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第十章
第十五話 KINNGU賞②
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ゲートが開き、俺は走り出す。
『さぁ、ゲートが開きました。まずまず揃ったスタートの中、シャカール走者だけが出遅れた様子。先頭争いはカナエール、とナナミ走者の争いか』
他の走者に比べ、スタートダッシュに遅れてしまったか。でもまぁ良い。今回のレースは、俺はマークされているだろう。下手に前に出ては、集中的に狙われるかもしれない。今は後方に控えて隙を見て前に出た方が良さそうだ。
『カナエールとナナミが先頭争いをしている中、後方にはゴットゴッホが追いかける展開となっています。その後をマチカネフクチャン、ターボー、エイシェントブリザード、やや右後方にアストレイが走っており、1メートル差でサザナミ、バーニングレイ、アシタガアルサが走っています。ここまでが先頭集団と言ったところ』
『ターボが先頭を取れなかったのは意外ですが、それだけ他の走者がスタートダッシュに集中していたのでしょう』
『5メートル差でババネロ、スレッターズ、ダークネスが争いっていましたが、ここでサウンドダーツが並んで来た。その外側を今にも追い越そうと言う勢いでカナデが走り、2メートル差でワルツ、コンゴウそして1メートル差で殿をシャカールと言う結果の順位。それでは、ここで先頭に戻りましょう。先頭は――』
実況担当のアルティメットの言葉が耳に入る中、俺は前に向けて走っていた。
今回のKINNGU賞は、芝3000メートルの長距離戦だ。スタミナの維持が重要となる。最初は速度を上げずに体力と魔力の温存に力を入れていた方が良いだろう。
後方から前方走者たちの動向を見守る。
やつらは、まだ魔法などを使用せずに様子見と言った感じで、最初のギミックに向けて走っていると言う感じだった。
『ここでカナエールが最初のギミックに到達だ。最初のギミックは、魔力で動かした鎧兵の軍隊、鎧兵の攻撃を掻い潜り、突破する必要があります』
なるほど、最初のギミックはそんな感じか。このギミックは、後方が有利のギミックとなりそうだな。
目の前で攻撃を受けて回避するよりも、遠方から観察していた方が、鎧兵の動きを見極めることができる。
見極めれば、ちょっとした動作から行動パターンを予測し、回避することが可能だ。
鎧兵の中身は人がいない空洞となっている。モンスターで例えたら、アンデット系の部類に入るだろう。
いくら魔力で操作しているとしても、あれだけの数を操るとなると、相当な集中力が要求される。出せる指示は、簡単なもののはず。
前回のコールドシーフの時のように、ギミックの追加がない分安心してギミックに挑むことができるな。
『先頭を走っているカナエールでしたが、最初のギミックに苦戦をしている様子。そんな中、ナナミ走者が追い付き、ギミックエリアに入った』
ナナミがギミックに突入したか。お前たちのコンビ、お手並拝見といこう。
『ナナミ走者! 次々と鎧兵の攻撃を避けた! まるで鎧兵の攻撃が分かっているかのように、可憐なステップで躱していく!』
避けることに精一杯だったカナエールとは違い、ナナミは余裕そうな走りで次々と回避していく。しかも後方に避けることもなく、前進しつつの回避だったので彼女がリードしている形だ。
ナナミのお陰で、ある程度は鎧兵の行動パターンを読むことができた。後はギミックに到達してから回避するだけ。
カナエールが苦戦する中、次々と他の走者も最初のギミックに到達した。もちろん俺もその中に入っている。
「この鎧兵の攻撃面倒臭いな!」
「ああ、こうなったら、こいつらを倒して道を切り開いた方が早そうだ」
「食らえ! ファイヤーボール!」
「アイスランス!」
他の走者たちが鎧兵の攻撃に苛立ち、ギミックモンスターに向けて魔法を放つ。
このバカ野郎共が!
