ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

文字の大きさ
151 / 171
第十三章

第十話幻覚の中の撤退戦

しおりを挟む
~エレーヌ視点~



 わたしことエレーヌは、得物を握って急ぎ、町の入り口へと向かう。

「おい、なんだよこの騒ぎは!」

「町にモンスターが入ってこうとしているらしい」

「何だって! 早く避難しないと」

 走りながら、町民の声が耳に入る。

 彼らは突然のことで混乱している。早めに避難誘導もした方がいいかもしれないわね。

 全速力で走り、町の入り口に辿り着く。

 わたしの視界には、太陽光の光りに反射して光り輝くベルトラムさんの後頭部が見えた。

 正直眩しすぎて直視できない。

「ベルトラムさん!」

「おお、戻ってきたか」

「それで、状況はどうなのですか?」

「まぁ見ておれ」

 移動式バリスタ発射装置に、ベルトラムさんが改良型バリスタの弾を装填する。

 すぐに発射された弾の行方を見ると、白銀の毛並みを持つモンスターに当たった。しかし、その瞬間モンスターの体は煙のように霧散する。

「見てのとおり、幻影のモンスターまで混じっておる」

「幻覚を見せるモンスターってまさか!」

「おそらくホラゾンウルフじゃろう。どこかで動物が無残に殺され、その報復に来ておるのやもしれん」

 ホラゾンウルフ。御伽噺おとぎばなしに登場するほど、大昔から存在しているモンスター。

「とにかく、幻覚の中にも本物のハクギンロウも混ざっている。見極める方法が分からぬ今は、とにかく全てのハクギンロウに攻撃を当てるしか方法がない」

 バリスタの弾をベルトラムさんは白銀の狼に当てていく。殆どが霧散して消えるも、中には本物が混ざっており、弾が当たると短い悲鳴を上げては地面に倒れた。

「わたしも加勢します。えい!」

 剣を鞘から抜くと横に振る。刀身が分割され、内蔵している紐が伸びると、鞭のようにモンスターを攻撃していく。

 ベルトラムさんとは違って、わたしは範囲攻撃を行うことができる。

 もう一度横薙ぎに振ると、五体程のハクギンロウを薙ぎ倒す。

 だが、全て幻だったようで、霧散して消え去った。

 だけど、これならどうにかなるでしょう。時間稼ぎでしかないけれど、リュシアン君たちが戻って来れば、きっと彼らがこの問題を解決してくれる。

 そう思いながら、無我夢中で鞭と化す剣を振り、白銀の狼を倒していく。

「ギルドマスター!」

「話を聞いて聞き付けました。俺たちも協力します」

 しばらく防衛戦をしていると、出払っているハンターたちが戻って来ました。

 彼らの中には、リュシアン君がいない。援軍が到着して嬉しいはずなのに、なぜか安心しきれないわたしが心の中に存在している。それだけ彼の存在が、わたしの中で大きくなっていたということなのでしょう。

「エレーヌ、このままではジリ貧だ。ワシらだけでは食い止めることもできぬ。町の住民の避難を開始した方が良いだろう」

 師匠がわたしと同じ考えに至ったようで、避難することを提案してくる。

「そうですね。あなたたちは町民を安全な場所まで、避難誘導をお願いします」

「了解しました。どこまで避難させましょうか?」

「砦に避難させてください。あそこなら非常食の備蓄や、モンスターと戦うのに必要なものが揃っていますので」

「了解しました。では、砦に避難させます。行くぞ」

 ハンターたちが町民に避難を呼びかけに下がっていきます。

 これでまた師匠と二人で戦わないといけません。

「そおりゃ……ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ」

 バリスタで攻撃していたベルトラムさんが、息を切らしながら弾を装填しています。

 彼も高齢である以上、わたしよりも体力がない。もしかしたらそろそろわたし一人でモンスターたちを相手にしなければならなくなりそう。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。ふぅ、こりゃ、想像以上に重労働じゃな。戦いながらエレーヌの揺れる乳を見て、目の保養をしていなければ、すでに限界で動くこともできなかったじゃろう」

 ベルトラムさんの言葉が耳に入る。

 やっぱりさっきのは訂正しておきましょう。戦闘中にセクハラ発言ができる程度には、体力が有り余っているみたいです。





 防衛戦を開始してからだいぶん時間が経ちました。わたしにも疲れを感じ始めていますが、モンスターは無限に襲ってきます。

「こっのお! ぐっぎゃあ!」

「ベルトラムさん、どうしたのですか!」

「こ、腰が! いたたたた」

 ベルトラムさんが腰を痛めた。もう彼は戦える状態ではない。

「ベルトラムさんも避難してください。ここはわたし一人で食い止めますので」

「何を言っておる。いくらお前でも一人ではムリだ」

「現役の頃はAランクまで上り詰めた実力者ですよ。まだまだ大丈夫です。だって永遠の十七歳ですから」

「精神年齢のことだろうが! 肉体はすでにおばさん……」

 今なんて言いやがったジジイ! わたしは永遠の十七歳って言っているでしょうが!

「なんて言いましたかお爺さん!」

 心の声とは裏腹に、ニッコリと笑みを浮かべながら、ベルトラムさんに近付こうとするハクギンロウに鞭と化した剣を巻きつけます。

 どうやら幻ではなかったようで、手応えを感じます。少し力を入れると、刃がモンスターの肉体に食い込み、白銀の狼の肉体はバランバラとなって地面に転がりました。

 その光景を見たベルトラムさんの顔色が青ざめます。

「あらあら、顔色も悪くなっているではないですか? ご老体はいたわるものですよ」

「そ、そうじゃな。で、では、お言葉に甘えさせてもらうとしよう……くわばら、くわばらエレーヌの方がモンスターよりも何倍も怖いわい」

 ゆっくりと歩き、わたしから離れるベルトラムさんが小声で言っていますが、わたしには聞こえておりました。

 後で彼が大事にしているエロ本でも燃やして上げましょうか。

 ベルトラムが砦に向かって避難する中、少しずつですが戦況に変化が起き始めます。

 モンスターの数が減っている。もしかしたらホラゾンウルフが諦めてくれたのかもしれない。

 そんな僅かな希望を感じたのも束の間、ずしりと重みのある足音が聞こえ、私は固唾を呑む。

『ワウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥン!』

モンスターの遠吠えが聞こえると、そこには所々の肉が腐っているオオカミが、こちらに向かって歩いてくるのが見えた。

「ホラゾンウルフ!」

 モンスターを認識したその瞬間、わたしは意識が遠退くのを感じ、そこからの記憶が曖昧になっています。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜

夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。 不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。 その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。 彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。 異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!? *小説家になろうでも公開しております。

趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた

歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。 剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。 それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。 そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー 「ご命令と解釈しました、シン様」 「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」 次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

処理中です...