ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第十一章

第九話 アイリス誘導戦

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~リュシアン視点~



「みんなおはよう。今日も元気にケガのないように依頼を受けましょう。では、今から依頼を配ります」

 エレーヌさんの挨拶が終わり、彼女は所属しているハンターに仕事を配る。

 今日、俺が担当する仕事は何だろうか? 最近は討伐系の依頼が多いから、そっち関連かもしれないな。

 仕事内容を予想している中、ギルドの外が何やら騒がしいことに気付く。

 うん? 外が騒がしいな。それに今、悲鳴のようなものが聞こえなかったか?

 外の様子が気になっている最中、ギルドの扉が思いっきり開かれる。そして四十代と思われる中年の男が血相を変えて入ってきた。

「ハンター助けてくれ! いきなり水色の髪をサイドテールにしている女が村を襲ってきた。あいつは人間じゃない。化け物だ!」

「何だって!」

 男の言葉を聞き、思わず声を上げる。村が襲われていると知り、直ぐにギルドの外に出た。

 多くの村人が逃げ惑い、建物には火災が発生して炎に包まれている。

「リュシアン君」

「リュシアンさん」

リュシアンピグレット

「リュシアン王子」

 少し遅れて四人が駆け付けた。彼女たちも外の様子を見て、目を大きく見開いている。

「見つけた。やっぱりギルドにいたわね」

 上空から声が聞こえ、空を見る。そこには水色の髪をサイドテールに纏め、背中から翼竜の翼を生やした女の子が見下ろしていた。

「アイリス!」

 上空にいる女の子の名前を叫ぶ。

「さぁ、リュシアンもテレーゼも私の炎で灰にして上げる」

 アイリスが息を吸うように口をすぼめる。そして吐き出すように口を大きく開けると、彼女の口から火炎が吐き出された。

 このままではギルドまで火の海に包まれる。

「そうはさせるかよ!」

 腰に帯刀させている太刀から鞘を抜き、柄に嵌めてある水の属性玉に意識を集中させる。

 すると空気中の水分子が集まり、知覚できる量にまで膨れ上がらせると、火炎に向けて放つ。

 炎と水が接触し、水蒸気が発生した。彼女の吐く火炎は次第に勢いが弱まっていく。

 どうやら炎の発熱量に比べ、俺の冷却効果が上回ったみたいだな。

「チッ」

 炎が掻き消され、迫り来る水の塊に危険性を感じたのか、アイリスは横に移動して躱した。

 アイリスは俺とテレーゼを狙っている。なら、俺たちがこの村から離れれば、これ以上被害が出ることはない。

 そうなると誘導先だけど、深緑の森は被害を拡大するだけだし、ルーレヌ水没林では水着を来ていないから普段以上に動きが鈍くなってしまう。近くで残された場所と言えばエンゴー火山だな。あそこなら火炎を吐かれても被害は小さいはず。

「ユリヤ、俺がアイリスを押さえている間に馬車を持って来てくれ」

「はい!」

「エレーヌさんは村人の避難誘導をお願いします」

「分かったわ。何があったのか分からないけど、ケンカしているならちゃんと仲直りをするのよ」

 エレーヌさんの言葉に、思わず苦笑いを浮かべてしまった。

 この人、緊急事態なのに全然ブレないな。

 二人がこの場から離れて行く中、次の行動を考える。

 ユリヤが馬車を持って来るまでの間、俺がアイリスの足止めと消火作業をしなければ。

 もう一度水の属性玉に意識を集中させ、水の塊を生み出す。

「行け!」

「そんな攻撃、私に当たるとでも思っているの」

 俺の放った水をアイリスは次々と躱していく。

 良いぞ。狙いどおりにアイリスは自分が狙われていると思い込んでいる。だけど真の狙いは、炎に包まれている建物の消火作業だ。

 彼女に気付かれないように最新の注意を払いつつ、建物の炎を消していく。

 よし、全ての建物の消火作業が終わった。これで心置きなく誘導することができる。

「リュシアンさん! 遅くなりました! 直ぐに乗れるように扉は開けてあります」

 馬が馬車を引っ張る音と共に、ユリヤの声が聞こえて来た。

「寧ろナイスなタイミングだ。テレーゼ、エリーザ姫、馬を止める余裕はない。タイミング良く乗り込んでくれ」

「分かったわ」

「や、やってみますわね」

 馬車が近づく中、俺は助手席に飛び乗る。馬車の扉を見ると、先にテレーゼが乗り込み、エリーザ姫に手を差し伸ばしている姿が視界に入った。

 エリーザ姫が跳躍してテレーゼの手を握り、馬車の中に乗り込む。

 ふぅ、何とか無事に全員が馬車の中に入ることができたな。

「ユリヤ、そのままエンゴー火山の方に向かってくれ。攻撃が飛んで来た時は俺が防ぐ」

「分かりました」

「逃すものか!」

 アイリスが馬車を追いかけてくる。

 良いぞ。誘導されているとも知らずに追いかけて来てくれている。

 だけど、被害を最小限にするために移動するだけだ。別に罠を張っているわけでもない。





 馬車を走らせること一時間、俺たちはエンゴー火山の一番エリアに辿り着いた。

 だけど危険な場所なので、馬車での移動はここまでだ。どっちにしろ、一時間も休憩なしで馬を走らせたからな。馬の体力を考えると、ここら辺が限界だ。

「遂に追い付いたわよ。さぁ、ここで決着を付けさせてもらうわ」

 空から追いかけてきたアイリスが地上に降り立つ。

「みんな、今から七番エリアの方に走ってくれ」

「分かりました」

「分かったわ」

「了解しました。リュシアン王子」

 俺が殿を務める中、三人は七番エリアの方に走って行く。

 あそこは火山の麓で広い。だから炎を吐かれたとしても避けることができる。

「悪いな。まだ相手をする訳にはいかないんだ」

 鞘から太刀を抜き、風の属性玉に意識を集中させる。すると気圧に変化が生じ、アイリスに向けて風が吹く。

「キャ! 目にゴミが」

 風が吹き、砂塵が舞い上がったことで一時的に彼女の視界を奪った。これなら上空から追いかけられたとしても、七番エリアまでは追い付けないはず。

「俺を倒したいのなら追いかけて来るんだな」

 捨て台詞を吐き、俺は七番エリアへと走って行く。
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