推しが必ず死ぬゲームのモブに転生した俺は、彼女を救うためにシナリオブレークします〜俺の推し活は彼女を生かすための活動です〜

仁徳

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第二章

第三話 答えを教えてあげたのだから良い子良い子して!

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 目の前に浴衣姿のカーマが現れ、俺は唖然とする。

「どうして浴衣姿なんだよ」

「どうしてって、温泉の宿に泊まっているからじゃない。その場の雰囲気に合わせて衣装チェンジしてあげているのよ」

 ドヤ顔で愛の神は浴衣姿を見せつける。

「わざわざご苦労なことだ。それで、俺をこっちの世界に呼び寄せたってことは、スキル交換のポイントが貯まったってことか?」

「ワタシがあなたに会いたかったから。てへ」

 小さく舌を出し、カーマは右手で自身の頭を軽く叩く。

 これがカレンだったらめちゃくちゃ可愛いと思ってしまうだろうが、彼女相手だとなんとも思わない。寧ろ良い年して恥ずかしくないのかと思ってしまう。

 まぁ、神に年齢と言う概念が存在しているのかは怪しいものだが。

「これ以上ふざけると、一発殴るぞ」

「いやーん! こわーい! 暴力的な男は、女の子にモテないぞ」

 カーマは俺から離れつつ体を一回転させ、両手を口元に持ってくる。そしてうるうるとした目で俺を見てきた。

 言葉と態度が全然合っていない愛の神に対して、苛立ちが募ってくる。思わず殴りそうな気分だ。

「早く要件を言ってくれ。呼び出したってことはポイントが貯まったのだろう」

「もう少しカーマちゃんに構ってよ。あなたの魂を呼び出している今が、ワタシにとっての幸せの時間なんだから」

「要件を話したらもう少しだけ相手をしてやる」

「分かった。このままだったらあなたは聖神戦争でリタイアすることになるわ」

「は?」

 突然とんでも発言をするカーマに、思わず間抜けな言葉が漏れてしまった。

「だから、このままではあなたは聖神戦争に負けて、カレンを死ぬ運命から救うことができなくなるわよ」

「それってどういうことだよ!」

 俺が神の駒との戦いに敗れてカレンを守れなくなる? それはいったいどう言うことなんだ? カーマはあくまで愛の神だ。未来を見るようなことはできないはず。

「あなたは既に敵のスキルの影響下にあるのよ。多分気付いているでしょうけど、違和感を覚えていない?」

 カーマに問われ、俺は幾つか心当たりがあることを思い出す。

 グロスの町に向かう際に、頭痛が起きたときだ。俺の知っている情報と違うような気がした。そして俺たちを襲ったあの人物が、仮に俺の知っているあのキャラだった場合、不自然な行動を取っていることも不思議に思っていた。

 やっぱり、カーマは知っている。いや、最初から気付いていた。だからこそ、危険を知らせるために、俺を彼女の世界に呼び寄せたのだ。

「さて、問題です。今からいくつかのスキルカードをあなたの前に出すので、敵の策略から逃れることが可能とするスキルを選んでください。正解すれば、ポイントを消費しないでスキルを与えます」

 突然問題を出され、目の前に三枚のスキルカードが現れる。

 左のスキルは【瞬間移動テレポーテーション】真ん中は【音波探知エコーロケーション】右のスキルが【脳治療ブレインセラピー

 これらのスキルを見て、俺は呆れてしまった。

「なぁ、お前引っ掛ける気がないだろう。この選択肢にしている以上、答えを言っているようなものじゃないか」

「あれ? バレちゃった。てへっ」

 再びカーマは自身の頭を軽く小突き、小さく舌を出す。

「だって、あなたが負けたらワタシの願いも叶えられないもの。だからユウリには優勝してもらえるように、サポートしてあげないと」

 片目を閉じてカーマはウインクをすると、できる女をアピールしてきた。

 彼女の気持ちはありがたい。だけど俺の目的は、カレンを死の運命と言うストーリーから解放してやることだ。

 正直、本編のストーリーなんか興味はない。

 ただ、カレンの命を奪うデスイベントの破壊だけは、必ずやり遂げなければな。

 とりあえずは、この茶番を終わらせよう。

「この問題の答えは、【脳治療ブレインセラピー】だ」

「正解! では、正解者にはご褒美として、【脳治療ブレインセラピー】を付与します」

 カーマがパチンと指を鳴らしたその瞬間、俺の体の中にスキルカードが入っていく。

「スキル発動! 【脳治療ブレインセラピー】!」

 早速手に入れたスキルを使う。すると、俺の脳を侵食していたものが取り除かれていくのが、感覚的に分かった。

「どう? 今まで敵の策略に嵌っていたことを知った気分は?」

「最悪だな。つまり、モブの女だと思い込んでいたサク、、がギルドに入った時点で、俺はあいつの罠に嵌っていたってことだ」

 俺たちを襲ってきたのは、俺が最初に思い浮かんだ人物ではなく【認識阻害インピード・レゴグニション】というユニークスキルを持つ神の駒、サク・アケチだ。

 ギルドにあいつが入ってきたとき、やつはユニークスキルを使い、俺の認識を変えた。そのせいで認識を変えられた脳が勝手にモブの女だと思い込んだのだ。

 そして、グロスで行われるイベントは、魔物の襲撃ではない。サクが【認識阻害インピード・レゴグニション】のスキルを使い、カレンは仲間と同士討ちをして最後に倒されるといった内容だった。

