推しが必ず死ぬゲームのモブに転生した俺は、彼女を救うためにシナリオブレークします〜俺の推し活は彼女を生かすための活動です〜

仁徳

文字の大きさ
21 / 41
第三章

第一話 今度こそ推しとのデート

しおりを挟む
「「デ、デート!」」

 俺のデート宣言に、カレンとアリサは驚きの声を上げる。

 まぁ、そうだよな。いきなり理由もなくデートをしようと言えば、驚きもする。

「あなた、何急に変なことを言っているのよ! どうしてあの女の対策として、カレンがデートしなければいけないのよ! おかしいでしょう」

 案の定、アリサが椅子から立ち上がり、凄い剣幕で言葉を捲し立てる。

「まぁ、待てよ。ちゃんと説明するから落ち着いてくれ」

 アリサに落ち着くように促すも、彼女は興奮を冷めやらない様子だ。

 とにかく彼女が協力的になってくれないと、コワイを倒すことができない。

 どうにか落ち着きを取り戻して、しっかり話しを聞いてもらわないと。

 興奮した金髪ツインアップの女の子を宥める方法を思案していると、カレンが俺の額に触れたときのことを思い出す。

 そうだ。アリサも俺と似た様なものだ。なら、カレンが特効薬となってくれるはず。

「カレン、悪いけどアリサを宥めてくれないか」

「うん、分かった。ほら、ユウリの話しを最後まで聞こうよ。やましいことを考えていそうなときは、断ればいいのだから」

 カレンがアリサの頭を撫でる。すると彼女の頬が緩み、ニヤついた笑みを浮かべる。

 彼女のご機嫌を取るためとは言え、正直羨ましい。

「まぁ、カレンの言うとおりね。何かあれば、アタシが守ってあげれば済むことだもの」

 推しが幼馴染の頭から手を退けると、アリサは表情を引き締める。

「ゴホン。では、どうしてカレンとあなたがデートをする必要があるのか、説明をしていただけるかしら?」

 アリサが理由を話す様に促したことで、ようやく話題を進めることができた。

「分かった。カレンには一度説明しているのだが、俺のユニークスキルは【推し愛】なんだ」

「押し合い? 相撲でもするの?」

「押し合いではなく推し愛だ! 言葉は一緒でもニュアンスが違う。ようは異性と一緒にいることで幸せを感じたり、ドキドキしたりすることで、俺に新たな力が宿る。それが【推し愛】」

 さすがに『カレンへの愛』とは言えなかった。正直に詳細を話すと、またアリサが暴れる可能性がある。

「なら、カレンじゃなくてもアタシで良いじゃないのよ。その……デートの相手は」

 金髪ツインアップの女の子の言葉を聞き、内心ため息をつきたくなる。

「お前、俺の話しを聞いていたのか? 異性への幸せやドキドキが必要なんだ。アリサとデートしたところで意味がないだろう。それとも何か? アリサは俺とデートがしたいのか?」

「え! そうなの?」

 アリサを揶揄からかってみると、彼女の顔が次第に赤くなる。そして鋭い視線で俺を睨みつけてきた。

「そ、そん訳がないでしょうが! アタシはあんたを揶揄うために言っただけよ! どうしてアタシの狙いどおりにびっくりしないのよ! びっくりしなさいよ!」

「そんな無茶な。と、とにかく、コワイを倒すために必要なユニークスキルを獲得するには、カレンとデートして俺が幸せな気持ちになったり、ドキドキしたりする必要があるんだ」

 まったく、この女はこんな大事ときに何を考えているんだよ。今はふざけている雰囲気ではないだろうに。

「それで、デートのことだけどどうかな? カレンが嫌なら、他の方法を考える必要が出てくるけど」

 平静を保つ振りをしてカレンに訊ねる。

 正直、俺の心臓の鼓動は早鐘を打っていた。もし、彼女が断れば、俺はしばらく立ち直れないかもしれない。

 天運に身を任せるしかない状況の中、俺は心の中で神様にお願いする。その瞬間、脳裏にカーマの姿が映った。

 またこの件で揶揄ってくるかもしれないな。

 ジッと彼女を見つめ、返答が来るのを待つ。

「分かった。良いよ」

 カレンの口からデートを了承してもらった瞬間、俺はその場で飛び跳ねたい気持ちになった。

 だって、これが初デートなんだぜ。前回はなんやかんやで、デートもどきになってしまったけど、今回は正真正銘のデートだ。ファンとして喜ばずにはいられるかよ。

「分かったわ。カレンがそう言うのなら、アタシも特別に許可します。だけど、アタシも二人を邪魔しない様に、後ろから付いて行くわ。何が起きたとき対処できる人が必要だから」

 アリサが俺に指を向け、俺たちを尾行することを宣言する。

 正直に言ってくれるのはありがたいけど、尾行は気付かれない様にするものではないのか? それだと尾行の意味がないような?

 いや、それが彼女の作戦なのかもしれないな。敢えてつけていることを開示することで、俺が心から楽しめない様にしているのかもしれない。

 アリサ、本当に協力するつもりがあるのか?