彼らの行動を見て、思わず心の中で叫ぶ。
彼らの行動は愚かだ。確かに苛立ってしまうのは分かる。だけどその行動は返って自分の首を絞めることに繋がると言うことに気付いていないようだ。
魔法が直撃すると、鎧兵はバラバラとなり、鉄の装備となって地面に落ちる。
「オラオラオラ! ダークネス様のお通りだ! 道を開けろ!」
「未来のKINNGU覇者の邪魔をするんじゃねぇ!」
魔法を当てれば妨害できなくなる事実を知ったやつらが、調子に乗って次々と魔法を放ち、鎧兵たちを倒して行く。
「ヒャッハー! 道が開いたぜ! 今の内にギミックエリアを突破して……ブッヒャアアアアアアアアアァァァァァァァァァァ!」
ギミックを突破できる道を確保した瞬間、ダークネスと呼ばれた走者が鎧兵の斬撃を受けて後方に飛ばされた。
「なんだこいつ! さっきと違って動きが素早くなっているじゃないか」
吹き飛ばされたダークネスを見て、サウンドダーツと呼ばれた走者が驚きの声を上げる。
こいつら、全然このギミックの罠に気付いていなかったのだな。
このギミックは数の多い鎧兵が邪魔をするエリアだ。多くいるせいで道は限定されるし、攻撃も避けないといけないので、自然と速度は落ちる。そのせいで走者たちは苛立つが、それこそが、このギミックの罠だ。
走者を苛立たせ、ギミックモンスターである鎧兵を倒させることで、鎧兵の数を減らす。
そうすると、鎧兵を操っていた者は集中する対象が減ったことで操作に余裕が生まれ、別の動きをさせることができる。
しかし、それならなぜそんな回り諄いことをする? 最初から少ない数にすれば良いじゃないか?
最初の俺はそう思っていた。しかし運営側の意図を考えるに、簡単にギミックを突破されては、観客たちが面白くない。なので数多くの鎧兵を用意させ、突破しにくい状況を作りだし、鎧兵の数を減らされたタイミングで新たな行動を増やし、走者に驚きと困惑を植え付け、速度を落とさせて苦戦しているかのように演じさせようとしているのだろう。
まぁ、あくまでも予想にしかすぎないので、真実は分からない。そんな可能性もあるだろうと言う話だ。
さてさて、どうやってこのギミックを抜けようか。コールドシーフがいないのに、ギミックが強化されてしまった。
『さぁ、ゲートが開きました。まずまず揃ったスタートの中、シャカール走者だけが出遅れた様子。先頭争いはカナエール、とナナミ走者の争いか』
他の走者に比べ、スタートダッシュに遅れてしまったか。でもまぁ良い。今回のレースは、俺はマークされているだろう。下手に前に出ては、集中的に狙われるかもしれない。今は後方に控えて隙を見て前に出た方が良さそうだ。
『カナエールとナナミが先頭争いをしている中、後方にはゴットゴッホが追いかける展開となっています。その後をマチカネフクチャン、ターボー、エイシェントブリザード、やや右後方にアストレイが走っており、1メートル差でサザナミ、バーニングレイ、アシタガアルサが走っています。ここまでが先頭集団と言ったところ』
『ターボが先頭を取れなかったのは意外ですが、それだけ他の走者がスタートダッシュに集中していたのでしょう』
『5メートル差でババネロ、スレッターズ、ダークネスが争いっていましたが、ここでサウンドダーツが並んで来た。その外側を今にも追い越そうと言う勢いでカナデが走り、2メートル差でワルツ、コンゴウそして1メートル差で殿をシャカールと言う結果の順位。それでは、ここで先頭に戻りましょう。先頭は――』
実況担当のアルティメットの言葉が耳に入る中、俺は前に向けて走っていた。
今回のKINNGU賞は、芝3000メートルの長距離戦だ。スタミナの維持が重要となる。最初は速度を上げずに体力と魔力の温存に力を入れていた方が良いだろう。
後方から前方走者たちの動向を見守る。
やつらは、まだ魔法などを使用せずに様子見と言った感じで、最初のギミックに向けて走っていると言う感じだった。
『ここでカナエールが最初のギミックに到達だ。最初のギミックは、魔力で動かした鎧兵の軍隊、鎧兵の攻撃を掻い潜り、突破する必要があります』
