ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第十三章

第六話 おとぎ話の怪物

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 偽物のベルトラムさんを切った瞬間、目の前にモンスターが現れた。

 見た目は大きなオオカミだが、所々の肉は腐っており、骨が剥き出しになっている箇所もある。

 やっぱり幻影を作っていたのはこいつだったのか。

「幻死狼、ホラゾンウルフ」

 御伽噺おとぎばなしでは、動物を虐待して殺した人を食べに来ると言われているモンスターだ。

 どこかで人が動物を殺したのか?

 ホラゾンウルフは俺を睨み付けながら低い声で唸る。

 とにかく今は、こいつを討伐するのが先だ。町の中に現れた以上は、ハンターとして倒す義務がある。

 エレーヌさんを背負った状態のまま太刀を構える。

 ハンデは大きいが、おそらく倒せない敵ではないはずだ。

 地を蹴って走り、モンスターの懐に入り込むと太刀を横薙ぎに振る。刃がモンスターの後足に触れるも、直ぐにすり抜けてしまった。

 こいつも偽物だって言うのかよ。

『ワウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥン!』

 どこからか、モンスターの遠吠えが聞こえる。声が聞こえる以上、町のどこかには本物がいるはずだ。

 大通りを走りながら、襲ってくるハクギンロウを無視する。偽物だと分かった以上は、こんな奴らに構っている暇はない。

 ひたすら走っていると、奥の方から女の子の声が聞こえてくる。

「さっきから切っても直ぐに起き上がってきますね」

「もう、面倒臭い! どうしてあたしの声が通用しないのよ!」

「わたくしたちにはあなたたちに構っている時間はないのですよ」

 この声はユリヤたちだ。彼女たちも町の中で起きた異変と戦っている。

「ユリヤ、テレーゼ、エリーザ姫!」

 彼女たちに声をかけると、三人は振り返ってくれる。しかしエリーザ姫が弓を構え、俺に矢を飛ばした。

 咄嗟にしゃがんで放たれた矢を躱す。

「また来ましたの? さっきからリュシアン王子に化けて、もう騙されませんわよ」

「しかも今度はエレーヌさんつきなんて」

 彼女たちは俺を敵だと思っている? そうか、ベルトラムさんの幻影に騙されそうになったように、彼女たちにも俺の偽物が現れたのか。

 これは本当にややこしい状況になった。どうにかして本物の俺だと証明しなければ。

 でもどうやって俺が本物だと証明する? 俺の幻影がどれほどの再現度だったのかで難易度が代わってしまう。

 ベルトラムさんが偽物だと判別できたのは、彼の宝物であるエロ本に興味を示さなかったからだ。

 つまり、本人が必ず取るような行動をすれば、怪しまれない。

 普段どおりの俺でいればいい。

 その場に立ち止まり、彼女たちと一定の距離を置く。

「あなたがリュシアンピグレットなのかどうかあたしが見極めて上げるわ。質問に答えなさい」

「質問……だと?」

「ええ、返答によって本物かどうか判断して上げるわ。感謝しなさい」

「感謝しなさいって、久しぶりに上から目線だな。最近はそんな態度を取らないようになっていたのに。まぁ、いい。それで、どんな内容なんだ?」

 質問の内容を訊ねると、彼女たちは意外そうな表情をする。

「このパターンは初めてですね。もしかしたら本物なのでしょうか?」

「ま、まだ決まった訳ではないわよ。相手が新しいレパートリーを増やしてきただけかもしれない」

「と、とにかくテレーゼさん。質問の方をお願いしますわ」

 固唾を飲んでどんな質問をされるのか、様々なパターンを想像する。

 テレーゼのことだ。もしかしたら俺に恥ずかしいセリフを言わせるのかもしれない。

「あたしのお母さんの名前は何?」

 歌姫が質問内容を口にする。

 まずは小手調べ的なことなのかもしれないが、あまりにも普通すぎる内容で正直、拍子抜けしてしまう。

「ロザリーさんだろう?」

「正解、では第二問! わたしのファーストキスを奪ったのは誰?」

 いきなりレベルを上げてぶっ飛びすぎだろう!

 そんなの知らないに決まっているじゃないか。もしかしてあれか? 本当は赤子の頃に親とキスをしていて、親が最初の相手と言うオチなのか。

 でも、そんな問題をテレーゼが出しそうもないよな。多分、親はノーカンとして考えないといけない。

 だけど、テレーゼのファーストキスを奪った相手なんか知らない。個人的にも知りたいような、知りたくないような複雑な気分だ。

「さ、さぁ、答えなさいよ。本物のリュシアンピグレットなら、絶対に答えられるはず何だから! 寧ろ答えてもらわなければあたしが困るわよ。ライバルがいる前で、恥ずかしい思いをしながらも言ったのだから」

 頬を朱に染めながら歌姫が言うが、俺には分からない。本物の俺なら絶対に答えられる? そんなこと言われても、彼女のプライベートまでは知らないぞ。

 全然答えが分からないながらも必死に考えると、ある記憶が思い出される。

 もしかして、初めてのキスの相手って。いや、流石にあれはノーカンだろう。だって恋愛とかは関係なく、人命救助なんだぞ。

 だけど、もしそうなら確かに俺は答えを知っている。

「なぁ、一つ確認したいのだけど、人工呼吸もカウントされる――」

 確認したいことを訊ねようと、途中まで言葉を連ねる。すると急にテレーゼの顔がみるみる赤くなる。

 なるほど、これで答えは分かった。

「テレーゼのファーストキスの相手はリュ――」

「わー! わー! せ、正解よ! あなたが本物だって分かったから、それ以上はやっぱり言わないで!」

 声を上げ、俺の言葉をテレーゼが遮る。

 ふぅ、どうやら本物だと判断されたようだ。

 安心して彼女たちに駆け寄ったその時。

『ワウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥン!』

 建物の上からモンスターの遠吠えが聞こえ、そちらに顔を向ける。

 屋根の上にホラゾンウルフが居た。やつは俺たちを睨むと地面に降り立ち、低い声で唸り声を上げる。

「ユリヤ、エレーヌさんをお願いできるか?」

「あ、はい。わかりました」

 ギルドマスターをユリヤに預け、俺はもう一度太刀を構える。

「今度こそ本物かどうか見極めさせてもらう!」
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