』

 女の子のこのセリフが出た瞬間、俺の中の感情が爆発しそうになる。

 どうして彼女が死なないといけない。推しが必ず死ぬゲームが、どんなに世間では神ゲーと言われても、俺にとってはクソゲーでしかない。

 推しを守れなかった悔しさに歯を食い縛りながら、再びコントローラーのボタンを押す。

『私がクロノスから授かったユニークスキル【自己犠牲型死に戻り】を使えば、過去に戻ることができる。みんなは過去に戻って、ゼウスを倒す方法を探して』

 画面の下に女の子のセリフが表示され、両の目から涙が流れた。何度見ても、このシーンは悲しすぎる。

「どうしてお前が犠牲にならないといけない! そしてお前たちもあっさりしすぎだろう! 大切な仲間が死ぬって言うのに! どうして淡々としていられる! 開発側クソだろう! このシナリオライターはクソ過ぎる!」

 推しが死ぬシーンを見せられる度に、悲しみと怒りの感情がぐちゃぐちゃとなり、声を上げずにはいられなかった。

『あとは……頼んだからね。ゼウスを倒す方法は必ずある。私はそう信じているから』

 一雫の涙を目尻から流しながら、自らの胸に剣を突き刺す女の子。

「カレエエエエエエエエエェェェェェェェェェェン!」

 そのシーンを何度も見せられる度に、毎回のように推しの名を叫ぶ。

 カレン・クボウ。それが大人気ゲーム聖神戦争に登場する物語の重要キャラの名であり、俺の推しだ。

 彼女は時の神、クロノスからユニークスキル【自己犠牲型死に戻り】を授けられた女の子だ。ゲーム内の支配者である全知全能の神、ゼウスを倒すキーを手に入れるために、仕様上ゲーム中盤で必ず死んでしまう可愛そうな子だ。

 どうして彼女が死なないといけない。カレンは何も悪いことをしていないじゃないか。

 例え敵であったとしても、傷付いた相手をほっておけないような心優しい女の子なんだぞ!

 今回、大規模アップデートが入り、新たな分岐が追加された。もしかしたら彼女を救うルートがあるかもしれない。そう思い、メンテナンス終了後にゲームを起動して進化した世界に入り浸った。

 だが、何度も様々なルートを試してみても、カレンを救うルートが未だに見つかってない。

 イベントが終わり、次のシーンに映る。だが、タイトルに戻るのカーソルを合わせ、物語を続けるのではなく、最初からやり直すことにした。

「このキャラもダメだ。くそう。他にまだ使っていなかったキャラっていたか」

 頭を掻きむしりながら、プレイするキャラの選択画面を眺める。

 この聖神戦争は、選んだキャラが主人公となり、物語を進めていく変わったゲームだ。それぞれに夢や目標があり、各キャラに感情移入ができる所が高い評価を集めている。

 もちろんカレンを選択することも可能だが、彼女を主人公にした場合、物語中盤で死ぬと言うバッドエンドしか用意されていない。

 各キャラを見ていると、端っこの方にオリジナルキャラ作成というコマンドがあり、それにカーソルを合わせてボタンを押してみると、キャラメイク画面になった。

「今回のアップデートでこんなのが追加されたのか。試しに作ってみるかな」

 どうせやるなら、俺自身をモデルにしつつ、少し格好良いキャラを作りたい。

 時間をかけてオリジナルキャラを作成すると、名前入力が表示される。

「名前はゲームに登場するキャラたちに合わせてユウリ・クレイにするか」

 名前を記入すると、次にキャラの地位を選択する画面になる。

「へー、平民から貴族や王族なんてものも選択できるのか。平民の生活は現実世界で嫌と言うほど味わっているけど、王族もなんだか面倒臭そうだな。ここは貴族であるけど、男爵くらいにしておくか」

 男爵家の息子を選択し、続いてユニークスキル名を入力する画面に切り替わる。

「これに関しては自分で入力するのか。普通事前に設定されてあるスキルから選択するものだろう?」

 なんか変じゃないか?

