推しが必ず死ぬゲームのモブに転生した俺は、彼女を救うためにシナリオブレークします〜俺の推し活は彼女を生かすための活動です〜

仁徳

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第一章

第十話 カレンが二人に増えた!これで幸せも二倍!

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 馬車から出た俺たちの目に映った光景は、予想を遥かに超えるものだった。

 町にはモンスターが一体もいなかったのだ。町人は楽しそうに談笑しながら歩き、噴水前には子供たちが遊んでいて、とても長閑のどかな風景が広がっている。

「話が違うじゃないか。モンスターに襲われていない!」

 これはいったいどう言うことだ? まさか!

 状況を理解し、振り返って馬車から降りているであろう、女性を攻撃しようとする。

「ファイ……な!」

 しかし視界に映ったのは、俺たちをここまで連れてきた女性ではなかった。クリーム色の髪を三つ編みとハーフアップの組み合わせにしている女の子だった。

 カレンだと! バカな! 彼女は俺の隣にいる。

 そう思って横を見る。しかしカレンだと思っていたのはあの女性だった。

 いつの間に入れ替わった!

 横に跳躍して女性と距離を置いたときだ。

 カレンが懐から短剣を取り出し、鞘から抜いて刃を晒す。

「てりゃ!」

 彼女が声を上げると、向かって来たのは俺だった。カレンは手に持っている短剣の刃を突き立てようと腕を伸ばす。

「カレン、止めるんだ!」

 突然攻撃してきた推しに、止めるように言う。

 しかし彼女は聞く耳を持っていないようで、俺に刃を突き刺そうとしてきた。

 いったいどうしてしまったんだよ。なんでカレンが俺を攻撃してくる。

 裏切りとも取れる彼女の行動に、動揺を隠せない。

 さっきから心臓の鼓動が早鐘を打っているのが聞こえてくる。

 くそう、推しから刺されるなら受け入れるが、死ぬのはごめんだ。

 短剣が肉体を突き刺すよりもワンテンポ早く、後方に跳躍して刃を躱す。

「何!」

 その瞬間、俺は自分の目を疑った。

 カレンが自分に飛びかかり、取っ組み合いを始めていたのだ。

「カレンが二人になった」

 二人はお互いに掴み合い、地面に倒れると転がり合う。

 ちょっと待て! どっちが本物なんだ?

