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第二章

第四話 おっぱいはどうしたら大きくなる?

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~カレン視点~



 私ことカレンは、アリサと一緒に温泉に向かっていた。

 廊下を歩いて女湯の暖簾を潜り、脱衣所に入る。

 周辺には他の女性の姿は見当たらず、この場だけで言えば貸切りのような感じだった。

 でも、さすがに温泉には他の宿泊客もいるよね。

 空いている棚の前で服を脱ぐと籠の中に入れていく。

 そんな時、どこから視線を感じた。

 何? この嘗め回すように絡み付く視線は? もしかして覗き!

「ぐへへ、それにしても相変わらずカレンは、いいおっぱいをしているわね」

 視線を気にしていると、アリサがやらしい目つきで私のことを見てくる。

「もう、変な視線を向けないでよ。勘違いしちゃったじゃない」

「あはは! ごめんなさい。でも、えい!」

「きゃ!」

 アリサに注意をしたその時、彼女は両手を前に突き出して私の胸に手を置き、そしてゆっくりと揉み始めた。

 彼女の手が私の胸を軽く押し、円を描くようにして動かされる。

「ちょっと、何やっているのよ!」

「この揉み心地、また大きくなった? まさか! あのユウリって男に揉まれて大きくなったわけじゃないでしょうね!」

 勝手に妄想を膨らませたアリサは感情的になったのか、乳首に指を置いてぐりぐり回し始める。

「も……もう……やめてよ……ひゃん!」

「別に女同士だから良いじゃないの。それにここにはあたしたちしかいない。どんなに声を上げても誰も止めてくれないわ」

「い……好い加減に……しない……ひゃん! 怒る……」

「口では嫌がっているけど、体は正直じゃない。アタシに揉まれて気持ちいいってあそこが反応しているわよ」

「もう好い加減にしてよ!」

 これ以上は好き勝手にしてはいられない。反撃とばかりに彼女の胸に手を置く。しかし、胸の膨らみはあるものの、彼女のおっぱいを揉むことが難しかった。

 なんとも言えない微妙な空気を感じてしまい、必死に次の言葉を探す。

「か、可愛いおっぱいだね」

 なんとか頑張って褒めると、アリサの顔がみるみると赤くなる。

「小さくって悪かったわね! これでも頑張れば谷間くらい作れるんだから!」

 私の言葉が挑発として捉えられたのか、腕を使って胸の谷間を作るアリサを見て、私は更に居た堪れなくなる。

「わ、分かったから、だからそれ以上は頑張らなくて良いからね。それよりも早く温泉で体を温めないと風邪を引いちゃうよ」

 これ以上はこの空気感の中にはいられない。そう思い、私は逃げるようにして脱衣所から温泉に出る。

 温泉は露天風呂となっており、西に傾き始めている太陽の光に反射して、水面がキラキラと光っていた。

 露天風呂の中も、脱衣場と同じで他の宿泊客の姿が見えない。本当に貸し切り状態だ。

 とりあえずは体を洗わないと。

 置いてある桶を使い、温泉を掬って洗い場に持って行く。

 髪と体を洗っていると、遅れてアリサがやって来て私の横に座った。

「ねぇ、どうしてカレンのおっぱいは成長し続けるのよ。何か秘訣があるの?」

「き、急に何を言っているのよ。別に何もしていないわよ。遺伝じゃないの?」

「アタシのママ、Eカップよ」

 幼馴染のカミングアウトに、言葉を失う。

 そこを言われると、もう何も言えなくなった。

 同じ女として、胸のコンプレックスは痛いほど分かる。私だって時々肩が凝ることだってあるもの。でも、それを言ってしまうと彼女は怒ってしまう。『自慢か!』って。

「バストアップの体操をするのはどうかな? アリサが私の胸を揉んだみたいに、自分の胸を揉めば」

「やったわよ。でも、所詮胸は脂肪の塊、揉むことで燃焼されて逆に小さくなるわよ」

「そうじゃなくて、好きな人に揉んでもらうの。好きな人に揉まれることで、女性ホルモンが分泌されて胸が大きくなるって聞いたわ」

「それじゃあ、カレンがアタシの胸を揉んでよ」

