初恋の先へ

咲 カヲル

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十三

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ローデンが歯軋りすると、モーガンは、静かに膝を着いた。

「ローデン、君は騙されたんだ。君が、帝国を敵視すれば、帝国の力を求める王家をも敵視してるとみなされ、皇帝を侮辱するような発言をすれば、皇帝と関係を築こうとしてる国王を侮辱したとみなされる。そうなれば、裁きを受けるのは、当事者である君、エルテル公爵家の当主である君の父、君を産んだ母、そして、公爵家に仕える全ての者が責任を負い、処罰を受ける。良くて国外追放、最悪の場合、死刑になる。そしたら、エルテル公爵家は、消えてなくなる。もし、エルテル公爵家が無事だったとしても、次は、アルベル公爵家が失われるだけだった」

「違う…僕は、ただ」

「君は、王家を救う英雄どころか、国の均衡を崩す為の駒でしかなかったんだ」

ローデンが、虚ろな瞳で、ただ一点を見つめると、モーガンは、その肩に触れた。

「何故、誰にも話さなかったの?」

「…誰にも、話しちゃいけないって。話せば、モーガンだけじゃなくて、父上も、母上も危なくなるって」

「誰に言われたの?」

「ウォルエンテ伯爵と、ターサナ侯爵」

「いつも、神殿で話してたの?」

「最初だけ」

「神殿では、誰と話してたの?」

「デクトル司祭」

アスベルトと皇帝の眉間にシワが寄り、騎士団長と女魔剣士は、大きなため息をついた。

「なかなか厄介な事になったわね?」

「あぁ。まさか、デクトルの名前が出るとはな」

皇后の手を借りて、エルテル婦人が、立ち上がると、リリアンナが、悲しそうに、目尻を下げて、その手を取った。

「大丈夫ですか?」

「…ありがとう。大丈夫よ。それよりも、デクトル司祭なら、私も知ってるけど、あの方が何か?」

「デクトルは、元々、ルアンダで司教をしてたのよ」

「…もしかして、皇后の神託を告げたのって」

「そう。デクトルよ。大司教様からって言ってね。でも、ルアンダがウィルセンの属国になった時、大司教様は、そんな神託はなかったと言ったわ」

「それどころか、他の司祭や司教に聞いても、その頃に神託はなかった。ベラと王家の縁談に、神託が絡んでた事も知らなかった。と言っていたんだ」

「つまり、そのデクトルが、貴族と結託して、単独でやってたってこと?」

「そうよ。ルアンダから、デクトルの姿が消えて、消息が分からなかったけど、サイフィスに居たのね」

「…もし、そうなら、リリアンナの神託も、デクトルの仕業かもしれない。ルーチス、サイフィスに戻ったら、デクトル司祭が、いつから神殿に居るのかを調べてくれる?」

「かしこまりました」

「それと、他の司祭や助祭、必要ならば、司教も」

「どうして、司教まで」

「他国から流れて来た司祭だけで、三大公爵家や王族の内情を知るには、限度があるからね」

タラス公爵の拘束から解放されて、エルテル婦人に抱きついたローデンが、首を傾げると、モーガンは、唇を撫でながら、皇帝に視線を向けた。

「なるほどな。俺が水源を止めた事で、多くの神官達が、サイフィスに流れたかもしれない」

「未だに、神殿に頼って、神託や神官を信じてるサイフィスなら、富や名声だけでなく、自分達の欲望も満たせるって事か」

「ティーダが崩れると、騎士団の統制も崩れるから、私かキースを崩すつもりだったのかもしれないね」

「エルテル公も、アルベル公も、国政に深く関わっているから、余計に狙われたんだと思う。でも、ちょっと、おかしい気もする」

「なんで?」

隣に並んだ皇女が腕に触れると、モーガンは、首を傾げながら、困ったように目尻を下げて、優しく瞳を細めた。

「この計画は、公爵家か王家に、女児が生まれないと成り立たないんだよ。もし、リリアンナが男児だったら、僕との婚約なんて出てこないし、もし、僕が女児だったら、隣国に嫁ぐ可能性があるからね」

