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第三章
第八話 フェインの怒り
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『1着はフェイン、2着ユキノタマ、3着ブリーザの順位となりました。こちらの3連単は、掛け金の60倍となっております』
『さすがにこれを予想できた人はいないでしょう。もしいたら凄い想像力と観察力、そして情報分析能力に優れた人物です』
「くそう! 負けた! これで今月の小遣いがなくなった!」
「良かった。フェインの単勝だけ賭けて。3連単の方にしていたら大損だった」
結果を見て嘆くもの、どうにか軽傷で済んで安堵する者など、様々な観客たちが席から立ち、観客席から出て行く。
悪いな。お前たちが負けた分、俺がしっかりと儲けさせてもらったぜ。
俺が賭けた掛け金は2000ギル。その60倍なので120000ギル手に入る。
まぁ、税金とかも本来はあるが、このくらいなら確定申告をしないで済む。
「それじゃルーナ、悪いが金を受け取って来てくれ。さすがに俺が行く訳にはいかないからな」
「それは構わないが、ワタシが金をそのまま奪って逃走しないとは限らないではないか?」
「その件に関しては信頼している。もし、本当に持ち逃げしたその時は、お前を見つけ出して体で払ってもらおう」
「うわー、最低な発想ね。さすが年中発情期種族」
冗談で言ったつもりなのだが、今の俺の発言をタマモは本気にしてしまったようだ。彼女はゴミを見るような目で俺のことを見てくる。
真面目なのも考えものだな。
「ほう、その展開は極上ではないか。どのような手段を用いて、このワタシの中に肉棒を突き刺すのか興味があるね。それなら、わざと持ち逃げさせてもらおうかな?」
真面目に受け止めるタマモに対して、ルーナは冗談を返してきた。
「冗談はいいから、さっさと受け取りに行ってくれ。なんだか意味なく疲れてきた」
「はい、はい。分かったよ。では、少しの間待っていてくれ」
金を受け取りにルーナが向かうと、俺とタマモはその場に留まる。
「ねぇ、今のレースを見て、兄さんに勝てる自信はあるの?」
ルーナがこの場から去ったことで静寂が訪れていたのだが、突如タマモが次のレースでフェインに勝つことができるのかと訊ねてきた。
「俺は負ける戦いはしない主義だぞ。勝つに決まっている。実際にフェインは俺の思い通りに動いてくれた。その結果、俺は大金を得ることができた。それが答えだ」
勝つ自信はある。俺はわざとタマモに優勝を譲り、公式戦で1敗扱いとなっている。これ以上、黒星を増やす訳にはいかない。次のレースでは、今度こそ本気を出す。
「お待たせ。受付のお嬢さんが驚いていたぞ。さすが無敗の3冠王コレクターと褒められてしまった。君の活躍を奪った形になって申し訳ない」
次のレースでは絶対に勝つと決心すると、ルーナが戻って来た。彼女の手にはお札が握られ、持っていた金を俺に手渡す。
「別に良いさ。ルーナに頼んだ段階で、そうなるだろうと思った。だから頼んだ。俺が持って行けば大騒ぎになるかもしれないが、ルーナであれば当てて当然だろうからな」
「ほう、先の展開を既に予測していたか。その先を予想する能力は、レースで活かすことができるだろうね。では、ワタシたちもそろそろ帰るとしようか。君たちが出会したと言うモンスターのことも気になるからね。帰りはワタシも同行することにするよ」
客席から立ち上がり、俺たちは観客席から離れる。
廊下を歩き、外に向かっていると、今回のレースに出場した走者の姿が視界に入る。
青色の髪は、男性でありながら腰まである長さにしているが、髪の毛1本1本が手入れをされてあり、美しさと気品に溢れるような髪となっている。顔も整っており、眉毛もキリッとしているイケメンだ。そして頭と尻にある犬のような耳と尻尾はケモノ族の証である。
どこをどう見たって、タマモの兄のフェインだ。
彼は俺たちに気付いたようで、ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
相変わらず歩き方もムカつくくらいに優雅さがあるな。
「タマモ、それにシャカールか。そしてその隣にいるのは……ルーナ・タキオン!」
フェインがルーナを見て驚く。
まぁ、走者たちの間では伝説級だからな。驚くのも無理はない。
「久しぶりだね。まさか君が現役復帰をするとは思わなかった。だが、ワタシ個人としては嬉しいよ。君に発破をかけたシャカールには感謝だね」
2人は顔見知りなのか、ルーナはフランクに声をかける。だが、フェインの方はまるで親の仇を見るような鋭い眼差しを送っていた。
