Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

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第五章

第四話 俺にはもうひとつのスキルがあっただと!

 ~レオ視点~



「あーくそう! やっていられるかよ!」

 俺ことレオは、酒の入ったジョッキを叩きつけるようにテーブルの上に置く。

「レオ飲み過ぎよ。今日はそのへんにしておけば?」

 仲間のエリナが、俺にこれ以上酒を飲むなと言ってきやがる。

「これが飲まずにいられるか! レッサーデーモン討伐の任務に失敗したせいで、俺たちの評価はまた下がってしまったんだぞ! それによぉ、幻覚の杖の魔力まで失って、ただの杖に成り下がりやがった。もうほとんど価値がないガラクタだ」

「だからあのとき言ったじゃない。依頼をリタイアして杖を売りに行こうって。私の言うとおりにしていたのなら、今ごろもっといいものを食べられていたのに」

 エリナが何かぶつぶつと言っているようだが、酒が回っている今の状態では彼女が何を言っているのか、よく聞き取ることができなかった。

「くそう。全部シロウのやつがいけないんだ! あいつさえいなければ、俺がこんな惨めな思いをすることはなかった」

 俺はテーブルの上に顎を乗せ、愚痴をこぼす。

「おい、あいつらだろう。元Sランクパーティー」

「ああ、そうそう。噂じゃあシロウとかいう優秀な冒険者を追い出したばかりに、今まで攻略できていたダンジョンもクリアできなくなったってよ」

「マジでダッセー! 優秀か無能かも判断できないのかよ」

「何だとぉ! おら! もう一度言ってみろ!」

 顔も知らないやつらの声が耳に入り、俺は怒りの感情が沸き上がった。気がつくと席から立ち上がり、陰口を叩いていた連中を睨みつけていた。

 このときの俺は酒のせいで思考が鈍っていたから、俺ではなくマリーが追放していたことを忘れていたのだ。

「お、いいぜ。有能と無能の区別もつかないような頭の悪い落ちぶれリーダー」

「そうだそうだ! お前たちとは違って、シロウとかいう冒険者は隣町を救った英雄らしいぞ! 噂では千体の魔物から町を救ったって話だぞ。お前とは天と地ほどの実力の差がある」

「おい、やめろよ。あんな男とシロウを比べたら、シロウが怒るぞ『あの程度の男を俺と比べるな』って言うに決まっている」

「違いねぇ、ギャハハハ」

 俺のことをバカにする連中に、はらわたが煮えくり返る思いをした。

 どうやら、俺の実力を思い知らせる必要がありそうだ。一発ぶん殴ってやろう。そうすれば、俺のほうが上だと言うことを思い知らせ、黙らせることができる。

 それにあいつが言ったことも気に食わねぇ。シロウが千体の魔物を倒して英雄になっただと? そんな訳がない。確かにあいつは得体の知れない力を持っているのは確かだ。

 だけど、いくら何でも千体の魔物を倒したっていうのは言い過ぎだ。

 きっと俺のことが気に入らない誰かが、言いふらかしているほら話に決まっている。俺とあいつを対比させ、俺のことを陥れようとしているに違いない。

 だが、今はそんなことはどうでもいい。今直ぐにやらなければならないことは、嘗めた口を利くあの二人をボコることだ。

「一発ぶん殴って黙らせてやる!」

 俺は二人組に近づくと、拳を握って後方に下げる。

「待って! レオ! ここにはたくさんの人がいるわ! 問題を起こせば、冒険者資格を剥奪されるかもしれない」

 エリナの声が耳に入り、俺は殴りかかろうとする腕を止める。

 そうだ。こんなところで暴れれば、冒険者の資格を失うかもしれない。そうなってしまえば、親父に顔向けができない。

「チッ、運が良かったな。エリナに感謝しやがれ」

 二人組に背を向け、先ほどまで座っていた席に戻る。

「何が運が良かっただ。それはこっちのセリフだ」

「あーあ、せっかく大勢の前でぶん殴られて冒険者の資格を剥奪させてやろうと思っていたのに、つまんねぇの」

 背後から聞こえてくる男たちの言葉に、俺は歯を食い縛る。

 くそう! くそう! どうして俺がこんな思いをしなければならない。

 ああ、気分が悪い。もう一度飲み直しだ。

「オヤジ! 酒の追加だ!」

「レオ、これ以上は身体によくないわよ」

「うるせー! 飲まずにいられるかよ!」

 エリナの言葉にカチンと来てしまった俺は、思わず声を荒げる。

 ああ、本当にイラつくぜ。お前は俺の女房かよ! 酒ぐらい好きに飲ませやがれ!

