ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第十三章

第九話 一方その頃エレーヌたちは

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 ~エレーヌ視点~



 これは、リュシアン君たちが天空龍スリシオの討伐に向かって、しばらく経ったころにまで遡るわ。

 わたしことエレーヌは、残ったハンターたちに依頼を渡し、ギルドマスターの仕事をしていたわ。

「さて、みんなに依頼を渡したことだし、営業といきますか。営業に行って来るので、留守番をお願いするわね」

「はーい、お気を付けて行ってらっしゃい」

 受付嬢に留守番を頼み、依頼を探しに向かいます。

 いくらハンターギルドでも、毎日依頼主が依頼を持ってくるとは限りません。なので、ギルドマスター自ら行動に出て、依頼を見つけに行く必要があります。

 経営者として、みんなの生活を守る者としての責任は大きいですから。

「あら、エレーヌさん。今日も営業?」

「ええ、何か困っていることはありませんか?」

「そうねぇ、そう言えば、深緑の森にまたドスブルボーアが現れたって話だから、もしかしたら誰か依頼を持ってくるかもしれないわ」

「そうなのですね。では、正式に決まった時は、依頼の方をよろしくお願いしますね」

「ええ、他のハンターギルドよりも優先的にお願いするように言っておくわ。あなたの経営するギルドには、本当に助かっているのだから」

 声をかけてきたおば……お姉さんに軽く会釈して再び歩き出し、営業を再開します。

「おや、エレーヌさんじゃないか。今日も美しいのぉ。どうじゃ、ワシのせがれと結婚してくれないか?」

 しばらくすると、お爺さんが声をかけてきます。

 この人、毎回会う度に息子さんとの結婚話を持ってくるのよね。

「いえ、いえ、あの人はわたしにはもったいないですよ。わたしよりも、もっと素敵な人がお似合いですよ」

 このお爺さん、わたしが四十代になっても未婚だから気を聞かせているのでしょうが、私はギルドマスターとしての仕事があるから、その気はないのよね。毎回お茶を濁してあやふやにしているけど、良い加減に諦めて欲しいわ。

「ところで、何か困っていることはありませんか?」

「困っていることはあるぞ。せがれが嫁を連れてこんから後継に困っておる。倅の嫁を見つけて来てくれないか?」

「それは結婚相談所にでも行ってください。ハンターの仕事ではないので」

「ワハハ! 冗談じゃ。あーそう、そう、ガラン荒野でキングカルディアスとクイーンフレイヤーがつがいとなっているのを目撃したと言う。近い内に討伐か、卵の回収依頼が来るかもしれない。本当に羨ましい。ワシもそろそろ孫の顔が見てみたい」

「あはは、情報ありがとうございます。では、失礼しますね」

 お爺さんに軽く会釈してまた街中を歩きます。

 それにしても、つがいか。

 今でもまだまだ若いけど、もっと若かった頃、現役のハンターとしてつがいの討伐に向かったことがあったのよね。

 その時、ちょうどタイミングが悪く、オスとメスが交尾を始めていたのを目撃してしまって、なんとも言えない空気感の中、討伐したのを思い出してしまった。

 どうしてモンスター同士の交尾ってあんなに激しいのかしら? しかも子孫繁栄を邪魔されたことでオスは常に憤怒状態、メスはどこかに逃げて探し出すのも一苦労したわ。

 って、わたしはいったい何を考えているのよ。そんなことよりも、今は営業をしないと。

 首を左右に振って両の頬を叩き、気合いを入れ直す。

「さて、リュシアン君やみんなのためにも、依頼を持って帰らなければ」

 営業に気合を入れ、町中を歩いていると、町の入り口の方から女の人が血相を変えて走ってきました。

「た、助けて!」

「い、いったいどうしたのですか!」

「ハ、ハクギンロウが襲って来て」

「ハクギンロウが!」

 これは依頼のチャンス。今から空いているハンターにお願いして討伐に向かわせましょう。

「それで、そのハクギンロウはどこに現れたのですか?」

「い、今も追いかけて来ている!」

「え!」

 彼女の言葉に心臓の鼓動が激しくなるも、彼女が走ってきた方に視線を向ける。すると、白銀の毛並みを持つモンスターがこちらに走ってきていた。

 うそ、どうしてモンスターが町まで来るのよ。基本的には、モンスターは人の住むところにはやって来ない。仮に来たとしても、その前に誰かが気付いて討伐の依頼が来るのに。

 今からハンターを呼んでも間に合わない。

 こんなこと想定していなかったから、私も得物を持って来ていない。

「と、とにかくあなたは逃げて!」

 女性を町の奥に向かわせ、わたしは思考を巡らせる。

 現役を退いても、これでも元ハンター。一応格闘術の心得はある。一匹なら腕一本くれてやる覚悟で戦えば倒すことができる。

 ハクギンロウが町の中に入り、跳躍してわたしに襲いかかる。

『キャウン!』

 その瞬間、ハクギンロウにバリスタの弾が当たり、モンスターは吹き飛んで地面に横たわる。

「エレーヌ無事か!」

 聞き覚えのある声が聞こえ、振り返ると、そこにはハゲジジイ……スキンヘッドにジャンボジュニアの髭をしているわたしの師匠がいた。

「ベルトラムさん! どうしてここに!」

 彼は移動式バリスタ発射装置を押しながらわたしに近づく。

「高台からドスケベミエール二号さんの試し見をしていたら、女性がハクギンロウに襲われているのが見えてな。胸騒ぎがしたので、移動式バリスタ発射装置ワシの分身を連れて来たのだ。改良型バリスタの弾ムスコはたくさんある。今の内にお前は自分の得物を持って来い」

「え、もう終わったんじゃ」

 そう思って町の入り口に視線を向けると、数多くのハクギンロウがこちらに向かっているのが見えた。

「分かりました。ベルトラムさんは、わたしが戻ってくるまで時間稼ぎをお願いします」

「おう、しかし年には勝てぬ。ワシの腰が使い物にならぬ前に戻って来てくれ」

 師匠の言葉に無言で頷き、わたしは急いでギルドに戻ります。

 全速で走った影響によるものか、軽く息切れを起こし、肩で息をしてしまう。

 本当に年はとりたくないわね。精神年齢は永遠の十七歳でも、肉体年齢は四十代。本当に若い子の体が羨ましいわ。

 息を整え、ギルドの扉を開ける。

「ギルドマスター早かったですね」

「ええ、町の中にハクギンロウが入り込もうとしているわ。万が一に備えて避難の準備をお願い」

「わ、分かりました! こうしてはいられません。えーと、手が空いていそうなハンターさんはっと」

 受付嬢に避難準備を言うも、彼女は派遣できそうなハンターを探す。

 彼女なりにまだ避難する訳にはいかないと思っているのかもしれません。

 みんなが避難せずに済むように、応戦しなければ。

 直ぐにギルドマスター室に向かい、壁に立てかけている剣を握る。

「どうか持ち堪えてください。師匠」
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