追放騎手の霊馬召喚〜トウカイテイオーを召喚できずに勘当された俺は、伝説の負け馬と共に霊馬競馬界で成り上がる!

仁徳

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第一章

第九話 メイクデビュー戦の結果

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 まずい、まずい、まずい! ハルウララのバッドステータス『飽きちゃった』が発動してしまった。

 ハルウララは我が侭で自分勝手なところがある。自分が走りたいように走り、走りたくない時は走らない。

 言い換えれば、何者にも流されない強い芯を持っているが、それが原因でこいつは今までレースに負け続けた。

 ハルウララを召喚してしまった時から、こんな日が来ると覚悟してはいた。だが、実際に体験してみると途轍もなく恐ろしい。

 彼女の言う通り、このままでは普通に負ける。だけど、負けが分かっているからと言って、最後まで諦めて欲しくはない。

「頼む! 頑張る必要はないとか言わないで、最後まで真剣にレースをやってくれないか?」

「えー、やだよ。どうして私に得がないことをさせるの? 私はハルウララだよ。自分が好きなように走って、疲れたら休む。それで良いじゃない」

「良くない! お前の走りを見て、多くの人の心が揺れ動かされたんだ! 生前のお前は、何度負けても、レースに参加し続けて、その諦めない心が多くの競馬ファンの心に突き刺さった! お前は底辺の人々に元気を与える希望であったんだ。だから、このレースも最後まで諦めないでくれ」

 どうにか最後まで走り切って欲しい。そう思って彼女に訴えかける。

「何が私の走りを見て、心が揺れ動かされただよ。レースに出走し続けたのは、馬主が毎回レースに出したから、仕方がなく走っただけ。それを勝手に人間が努力する馬、何度も負けても立ち上がる馬だと、決め付けただけじゃない! 本当の私はそんなんじゃない! 人間たちのエゴで、勝手に私と言う存在を決めつけないで!」

 ハルウララの言葉を聞き、歯を食い縛る。

 確かに彼女の言う通りだ。競走馬たちのことに詳しい人なら、ハルウララの本当の性格は知っている。だけど、何も知らない人たちからしたら、自身の目で見たこと、聞いたことを信じてイメージを固定してしまう。

 彼女を尊重するのであれば、俺はこのまま好きなように走らせた方が良いだろう。でも、俺はハルウララと契約を結んだ時、心に誓ったことがある。

 絶対に彼女を優勝させて、今まで見たことがない景色を見せてやりたいと。

「確かにお前の言う通りだな」

「でしょう? だからあなたも諦めて――」

「だけど、俺はお前と一緒に優勝したいんだ! ハルウララを勝たせて、お前に生前見ることができなかった景色を見せてやりたい! 確かにこれは俺のエゴだ。でも……でも、それでも俺は! お前がこれまで見られなかった景色を見せてやりたい! 騎手として、お前の優勝した先に何があるのか、見て欲しいんだ!」

 俺は胸の内に秘めた言葉を、魂の叫びにして声を上げる。

 声を上げた後、俺は少しだけ恥ずかしい気持ちになった。だが、ここで集中力を途切れさせる訳にはいかない。

 レースが終わるまでは、気を抜く訳にはいかない。

 無言のまま、ハルウララはコース上を走っている。

 やっぱり、無理か。いくら俺が彼女に対しての思いを叫んだところで、自分の芯が強いハルウララには届かない。

『まだ見たことのない景色……か……確かに、もし優勝したらどんな感じだったのだろうって、死ぬ間際に思ったことがあったな。君の言葉のせいで、未練を思い出してしまったよ。その責任、ちゃんと取ってもらうからね』

「それって……つまり」

『女の子に最後まで言わせないでよ! 私を優勝させるのでしょう。今から全力で走るから、サポートはお願いね!』

 ハルウララの闘志に火が付いた。嬉しくって、ついニヤけそうになる。でも、最後まで引き締めて、残り終盤戦を一気に駆け上がる必要がある。

『札幌競馬場、メイクデビュー戦も残り500メートルを切りました。以前先頭はダイワスカーレット、続いて2馬身差でビキニボーイ。その後方にシェラルーム、ナゾが続いています。それから今コクオーがナゾに並んだ! そして更に2馬身離れてヘキラクとカナディアンフェクターが競い合っています。そしてそこから5馬身ほど離れてポツンと居るのが伝説の負け馬ことハルウララですが、以前距離を保ったままだ! やはり伝説の負け馬は、現代に蘇っても負けを更新するだけか!』

 実況担当の中山の言葉が耳に入って来る。

 そんな訳ない。こいつは、本当は強いってことを、そして今までが本気ではなかったことを、世間に知らしめる!

