推しが必ず死ぬゲームのモブに転生した俺は、彼女を救うためにシナリオブレークします〜俺の推し活は彼女を生かすための活動です〜

仁徳

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第四章

第一話 神をコケにしてただで済むとは思うなよ!

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~ゼウス視点~



 おや? どうして俺様は仰向けで倒れているんだ?

 俺様ことゼウスは、気がつくと冷たい地面の上に倒れていた。

 体を動かそうとするも、起き上がることができない。全身に痛みが走り、火傷を負っているのか熱を感じていた。

 くそう。人間の体は本当に脆いな。俺様が憑依していることで加護を得ていなければ、この肉体は消滅していたに違いない。


「【治療大メガヒール】」

 回復スキルを使い、人体の細胞を活性化させて肉体の治療を開始する。回復力の高いスキルを使用したことで、数秒で体中に走る痛みから解放された。

 起き上がると、俺様は怒りの感情が湧き上がった。おそらく鏡を見れば、酷く顔を歪めているかもしれない。

「おのれ、おのれ、おのれ! 下等生物如きが、俺様に膝を付かせるどころか無様に気絶させるとは! 絶対に許さねぇ!」

 上空を見上げ、大声で叫ぶ。

 だが、正直驚きを隠せなかった。いくら全力の十分の一しか出していなかったとはいえ、俺様がこうも無様に倒されるとは思っていなかったからだ。

 これはあまりにも可笑しすぎる。何度も時を巻き戻し、幾度も聖神戦争を繰り返していたが、こんなケースは初めてだ。

 やはり今回は何者かが介入している。いったい誰だ? どの神が俺様の娯楽を邪魔しようとしている。

 この聖神戦争と言う願いを叶えるゲームに参加している神々は、一応把握している。つまり、まだ介入していない神が、俺様に申請もなしに勝手に転生者をこの世界に送り込んでいると言う訳だ。

 本当に許し難いことだ。まずはその神を見つけ出すところから始めるべきだ。あの男をリタイアさせるのは、その後からでも良いだろう。

「【瞬間移動テレポーテーション】」

 転移スキルを発動すると、俺様の視界は町から城の玉座の間へと移り変わる。

 黄金で作られた玉座に座り、頬杖を付く。

 いったい誰だ? どの神が疑わしい。

 空中に水晶の球体を出現させ、神々のリストを眺める。

「あー、調べていてイライラするではないか! どうして神々はこんなに多すぎるんだ!」

 八百万やおよろずの神々と呼ばれているように、この世の神は数多く存在する。それに神が神を産む他にも、人間が神となるケースもある。

 本当にせないことだ。下等生物が神と同等になるなんて。

「くそう! これでは時間がかかってしまうではないか!」

 イライラが募り、思わず声を上げる。

「あらあら? どうしましたか? そんなに声を荒げて? あんまり興奮されますと、脳血管が切れてしまいますよ?」

 声を荒げていると、一人の女が俺様の前に現れた。ピンクの髪をツインテールにしており、頭にはキツネ耳のカチューシャを嵌めて、巫女服を着ている。

 こいつは確かタマヨ・ミコマイだったな。

「なんだ? タマヨ、俺様に指図する気か?」

 苛立っていることもあり、仲間道具を睨み付ける。

「そんなに怖い顔をしないでくださいまし。それとワタクシは、タマヨではなくマリアとお呼びくださいませ」

 睨みに動じることもなく、彼女は堂々と俺様に要求をしてきた。

 この女も肝が据わっている。まぁ、そんなところは気に入っているのだがな。

「それで、何をそんなに苛立っておりますの?」

「サクとコワイがやられた。そして十分の一しか力を使っていなかったとはいえ、俺様が気を失ってしまう出来事が起きた」

「みこーん! なんと!」

 苛立っている理由を教えてやると、彼女は奇妙な言葉で驚く。

「そ、そんな人が居られるのですか! サクとコワイを倒し、カムイ様を無様に叩きのめす程の強者が!」

 俺様の言葉が意外だったのか、タマヨが興奮して訊ねて来る。

「その人物とはいったいどこのどなたなのですか! お名前を教えてくださいまし!」

 珍しくも、タマヨがこの話題に食い付いてきた。

 くそう。そんなに俺様を一度倒したやつのことが気になるのか。

 まぁ、いい。名前くらいは教えてやってもいいだろう。

 えーと、確か名前は……そうだ。確か一緒にいた女たちがユウリと言っていたな。

「ユウリだ」

「ユウリと言うお方なのですね。覚えましたわ」

 やつの名を教えてやると、彼女は踵を返して俺様に背を向ける。

「おい、まさか」

「ええ、あなた様を倒すほどの人物に興味があります。同胞を倒された仇でもありますので、報復として接近を試みてみます」

「待て、あやつにはまだ手を出すな! ユウリを裏で操っているやつを見つけ出すまでは、あの男に手を下すのを禁じる! これは命令だ!」

 勝手な行動を止めるように言い、殺気を放つ。

 こうすれば、いくらタマヨであっても俺様の言うことを聞くだろう。彼女も叶えたい願いを持っているはずだからな。

「分かりました。では、報復を止めて監視をいたしましょう。それなら許して頂けますよね」

 タマヨは言葉を吐き捨てると、俺様の返答を待たずに廊下に繋がる扉へと向かって行く。

 彼女は去り際にステップを踏みながら軽やかな足取りで歩いていた。

 あいつも何かを企んでいるような気がするな。

 あの女、絶対に監視だけでは済まさないだろうな。まぁ、仮に裏切ったとしても俺様には勝てない。ユニークスキル【不死身イモータリティー】がある限り、俺様は絶対にリタイアしないようになっている。

 そして何度も俺様がこの聖神戦争を優勝し、願いとして時を巻き戻す。

 俺様は飽きるまで、下等生物やバカな神々共をオモチャにして遊ぶのだ。

「クハハ! クァハハハハ!」

 笑い声を上げ、俺様は水晶玉にユウリの姿を映し出す。

「さて、タマヨの監視も兼ねて、ユウリが今どうなっているのかをしばらく見物するとしよう」

 水晶玉を注視していると、ユウリの姿が映り出される。

「ほう、あやつがユウリに接触したか。面白い。お前たちが手を組むのか、それとも手を組まずに別々の道を選ぶのか。それを酒の肴にして見届けてやるとしよう」

 指をパチンと鳴らすと空中にワインの入った瓶とグラスが現れる。ビンのコルクを外してグラスに注ぎ、匂いを堪能してから口に含む。

「さぁ、ユウリよ。貴様はこの選択肢に対してどっちを取る? 貴様の選択肢によって、俺様の行動も変えてやろうではないか」

 ニヤリと笑みを浮かべながら、俺様は事の顛末を見守る。
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