「いやー、これは本当に酷い。噂は聞いてはいましたが、これほど落ちぶれているとは」

「ああ?」

 再びイラつかせるような声が聞こえ、俺は声の聞こえたほうに顔を向ける。そこには黒い服を着た男が立っていた。

 何だ? 全身黒ずくめの恰好をしやがって。それに肌も死人のように真っ白じゃないか。

「何だテメ―。喧嘩売っているのか」

「いえ、いえ、滅相もない。僕はあなたと話しをしたいだけですよ。騎士団長の息子のレオ君」

 男は親父の肩書きと俺の名を言ってきやがった。もしかして親父の知り合いか?

 彼は当然のように、俺たちの席に腰を下ろす。

「それにしてもレオ君は運が悪いですねぇ、たまたま不運が続いているだけだと言うのに、それを逆手に取られて悪い噂を流されている。僕からすれば、レオ君はシロウよりも遥かに強い」

 男の言葉に、俺は反応してしまった。

 俺がシロウよりも強いだと? バカなことを言いやがる。俺はシロウよりも弱いのは身を持って知っている。

「俺があいつよりも強い? 寝言は寝て言え」

「いやいやいや、事実を言っているだけです。レオ君は、真の実力を出し切れていない。僕の見立てでは使っている武器が悪いだけだと思っております。武器があなたの実力に見合っていないせいで、君は弱いと錯覚しているだけですよ」

「武器のせいで俺が弱くなっているだと?」

「ええ、なので、僕が手助けをしてあげます。君にとある剣を授けましょう。それを使えば、レオ君は強くなる」

「はん、俄かに信じられないな。俺の強さが剣に左右されるなんて」

 そうだ。剣の道は単純なものではない。辛い修練を乗り越えた先に、強さを手に入れられる。それが騎士道というものだ。

「それが左右されるんです。特にレオ君の場合はね。君は自分のユニークスキルが何なのか御存知なのですか?」

「当たり前だろう! 【筋力増強】だ。一時的に攻撃力が著しくデカくなるスキル」

「いいえ、それだけではないですよ」

 男は首を左右に振る。

 それだけではないとはどういうことなんだ?

「君はシングルスキルだと思っているようですが、実際は違う。君は二重保持者デュアル。二つのスキルを使用することができる」

「はぁ? そんな訳がないだろう。俺が二年前に鑑定したときは【筋力増強】しか言われなかったぞ。もし、二重保持者デュアルなら、鑑定士がもう一つ言っているだろうが」

 俺は男を睨みつける。

 鑑定士は嘘を吐かない。あの時俺にはひとつのスキルしか伝えられなかった。もし、俺にもう一つのスキルが備わっているのであれば、あのときに二つのスキルを言われるはずだ。

「実はですね。鑑定士の裏ルールでは、都合の悪いスキルは言わなくていいと言うものがあるのです。きっとそれで伏せられたのでしょう」

「何だと! それは本当か!」

「ええ、本当ですとも。僕は嘘は吐かない」

「それで、俺のもう一つのスキルって言うのは何なんだよ!」

 俺は男に問う。すると彼は首を左右に振って周囲を窺っていた。

「場所を変えましょう。ここでは話すことができません。それに今の君は酒に酔っている。その状態では本当の実力を出すことができないでしょう。明日のお昼ごろ、ギルドの前で落ち合いましょう」

 男はそう告げると、席を立って酒場から出て行く。

「ねぇ、レオ、あの男の言葉を信じるの?」

「半信半疑だが、信じてみる価値はある。俺はあの男の話に乗るぞ」

「そう、なら私もついて行くわ。仲間として、もう一つのあなたのスキルをこの目で見ておきたい」

「わかった。ならついて来い。今日はもうこの辺でお開きとするか。エリナ、悪いが支払いは頼んだ」

「ええ、わかった」

 酒の支払いをエリナに頼み、俺は酒場から出て行く。










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