「そうね。でも、侯爵家には、娘がいるから、もし、リリちゃんが男児だったら、公爵家に縁談を持ち込めるわ」

「それに、伯爵家にも、確か、男児が居たはずだ」

「なるほどね。結局、男児でも女児でも、自分達の子供を使って、上手く、公爵家と王家を取り込もうとしたのか」

「そうなると、この計画は、デクトル司祭が、サイフィスに来る前から、仕組まれていたのかもしれないな」

「となれば、伯爵と侯爵は、かなり昔から画策してた可能性がある」

「これは、かなり根深いな」

「さて、何をどうしたものか」

アルベル公爵とタラス公爵が、眉間にシワを寄せ、腕組みすると、どこからともなく、爽やかな香りが辺りに漂った。

「失礼します」

執事やメイド達が、湯気の上がるカップを乗せたワゴンを押して、ニコッと微笑んだ。

「ひとまず、お茶に致しましょう。せっかく、お嬢様が、ご用意したのですから」

「…そうだな」

「では、どうぞ」

皇帝にカップが渡されると、それぞれにも、カップが渡された。

「イーデン卿も、どうぞ」

「私は」

「ガルーシェ、久々の再会で積もる話もあるだろう。たまには楽しめ」

「…では、少しだけ」

女魔剣士もカップを受け取り、騎士団長もカップを手にすると、専属執事が、モーガンにカップを差し出した。

「ありがとう」

「皇女様も、どうぞ」

「ありがとうございます」

皇女も、専属執事からカップを受け取ると、モーガンと視線を合わせて、嬉しそうに、微笑み合った。

「モーガン、今日だけは、キアと仲良くしても、目を瞑ってやる。存分に楽しめ」

「…陛下、ありがとうございます」

「あら。ずいぶん、優しいのね?」

「いや、その」

「ドルト様も、やっと、お気付きになったのですよ。これ以上嫌われたら、家出同然で、お嬢が出て行ってしまうと」

「グレームス!」

アハハハと笑い声が響くと、皇帝が、頬を赤くして、視線を反らしたまま、カップに口を付け、瞳を大きく開いた。

「これは…グリンティーか?」

「そうよ。ガンから貰ったの」

「こんな貴重な茶葉をいつ見付けたんだ?」

「たまたま見付けたお店で、扱っていただけですよ」

「サイフィスでは、多くの物品が扱われております。小さな商店でも、時に、珍しい商品を仕入れる事もございますから」

皇帝が納得したように、何度も頷くと、アルベル公爵が首を傾げた。

「もしかして、その店は、シャルンス通りの?」

「そう。アスも一緒に行ったんだけど」

「なんでか、僕のほうには、入ってなかったんだよねぇ」

「なるほどな」

「あの店主は、気に入った相手には、色々、尽くしてくれる」

「…それって、ガンは気に入ったけど、僕は、そうでもないってことだよね?」

「どうせ、適当にとか言ったんだろ?」

アスベルトが視線を泳がせると、エルテル公爵は、小さく鼻でため息をついた。

「シューベルスが、二の足踏むのも分かるな」

「なんで」

「シューベルスも俺も、キースから色々教わったんだから、その辺の事くらい分かる。なぁ?キース」

「贈り物一つ、まともに選べない奴の元に、娘を送り出す親が居るなら、見てみたいもんだよ」

アスベルトが、グッと言葉を詰まらせると、皇帝は、視線を反らして、カップに口を付けた。

「お父様は、ドルよりも寛大だったみたいね」

「あら、もしかして、陛下も、イザベラ様の贈り物を適当に選ばれてたのですか?」