 そう思いながらも、キーボードに手を乗せる。

「どうせなら、カレンを手助けするスキルがいいな。例えば【推し愛】なんてどうだ?」

 ユニークスキル名を入力すると、続いて効果を記入する欄が現れる。

 め、面倒くせー! なんだよ! そんなことまでいちいち記入しなければいけないのかよ!

 まぁ、大型アップデートをしたばかりだから仕方がないか。これからアンケートなんかで改善していくだろう。

 まぁ、一応どんなユニークスキルなのかは考えている。

【カレン・クボウへの愛を力に変え、その愛で他のユニークスキルを手に入れる。手に入れるスキルは聖神戦争に登場する全てのスキルである】

「うーん、我ながらユニークなスキルを作ってしまったな。これ、ネット小説の世界では無双確定チートスキルじゃないか。まぁ、こんなことを記入したところで、直ぐに反映はされないだろう」

 これはどうせ、運営側がスキル開発する際に参考にするだけだろう。どっちにしろ、採用はされないはずだ。こんなスキルがあれば、ゲームバランスを壊すことになる。

 スキル内容の記入を終え、ゲームをスタートさせる。すると俺の分身がゲーム内に登場し、ベッドの上で横になっていた。

「さて、一旦トイレに行くとするか」

 イスから立ち上がってトイレに行こうとした瞬間、一気に目の前が真っ暗になった。

 そう言えば俺、二週間も寝ずにゲームをし続けていたな。

 人間の不眠の限界は、二週間前後で、それを超えると死に至るって、何かの本で読んだことがあるな。

 俺、死ぬのか? どうせ死ぬのなら、カレンを救うルートを見つけてから死にたかった。





「ぼっちゃま、大丈夫ですか!」
 
 あれ? 俺生きている?

 頭がボーッとする中、隣で女性の声が聞こえ、顔を向ける。するとそこにはメイド服に身を包んだ女性がいた。

「ぼっちゃま、うなされていましたが大丈夫ですか」

 上体を起こすとメイドさんが心配そうに俺のことを見てくる。

 あれ? どうして俺の家に、こんなに綺麗なメイドさんがいるんだ? いや、ここは俺の家ではないな。よく見ると豪華な家具もあるし、着ている服も違う。

「ぼっちゃま、顔色が優れませんよ」

 そう言い、メイドは俺の前に手鏡を持ってくる。

 な、なんだよこの顔は!

 鏡に映る容姿は、俺だけど俺じゃなかった。ベースとしては一緒でも、顔のパーツが違い、少し格好良くなっている。

 この顔には見覚えがある。俺が聖神戦争のゲームでキャラメイクした素顔だ。

 一度深呼吸をして瞼を閉じる。

 なるほど、どうやら俺は夢を見ているようだ。気を失う前に聖神戦争をしていたから、こんな夢を見ているんだな。

 横に立っているメイドさんを見て、視線を彼女の胸に向ける。

 それにしてもこのメイドさん、おっぱい大きいな。何カップあるんだ?

 彼女の胸に興味を持つと、ある邪な考えが浮かんだ。

 そうだ。これは夢なんだ。だったら彼女の胸を触っても、俺は痴漢にはならない。

 メイドの胸を揉む決心をした俺は、彼女の胸に手を置く。そして鷲掴みして思いっきり揉みしだいた。

 あれ? 夢なのに感触がある?

「ぼっちゃま! 何をやっているのですか!」

「グヘェ!」

 いきなり頬を思いっきり叩かれ、左頬にジンジンとした痛みが走る。

 だが、俺は痛みよりも困惑の方が強かった。

 あれ? どうして夢のはずなのに、こんなに痛む?

「ぼっちゃま、寝惚けていたとは言え、いきなり女性の胸を触るのはいけませんよ。元気であることが分かったので、私はこれにて失礼します。早く着替えて朝食を食べに来てください」

 メイドが語気を強めながら捲し立てると、部屋の扉を開けて出て行く。

 そんな彼女を見届ける中、指を顎に置いて思考を巡らせる。

 ちょっと待てよ。痛みを感じるってことは、これは夢ではなく現実だってことか?