ルーナとフェインの間に何かあったのか。
「まぁ、良い。俺は現役復帰したが、お前は引退をしている。もうお前と競い合うことはないだろう。それよりもシャカール、お前は俺のレースを見ていたんだろう? どうだ? 俺の走りは? ビビっているかもしれながいが、無理もない。だが、俺を怒らせた罪はでかい。テイオー賞で、貴様を無様に叩き潰し、多くの民衆の前で恥を掻かせてやる」
俺のことを睨み付けながら、フェインは決め台詞を言う。
だが、俺からしたらそれがどうしたと言いたい。
「別にビビってもいないさ。寧ろ、お前との勝負には勝ちのビジョンしか見えない。ほら見てくれよ。この金、見事フェイン、ユキノタマ、ブリーザの3連単を的中させたぜ。そのお陰で儲かって笑いが止まらない。俺の思うように動いてくれてサンキュウな」
お返しとばかりに、バカにするような口調で言葉を連ねる。すると、フェインは歯を食い縛って口角を引き上げる。
「この俺がお前の読み通りに動いていただと! ふざけるな! そんなの偶然だ! お前の手の平の上で踊らされていたなんて認めるか! いいか! 次のテイオー賞は、貴様と大差をつけて勝ってみせるからな!」
感情的になっているようで、フェインは声音を強めて宣言する。
「おい、おい。そんなに堂々と宣言して良いのか? もし有言実行できなければ、大恥を描くのはお前の方だぞ?」
「安心しろ。それだけの自信はある」
こいつ、本気で俺に大差で勝つつもりなのか。俺は本当に嘘を言っていないし、俺の予想した展開通りにフェインが動いたから、あのような結果になってしまったのだけど。
まぁ、当日恥を掻くのはフェインの方だし、まぁ良いか。時にはリスクだけが大きく、リターンが少ない勝負はしないほうが良いと教えて上げる機会になるだろう。
「分かった。なら、もし大差でお前が勝てなければ俺に土下座をしてもらうからな」
「良いだろう。もし、俺が大差でお前に勝てなければ、土下座をしてやっても良い」
新たな約束を交わすと、フェインは踵を返して俺たちから離れて行く。
本当にフェインのやつはバカだ。フェインが勝っても負けても、彼は土下座をする未来しかないと言うことに気付いていない。
俺が勝てばタマモに土下座をし、俺が負けても大差にならなければ土下座をするのだ。そして先程のレースを見て確信した。フェインは俺に大差をつけることができない。
テイオー賞が楽しみだな。フェインが土下座をするシーンを多くの者が見たら、いったいどんな反応をするのだろう。
『さすがにこれを予想できた人はいないでしょう。もしいたら凄い想像力と観察力、そして情報分析能力に優れた人物です』
「くそう! 負けた! これで今月の小遣いがなくなった!」
「良かった。フェインの単勝だけ賭けて。3連単の方にしていたら大損だった」
結果を見て嘆くもの、どうにか軽傷で済んで安堵する者など、様々な観客たちが席から立ち、観客席から出て行く。
悪いな。お前たちが負けた分、俺がしっかりと儲けさせてもらったぜ。
俺が賭けた掛け金は2000ギル。その60倍なので120000ギル手に入る。
まぁ、税金とかも本来はあるが、このくらいなら確定申告をしないで済む。
「それじゃルーナ、悪いが金を受け取って来てくれ。さすがに俺が行く訳にはいかないからな」
「それは構わないが、ワタシが金をそのまま奪って逃走しないとは限らないではないか?」
「その件に関しては信頼している。もし、本当に持ち逃げしたその時は、お前を見つけ出して体で払ってもらおう」
「うわー、最低な発想ね。さすが年中発情期種族」
冗談で言ったつもりなのだが、今の俺の発言をタマモは本気にしてしまったようだ。彼女はゴミを見るような目で俺のことを見てくる。
真面目なのも考えものだな。
「ほう、その展開は極上ではないか。どのような手段を用いて、このワタシの中に肉棒を突き刺すのか興味があるね。それなら、わざと持ち逃げさせてもらおうかな?」
真面目に受け止めるタマモに対して、ルーナは冗談を返してきた。
「冗談はいいから、さっさと受け取りに行ってくれ。なんだか意味なく疲れてきた」
「はい、はい。分かったよ。では、少しの間待っていてくれ」
金を受け取りにルーナが向かうと、俺とタマモはその場に留まる。
「ねぇ、今のレースを見て、兄さんに勝てる自信はあるの?」
ルーナがこの場から去ったことで静寂が訪れていたのだが、突如タマモが次のレースでフェインに勝つことができるのかと訊ねてきた。
「俺は負ける戦いはしない主義だぞ。勝つに決まっている。実際にフェインは俺の思い通りに動いてくれた。その結果、俺は大金を得ることができた。それが答えだ」