「いや、それは」

「そうよ。この人ったら、執事や侍女に、適当にネックレスをとか、ドレスをって言ってたらしいわ」

「誰が、そんな」

「ロムとフェルミナから聞いたわ」

「…余計な事を…ベラ、ちょっと待って。これには、理由が」

「今更遅いわよ。もう知らないわ」

「ベラ待って。ベラ」

皇后がカップを置いて、別のテーブルに向かうと、慌てて、皇帝もカップを置き、その後を追った。

「…私も、もう少し考えようかな」

「え、ちょっと、リリ?」

「だから言っただろ。もう少し、ちゃんと考えろって」

「アルベル公?」

「そうだよね。一緒になる前に分かってよかったかも」

「ちょっと待ってよ。僕は、まだって、リリ聞いてよ!リリ!」

リリアンナも、カップを置いて、皇后の方に向かうと、アスベルトも、急いでカップを置いて後を追った。

「ドルト様を見て育った坊っちゃんでは、リリアンナ様も、ご苦労されますね」

「まぁ、シューベルスが言えた事じゃねぇけどな?」

「ティーダ、お前と違って、シューベルスは、その辺、ちゃんとしてたぞ」

「嘘だぁ…俺だけかよ」

「タラス公も、ドルト様と同じで?」

「つい、この前、泣きついてきて、どうしようと」

「だってよ?ずっと一緒に居るから、改めて、贈り物するってなると、なんか、こう、小っ恥ずかしくて」

「男性って、そうゆうところ、ありますよね」

「お?イーデン卿は、話が分か」

「でも、女からしたら、それがなんだって話ですけどね」

「ちょ!グレームス卿は」

「残念ながら、グレームス騎士団長は、愛妻家で、ウィルセンでは有名ですよ。誕生日や記念日だけでなく、何もなくとも、奥様にと、お花や指輪を贈られてますからね」

タラス公爵が、口を半開きにして見つめると、騎士団長は、ニコッと微笑んだ。

「彼女が喜ぶなら、恥ずかしさよりも、嬉しさが勝るものさ」

「普段から贈ってたら、誕生日とか、どうすんだよ。流石に、花とか贈れねぇだろ?」

「騎士団長は、奥様の誕生日や記念日には、ちゃんと休みを取って、お二人で出掛けるそうですよ。演劇やオペラ、食事やお買い物など、お二人で過ごしてから、ちゃんと、贈り物もされるんですよね?」

「あぁ。そうすると、彼女が、本当に幸せそうに、喜んでくれるからね」

「オペラか…そいや、ナタリアあいつも、行きたいって言ってたな」

「…エルテル公、もしかして、父上が泣きついたときって」

「確か、婦人の誕生日だったかな」

「父上~」

「仕方ねぇだろ。最近、ナタリア、何も言わねぇから」

「それ、しょっちゅう、剣士を連れて来るからだから。この前も、女剣士連れた時、母上、すっげぇ怒ってたし」

「やっぱりか?って言われてもなぁ。王命じゃ、俺だって断れねぇし」

「もし、国王が、また剣士の育成を頼むような事があったら、タラス公が信頼出来る門家に依頼してみたら?」

「それが、どこの門家に依頼しても、受け入れられないって、断られんだよ」

「なら、ナビート辺境伯の所に派遣するのは、どうかな?」

「ナビート辺境伯かぁ。アイツら、続けられるかなぁ」

「かなり厳しい所だとは思うけど、学ぶべき事が沢山あるから、剣士達の育成には、とても良い環境だと思うんだ。それに、ナビート辺境伯なら、ウォルエンテ伯爵やターサナ侯爵の影響も受けないし」

