Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

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第五章

第二話 どうして俺が、好みの胸を暴露しないといけない

「シロウ、飲んでいるか!」

「ああ、飲んでいるぞ」

 席に座って酒の入った樽のジョッキを持っている俺に、オルテガが話しかけてきた。

 彼は相当酔っているようで、顔が赤くなっている。

「何だ? 全然減っていないじゃないか。今日の主役はお前なんだからどんどん飲みやがれ! どんどん。ヒック」

 酒くっさ! オルテガのやつ、どれだけ飲んでいやがる。

「あのなぁ、今日で何日連続の飲み会になると思っているんだよ。今日で五日連続だぞ! それだけ飲んでいれば、飲む速度も遅くなるって!」

「そんなことは俺には関係ない! だって俺はお前とこうして酒を飲むのは初めてだからよぉ、悪いのは断ることができない英雄様だぜ」

 オルテガの言葉に、俺は溜息を吐く。

 千体の魔物とファイヤードラゴンから町を守った俺は、この町の町民から英雄扱いをされた。それ以来、毎日のように飲み会に誘われ、断ることができなかった俺は、五日目となる飲み会に現在参加している。

「肝臓が悪くなりそうだ」

「五日連続酒を飲んだぐらいで死にはしない! 俺なんか毎日飲んでいるぞ!」

「いったい何の自慢だよ」

「まぁ、まぁ、そんなことを言うなよ英雄様よぉ、気分を害したのなら、お詫びにあとでいい店を紹介してやるから許してくれ。最近は活躍しっぱなしでご無沙汰なんじゃないのか?」

 酒の力で思考がバカになっているらしい。彼は堂々と下ネタトークをしてきた。

「で、どんな娘がタイプなんだ? 巨乳か? 貧乳か? それとも品乳か? まな板と言われると、店を知らないから探す必要はあるのだがな?」

「何で俺が風俗に行く前提で話しを進める!」

「そうですわよ! シロウをそんなところにはいかせませんわ!」

「マリーさんの言うとおりです! シロウさんは私たちがいれば十分なんですから」

 オルテガの下ネタトークに軽くツッコミを入れていると、マリーとクロエが俺たちのところにやってきた。

 あれ? マリーたちもこの飲み会に参加しているんだったけ? ダメだ。酒のせいでその辺の記憶があやふやになっている。

 そんなことを考えていると、二人は俺を挟むように両サイドに座る。

「そう言えばお前には彼女たちがおったな! これは失敬、きっと毎晩よろしくしているんだろう。俺の若いころを思い出す。冒険者として活躍していたころはモテていてよぉ、毎日女をとっかえひっかえしていたものだ」

「その割にはハゲていないなぁ」

「テメ―! それは俺に禿げろと言っているのか!」

 はぁー、何でそうなるんだよ。俺はただ単に、髪の毛が薄い人は性欲が強いと言う話をしていただけなのに。

「シロウ、話しを少し戻してもよろしいでしょうか?」

 心の中で溜息を吐くと、マリーが少し前の話をしたいと言ってきた。

 少し前の話って何だったけ? 一分ほど前の話のはずなのに、何の話をしていたのか忘れてしまった。だけどまぁ、忘れると言うことは、たいした話ではないよなぁ。

「ああいいぞ」

 アルコールの影響で深く考えられなくなっている俺は、話すように促し、ジョッキを口元にもっていく。

「シロウの好みの胸は何カップですの?」

 予想していない言葉に、俺は思わず口に含んだ酒を噴き出しそうになる。けれど必死に耐えて飲み込んだ。

「ゴ、ゴホッ、ゴホゴホ」

「シ、シロウ大丈夫ですの!」

「た、大変! シロウさんしっかり!」

 強引に飲み込んだせいで咽ていると、マリーとクロエが俺の背中に手を回し、そのまま優しく撫でてくれる。

 そう言えば、前にもこんなことがあったな。あのときは確か、俺が食堂で食事をしていたときに、マリーが予想外の言葉を言ったのがきっかけだった。

「ありがとう。もう大丈夫だ」

 二人に礼を言い、手に持っているジョッキをテーブルの上に置く。

「もう、マリーさん! それはあまりにも直球すぎますよ! もっとオブラートに包んだ言いかたをしないと、ビックリするじゃないですか」

「ワタクシはまどろっこしいのは嫌いですわ。それに、クロエも気にならないわけではないですわよね」

「そ、それはそうですけど」

 クロエが頬を朱色に染めながら、両手の人差し指を合わせる。

 意表を突かれた言葉に驚いてしまったが、今ので完全に酔いが醒めた。マリーのことだ。俺の胸の好みを知って、色仕掛けで篭絡しようと考えているのかもしれない。

 マリーは男爵家の令嬢。今の俺とは違い、金を持っている。もし、仮にも俺が好きなのは巨乳だと言えば、胸を大きくさせるだろう。逆に胸が小さいのが好みと言えば、クロエを利用してくるかもしれない。さすがに幼児体型が好みではないが、そのようなことを仮に口走ってしまった場合、色々な意味で冷めた視線を送られそうだ。それは嘘であったとしても精神的にくるものがある。

「なぁ、オルテガはどんな女性が好みなんだ?」

 話を逸らそうと思い、強引にもギルドマスターに話しを振る。

「俺か? 俺は巨乳だろうと、貧乳だろうとおっぱいが大好きだぞ! ガハハハッ」

 いや、話しの流れからそんな風に受け止めてしまうのかもしれないけど、俺が聞きたかったのは、胸の大きさではなくて、女性のタイプなんだけど! これじゃあ俺も話さないといけない流れになるじゃないか!

 ダメだ。話を振った相手が悪すぎた。

「ギルドマスターの好みはどうでもいいのですが、彼も言ったのですから、シロウも言いますわよね?」

「ギルドマスターにだけ恥をかかせる訳にはいきませんよ」

 マリーとクロエが俺に顔を近づけ、視線を送ってくる。

「シロウ、人間と言うのは恥を掻いて成長するものだ」

 オルテガは胸の前で両腕を組むと、瞼を閉じて何度も頷く。

 いや、確かにお前はいいことを言っているのかもしれないが、この場では適さないからな!

「さぁ、シロウ」

「シロウさん。教えてください」

 二人から腕を絡められてしまい、俺は逃げることができない。

 ここが年貢の納め時というやつか。仕方がない。俺は敢えて好みを暴露してやろうではないか。

「俺が好きなのは――」

 俺は思いっきり声を荒げて好みの胸のサイズを言う。その瞬間、二人の腕の力が緩み、彼女たちから距離を取る。

「インピード・レコグニション」

 俺は認識阻害の魔法をこの場にいる全員にかけ、記憶を書き換える。皆で飲んでいたが、下ネタの話はしなかったといった感じにだ。

 これでよし。

 心の中で安堵すると、俺は一人で店から出て行った。

 マリーには【抗体】というスキルの影響で、認識阻害の魔法が効かないと言うことを、当時の俺は忘れていた。











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