追放騎手の霊馬召喚〜トウカイテイオーを召喚できずに勘当された俺は、伝説の負け馬と共に霊馬競馬界で成り上がる!

仁徳

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第九章

第十八話 優駿牝馬出走メンバー

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 ~大和鮮赤ダイワスカーレット視点~





 喫茶店での出来事から数日が経った。

 あたしは廊下を歩いていると、電子掲示板に多くの生徒たちが群がっているのが視界に入る。

 そう言えば、優駿牝馬オークスの出走メンバーが発表される日だったわね。あたしの名前は載っているかしら?

 桜花賞を優勝したダイワスカーレットと契約しているあたしの二つ名が載っていてもおかしくはない。けれど、この世の絶対なんてものは存在しない以上、例え可能性が高かったとしても安心はできない。

 心臓の鼓動が早鐘を打つ中、あたしは電子掲示板に近付く。

「うん? おう、大和鮮赤ダイワスカーレットじゃないか。あんたの名前は載っていたぜ」

 電子掲示板に群がる生徒の中から、黒いショートヘアーに毛先が白くなっているツートンカラーの女の子が声をかけてきた。

魚華ウオッカじゃない。久しぶりね」

 久しぶりに顔を見た彼女に少しだけ驚きつつ、あたしも声を返す。

 彼女はダイワスカーレットのライバルであるウオッカと契約しており、馬同士がライバル関係であることを理由に、何かとあたしと勝負を仕掛けてくることが多かったのだけど、最近は彼女の顔を見ることがなかった。

「ああ、久しぶり。ウオッカの鼻出血が治った後、大和鮮赤ダイワスカーレット東海帝王トウカイテイオウに勝つために、ちょっと遠征と言う名の武者修行をしていた。今のアタイとウオッカは更に強くなっているぜ!」

 自身の親指を胸の突き立て、堂々と宣言する姿は、自身に溢れていた。もし、アニメや漫画であればば、彼女の後にオーラのようなものが描かれていたでしょうね。

「へぇー、それは楽しみね。魚華ウオッカ優駿牝馬オークスに選ばれた?」

「ああ、一応選ばれてはいるみたいだな」

 電子掲示板へとチラッと視線を向ける魚華ウオッカ

 彼女が出走メンバーに選ばれたとなれば、より一層気合いを入れなければならないわね。生前実現できなかった優駿牝馬オークスで、ウオッカとダイワスカーレットが樫の女王の座をかけて競い合う。怖くもあり、楽しみでもあるわ。

「でも、辞退する。だから、優駿牝馬オークス大和鮮赤ダイワスカーレットと競うことはできない」

「え?」

 彼女の言葉に衝撃を受けたあたしは、一文字の言葉が漏れた後、直ぐに言葉が出なかった。

 しかし、数秒経って頭の中で彼女の言った言葉を理解すると、咄嗟に言葉が出る。

「辞退するって、どう言うつもりよ! あなた、ふざけているの!」

 彼女にも事情があって言った言葉なのだろうと頭の中では分かっている。でも、感情がそれを許さなかった。

 G Iレースは選ばれた実力馬のみが出られる最高の舞台。誰もが夢見て憧れるレースなのよ。誰もが憧れて必死に努力をして、それでも掴むことができるのはごく僅かなのに、それを辞退するなんて。

 頑張って努力をして、それでも掴むことができなかった人たちからしたら、彼女の言葉に相当怒りを覚えているでしょうね。

「ふざけてはいない。アタイは真剣だ。真剣に考え、答えを導き出した結果、辞退することにした。ウオッカの伝説、当然知っているよな?」

「64年振りに牝馬にしてダービーを優勝したと言うあの伝説よね?」

「そう、きっとファンの人たちは、あの時の再来を待っているはずだ。もし、アタイが優駿牝馬オークスに出走してその次に東京優駿日本ダービーに出走したとしよう。でも、そうした場合、ウオッカは連闘となる。レベルの低いレースであれば問題ないが、G Iレースの連闘はバカのすること。だから東京優駿日本ダービーに狙いを定めて、今回の優駿牝馬オークスは見送ることにした」

 彼女の説明を聞き、納得はする。彼女が考えて決断したことなのだ。本人ではないあたしがどうこう言う筋合いはない。けれど、それは大きな博打となるわ。

「あなたの気持ちは分かった。でも、今回のレースを見送ったからと言って、東京優駿日本ダービーに選ばれるとは限らないわよ。もし、選ばれなかった場合はきっと後悔することになる」

「そんなことは、言われなくとも分かっている。でも、未来のことは誰にも分からない。分からない以上、アタイ自身が信じた道を突き進むしかない。もしかしたら後悔することになるかもしれない。けれど、アタイは自身が下した決断を間違っていたとは思わない」

「そう。なら、あたしよりも先に東海帝王トウカイテイオウがあなたと競うことになるかもしれないわね」

「ああ。もし、あの男と競うようなことになって勝つようなことになれば、かなりの自信になる。無敗の男を倒して、その勢いに乗ったまま次は大和鮮赤ダイワスカーレット、アンタを倒す。だから、優駿牝馬オークスでは負けるな。アタイが倒したいのは、強敵として立ちはだかるダイワスカーレットなんだから」

 拳を前に突き出し、まっすぐな瞳であたしのことを見つめてくる。

 あたしも拳を突き出し、彼女を見据える。

「ええ、絶対に勝ってみせるわ。生前成し遂げられなかったダイワスカーレットの優駿牝馬オークス制覇が、あたしの目標の一つなんだから」

「感動的なシーンの最中に悪いのだけど、それは叶わないわよ。優駿牝馬オークスで優勝するのは私なんだから」

 不意に背後から声が聞こえ、あたしは振り向く。そこには、見知らぬ女子生徒が立っていた。

「誰? あなた?」

「誰? ふふふ、いったい誰でしょうね」

 見知らぬ女子生徒は小首を傾げ、不適な笑みを溢す。

「私の正体が知りたいのなら、付いて来てもらって良いかしら? そこで真の姿を見せるわ」

 そう言うと、女子生徒はあたしたちに背を向け、どこかに向かって歩き始める。

 不適に笑みを浮かべる女子生徒が気になったあたしは、彼女の言葉に従い、女子生徒の後を歩く。

「おい、待ってくれよ。アタイも付いていくって!」

 どうやら魚華ウオッカも気になったようで、彼女も付いて来てくれた。正直に言って、女子生徒にはどこか違和感を覚えていた。だから、共に魚華ウオッカが付いて来てくれてホッとしている。

 女子生徒がこれからどこに向かうのかは不明だけど、変なところに連れ込まれなければ良いのだけどね。

 ちょっとした恐怖を感じつつも、あたしと魚華ウオッカは女子生徒に付いて行く。
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