「なるほど。確かに、ナビート辺境伯の所なら、どちらの門家も手は出せないか」

「それに、ナビート辺境伯は、お祖母様と仲が良かったけど、国王との仲は良くないんだ」

「だから、今じゃ、全く見掛けねぇのか」

「もし、タラス公が、剣士を派遣するなら、僕が一筆添えるよ」

「王太后が、王家の光と言っていた王子からなら、辺境伯も考えてくれるかもしんねぇな…よし、帰ったら、早速、数人選んで送れるようにしよう」

「分かった」

タラス公爵が、モーガンと握手を交わすと、デュラベルは、その手をジッと見つめた。

「羨ましいか?」

ビクッと肩を揺らして、デュラベルが視線を上げると、タラス公爵は、困ったように、目尻を下げた。

「お前が、もうちょい、まともに動けてたら、ここで、殿下の手を取れたのは、俺じゃなくて、お前だったのかもな」

デュラベルが視線を落とすと、ローデンが、悔しそうに唇を噛んだ。

「そういえば、エルテル公爵の所にも、見習い魔法使いが、何人か居たよね?」

「えぇ」

モーガンが視線を向けると、エルテル公爵が視線を泳がせ、エルテル婦人が、プクッと頬を膨らませた。

「出来るなら、私達の方も、なんとかして欲しいのですが?」

「その感じだと、結構、押し付けられてるみたいだね」

「王命だから仕方ありませんけど、そろそろ、私が限界ですわ」

「そっか…でも、頼むとしたら、ルルーシェしか居ないからなぁ」

「あの大魔導師、ルルーシェ・マーベラですか?」

エルテル公爵が、驚いたように、瞳を大きく開くと、モーガンは、困ったように瞳を細めた。

「そう。ただね?確か、ルルーシェは、お祖母様が亡くなったと同時に、このウィルセンに移ってしまったんだよね。それからの事は、全く、分からなくて。お二人は、ルルーシェを知ってますか?」

「知ってるも何も」

「あの偏屈ジィさんなら、ウィルセン魔導団で、元気に総統をしてますよ」

女魔剣士が、怒ったように頬を膨らませながら、カップに口を付けると、騎士団長が、大きなため息をついた。

「彼が来てから、ウィルセンの魔導士や魔法使いの技術が上がったのだが、どうも、魔法の事になると、のめり込んでしまって。この前、魔剣士達の数名と色々やらかしてしまって」

