推しが必ず死ぬゲームのモブに転生した俺は、彼女を救うためにシナリオブレークします〜俺の推し活は彼女を生かすための活動です〜

仁徳

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第四章

第三話 推し愛がゴミすぎるだと!絶対に許さねぇ!

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「カレン!」

 スライムの触手が、クリーム色の髪を三つ編みとハーフアップの組み合わせにしている女の子に向けて放たれる。

 間に合え!

「きゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 カレンが悲鳴を上げる中、俺はアリサを抱き抱えた状態で敵に背を向け、推しの盾となった。

 背中に無数の触手が突き刺さる感触があるものの、痛みは感じない。

 一応ゲームの設定どおり、痛みを感じないようになっているのか。

『少々予定とは違ったけど、上手く君の遺伝子情報と記憶、それにユニークスキルをコピーすることに成功した』

 背後からスライムの声が聞こえる中、俺は振り返ることはできない。この時の俺は、やつに脳を侵されて体を動かすことができないのだ。

「ユウリ、大丈夫なの?」

 カレンが心配そうな表情で聞いて来るが、脳を一時的に支配されているために、問い掛けに答えて上げることができない。

「ねぇ、何か言いなさい。本当に大丈夫なの!」

 今度はアリサが訊いてくるも、無言を貫くことしかできない。

 二人とも心配してくれているのにすまない。今の俺はどうすることもできないんだ。

『さて、君の遺伝子情報と記憶を使って変身するとするか』

 背中に突き刺さった触手が抜け、俺はようやく自由を取り戻す。

「二人とも済まない。一時的に体を支配されていたから、返答することができなかった」

 彼女たちに謝ると、カレンから砂糖と塩の入った瓶を受け取り、踵を返す。

 すると、スライムの形が変わっていくのが見えた。

 ドロドロだったものが人形になって行くと、黒髪に黒い瞳のイケメンの姿に変身した。

「うそ、スライムがユウリになった」

「あのスライム、変身能力があるの」

「あれがやつのユニークスキル【マネットライム】だ」

 マネットライムは、元々別の作品に登場するスライムだが、この聖神戦争では、スキルとして逆輸入されている。

「へー俺のユニークスキルを知っているんだ。その通りだよ。マネットライムは、身体の一部を蚊の針と同じ構造に変化できるんだ。これにより、八十ミクロンサイズの針で肉体を刺して神経に侵入。そして脳に移動すると記憶を司る海馬かいばから、記憶や遺伝子情報を己の核にインプットさせることができる。それにより、情報を奪ったものに変身することができるってわけだ」

 俺の姿で俺の声を出し、スライムだったものが原理を語り出す。

「えーと、君のユニークスキルは【推し愛】……何これ? 俺にとってはゴミスキルじゃないか。どうやって愛を貯めろっていうんだ」

 やつの言葉を聞いた瞬間、俺の堪忍袋の尾が切れた。

「ゴミだと……俺の愛がゴミだと言いたいのか!」

 カレンへの愛をバカにされたかのように捉えてしまい、ブチギレる。

 直ぐに瓶の蓋を開け、中に腕を突っ込むと砂糖をぶん投げる。

 すると、やつの肉体がドロドロに溶け出した。

「溶けてりゅううううううぅぅぅぅぅぅぅぅ! 俺の体が溶けてりゅううううううぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

 俺の姿に変身していたものはスライムの体に戻り、更にそのドロドロの肉体までが溶けて一部分が無くなっていた。

 スライムの肉体は、コロイドと呼ばれる現象により肉体を保っている。

 体内のポリビニルアルコールは高分子の鎖であり、ホウ砂のイオンが鎖を留めて網目構造を作っている。

 この小さな部屋に水分子が入り込むことで、ぷにぷにとした弾力のある身体になっている。

 ナメクジに塩をかけると溶けるように、砂糖が身体に触れると、砂糖の粒子が浸透圧によって水分が出て、ドロドロになったのだ。

 それにしても、一時的とは言え、俺の姿であんな情けない声を出さないでほしかった。

 まぁ、そんなことは今は置いておくとして、相当ダメージを受けているみたいだが、こんなものではまだ俺の気は晴れない。

 俺の愛を侮辱した罪は万死に値する。

「お前だけは絶対にリタイアさせてやる!」

『まずい! ここはひとまず逃げさせてもらう!』

 スライムは逃げようと玄関に向かって行くが、当然逃すつもりはない。

 今度は塩の入っている瓶の蓋を開け、逃走しようとするスライムに向けて投げ付ける。

 白い粉が表面に付着した瞬間、スライムの肉体から水が噴き出し、弾力を失って動くことができなくなる。

 食塩をかけたことにより、スライム内の水と周りにかかっている塩化ナトリウムとの間で、濃度の違いが生じ、塩化ナトリウムが高張液となって、スライム内の水分が塩化ナトリウムの濃度差を埋めようとするため、水が出てきた。

 水分がなくなったスライムは、身体の構造を維持することができなくなり、あのような状態となったのだ。

 体内のものをぶち撒け、身動きが取れないスライムにゆっくりと近付く。

『済まなかった! この通り、降参だ! 降伏するから命だけは! カムイを倒すまでは、俺はリタイアする訳にはいかない』

「悪いが、俺のユニークスキルをバカにしたやつを許す訳にはいかない。安心しろ、お前の分まで俺が活躍してやるから」

 スライムは、脳と心臓の役割を持つ核を破壊しない限り、死なない生き物だ。

 まん丸で真っ赤な球体を破壊すれば、こいつは聖神戦争からリタイアすることになる。

 肉体強化をしてある今の俺なら、拳を叩き込んだだけで核を破壊できるはず。

「こいつで終わりだ! 恨むのなら、何も考えなしに口走った自分自身を恨め!」

「はいストップです。これ以上彼を痛め付けるのでしたら、わたくしが相手になって差し上げます」

 屋敷の扉が開かれ、中から黒髪ロングの髪にセーラー服を来た女の子がこちらに歩いて来た。
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