 胸を張って、泡だらけになった体を私に突き出す。

 うーん、そう言うつもりで言ったのではないのだけどなぁ。

 彼女は私のことを好きって言っているけど、友達としての好きではあまり効果が出ないと思う。

「私が揉んだところで効果は出ないわよ。ちゃんとアリサのことを大事にしてくれる異性の人じゃないと」

 説明をしながら、お湯の入った桶を体にかけて泡を洗い流す。

「それじゃあ、私は先に温泉に浸かっているから」

 先に温泉に入っていると言い、また逃げるようにこの場を去る。

 なんとか話題を胸から遠ざけないと。

 しばらくお湯を堪能していると、体を洗い終わったアリサがやってきた。

「ねぇ、カレンはどうしてあの男と一緒にいるの?」

「え?」

 幼馴染の言葉を聞き、思わず声が漏れる。また胸の話になるだろうと覚悟を決めていただけに、驚いてしまった。

「あの男はカレンの未来を知っている。だからあなたを守るために、一緒にいようとするのは分かるわ。アタシが彼の立場ならきっと同じことをするもの。でも、なんか可笑しくない」

「おかしい?」

 アリサの言っている意味が分からず、首を傾げる。

「だってそうじゃない。歯が浮くような言葉を平然と言って告白して、それでカレンの側に居るようになったのでしょう。それってきっとカレンの体を狙っているだけのヤリチンよ」

「や、やりごにょごにょだなんて」

 はっきりとヤリチンとは言えず、言葉を濁す。

「でも、宿の部屋は別々にしたじゃない」

「甘いわ。男なんてみんなケダモノよ。隙を見せれば襲われて、良いように体を弄ばれて最後は捨てられるに決まっているわ」

「ユウリはそんな人じゃないもん! 勝手にあの人を悪く言わないでよ」

 彼女の言葉に、私は思わず声を上げてしまった。

 もし、彼が私の体目当てで近付いたのだとしたら、あのとき感じた一生懸命さが全部嘘ってことになる。それはない。ユウリはそんなことはしないって信じているもの!

 その根拠は明白、最初から体が目的なら、私は既に処女を失っているもの。強引に性的欲求を満たすことを可能にする程の力を、彼は持っているのだから。

 幼馴染に対して嫌な気持ちになった私は、勢いよく温泉から出ると、そのまま脱衣所へと向かった。

 どうしてこんな態度を取ってしまったのか、私自身も分からない。

 でも、なんとなくユウリのことを悪く言われるのが嫌だった。

 どうしてユウリのことを悪く言うのよ。彼はアリサに何も悪いことをしていないじゃない。

 アリサが来る前に、最低限の水分だけをタオルで拭き取り、濡れたままの髪の状態で浴衣に着替える。

 そして脱衣所から廊下に出て、部屋に戻ろうとした。

 もう、アリサは部屋に入れてあげない。あんなことを言う人は、友達じゃないもん。

 そんなことを考えていたからか、私は廊下の角から出てきた人に気づかず、ぶつかってしまった。

「ごめんなさい。ちゃんと前を見ていなくて」

「カレンか。温泉に入っていたのか?」

 知っている人の声が聞こえて顔を上げると、黒い髪に黒い瞳の青年だった。

「ユウリ」

「危ないから気をつけろよ。それにしても、カレンは本当に可愛いな。」

「え?」

 突然彼の言葉に驚き、私は小さく声を出す。

 そしてユウリが私の首の後に手を回し、ギュッと抱きしめてきた。

「ち、ちょっと。何を」

「カレン、俺はお前のことが好きだ。お前はどうなんだ? そろそろ告白の返事を聞かせてくれないか?」

「え、ええ、ちょっと待って、まだは……や!」

 ユウリに力強く抱きしめられ、心臓の鼓動が激しく高鳴る。でも、そんなのは一瞬だった。首筋に痛みを覚え、急に意識が遠のき出す。

「ハハハ、やっぱり引っかかってくれたか。流石に仲間だと油断してしまうな。お前はあの男を誘き寄せるためのエサとして使わせてもらう。さて、一度こいつをお持ち帰りした後に、あの女をリタイアさせるか。観察したところ、知り合いのようだからな」

 この男、ユウリではない。逃げて。アリ……サ。











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