 ネット小説では、ゲーム内転生って言うのが存在する。もしかして俺は、物語の主人公たちのように転生したってことなのか!

 とにかくものは試しだ。ステータス画面が出るか試してみよう。

 頭の中でイメージを膨らませると、脳内に俺のステータスらしきものが思い浮かんでくる。

 ユニークスキル【推し愛】

 効果【カレン・クボウへの愛を力に変え、その愛で他のユニークスキルを手に入れる。手に入れるスキルは聖神戦争に登場する全てのスキルである】

 ま、まじかよ! ユニークスキルとその説明だけだけど、俺の作ったユニークスキルが使えることになっている! 

 もしかしたら、これは神様が俺にくれたプレゼントなのかもしれない。ゲームの中に転生して、カレンを救ってくれと言っているに決まっている。

「神様! ありがとう! 俺、必ずカレンを救ってみせる! この世界での俺の推し活は、彼女を生かすための活動だ!」

 ガシャン!

 両手を天井に向けて声を上げると、何かが落ちた音が聞こえた。

 今の音は何だ?










最後まで読んでいただきありがとうございます。

面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!

など思っていただけましたら、【感想】や【お気に入り登録】をしていただけると、作者のモチベが上がり、更新が早くなります。

【感想】は一言コメントや誤字報告でも大丈夫です。気軽に書いていただけると嬉しいです。

何卒宜しくお願いします。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

学年一可愛いS級の美少女の令嬢三姉妹が、何故かやたらと俺の部屋に入り浸ってくる件について

マカロニ
恋愛
名門・雄幸高校で目立たず生きる一年生、神谷悠真。 クラスでは影が薄く、青春とは無縁の平凡な日々を送っていた。だがある放課後、街で不良に絡まれていた女子生徒を助けたことで、その日常は一変する。救った相手は、学年一の美少女三姉妹として知られる西園寺家の次女・優里だった。さらに家に帰れば、三姉妹の長女・龍華がなぜか当然のように悠真の部屋に入り浸っている。名門令嬢三姉妹に振り回されながら、静かだったはずの悠真の青春は少しずつ騒がしく揺れ始める。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

RPGのストーリー開始前に殺されるモブに転生した俺、死亡フラグを回避してラスボス助けたら女主人公が現れてなぜか修羅場になった。

白波 鷹(しらなみ たか)【白波文庫】
ファンタジー
――死亡フラグのあるモブに転生した。なぜか男主人公の姿で。 王国に孤児院の子供達を殺された少女ミュライトがラスボスのRPG『プリテスタファンタジー』。 物語後半でミュライトと主人公は互いに孤児院出身であることが分かり、彼女を倒した主人公がその死を悲しむ絶望的なエンディングからいわゆる「鬱ゲー」と呼ばれているゲームでもある。 そして、そんなゲームの物語開始前にミュライトと同じ孤児院に住んでいた子供に転生したが…その見た目はなぜか男主人公シュウだった。 原作との違いに疑問を抱くものの、このままストーリー通りに進めば、ミュライトと主人公が戦って悲惨なエンディングを迎えてしまう。 彼女が闇落ちしてラスボスになるのを防ぐため、彼女が姉のように慕っていたエリシルの命を救ったり、王国の陰謀から孤児達を守ろうと鍛えていると、やがて男主人公を選んだ場合は登場しないはずの女主人公マフィが現れる。 マフィとミュライトが仲良くなれば戦わずに済む、そう考えて二人と交流していくが― 「―あれ? 君たち、なんか原作と違くない?」 なぜか鉢合わせた二人は彼を取り合って修羅場に。 こうして、モブキャラであるはずのシュウは主人公やラスボス達、果ては原作死亡キャラも助けながらまだ見ぬハッピーエンドを目指していく。 ※他小説投稿サイトにも投稿中

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

処理中です...