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第二章
第一話 現れたのは百合属性
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「見つけた! やっぱりあなただったのね! 嬉しい! 会いたかったわ!」
俺たちに向けて、金髪をツインアップにしている女の子が飛び掛かってきた。いや、正確には俺の隣にいるカレンにだ。
女の子はカレンを押し倒し、そのまま自分の頬を彼女の頬に押し当てながら体をくねらせる。
どうしてアリサ・クロスがこの町にいる!
カレンを押し倒して欲望全開にしているこの女は、推しとは幼馴染の関係だ。聖神戦争がリリースされた後に、アップデートで実装されたキャラクターで、確かユニークスキルは【聖女】だったよな。
その名のとおり、回復に特化したユニークスキルで、怪我の治療や汚れを払うこともできる。
今、俺が見ている光景どおり、カレンのことがマジ好きなのだ。
ゲーム内ではカレンと合流することに成功すると、平然とカレンのことが好きだと言う。だが、本人は友達の好きだと思われているので、そこは同情してしまうほど、少し可哀想なキャラクターでもある。
彼女を主人公にしてプレイしたとき、俺は期待に胸を膨らませていた。彼女ならカレンを生き残らせることができるかもしれない。そう思い、彼女だけは普段以上に細かいルートまで行い、様々な分岐を試した。
しかしアリサも、結局はカレンの死の運命を打ち壊すことができなかった。
そのキャラがどうしてグロスの町にいるんだよ。時系列からして、この町にいるのはおかしいじゃないか。
これもあれか。ゲーム内に転生したモブの俺がカレンと合流したことで、各キャラの出発地点にも影響が及んでいるとでも言うのか。
まぁ、ポジティブに言えば、一旦サブストーリーをやったことで、カレンの運命が変わった影響によるものだと考えよう。
そうだ。今、新たな分岐のルートに入ったとするのであれば、一応ストーリーブレイクは成功したとも言える。
とりあえずは、アリサをカレンから引き離さないとな。
「はぁ、はぁ、カレンの胸、服越しでも分かるほど柔い! 顔を埋めているだけで癒される」
やばい。本当に引き離さないと十八禁のようなことをしでかしそうだ。
ゲームでは全年齢対象となっており、アリサのセリフは普通の同性愛的なセリフに抑えてある。だが、設定資料集では本気でカレンの処女を狙っていると表記されてあるのだ。
そのせいで薄い本では、彼女たちの裸体が描かれ、百合もの話が多く出回っている。
二人が地面の上で絡み合っている姿を見ると、薄い本の内容を思い出してしまった。
くそう。エロ本を書いた漫画家の先生たち、本当にいい仕事をしやがる。カレンとアリサのカップリングは絶対に認めないが、あまりの美しさに思わず衝動買いしてしまったぞ。
「ア、アリサ……どうして……こんなところに」
「そんなこと決まっているじゃないの! あたしがいるべき場所が、カレンのところだからよ。もう離さないんだから!」
カレンの胸に顔を埋めているアリサが、推しのスカートの中に手を突っ込もうとする。
「それ以上はさせるか!」
公共の場で、これ以上好き放題にさせる訳にはいかない。
少し乱暴になってしまうが、アリサの両手がカレンに触れていない隙を突いて、彼女の手首を掴む。そしてそのまま勢い良く、金髪ツインアップの女の子を引き離す。
「ちょ、ちょっと誰よあんた! 離しなさい! 痴漢!」
「人聞きの悪いことを言うな! お前がカレンの上に乗っかって、うらやま……けしからんことをしているからだろうが。カレンに変なちょっかいを出さないって言うのなら離してやる」
「ちょっかいなんて出していないわよ。これは二人のスキンシップ、アタシの愛情表現何だから!」
いくら愛情表現でも、行き過ぎだろう! 絶対に欲望に身を任せて、超えてはならない一線越えようとしたじゃないか。
「とにかく離しなさい! 衛兵を呼ぶわよ」
「ユウリ、とりあえず離してあげて。これ以上騒いだら、町の人たちが迷惑だよ」
立ち上がりながら、カレンは町の人たちの心配をする。
自分の身の危険よりも、町の人たちの迷惑を優先するなんて、本当にカレンは心優しいなぁ。カレンに言われたら、従わないわけにはいかないじゃないか。
握っていたアリサの腕を離すと、彼女はカレンの背後に逃げ、ジッと睨んでくる。
「何なのよあんたは、さっきからアタシの邪魔をして、あなたには関係ないじゃない」
「いや、関係あるね。何せ俺は、カレンの未来の旦那だからな」
「だ、旦那あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
どさくさに紛れて旦那宣言をすると、アリサは驚愕に満ちた表情で声を上げる。
「ユ、ユウリ! それはまだ早いわよ! そもそも、恋人にすら――」
「ど、どう言うことなのカレン! この男が言っていることは本当なの! 嘘よね! 全てこいつの妄想話よね! アタシ信じているから!」
どさくさに紛れてカミングアウトしたことが、余程ショックだったのだろう。アリサはカレンを自分の方に振り向かせると、肩を何度も揺すった。
「お、落ち着いて! ユウリが言っていることは、もしもの世界線のことだから」
興奮冷めないアリサを、カレンが必死に宥める。
アリサがここまで感情に激しく左右されるキャラだとは思わなかったな。
しばらく待ち、アリサが落ち着きを取り戻した頃、俺たちはこれまでの出来事を全て話た。
「うそ、カレンが死ぬ。そんな、そんなはずないわよ! 全てこいつの出任せに決まっているわ! カレンを自分のものにしたいから、そう言って近付いているだけなんでしょう! このケダモノ!」
公共の場で、堂々とカレンのスカートの中に手を入れようとしたやつには言われたくない!
