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3 キーホルダーと

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一か月がたった、いつしか青葉君と葵と私で私の机をかこんで話すことが普通になっていた。しかし、葵と青葉君は時々ピリピリすること
がある。多分、原因は私に対する青葉君のスキンシップだと思う。私はあまり気にしていないのだが、葵には「気を付けた方がいいよ!」
と念押しまでされてしまった。どうしたらいいのだろう。私は長い溜息をした。
廊下の角に紺野先生がいる。私の方に歩いてきた。
「長い溜息だね。悩みごとかな、迷える子羊ちゃん♡」
「先生、私は悩みごとなんかしてませんし、子羊でもないし、語尾にハートつけるのやめてくださいよ」
「こわいなー。でも、迷いなんて抱え込まないではいた方が楽だよ。よかったら私の弟にでも相談してね」
 はけたらどんなに楽だろう。そして私はあなたの弟に一番相談してはいけないのだけどという顔をしたらしく先生はそれに気づき、
「あーごめんね、私にでも話してっていいたかっただけ」
といって、階段を駆け下りた。
カラン。
「先せっ」
 読んだけれど、そこに先生の姿はなかった。「カラン」という音の正体は先生の落としたキーホルダーだった。綺麗な深い青の中に星が
入っているものだった。なんで先生がこんな物を持っているのだろう。私がこの疑問を抱いたのには理由がある。
一つは私も水色のそれをもっているからだ。
そして、二つ目は夢で私がそれらを持っていたからだ。明日このことを青葉君に話そう。

次の日、私は青葉君に昨日のことを出来るだけ話した。私はひそかに青葉君がこの話を聞いてどんな反応をするのかたのしみだった。しか
し、青葉君は予定外の反応を私に見せた。ちょっと困ったような険しい顔だ。私は驚いた。そして、いつものように言う。
「あの、少し失礼します」
 あっまたこれだ。
「あっはい」
今日は何だろう。
「目を閉じてください」
 えっ、目つぶるの?でも断ることはできないので私は目をつぶった。青葉君は私の手を握った。よっかたいつも道理で。んっ?手が頬に
、思わず目をあけてしまった。
「あっごめん」
「こちらこそ、びっくりしますよね、でもこちらも水咲さんの夢に入り込めるように努力しているので」
 そうなのだ、あの時から青葉君は私の手の平に触れて私の夢について調査しているのだ。

「あの…、ずっと触っていなくていい方法はないの」
「あるといったらあるし、ないと言ったらないです」
「どっちなの…」
 やっぱり青葉君の言っていることはいろいろと矛盾している。
「その夢に持っていたものがあればなんとか」
 なんだ簡単なことじゃん。
「でも、今のままじゃあなたが倒れますよ」
 私は青葉君の言っていることがよく分からなかった。
「何いってるの。それで?私わは持っていた物を渡せばいいのね」
そうやって言い捨ててから、私はいつもの廊下で毎日、『夢で持っていた物』を紙袋に入れて渡していた。
不思議なことに夢の内容は同じなのに持っている物が違うのだ。
そして、そんな日が一週間つづく。私は日に日にあの時に戻りたい、寂しいと思うようになっていた。
私の中にあるこの感情はなんていったらいいのだろう。私は一晩おもいっきりなやんだ。直に思ったことを言おう。いつものように廊下で待っていても、青葉君はいつになっても現れない。
急いで教室に戻っても青葉君の姿はない。私は気づいたら、もう授業の始まった校舎の中を走っていた。
体中、汗でぐっしょりだった。走り疲れた私は水道の蛇口をひねり喉を潤した。私はそこで焦った心を落ち着かせた。しかし、青葉君の居場所が分からなかった。
わたしは先生に青葉君の住所を特別に教えてもらって、授業に戻ることにした。職員室に入ろうと
するとちょうど紺野先生がコーヒーカップを手にしようとしていた

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