悪役令嬢の兇器はドス黒い鈍器《パイプ椅子》です ~前世は病弱、今世は物理最強。魔法もチートも私には勝てません~

みやもと春九堂@月館望男

文字の大きさ
193 / 200
【外伝】それぞれのそのとき・それから

【外伝】【極秘扱】大陸横断プロジェクト・裏面通信ログ保存記録 -2-

しおりを挟む
【極秘扱】大陸横断プロジェクト・裏面通信ログ保存記録 Vol.2
~案件名:指輪の誤用疑惑および、宰相の胃壁崩壊カウントダウン~

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【通信No.008】
送信者:ミリア・コーンフィールド(ヴィータヴェン・アクシス連邦皇国宰相)
受信者:ギルベルト・ラノリア(ラノリア王国国王)
件名:【悲報】プレゼントの「用途」について
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

拝啓 ギルベルト陛下。

先日は、東西の中間地点での視察(という名のヤケ酒の会)にお付き合いいただき、ありがとうございました。陛下が持参された「聖都まんじゅう(プレミアム味噌味)」が、荒んだ心に沁みました。

さて、アレクセイ様から極秘裏に送られてきた「星屑金(スターダスト・ゴールド)」の加工品――つまり「指輪の台座」について、事後報告です。
ガンテツ親方に無理を言って、一晩でサイズ違いのいくつかのシンプルなリングに加工してもらい、「東方で見つかった未知の硬質金属サンプルです」としてレヴィーネ様にお渡ししました。

結果をご報告します。
レヴィーネ様は、それを「メリケンサック」だと認識されました。

「あら、素晴らしい硬度ですわね。これならドラゴンの鱗もいけそうですわ」と仰り、親指を除く4本の指に指輪を装備するや、試し打ちと称して部材室の古代樹や岩石のサンプルを粉砕されました。

指輪は無傷。部材室のサンプルは木っ端微塵。
レヴィーネ様は「良い武器サンプルですわ」とご満悦です。

……もう駄目です。あの二人の間に、ロマンチックな空気など存在しません。あるのは物理的な破壊力だけです。
アレクセイ様には、「渡しました」とだけお伝えください。一応左の薬指のサイズも。「凶器として愛用されています」とは、私の口からはとても言えません。

敬具



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【通信No.009】
送信者:ギルベルト・ラノリア
受信者:アレクセイ・ガルディア(帝国道路公団・現場監督)
件名:Re: 経過報告(という名の警告)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

アレクセイ殿。

君からの贈り物は、無事にレヴィーネ姐さんの手に渡ったそうだ。
……詳細は伏せるが、彼女はそれを「実戦的な装備」として大変気に入っているらしい。君の選んだ素材の頑丈さは証明されたわけだ(ミリア殿の胃薬の量は増えたようだが)。

さて、冗談は置いておいて、忠告だ。
最近、東方からの魔力振動が強くなっていると、我が国の宮廷魔導師団が感知している。
君たち、相当無理なペースで工事を進めているのではないか?
「氷壊槍」と「焔創剣」を土木工事にフル稼働させているそうだが、君自身の体が心配だ。
レヴィーネ姐さんの前に立つとき、君が倒れていては元も子もないだろう。

姐さんは最近、西の空(君がいる方向)を見ては、鉄扇をバチバチと鳴らしているそうだ。
「既読スルーの罪は、万死に値しますわ」という独り言を、イリス殿のマイクが拾っているらしい。

再会の瞬間、君が物理的に消滅しないよう、防御魔法の重ねがけをしておくことを強く推奨する。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【通信No.010】
送信者:アレクセイ・ガルディア
受信者:ミリア・コーンフィールド
件名:工事進捗と弁明
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ミリア殿。

指輪の件、感謝する。
……武器として使っている? ははっ、想像通りだ。
それでこそ私が惚れた女だ。軟弱な宝石などより、共に戦場(現場)に立てる実用性こそが、彼女には相応しい。
その指輪が砕けない限り、私の愛も砕けないと伝えて……いや、やはり言わなくていい。
どういう意図かは敢えて確認しないが、左の薬指のサイズについても大きな感謝を。