そう口に出して言いたかったが、さすがに言える訳がなかった。ゲーム上の話だが、カレンはアリサのことを良き友人だと思っている。きっとこの世界でも同じはず。親友のような存在が、実は変態だと知ったら、ショックは大きいに決まっている。
大切な人を傷つけたくなかった俺は、困ったふりをして頭を掻くに止める。
「信じたくない気持ちは痛いほど分かるが事実だ。俺の未来予知では、カレンの運命はほぼ確定している。その未来を訪れさせないためにも、俺が彼女の側にいて守り、未来を変える方法を模索する必要がある」
「アリサ、私も本当は信じたくないよ。でも、ユウリは嘘を言っていない。私はそう信じている」
「分かったわ。カレンが信じるなら、アタシも信じる。でも、その役目はアタシが請け負うから。だからあなたはもう用済みよ。さぁ、今すぐ好きなところに行きなさい。シッシ!」
まるで野良猫を追い払うかのように、右手の甲を俺に見せて前後に動かす。
彼女は自分が救えないことを知らない。だからこんな態度を取ることができる。彼女の言動は一々ムカつくが、ここで俺が引くわけにはいかない。
「なら、お言葉に甘えさせてもらうよ。俺が好きな場所はカレンの隣だ。だから彼女の隣に居る」
トンチを利かせてカレンに近付こうとしたその時、アリサの足が俺の顔の前を通過した。
「チッ、間合いを見誤ったか。悪いけどカレンに近付こうとするのなら容赦はしないから。あなたが神の駒だと分かった以上、始末する正当な理由があるものね」
はぁ、結局こうなるのか。こうなったら仕方がない。アリサを拘束する。
「【肉体強化】【俊足】」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!
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俺たちに向けて、金髪をツインアップにしている女の子が飛び掛かってきた。いや、正確には俺の隣にいるカレンにだ。
女の子はカレンを押し倒し、そのまま自分の頬を彼女の頬に押し当てながら体をくねらせる。
どうしてアリサ・クロスがこの町にいる!
カレンを押し倒して欲望全開にしているこの女は、推しとは幼馴染の関係だ。聖神戦争がリリースされた後に、アップデートで実装されたキャラクターで、確かユニークスキルは【聖女】だったよな。
その名のとおり、回復に特化したユニークスキルで、怪我の治療や汚れを払うこともできる。
今、俺が見ている光景どおり、カレンのことがマジ好きなのだ。
ゲーム内ではカレンと合流することに成功すると、平然とカレンのことが好きだと言う。だが、本人は友達の好きだと思われているので、そこは同情してしまうほど、少し可哀想なキャラクターでもある。
彼女を主人公にしてプレイしたとき、俺は期待に胸を膨らませていた。彼女ならカレンを生き残らせることができるかもしれない。そう思い、彼女だけは普段以上に細かいルートまで行い、様々な分岐を試した。
しかしアリサも、結局はカレンの死の運命を打ち壊すことができなかった。
そのキャラがどうしてグロスの町にいるんだよ。時系列からして、この町にいるのはおかしいじゃないか。
これもあれか。ゲーム内に転生したモブの俺がカレンと合流したことで、各キャラの出発地点にも影響が及んでいるとでも言うのか。
まぁ、ポジティブに言えば、一旦サブストーリーをやったことで、カレンの運命が変わった影響によるものだと考えよう。
そうだ。今、新たな分岐のルートに入ったとするのであれば、一応ストーリーブレイクは成功したとも言える。
とりあえずは、アリサをカレンから引き離さないとな。
「はぁ、はぁ、カレンの胸、服越しでも分かるほど柔い! 顔を埋めているだけで癒される」
やばい。本当に引き離さないと十八禁のようなことをしでかしそうだ。
ゲームでは全年齢対象となっており、アリサのセリフは普通の同性愛的なセリフに抑えてある。だが、設定資料集では本気でカレンの処女を狙っていると表記されてあるのだ。
そのせいで薄い本では、彼女たちの裸体が描かれ、百合もの話が多く出回っている。
二人が地面の上で絡み合っている姿を見ると、薄い本の内容を思い出してしまった。
くそう。エロ本を書いた漫画家の先生たち、本当にいい仕事をしやがる。カレンとアリサのカップリングは絶対に認めないが、あまりの美しさに思わず衝動買いしてしまったぞ。
「ア、アリサ……どうして……こんなところに」
「そんなこと決まっているじゃないの! あたしがいるべき場所が、カレンのところだからよ。もう離さないんだから!」
