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第15章

【黒き魔女の計画】

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「ここ数ヵ月前から、この峠のすぐ反対側の峠の城に住むあたしの姉のイナベラが、再びあの魔物を再生させようとあの恐ろしい液体を作ろうと研究しているところなんだ…。
それももうすぐ完成してしまうところまできている。
イナベラは頭が切れるからね。
あの液体はやみくもに使うものじゃないのに。
あたしが身体を張って止めに入ろうとしても、イナベラの強い魔法によって城の入り口にバリヤ張られていて、まだまだ弱い魔法しか使えない素人魔女のあたしは中に入れないんだ…。
舐められたもんだよ。
どうやらイナベラは、再生させた魔物を得意の魔法で操り、その強い力で人間界の食料や土地を全て乗っ取ろうと計画しているようなんだ。
そのために、まずは10年前のように魔物にハロウィン界の住人達を食べさせ巨大化させ、より力強い魔物にしようと企んでいるらしい。
また犠牲者が沢山出るに違いない…。
あたしゃ、どうしたらいいのか分からなくて困り果てているんだ…」

エイミー達はアナベラからそれを聞くと、驚いて顔を見合わせた。
どうやらこの遠い峠へ滅多に訪れることの無いジャック達も、その恐ろしい事実を知らずにいたようだ。

聞くに、その計画はイナベラ本人が度々城の黒電話でアナベラに伝えているのだそうだ。
そして、邪魔をしたらどうなるかわかっているなとアナベラを脅すらしい。

それまで黙っていたキルが、かごの中から甲高い声で言った。

「キキキ!
そんなわけなんだ、エイミー達。
やっぱりスリルだ!
スリルが無ければ楽しくない!
不仲のアナベラが説得したってイナベラは聞きっこないさ。
エイミー達、手伝ってくれるか?
イナベラを説得するのを」

ジャックが迷いながら不満気に口を開く。

「しかし…5度目の鐘が鳴る前には時計屋に戻らなきゃならないんだ。
ロンと固く約束したからな。
かといって、また同じ過ちを繰り返すわけにはいかない…。
あぁ、なんてことだ!」
 
その点、ドクロは楽観的だった。

「まだ3度、残っているじゃないか。
あと3度の鐘が鳴る前に事を済ませればいい話だろう?
エイミーならきっと大丈夫さ」

フレディもドクロに賛成した。

「きっと、大丈夫だよ。僕達ならやれる」

イヴもこくこくと頷き、ニャァ、と鳴いた。

アナベラは涙ぐんだ目で、申し訳なさそうにエイミーに両手を合わせ懇願した。

エイミーはぐっと拳を握りしめてアナベラに答えた。

「大丈夫よ、アナベラ。
アナベラはもう見るからに戦える身体じゃないし、一緒に行くとイナベラはきっと警戒して中に入れてくれないわ。
アナベラはここにいて。
私達が力を合わせて絶対にイナベラを説得して見せるから!」

アナベラはそれを聞くと、まだ不安気に、それでも少し笑顔を見せて言った。

「……頼むよ、エイミー達」

キルがかごの中からアナベラに頼んだ。

「キキキ!
アナベラ、面白そうだから俺も行くよ。
鍵を開けてここから出してくれ。
おかしなマネはしないと約束するからさ」

アナベラはキルをキッと睨みつけて言った。

「どうせおまえは我慢出来ずにイタズラや悪さをしでかすだろう!?
まるで、世話の焼ける子供のように!
おまえは大人しくあたしと一緒にいるんだよ」

キルは動じず、ある作戦でアナベラを言い包めた。

「キキキ…イナベラの城にバリヤが張られているのは、恐らく入り口だけだろ?
俺は昔からアナベラと一緒にいるから、姉のイナベラの城にも何度か行ったことがある。
だからあの広い城の中に大体どんな部屋があって何があるのかも知っている。
それから、ジャックは空を飛べる。
ここからが作戦だ。
俺は小さいから、ジャックの頭に乗せてもらう。
それで塔の上の窓を割って中に入るんだ。
まず、中の状況を確かめる。
状況を把握したら、俺がイナベラに見つからないように城の中から頑丈なロープを盗み取ってきて、窓から下に垂らす。
ロープはバリヤに引っかからない、入り口から外れた場所に垂らすから安心してくれ。
エイミーとフレディ、イヴとドクロはそれを掴んでロープを登って来るんだ。
それでイナベラを説得しようぜ。
キキキ、どうだ?」

アナベラはその作戦を聞くと、ぐぬぬと唸りながら鍵を取り出し渋々かごを開けた。

「今回だけだからね!
おかしなマネをしたら許さないよ!」

キルは開放されたかのようにかごから飛び出した。
ドクロはそのやりとりを見て、いつものようにカカカカカッと笑った。
フレディは勝手に1人で格闘の練習をしている。
イヴは呑気にのびをしていた。

ジャックは振り返ると、エイミーに言った。

「さあ、急ぐぞ。
反対側の峠の城…イナベラの元へ出発だ。
ここから近いからきっとすぐに到着するだろう」

エイミーはジャックに頷くと、アナベラに向き直り言った。

「必ず、成功させてここへ戻るから。
大丈夫よ、アナベラ」

アナベラは頷くと、なにやら部屋から出てエイミー達に手招きした。
エイミー達がアナベラについて行くと、アナベラは3個隣の部屋の前に立ち、また手招きした。
エイミー達がアナベラに続いて中へ入ると、その部屋には壁中に魔女の杖が立て掛けてあった。
恐らく、魔法の杖であろう。

「あたしも、一応魔女なんでね」

アナベラは少しばかり気恥ずかしそうに頭を掻きながら言った。

そして、壁にもたれかかっている1つの古く錆びついた剣を手に取ると、エイミーにその剣を渡した。

「もしも、戦わなきゃならないはめになったら、これを使うんだよ。
この剣は、過去にエイミーが魔物を倒した時に授けたのと同じ剣だ」

エイミーは剣を受け取ると言った。

「ありがとう、アナベラ。
でも、これを持ってロープを登るのは大変ね」

するとドクロが口を挟んだ。

「私はいつも肩に大きな斧をぶら下げているから、それと一緒にぶら下げていけばいいんだ。
武器を持つのには慣れている」

「そうね、頼んだわ、ドクロ」

エイミー達はアナベラに手を振るとその部屋から出た。
そして扉を閉めると、また気が遠くなるほど続いている階段を急いで降りた。

城から外に出ると、外はさっきよりも寒かった。

ゴーーン……ゴーーン……

その時、3度目の鐘が鳴った。

ジャックが慌てて再び先頭をナビゲートし出した。
エイミー達はジャックに続いて、反対側の峠の城…イナベラの城の方へと急いで走り出した。
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