「あの二人もバカなんですよ。新しく作った魔法の実験に付き合うなんて」

「だが、あれが上手く出来れば、魔剣士達も、少しは楽になるだろ?」

「そうかもしれませんが、人同士で、魔力を補充し合ったら、保有率が高い方に流れる事くらい分かりきってる事でしょう」

「だから、逆転させる為の研究と実験を重ねてるんだろ?」

「だからって、自分でやるなって話なんですよ。どう考えても、あの人と同等の魔力を持ってるのは、ドルト様くらいじゃないですか」

「なるほど。ルルーシェは、そんな事してたんだね」

「えぇ。この国に来て、改めて、魔法の素晴らしさに気付いたらしく、更に、我々の魔力の扱い方に感銘を受け、その手助けがしたいとか」

「…それって、魔力交換と何が違うの?」

「魔力交換は、純粋に相手と自分の魔力を交じり合わせて渡し合うような形ですが、ルルーシェ卿は、魔力巡回を人同士でやろうとしてるんですよ」

「なるほど…相手には魔力を流して、受け取った相手が、それを使う形を作ろうとしてるんだね?」

「だが、人の魔力は、自然の魔力とは違って、とても複雑だから、どうしても、巡回が出来ないんだよ」

「吸収…混合…流出…あ、なるほど、吸収も流出も一定にしなければ、上手く、体内で混ぜられないね」

「それに、対象を一つに絞っての吸収も流出も、とても難しいから、どうしても、周囲の魔力を持つ者にも、影響が出てしまうんだよ」

「そっか。自然は、周囲に必ずあるから、一つに絞らなくても良いし、流出も、ただ外に向かわせれば良いだけだもんね。僕らがやってるように、足元や腕からだと」

「殿下、いつ、ウィルセンのやり方を?」

カップを見つめていたモーガンが視線を上げると、エルテル公爵が、眼鏡を押し上げて、瞳を細めた。

「あ、いや、その~…前に、アスに連れて来てもらった時に、色々と教えてもらったんだよねぇ」

タラス公爵とアルベル公爵が、カップを置いて、腕組みすると、エルテル公爵は、大きなため息をついた。

「殿下、国王や王妃にバレたら、どうするんですか」

「それなら、アスに教わったと言えば大丈夫かなって」

「それよりも、殿下が、一人で習ってた事の方が問題じゃないか?」

「何故、我々にも言わずに来たのですか?」

「だって、あの時は、純粋に、アスに教わろうと思ってただけで、まさか、連れて来てくれるとは思わなかったから」

「あの皇太子の性格だぞ?リリアンナ嬢本人になら、自分でやるだろけど、その他は、面倒だから、一緒にやれば良いやぁ。ってなるに決まってんだろ」

「あ~そうだねぇ。でも、おかげで、色々聞けたし、こうして、みんなも来れたから、結果的には良かったんじゃ」

「殿下」

「まぁまぁ。そんな怒らないで」

「そうだぞ。それに、王子が来てくれたおかげで、騎士達が、更にやる気になってる。俺としては、とても感謝してるさ」

「そうそう。ドルト様や坊っちゃんだって…」

女魔剣士が振り返ると、ヒクヒクと、頬を引き攣らせながら、騎士団長の肩を掴んだ。

「ん?なんだ。どう…」

騎士団長が振り返ると、モーガンやアルベル公爵達も視線を向けて、驚きで、瞳を大きく開いた。

「何してんだよ~」

「あのバカ親子は」

女魔剣士は、手で目元を覆い、騎士団長は、頭を抱えて屈み込んだ。

「もういい加減にしてよ」

皇女が、顔を真っ赤にして、両手で顔を隠すと、モーガンは、そっと腰に手を回した。

「あれは?」

「…お義兄とパパ…」

「あれが!?どう見ても狼だろ!!」

皇后とリリアンナに撫でられて、腹を出して、ゴロゴロと転がる白銀の狼を指差し、デュラベルが顔を寄せると、モーガンが、皇女を抱き寄せた。

「デュラベル、皇女に失礼だよ」

「でも」

「近付くな」

モーガンの足元から、風が舞い上がると、デュラベルは、ピタッと動きを止めた。

「キア?大丈夫?」

「ありがとう。大丈夫だから、風、止めて?髪が」