 まぁ、最終的には俺次第だ。彼女はいないものだと思って、心から楽しむ様に心がければ、愛が溜まって行くはず。

「分かった。それじゃあ、明日の十時に中央公園の噴水前で待ち合わせをしよう」

「どうしてわざわざそんな回りくどいことをするのよ。一緒にこの屋敷を出れば良いじゃない」

 待ち合わせの場所と時間を告げると、アリサがいちゃもんを付けてくる。

 何を言っているんだよ。同時に出たらデートじゃないじゃないか。いや、待てよ。逆に一緒に屋敷を出ることで、同棲の雰囲気を醸し出すことができるな。

 いやいや、それも捨て難いがまずはデートだ。同棲は何かとすっ飛ばしている感じがする。

「これも敵を倒すためだと思ってくれ。このとおり!」

 両手を合わせて彼女たちに頼み込む。

「私は別にそれで良いよ。ユウリが楽しんでくれないと意味がないからね」

「分かったわよ。二人が家から出た後に監視した方が、何かと都合がいいのだけどね。今回は言うことを聞いてあげる」

 どうにか初デートの憧れである待ち合わせを承諾してもらい、安堵する。

「ぼっちゃま、お部屋の準備が整いました」

「ありがとう。二人を案内してくれ」

「畏まりました。お二人共、どうぞこちらにお越しくださいませ」

 カレンたちがメイドに部屋まで案内されると、俺も自分の部屋に戻る。

 ベッドに倒れる様にして横になると、明日に備えて早めに就寝することにした。

 今日は一日色々なことがありすぎて疲れた。今日はぐっすりと眠れそうだ。

 部屋の明かりを消して瞼を閉じると知らない間に眠りに就く。





 翌朝、俺はメイドが起こしに来るよりも早く目が覚めた。

 夢の中でカーマが現れるかと思ったが、そんな心配は杞憂に終わった。

「さて、今日はカレンとのデートだ。気合いを入れないとな」

 そうは言うものの、特にオシャレをするアイテムは何も持っていない。昨日と同じ格好で同じ髪型という、何も面白味のない格好だ。

 まぁ、俺にオシャレを求められても困ると言うのが正直なところだ。

 部屋の中で適当に時間を潰すが、居ても立っても居られない状況に陥る。まだ九時になったばかりにも関わらず、屋敷を出ると中央広場の噴水へと歩みを進める。

 あー、緊張するなぁ。だって、カレンとデートなんだぜ。緊張しない方が可笑しいって。

 中央広場の噴水前に辿り着き、手持ちぶさたでいる中、カレンが来るのを待つ。

 仕方がないので、噴水に移る自分の顔を見て前髪を弄った。

「お待たせ!」

 背後から声が聞こえ、振り返る。すると、そこにはカレンではない女の子が立っていた。

 どうしてお前がここにいる!










最後まで読んでいただきありがとうございます。

面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!

など思っていただけましたら、【感想】や【お気に入り登録】をしていただけると、作者のモチベが上がり、更新が早くなります。

【感想】は一言コメントや誤字報告でも大丈夫です。気軽に書いていただけると嬉しいです。

何卒宜しくお願いします。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

付きまとう聖女様は、貧乏貴族の僕にだけ甘すぎる〜人生相談がきっかけで日常がカオスに。でも、モテたい願望が強すぎて、つい……〜

咲月ねむと
ファンタジー
この乙女ゲーの世界に転生してからというもの毎日教会に通い詰めている。アランという貧乏貴族の三男に生まれた俺は、何を目指し、何を糧にして生きていけばいいのか分からない。 そんな人生のアドバイスをもらうため教会に通っているのだが……。 「アランくん。今日も来てくれたのね」 そう優しく語り掛けてくれるのは、頼れる聖女リリシア様だ。人々の悩みを静かに聞き入れ、的確なアドバイスをくれる美人聖女様だと人気だ。 そんな彼女だが、なぜか俺が相談するといつも様子が変になる。アドバイスはくれるのだがそのアドバイス自体が問題でどうも自己主張が強すぎるのだ。 「お母様のプレゼントは何を買えばいい?」 と相談すれば、 「ネックレスをプレゼントするのはどう? でもね私は結婚指輪が欲しいの」などという発言が飛び出すのだ。意味が分からない。 そして俺もようやく一人暮らしを始める歳になった。王都にある学園に通い始めたのだが、教会本部にそれはもう美人な聖女が赴任してきたとか。 興味本位で俺は教会本部に人生相談をお願いした。担当になった人物というのが、またもやリリシアさんで…………。 ようやく俺は気づいたんだ。 リリシアさんに付きまとわれていること、この頻繁に相談する関係が実は異常だったということに。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

追放された最強ヒーラーは、美少女令嬢たちとハーレム生活を送る ~公爵令嬢も義妹も幼馴染も俺のことを大好きらしいので一緒の風呂に入ります~

軽井広@北欧美少女 書籍化!
ファンタジー
白魔道師のクリスは、宮廷魔導師団の副団長として、王国の戦争での勝利に貢献してきた。だが、国王の非道な行いに批判的なクリスは、反逆の疑いをかけられ宮廷を追放されてしまう。 そんなクリスに与えられた国からの新たな命令は、逃亡した美少女公爵令嬢を捕らえ、処刑することだった。彼女は敵国との内通を疑われ、王太子との婚約を破棄されていた。だが、無実を訴える公爵令嬢のことを信じ、彼女を助けることに決めるクリス。 クリスは国のためではなく、自分のため、そして自分を頼る少女のために、自らの力を使うことにした。やがて、同じような境遇の少女たちを助け、クリスは彼女たちと暮らすことになる。 一方、クリスのいなくなった王国軍は、隣国との戦争に負けはじめた……。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

処理中です...