さて、工事のペースを上げているのは事実だ。
我々の目の前に、最大の難関「神代の岩盤」が立ちはだかった。
通常の重機では歯が立たない。だが、ここで止まるわけにはいかない。
魔導師団とソレン、そして私の全力をもって、この壁をブチ抜く。

計算では、あと数日で貫通するはずだ。
その時こそ、私は彼女に会いに行く。

ミリア殿、最後の詰めだ。
貫通の瞬間、衝撃波と粉塵が発生する可能性がある。レヴィーネ周辺の安全確保と、できれば……彼女の機嫌取りを頼む。
再会した瞬間に殺されたくはないからな。

追伸:
胃薬の代金は、開通後の通行料収入から「帝国特別枠」として上乗せして支払う。今は耐えてくれ。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【通信No.011】
送信者:ミリア・コーンフィールド
受信者:アレクセイ・ガルディア
件名:【緊急】イリスからの警告アラート
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

アレクセイ様。

「耐えてくれ」ではありません! 耐えるのは私の胃ではなく、大陸の地盤です!
たった今、イリスから緊急アラートが発令されました。

『警告。東方より、戦略級魔法に匹敵する熱源と冷気の衝突反応を検知。地殻変動レベルの振動が接近中』

貴方達、岩盤に対して何を撃ち込んでいるのですか!?
「熱膨張と急冷による破砕工法」だそうですが、規模が大きすぎます!

レヴィーネ様が「あら、東の方で喧嘩かしら? 楽しそうですわね」と、戦闘ドレスに着替え始めました!
「仲裁(物理)」に向かおうとされています!

もしこれが、貴方達の工事によるものだとバレたら……いえ、もう手遅れです。
レヴィーネ様は『漆黒の玉座』を担いで、東へ向かいました。

「3年間も待たせた挙句、騒音で安眠妨害までする不届き者はどこのどいつかしら?」と、笑顔ですが目は笑っていません。

アレクセイ様。
どうか、生きてお会いしましょう。
貫通の瞬間、そこにいるのが「愛しい婚約者」か「処刑人」か、それは貴方の運次第です。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【通信No.012】
送信者:ギルベルト・ラノリア
受信者:ミリア・コーンフィールド
件名:私にできること
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ミリア殿。

状況は把握した。いよいよ、クライマックスのようだな。
君の心労、察するに余りある。

だが、安心してほしい。
私がラノリアから、精鋭の聖騎士団と「回復魔法部隊」を国境付近へ派遣した。
万が一、アレクセイ殿が姐さんに殴られて瀕死になっても、即座に蘇生できるよう待機させてある。

それと……これは個人的な話だが。
この大工事が終わったら、少し休みを取らないか?
ラノリアの離宮にある温泉は、胃痛と神経痛によく効くそうだ。

君は働きすぎだ。レヴィーネ姐さんを支える君を、支えるのが私の役目だと思っている。
……嫌でなければ、だが。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【通信No.013】
送信者:ミリア・コーンフィールド
受信者:ギルベルト・ラノリア
件名:Re: 私にできること(と、予約のお願い)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ギルベルト陛下。

……ずるいです。
そんなタイミングで、そんな優しい言葉をかけられたら、張り詰めていた糸が切れてしまいそうです。
蘇生部隊の派遣、感謝します(本当に必要になりそうです)。

温泉の件、謹んでお受けします。
ただし、条件があります。
「視察」ではなく「休暇」として。そして、仕事の話は抜きで。
……プロテインではなく、たまには甘いお酒でも飲みながら、愚痴を聞いていただけますか?