「…あ、ごめんね」

舞い上がっていた風が止み、皇女が、スカートを払って、チリを落とすと、モーガンは、乱れた髪を直した。

「聞いても良い?」

「なに?」

「もしかして、ドルト陛下とアスって、変化出来るの?」

モーガンが、髪飾りを直しながら、その頬に、密かに触れると、皇女は、赤くなった頬をパタパタと手で扇いだ。

「変化っていうか、祖先に当たる公太子が、人狼族と混血だったから、皇族の男児は、元々、あんな風に狼になれるの」

「なるほど。だから、継承者争いで生き残ったのか」

「それ違うのよ。本当は、他の後継者候補達が争ってて、自滅しただけで、参加してなかった公太子だけが残ったから、王位を継承した形になったの」

「そうゆう事だったのか」

「周辺国に伝わってる話とは、だいぶ違うな」

「多分、その後、公太子の行いの方が注目されて、ウィルセンが帝国になった事で、蹴散らしたって噂を流して、それが、周辺国に伝わったんじゃないかな」

「…神殿」

下を向いていたデュラベルが、ボソッ呟くと、タラス公爵が、ニヤッと微笑んで、その頭に手を乗せた。

「良く出来た」

「ちょっ!父上!やめろよ!」

タラス公爵が、ワシャワシャと頭を撫で回すと、デュラベルは、頬を赤くした。

「そうなると、神官の目的は、皇族への復讐と帝国の乗っ取り」

「その為に、大国であるサイフィスを利用しようとしている」

「どんだけ、根深いんだかなぁ」

「まぁ、その辺の事は、調べながら、追々、決めるしかないよ」

「そうですね。しかし」

女魔剣士が、皇后に腹を撫でられて、ゴロゴロと転がる大きな狼を見て、大きなため息をついた。

「皇帝が、あれで良いのか、不安でならないのですが」

「言うな。その後継者も、同じようなもんだ」

「…ちょっと、変な事、聞いて良い?」

「変なこと?なに?」

モーガンが、顔を寄せて、皇女に耳打ちすると、頬が真っ赤になって、フルフルと首を振った。

「なるほどね。ありがとう。ごめんね?変な事聞いて」

「だい、じょうぶ」

「殿下?一体、何を」

「気にしないで。こっちの話だから。ね?」

モーガンが、ニコッと微笑むと、皇女は、コクコクと、黙ったまま頷いた。

「とりあえず、あの二人を見てたら、キアも辛いだろうし、約束だから、温室内でも見に行こう。本当は、お菓子も食べたいんだけど」

「あ、なら、あとで箱に詰めるから、持って帰ってよ」

「本当?ありがとう。キアの作ったお菓子って、どれも美味しいから、凄く嬉しいよ」

自然と腰に手を回したまま、モーガンは、優しく、瞳を細めて、ニコニコと微笑みながら、温室の奥に向かって歩き始めると、皇女も、嬉しそうに、瞳を細めて、並んで歩き始めた。

「…あれが、本当に、騎士達が騒いでた王子なんですか?」

「そうだが?」

「完璧過ぎて、末恐ろしいんですけど」

「それは、剣術や魔法にも言えるんだよ。少し教えただけで、坊っちゃんと大差なく剣を振るい、魔法も、基礎を理解した途端、中級の風魔法を指一本で起動させたくらいだ」

「化け物ですか」

「それだけ、サイフィスでは、指導者として成り立たない者が多いって事だったのだよ」

「俺らが教えてやれてたら、良かったんだろうけどな」

「国王に進言する前に、ティーダも、私も、剣士や見習いの受け入れの命を遣わされたからな」

「…ねぇ、それって、おかしくないかしら?」

エルテル婦人が、指で頬に触れながら、首を傾げると、女魔剣士も首を傾げた。

「確かに。仮にも、彼は王子なのだから、師範代や家庭教師として選ぶならば、それなりの地位と名誉、それに王家が信頼する者にするはずですよね」

「アルベル公は魔剣士だから、どちらも出来るはずだし、剣技なら、タラス公の右に出る者は、サイフィスには居ないし、国土を覆える程の防護魔法を扱えるキースなら、どんな魔法使いよりも優秀なはずよね?」