 俺を襲ったカレンが持っていた短剣は、おそらく本物であろうカレンが飛びかかったときに地面に落としている。

 これでは武器で判断することができない。

「ユウリ、こいつが偽物よ!」

「惑わされないで、こっちが偽物なんだから!」

 お互いが鏡写しのように指を差し合い、互いを偽物だと主張する。

 ど、どっちなんだ。両方髪を三つ編みとハーフアップの組み合わせにしているし、瞳の色も同じ赤、服越しの胸の膨らみも同じだ。

 な、何か方法があるはずだ。偽物を見分ける方法が。

 思考を巡らせているとあることに気付く。

「そうだ。本物なら俺が告白した内容を覚えているはずだ。今からそれを言ってくれ!」

「「えええええええええぇぇぇぇぇ!」」

 告白の内容を言ってもらえれば判別できる。そう判断したのだが、二人は驚きの声を上げて固まってしまった。

「どうした? 別に忘れた訳ではないだろう? 大通りで町民が見ている中。大声で告白したんだ。インパクトがありすぎて忘れられないと思うが?」

「それはそうだけど」

「でも」

 二人は頬を赤らめ、もじもじする。

 片方は偽物だとわかっているが、そんな態度を取られると、どっちも本物のような気がしてしまう。

 こうなったら二人とも本物のカレンってことにするか? 推しが二人いれば幸せも二倍だ。

 って、そんな訳あるか! いくら姿が一緒でも、片方は心が本物ではない偽物だ。

 内心ツッコミを入れ、おかしくなった思考を吹き飛ばす。

 こうなったら、心の目で見るしかない。

 両の瞼を閉じて神経を研ぎ澄ます。すると視界がなくなった分、他の感覚が鋭くなった。

 良い匂いの中に男臭さが混じっているぞ。

「分かった! 偽物はお前だ! 【氷柱アイシクル】!」

 スキルを発動すると、右側にいるカレンに向けて複数の氷柱を放つ。

 攻撃が飛んできた方のカレンは、後方に跳躍して俺の攻撃を躱した。

「ちょっと何をするのよ! 私は本物よ!」

 信じられないものを見たかのような眼差しを送ってくるが、そんなもので惑わされるかよ。

「何が本物だ! カレンの姿に化けて俺の推しを冒涜するな! 【ロック】!」

 今度は土属性のスキルを使い、敵の足元の地面を抉って空中に浮かせる。

 バランスを崩したカレンの偽物はその場で転倒した。

「くそう! どうしてバレた」

 どうやら自分の変装は完璧だと思い込んでいたみたいだな。上手く声まで似せていても、彼女の全てを真似することなどできない。

「どうしてお前が偽物なのか分かったのかって? そんなことは火を見るよりも明らかだ。お前からは本物の匂いがしない!」

 人差し指を向けながら、俺は堂々と見破った原因を告げる。

「カレンの髪からはな、シャンプーやリンスの良い香りが漂ってくるんだよ! 彼女の匂いを嗅ぐだけで幸せな気分になるぐらい俺に安らぎを与える! だが、お前からは部活帰りの男臭い匂いがした! カレンの体臭まで真似できなかった時点で、お前はカレンに成り代わることはできない!」

「ハハハなるほど匂いか。そこまでは計算していなかったよ。記憶を弄っても、、、、、、、、嗅覚までは誤魔化せなかったか」

 カレンの偽物がいきなり笑うと意味がわからないことを言い出す。しかし、今の俺にはそんなことなどどうでもよかった。

「お前な! カレンの姿をしているのだから、そんな下品な笑いかたをするな! カレンはもっと品のある笑い方をするぞ!」

「ハハハ! そうかい、そうかい。なら、次は気を付けるとしよう」

 気を付ける気がないのか、カレンの偽物は再び品のない笑い声を上げる。

「お前がもう一度カレンの姿になることはない! 何せここで、お前はリタイアされるのだからな!」

「いいや。まだリタイアするのは早いよ。周りを見てみなよ。モンスターに囲まれていることに気付かない?」

「何だと!」

 カレンの偽物から一旦目を離し、周囲を見る。すると、やつの言っていたとおりに数多くのモンスターに囲まれていた。

 ゴブリンにオーク、モンスターの中では割と弱い方だ。階級持ちではなければだけど。

「テメー、いつの間にモンスターをこんなに呼び集めやがった!」

 カレンの偽物の方に向き直る。しかしそこには、羽虫が一匹飛んでいるだけだった。

「しまった! 逃げられた!」

「ユウリ、どうする?」

 カレンが訊ねるも、今は様子を見るしかない。何十体ものモンスターを倒すには、状況を分析して適したスキルで倒さなければいけない。

 モンスターたちの出方が伺ってみるも、奴らはその場で立ち止まったり、俺たちを無視してどこかに歩き出したりしている。

 何だ? このモンスターたち、おかしくないか?

 疑問に思いながらも、一度瞬きをする。するとモンスターだったものが、人に代わっていた。

 何なんだよ、これ。いったい何が起きている。

 状況が理解できずにいると、後方から足音が聞こえて振り向く。

 金髪の髪をツーサイドアップにした女の子が、こちらに向かって走って来ていた。

「見つけた! やっぱりあなただったのね! 嬉しい! 会いたかったわ!」

「え! どうしてお前がここにいる!」

 彼女は俺たちを見ると笑みを浮かべ、跳躍して飛び掛かってきた。











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