薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳

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第十三章

第二十話 龍の移動

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龍の動き自体がギミックであることを悟った俺は、龍の背中に飛び乗る。すると、龍はギミックのゴールへと向かって移動を始めた。

 龍が無理やり俺を振り落とそうとする素振りを見せない。どうやら正解のようだな。

 だが、油断はできない。いつこの龍が転移ゲートへと体を潜り込ませるのか分かったものではないからな。

「なるほど、龍の背中に乗って移動すると言う訳ですか。確かにこれなら、上手く行けばクリアできるかもしれないですね」

「うわっと!」

 背後から声が聞こえ、咄嗟に振り向く。そこには、ウマのケモノ族のルビーが立っていた。

「お前、いつの間に」

「つい先程です。あなたが龍に向けて飛んだ瞬間に私も勘付きました。では、私は先に行かせてもらいます。悠長にお話ししている時間はないようですので」

 俺の横を通り過ぎて龍の頭の方に向けて走って行くルビー。

「時間がない? って、そう言うことか!」

 尻尾の方に視線を向けると、龍は尻尾の先端から徐々に転移ゲートに体を入れて行く動作をし始めた。

 呑気に突っ立ていると、転移ゲートに落下させられてしまう。

 俺たちの後に続き、他の走者も龍へと飛び乗ったようだが、間に合わずに転移ゲートに落とされていた。

 龍の体から滑り落ちないように気をつけつつ、頭の方へと走っていく。

 だが、途中から龍の体が途切れていた。

 いや、正確には、体の一部を転移ゲート内へと入り込ませていることで、境界線の奥の方が見えなくなっているだけだ。

 つまり、跳躍して向こう側にいかないとダメと言うことだ。

 跳躍力が試される場面だな。万が一ジャンプ力が足りなくって、落下を避けるために飛行魔法を使ったとしても、その瞬間に反則と見なされ、龍に落とされる可能性が高い。

 勝負は1回きり、失敗すればまた龍のギミックを最初からやり直しだ。

 一度深い深呼吸を行い、心を落ち着かせる。

 普通に跳躍しては、まず届かない。なら、ここは肉体強化の魔法で身体能力を高めるべきだ。

「エンハンスドボディー」

 肉体強化の魔法を発動させ、一度下がると助走をつけて跳躍。

 よし、タイミングも跳躍する地点も問題ない。これならいける。

『ギャオオオオオオォォォォォン』

 そう確信した瞬間、耳をつんざくような龍の咆哮が耳に入ってくる。

 龍の咆哮を聞いた瞬間、咄嗟に耳を塞いだことで体の体勢を崩してしまう。それにより、跳躍した際の勢いを殺してしまった。

 しまった。このままではギリギリ届かないかもしれない。

 最高到達点に達した瞬間、俺の体は重力に引っ張られ、下へと向かっていく。

「届けええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

 声に出して叫び、届くことを祈る。すると、俺の願いが届いたのか、俺の足は転移ゲートの上ではなく、ギリギリ龍の体の上に乗せることができた。

 龍の体に足がついた瞬間、体重を前にかけてその場で倒れる。

 危なかった。もし、着地に失敗して後に体重がかかってしまっていたら、転移ゲートへと真っ逆様に落ちていただろう。

 それにしても、タイミングの悪い。

「あなたを蹴落とすために、あのタイミングで龍に咆哮を上げさせたのに、届いてしまいましたか。運を味方に付けるだけの力はあるようですね」

 奥の方からルビーの声が聞こえた。

 起き上がって先の方を見ると、彼女は龍の鱗に触れている姿が視界に入る。

「今の口ぶりからすると、あのタイミングで龍が咆哮を上げたのはお前の仕業のようだな」

「ええ、偶然にも逆鱗を見つけたので、利用させてもらいました。逆鱗とは龍の体に1枚だけしか存在していない逆になっている鱗です。龍はそれに触れられるのを嫌う傾向にあるので、触れれば怒って咆哮をすると思っていました。ですが、この作戦は失敗に終わったようですね。では、先に行かせてもらいます」

 ルビーは更に頭の方へと向かって行く。

 俺たちのレースは走者への妨害もありだ。そのルールは和の国でも同じようだな。

 なら、俺も逆鱗に触れてルビーを妨害すれば良いと言う話になるが、これは避けたほうが良い。

 仏の顔も3度までと言うし、もう一度逆鱗に触れて龍が温厚でいられる補償はない。万が一にも振り落とされるようなことになればシャレにならない。

 俺がすべき最善の手は先頭を走っているルビーに追い付くことだ。

 彼女を追いかけ、俺も龍の頭へと向かって行く。

 すると、ルビーは先に辿り着いていたようだ。龍の頭部に立って佇んでいた。

「そろそろこのギミックも終わるようですよ。あなたは、ここまで辿り着くことができますか?」

 言葉を吐くと、ルビーが俺に向かって火球を放ってきた。

 最後はお前自身が邪魔をするって訳か。コールドシーフとのレースを思い出すな。

 彼女の放つ火球を躱しつつ、距離を詰めていく。

炎は水に、氷は炎で対抗して彼女の妨害を躱していく。

「お見事、どうやらゴール地点に龍が到達したみたいですし、私は先に行かせてもらいます」

 俺への攻撃をやめた瞬間、ルビーは龍の頭から飛び、芝のコースを走っていく。

「待ちやがれ!」

 お決まりのセリフを吐きつつ、俺はルビーを追いかけた。

『さぁ、第2のギミックをクリアしたのは1番人気と2番人気だ。次のギミックが最後となるが、果たして勝者は誰になるのか!』
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