「行くぞ! ハルウララ! 負け馬根性を見せてみろ!」

 俺は鞭をハルウララに当て、合図を送る。

『おっと! 最後尾を走っていたハルウララが動いた! 驚異的な走りだ! その走りは、まるでゴールドシップを彷彿させる程の凄まじい追い上げ! 残り300メートル! ハルウララが観客席側ホームストレッチに入り、観客たちが熱い声援を送っています!』

「まさか、あのハルウララがここまでの走りを見せるなんて」

「これは案外、ワンチャンあるんじゃないのか。あの負け馬が、とうとう1着を取る日が」

「行け! ハルウララ!」

 観客席側ホームストレッチに入り、観客たちの声援が聞こえて来た。

『みんな、私のことを応援してくれている。この感じ、懐かしいな。最後に走った高知競馬場を思い出したよ。やっぱり負けたくない。私だって、競走馬で活躍したご先祖様の血を受け継いでいるんだもの! みんな、その目に焼き付けておいて! これが負け馬根性の走りだ!』

 ハルウララが叫ぶ。その瞬間、コース内に変化が起きた。芝がダートに変化して行く。

「これは……霊馬の必殺技であるハルウララの名馬の伝説レジェンドオブアフェイマスホース! 負け馬の最後の走りザ・ラストランオブアルーシングホース!」

『ここでハルウララの名馬の伝説レジェンドオブアフェイマスホースが発動! ぐんぐん加速して行く! 今、ハルウララがカナディアンファクターを抜いた! 続いてヘキラク、ナゾを抜いてもなお、加速力は衰えを知らないかのようにぐんぐん伸びて行くぞ!』

 実況者の中山の言葉に、観客たちは更に歓声を強める。

 どうやら加速していると勘違いをしているようだが、実は違う。芝からダートへと変わったことで、適性が合わなくなり、馬たちが減速しているだけだ。俺の愛馬は加速してはいない。

 だけど、このままでは1着を取るのは難しい。そろそろ、残しておいた最後のアビリティを発動するか。

「アビリティ発動! スピードスター!」

 アビリティを発動後、俺の愛馬は加速力を上げ、更に前進を始める。

『残り200メートルのところでハルウララが、外から追い上げて来た! ビキニボーイを抜いて、今、ダイワスカーレットに追いつこうとしている! 3馬身差……2馬身差……1馬身差……半馬身差……クビ! 今、ダイワスカーレットと並んだ!』

「嘘でしょう! ハルウララが! 負け続けることで逆に伝説となった最弱馬が、ダイワスカーレットに追い付くなんて!」

 俺たちが追い付いたことで、ダイワスカーレットの騎手である大和鮮赤ダイワスカーレットが声を上げる。

「俺たちは絶対に勝つ! こいつに初勝利を与えてやるんだ! 行け! ハルウララ! 優勝は目の前だ!」

 愛馬に声を上げ、鞭を叩く。そして加速の合図を出すと、愛馬は更に己の力だけで加速力を上げた。

 速度を上げたハルウララはダイワスカーレットに距離を縮められることなく、そのままゴール板を駆け抜ける。

「ハルウララがダイワスカーレットを抜いた! そして1馬身差をつけて今ゴール! ハルウララ! 114戦113敗、現世に蘇って遂に念願の初勝利を手に入れた!」

 レースが終わり、多くの観客の歓声を受けながら、俺は右手を上げて勝利をアピールする。

 そしてレースが終わったことを知らせるために、ハルウララに減速するように指示を出した。

 そして全ての馬がゴールした後、俺はハルウララを観客席側ホームストレッチに移動をさせる。

「すげーぞ! ハルウララ!」

「まさかあそこから驚異的な差し足を見せるなんて信じられないぞ!」

「感動をありがとう!」

「「「「「ハルウララ! ハルウララ! ハルウララ! ハルウララ! ハルウララ!」」」」」

 ハルウララコールが止まない中、ハルウララはしばらくの間、観客席の人々を見続ける。

『凄い! みんな私の名前を呼んでいる! これが優勝した馬だけが見ることのできる景色! 2着を取っても、直ぐに引っ込まされたから、こんな風になっているなんて知らなかった!』

 ハルウララはそのまま観客たちを見続けた。きっと、この光景が彼女にとって、大きな影響を与えてくれるだろう。そう思って願った。





掲示板の結果

1着8番
    >1
2着5番
    >5
3着2番
    >ハナ
4着1番
    >1 2/1
5着7番
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