カレンの胸に顔を埋めているアリサが、推しのスカートの中に手を突っ込もうとする。
「それ以上はさせるか!」
公共の場で、これ以上好き放題にさせる訳にはいかない。
少し乱暴になってしまうが、アリサの両手がカレンに触れていない隙を突いて、彼女の手首を掴む。そしてそのまま勢い良く、金髪ツインアップの女の子を引き離す。
「ちょ、ちょっと誰よあんた! 離しなさい! 痴漢!」
「人聞きの悪いことを言うな! お前がカレンの上に乗っかって、うらやま……けしからんことをしているからだろうが。カレンに変なちょっかいを出さないって言うのなら離してやる」
「ちょっかいなんて出していないわよ。これは二人のスキンシップ、アタシの愛情表現何だから!」
いくら愛情表現でも、行き過ぎだろう! 絶対に欲望に身を任せて、超えてはならない一線越えようとしたじゃないか。
「とにかく離しなさい! 衛兵を呼ぶわよ」
「ユウリ、とりあえず離してあげて。これ以上騒いだら、町の人たちが迷惑だよ」
立ち上がりながら、カレンは町の人たちの心配をする。
自分の身の危険よりも、町の人たちの迷惑を優先するなんて、本当にカレンは心優しいなぁ。カレンに言われたら、従わないわけにはいかないじゃないか。
握っていたアリサの腕を離すと、彼女はカレンの背後に逃げ、ジッと睨んでくる。
「何なのよあんたは、さっきからアタシの邪魔をして、あなたには関係ないじゃない」
「いや、関係あるね。何せ俺は、カレンの未来の旦那だからな」
「だ、旦那あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
どさくさに紛れて旦那宣言をすると、アリサは驚愕に満ちた表情で声を上げる。
「ユ、ユウリ! それはまだ早いわよ! そもそも、恋人にすら――」
「ど、どう言うことなのカレン! この男が言っていることは本当なの! 嘘よね! 全てこいつの妄想話よね! アタシ信じているから!」
どさくさに紛れてカミングアウトしたことが、余程ショックだったのだろう。アリサはカレンを自分の方に振り向かせると、肩を何度も揺すった。
「お、落ち着いて! ユウリが言っていることは、もしもの世界線のことだから」
興奮冷めないアリサを、カレンが必死に宥める。
アリサがここまで感情に激しく左右されるキャラだとは思わなかったな。
しばらく待ち、アリサが落ち着きを取り戻した頃、俺たちはこれまでの出来事を全て話た。
「うそ、カレンが死ぬ。そんな、そんなはずないわよ! 全てこいつの出任せに決まっているわ! カレンを自分のものにしたいから、そう言って近付いているだけなんでしょう! このケダモノ!」
公共の場で、堂々とカレンのスカートの中に手を入れようとしたやつには言われたくない!
そう口に出して言いたかったが、さすがに言える訳がなかった。ゲーム上の話だが、カレンはアリサのことを良き友人だと思っている。きっとこの世界でも同じはず。親友のような存在が、実は変態だと知ったら、ショックは大きいに決まっている。
大切な人を傷つけたくなかった俺は、困ったふりをして頭を掻くに止める。
「信じたくない気持ちは痛いほど分かるが事実だ。俺の未来予知では、カレンの運命はほぼ確定している。その未来を訪れさせないためにも、俺が彼女の側にいて守り、未来を変える方法を模索する必要がある」
「アリサ、私も本当は信じたくないよ。でも、ユウリは嘘を言っていない。私はそう信じている」
「分かったわ。カレンが信じるなら、アタシも信じる。でも、その役目はアタシが請け負うから。だからあなたはもう用済みよ。さぁ、今すぐ好きなところに行きなさい。シッシ!」
まるで野良猫を追い払うかのように、右手の甲を俺に見せて前後に動かす。
彼女は自分が救えないことを知らない。だからこんな態度を取ることができる。彼女の言動は一々ムカつくが、ここで俺が引くわけにはいかない。
「なら、お言葉に甘えさせてもらうよ。俺が好きな場所はカレンの隣だ。だから彼女の隣に居る」
トンチを利かせてカレンに近付こうとしたその時、アリサの足が俺の顔の前を通過した。
「チッ、間合いを見誤ったか。悪いけどカレンに近付こうとするのなら容赦はしないから。あなたが神の駒だと分かった以上、始末する正当な理由があるものね」
はぁ、結局こうなるのか。こうなったら仕方がない。アリサを拘束する。
「【肉体強化】【俊足】」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!
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