勝つ自信はある。俺はわざとタマモに優勝を譲り、公式戦で1敗扱いとなっている。これ以上、黒星を増やす訳にはいかない。次のレースでは、今度こそ本気を出す。
「お待たせ。受付のお嬢さんが驚いていたぞ。さすが無敗の3冠王コレクターと褒められてしまった。君の活躍を奪った形になって申し訳ない」
次のレースでは絶対に勝つと決心すると、ルーナが戻って来た。彼女の手にはお札が握られ、持っていた金を俺に手渡す。
「別に良いさ。ルーナに頼んだ段階で、そうなるだろうと思った。だから頼んだ。俺が持って行けば大騒ぎになるかもしれないが、ルーナであれば当てて当然だろうからな」
「ほう、先の展開を既に予測していたか。その先を予想する能力は、レースで活かすことができるだろうね。では、ワタシたちもそろそろ帰るとしようか。君たちが出会したと言うモンスターのことも気になるからね。帰りはワタシも同行することにするよ」
客席から立ち上がり、俺たちは観客席から離れる。
廊下を歩き、外に向かっていると、今回のレースに出場した走者の姿が視界に入る。
青色の髪は、男性でありながら腰まである長さにしているが、髪の毛1本1本が手入れをされてあり、美しさと気品に溢れるような髪となっている。顔も整っており、眉毛もキリッとしているイケメンだ。そして頭と尻にある犬のような耳と尻尾はケモノ族の証である。
どこをどう見たって、タマモの兄のフェインだ。
彼は俺たちに気付いたようで、ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
相変わらず歩き方もムカつくくらいに優雅さがあるな。
「タマモ、それにシャカールか。そしてその隣にいるのは……ルーナ・タキオン!」
フェインがルーナを見て驚く。
まぁ、走者たちの間では伝説級だからな。驚くのも無理はない。
「久しぶりだね。まさか君が現役復帰をするとは思わなかった。だが、ワタシ個人としては嬉しいよ。君に発破をかけたシャカールには感謝だね」
2人は顔見知りなのか、ルーナはフランクに声をかける。だが、フェインの方はまるで親の仇を見るような鋭い眼差しを送っていた。
ルーナとフェインの間に何かあったのか。
「まぁ、良い。俺は現役復帰したが、お前は引退をしている。もうお前と競い合うことはないだろう。それよりもシャカール、お前は俺のレースを見ていたんだろう? どうだ? 俺の走りは? ビビっているかもしれながいが、無理もない。だが、俺を怒らせた罪はでかい。テイオー賞で、貴様を無様に叩き潰し、多くの民衆の前で恥を掻かせてやる」
俺のことを睨み付けながら、フェインは決め台詞を言う。
だが、俺からしたらそれがどうしたと言いたい。
「別にビビってもいないさ。寧ろ、お前との勝負には勝ちのビジョンしか見えない。ほら見てくれよ。この金、見事フェイン、ユキノタマ、ブリーザの3連単を的中させたぜ。そのお陰で儲かって笑いが止まらない。俺の思うように動いてくれてサンキュウな」
お返しとばかりに、バカにするような口調で言葉を連ねる。すると、フェインは歯を食い縛って口角を引き上げる。
「この俺がお前の読み通りに動いていただと! ふざけるな! そんなの偶然だ! お前の手の平の上で踊らされていたなんて認めるか! いいか! 次のテイオー賞は、貴様と大差をつけて勝ってみせるからな!」
感情的になっているようで、フェインは声音を強めて宣言する。
「おい、おい。そんなに堂々と宣言して良いのか? もし有言実行できなければ、大恥を描くのはお前の方だぞ?」
「安心しろ。それだけの自信はある」
こいつ、本気で俺に大差で勝つつもりなのか。俺は本当に嘘を言っていないし、俺の予想した展開通りにフェインが動いたから、あのような結果になってしまったのだけど。
まぁ、当日恥を掻くのはフェインの方だし、まぁ良いか。時にはリスクだけが大きく、リターンが少ない勝負はしないほうが良いと教えて上げる機会になるだろう。
「分かった。なら、もし大差でお前が勝てなければ俺に土下座をしてもらうからな」
「良いだろう。もし、俺が大差でお前に勝てなければ、土下座をしてやっても良い」
新たな約束を交わすと、フェインは踵を返して俺たちから離れて行く。
本当にフェインのやつはバカだ。フェインが勝っても負けても、彼は土下座をする未来しかないと言うことに気付いていない。
俺が勝てばタマモに土下座をし、俺が負けても大差にならなければ土下座をするのだ。そして先程のレースを見て確信した。フェインは俺に大差をつけることができない。
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