 魔物の襲撃だと思い込んだのも、認識している知識をやつに変えられたのだ。

 本当にエグいことをしやがる。でも、これで俺は、やつのユニークスキルを無効する術を得た。もう、おくれを取ることはない。

「ありがとう。お陰でサクのやろうをぶっ飛ばすことができる」

 カーマに礼を言うと、彼女は頭を突き出してきた。

「お礼を言うのなら、頭を撫でてよ」

「どうして俺がお前の頭を撫でてやらないといけない。礼を言ったのだからそれで十分だろう」

「お礼なんかでは物足りないわよ。だから頭を撫でて」

 どうしてそこまでしないといけない。そう思って無視していると、彼女は急にニヤついてくる。

 あの顔はきっと、悪巧みを考えていそうな顔だ。

「へぇ、そうなんだ。まぁ、あなたが嫌ならそこまで言うつもりはないのだけど、ワタシにこんなお願いをさせたのはどこのどなたかな?」

 愛の神がパチンと指を鳴らす。その瞬間、どこからか俺の声が聞こえてきた。

『頼む! カレンが俺のことを嫌いになりませんように!』

 この言葉には覚えがあった。俺が心の中で、カーマに願ってしまった時の心の声だ。

「せっかくワタシが愛の神の力を使って、中を取り持ってあげたのになぁ」

 わざとらしく、カーマは俺にジト目を向けてくる。これでも拒絶するほど、俺の心は腐ってはいない。

「分かった。分かったよ。頭を撫でてやればいいのだろう」

 少しだけヤケになりながら、紫色の髪の上に手を置き、優しく彼女の頭を撫でる。

 はぁ、これがカレンだったら、心を込めて撫でてあげるのに。

 そんなことを思いながらも、俺は彼女の気がすむまで頭を撫で続ける。

「ありがとう。もう満足したわ」

「それはよかったな」

「ええ、気分が良いから、更にサービスしてあげるわ。いつもよりも三割引で、カレンへの愛と引き換えにスキルを付与してあげる」

 お、それは助かるな。サクとの決戦に向けて、新しいスキルを手に入れないと。

 カーマにラブポイントを聞くと、欲しかった【瞬間移動テレポーテーション】のユニークスキルが買えるポイントまで貯まっていた。なので、それとついでに【音波探知エコーロケーション】のスキルもポイントと引き換えにする。

「【瞬間移動テレポーテーション】と【音波探知エコーロケーション】ね。毎度あり。後、サービスで【知識の本ノウレッジブックス】のユニークスキルも付けて上げるわ。このユニークスキルを持っていれば、様々な知識を獲得できるから色々と便利よ」

 サービスで【知識の本ノウレッジブックス】をくれると言うが、正直に言って心から嬉しいとは思えない。だってゲームに関しての知識は持っているし、それ以外も最低限の知識は持っている。そんなに役に立つとは思えない。

 それにタダより怖いものはない。サービスとは言っているが、裏で何を考えているのか分かったものではない。

「【瞬間移動テレポーテーション】と【音波探知エコーロケーション】のご購入により、カレンへの愛が完全になくなったわ」

「だから言い方! そんな風に言わないでくれ! 俺のカレンへの愛はなくならねぇ」

「はい、はい。ごちそうさまです。まぁ、あなたがラブポイントを貯めてくれるお陰で、ワタシも計画を進めやすいわ」

「計画?」

 やっぱり、サービスの裏には何かあったんだ。

「計画ってなんだよ! 俺に聞かせろ! お前は何を企んでいる!」

「な、なんでもないわよ。それよりも、スキルを付与するから」

 気になったことをカーマが言ったので訊ねてみるが、彼女ははぐらかすと慌てて俺に購入したスキルを付与してきた。

 体内にカードが入り込み、これで新たなスキルを使うことができるようになる。

「それじゃあ閉店なのでお客さんは帰ってください。バイバーイ!」





「ちょっと待て! まだ話は!」

 声を上げて上体を起こすと、そこは部屋のベッドの上だった。

「勝手に呼んでおいて、都合が悪くなると追い返すのかよ。今度呼ばれたときは、問いたださないといけないな。俺のラブポイントを使って何をする気なんだよ」

 ベッドから降りようとすると、足に手紙が置かれてあることに気付く。

 手に取り、内容を確認するとカレンからだった。

『気持ちよさそうに眠っていたので、声をかけずに手紙を残します。私とアリサで温泉に入ってくるので、部屋にはいません』

「お、温泉だって!」











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