なるほど、最初のギミックはそんな感じか。このギミックは、後方が有利のギミックとなりそうだな。
目の前で攻撃を受けて回避するよりも、遠方から観察していた方が、鎧兵の動きを見極めることができる。
見極めれば、ちょっとした動作から行動パターンを予測し、回避することが可能だ。
鎧兵の中身は人がいない空洞となっている。モンスターで例えたら、アンデット系の部類に入るだろう。
いくら魔力で操作しているとしても、あれだけの数を操るとなると、相当な集中力が要求される。出せる指示は、簡単なもののはず。
前回のコールドシーフの時のように、ギミックの追加がない分安心してギミックに挑むことができるな。
『先頭を走っているカナエールでしたが、最初のギミックに苦戦をしている様子。そんな中、ナナミ走者が追い付き、ギミックエリアに入った』
ナナミがギミックに突入したか。お前たちのコンビ、お手並拝見といこう。
『ナナミ走者! 次々と鎧兵の攻撃を避けた! まるで鎧兵の攻撃が分かっているかのように、可憐なステップで躱していく!』
避けることに精一杯だったカナエールとは違い、ナナミは余裕そうな走りで次々と回避していく。しかも後方に避けることもなく、前進しつつの回避だったので彼女がリードしている形だ。
ナナミのお陰で、ある程度は鎧兵の行動パターンを読むことができた。後はギミックに到達してから回避するだけ。
カナエールが苦戦する中、次々と他の走者も最初のギミックに到達した。もちろん俺もその中に入っている。
「この鎧兵の攻撃面倒臭いな!」
「ああ、こうなったら、こいつらを倒して道を切り開いた方が早そうだ」
「食らえ! ファイヤーボール!」
「アイスランス!」
他の走者たちが鎧兵の攻撃に苛立ち、ギミックモンスターに向けて魔法を放つ。
このバカ野郎共が!
彼らの行動を見て、思わず心の中で叫ぶ。
彼らの行動は愚かだ。確かに苛立ってしまうのは分かる。だけどその行動は返って自分の首を絞めることに繋がると言うことに気付いていないようだ。
魔法が直撃すると、鎧兵はバラバラとなり、鉄の装備となって地面に落ちる。
「オラオラオラ! ダークネス様のお通りだ! 道を開けろ!」
「未来のKINNGU覇者の邪魔をするんじゃねぇ!」
魔法を当てれば妨害できなくなる事実を知ったやつらが、調子に乗って次々と魔法を放ち、鎧兵たちを倒して行く。
「ヒャッハー! 道が開いたぜ! 今の内にギミックエリアを突破して……ブッヒャアアアアアアアアアァァァァァァァァァァ!」
ギミックを突破できる道を確保した瞬間、ダークネスと呼ばれた走者が鎧兵の斬撃を受けて後方に飛ばされた。
「なんだこいつ! さっきと違って動きが素早くなっているじゃないか」
吹き飛ばされたダークネスを見て、サウンドダーツと呼ばれた走者が驚きの声を上げる。
こいつら、全然このギミックの罠に気付いていなかったのだな。
このギミックは数の多い鎧兵が邪魔をするエリアだ。多くいるせいで道は限定されるし、攻撃も避けないといけないので、自然と速度は落ちる。そのせいで走者たちは苛立つが、それこそが、このギミックの罠だ。
走者を苛立たせ、ギミックモンスターである鎧兵を倒させることで、鎧兵の数を減らす。
そうすると、鎧兵を操っていた者は集中する対象が減ったことで操作に余裕が生まれ、別の動きをさせることができる。
しかし、それならなぜそんな回り諄いことをする? 最初から少ない数にすれば良いじゃないか?
最初の俺はそう思っていた。しかし運営側の意図を考えるに、簡単にギミックを突破されては、観客たちが面白くない。なので数多くの鎧兵を用意させ、突破しにくい状況を作りだし、鎧兵の数を減らされたタイミングで新たな行動を増やし、走者に驚きと困惑を植え付け、速度を落とさせて苦戦しているかのように演じさせようとしているのだろう。
まぁ、あくまでも予想にしかすぎないので、真実は分からない。そんな可能性もあるだろうと言う話だ。
さてさて、どうやってこのギミックを抜けようか。コールドシーフがいないのに、ギミックが強化されてしまった。
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