PS:
レヴィーネ様が、現場に到着されたようです。
モニター越しに見えます。
壁の向こうのアレクセイ様(とソレン様)の気配を察知して、振り上げた拳を……あ、止めました。

……どうやら、殴り込みではなく、「お迎え」に変更されたようです。
私の胃も、ようやく平穏を取り戻せそうです。

これにて、通信ログを終了します。
あとは、あのお二人の「物理的な愛の物語」を見届けるだけです。

ミリア・コーンフィールド
(V&C商会代表・兼・アクシス連邦皇国胃痛宰相)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

前世ブラックOLの私が転生したら悪役令嬢でした

タマ マコト
ファンタジー
過労で倒れたブラック企業勤めのOLは、目を覚ますと公爵令嬢アーデルハイトとして転生していた。しかも立場は“断罪予定の悪役令嬢”。だが彼女は恋愛や王子の愛を選ばず、社交界を「市場」と見抜く。王家の財政が危ういことを察知し、家の莫大な資産と金融知識を武器に“期限付き融資”という刃を突きつける。理想主義の王太子と衝突しながらも、彼女は決意する――破滅を回避するためではない。国家の金脈を握り、国そのものを立て直すために。悪役令嬢の経済戦争が、静かに幕を開ける。

【完結】異世界で幽霊やってます!?

かずきりり
ファンタジー
目が覚めたら、豪華絢爛な寝室……に、浮かぶ俺。 死んだ……? まさかの幽霊……? 誰にも認識されず、悲しみと孤独が襲う中で、繰り広げられそうな修羅場。 せめて幽霊になるなら異世界とか止めてくれ!! 何故か部屋から逃げる事も出来ず……と思えば、悪役令嬢らしき女の子から離れる事が出来ない!? どうやら前世ハマっていたゲームの世界に転生したようだけど、既にシナリオとは違う事が起きている……。 そして何と!悪役令嬢は転生者! 俺は……転……死?幽霊……? どうなる!?悪役令嬢! ってか、どうなるの俺!? --------------------- ※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました

東野あさひ
ファンタジー
無能の烙印、婚約破棄、そして辺境追放――。でもそれ、全部“勘違い”でした。 王国随一の名門貴族令嬢ノクティア・エルヴァーンは、魔力がないと断定され、婚約を破棄されて辺境へと追放された。 だが、誰も知らなかった――彼女が「古代魔術」の適性を持つ唯一の魔導士であることを。 行き着いた先は魔物の脅威に晒されるグランツ砦。 冷徹な司令官カイラスとの出会いをきっかけに、彼女の眠っていた力が次第に目を覚まし始める。 無能令嬢と嘲笑された少女が、辺境で覚醒し、最強へと駆け上がる――! 王都の者たちよ、見ていなさい。今度は私が、あなたたちを見下ろす番です。 これは、“追放令嬢”が辺境から世界を変える、痛快ざまぁ×覚醒ファンタジー。

王女殿下のモラトリアム

あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」 突然、怒鳴られたの。 見知らぬ男子生徒から。 それが余りにも突然で反応できなかったの。 この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの? わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。 先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。 お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって! 婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪ お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。 え? 違うの? ライバルって縦ロールなの? 世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。 わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら? この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。 ※設定はゆるんゆるん ※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。 ※明るいラブコメが書きたくて。 ※シャティエル王国シリーズ3作目! ※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、 『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。 上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。 ※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅! ※小説家になろうにも投稿しました。

【完】相手が宜しくないヤツだから、とりあえず婚約破棄したい(切実)

桜 鴬
恋愛
私は公爵家令嬢のエリザベート。弟と妹がおりますわ。嫡男の弟には隣国の姫君。妹には侯爵子息。私には皇太子様の婚約者がおります。勿論、政略結婚です。でもこればかりは仕方が有りません。貴族としての義務ですから。ですから私は私なりに、婚約者様の良い所を見つけようと努力をして参りました。尊敬し寄り添える様にと努力を重ねたのです。でも無理!ムリ!絶対に嫌!あからさまな変態加減。更には引きこもりの妹から明かされる真実?もう開いた口が塞がらない。 ヒロインに隠しキャラ?妹も私も悪役令嬢?ならそちらから婚約破棄して下さい。私だけなら国外追放喜んで!なのに何故か執着されてる。 ヒロイン!死ぬ気で攻略しろ! 勿論、やられたら倍返ししますけど。 (異世界転生者が登場しますが、主人公は異世界転生者では有りません。) 続編として【まだまだ宜しくないヤツだけど、とりあえず婚約破棄しない。】があります。

処理中です...