「…そうか。そうゆう事か。フレール、君は天才だよ」

エルテル公爵が、スリスリと、頭に頬擦りすると、エルテル婦人は、その頬に手を当てて、押しやった。

「キース、ちょっと待ってね?ねぇタラス公、ナタリア様が怒ってた女剣士さんって、どんな方なの?」

「平民出身で、独学で剣技を習得したって言ってたかな」

「確か、この前、家に来た見習いの女の子も、平民出身よね?」

「あぁ」

「平民を公爵家に頼んで、王子の家庭教師を他の貴族って」

「タラス公、なるべく、早く動いた方が良い」

「そうだな。あとで殿下と話して、戻ったら、押し付けられた奴らをなんとかしよう」

「ウチもね?」

「そうだな。出来れば、すぐにでも、送り出したいのだが」

「でも、ルルーシェ様は、帝国に住んでるんでしょ?」

「それなら、一旦、ミークス地方のミリセント伯爵に頼んでみては?」

「そうか。ミリセント伯は、ルルーシェ殿の甥で、国王との仲も良くない」

「サイフィスで、王太后と深く親睦のあった貴族達を当たろう」

「殿下の後ろ盾な。それなら、何人か思い当たる奴らがいるぞ」

「私もだ」

「なら、それぞれ、思い当たる貴族を当たってみよう」

「なんだかんだ、やる事が増えちまったなぁ。また、ナタリアに怒られっかなぁ」

「そういえば、ナタリア婦人は、よくプアンジェアに行ってなかったか?」

「そういや、昔は、夏と冬になると、行ってたような」

「ナタリア婦人の元のお名前は?」

「ナタリア・クライン侯爵」

「クライン…クライン…あ!魔導士の友人に、夏と冬になると、隣国からクライン嬢が遊びに来るって、言ってたのがいました」

「…なに!?」

「魔導士か。誰だ?」

「アガーナですよ」

「あ~、第二魔導士団の副士官か」

「…まさか、これが理由か?」

「そうかもしれない」

「父上、母上、僕らにも、分かるように、教えて下さい」

ローデンとデュラベルが、不安そうに、瞳を揺らすと、公爵達は、大きなため息をついた。

「俺ら、三人共、どっかでウィルセンと繋がってたんだよ」

「私は、昔、プアンジェアに遠征に出た事があって、そこで、ガルーシェの父君と出会い、彼女と仲良くなった。その彼女が、今は、ウィルセンで魔剣士をしている」

「ナタリアの友人も、ウィルセンで、魔導士団に属してて、キースの方は、婦人が皇后の友人だ」

「つまり、三大公爵家は、何かとウィルセンと繋がりがあった為、ウォルエンテ伯やターサナ侯は、神官と結託して、国王を裏から操り、私達を遠ざけようとしたんだよ」

「まずは、俺とキースが、殿下との関係が深まらないように、俺らには、腕の良い平民出身の見習いを託させた」

「そして、リリアンナを殿下と結婚させて、後継者を奪う事で、シューベルスを消して、その財産と地位を国王に返還させようと考えた」

「こうなると、三大公爵家の繋がりは、お前らだけになる。子供のお前らなら、簡単に騙せると踏んだ奴らは、お前らに、ウィルセンが悪だと思い込ませ、皇太子と殿下の仲を引き離させようとした」

「その後、ローデン達が当主になり、貴族の中から、もう一つの公爵を誕生させ、殿下を操って、ウィルセンとの国交を途絶えさせる」

「それから、ウィルセンと戦争でも、起こさせて、それに紛れて、リリアンナと殿下を亡き者にする」

「それと同時に、お役御免となった二人を消せば、大国のサイフィスを使って、ウィルセンに打撃を与え、頃合いを見計らい、皇帝に寝返った伯爵達は、神官をウィルセンに招き入れるか、殺害すれば、あとは、自分達の子供を使って、ウィルセンを手に入れる」

「まぁ、今のところ、こんな感じの計画じゃないかって話だ」

「だから、先手を打って、対策を?」

「そう。その為には、ローデンが言ってたように、貴族を頼る必要がある」

「国王とは、あまり仲良くなくて、王太后と親睦があった貴族をって事で、どうでしょうか?殿下」

ニコニコと微笑むモーガンが、皇女と手を繋いでるのを見て、ローデンとデュラベルが、大きく瞳を開き、口を開こうとすると、タラス公爵とエルテル公爵の手で塞がれた。

「大声出すなよ?あっちにバレたら、大事になるからよ」

タラス公爵が、チラッと視線を向け、二人も、皇后に撫でられて、ゴロゴロと喉を鳴らす大きな狼が、大きな欠伸する口元で、キラッと輝いた犬歯を見て、コクコクと何度も頷いた。

「ありがとう。お祖母様の命日も近いから、親睦があった貴族達に、手紙を出してみるよ。公爵達が、必要なら一筆も添えるし、会えるようにルーチスと策を考えてみるから」

「お力添え、ありがとうございます」

公爵達が、胸に手を添えて、頭を下げると、モーガンは、皇女に顔を向けて、ニコッと微笑んだ。

「これで、心置きなく、お茶を楽しめるね?」

「そうね。ねぇ、あの茶葉って、瓶に名前が書いてあったけど」

「どれも、キアの味を邪魔しないのを選んだんだ」

「そうなんだ。じゃ、選ばなくても大丈夫?」

「大丈夫だよ。もし、不安なら、僕が選んで、ルーチスに頼んで淹れてもらおうか?」

「それなら安心かな」

「んじゃ、どれから食べようか?そういえば、あのキッシュと花のシフォンは?」

「今日は、別のを作ったの」

「どれ?」

「えっとね」

二人が並んで、テーブルに向かうと、デュラベルとローデンは、ポカンと口を半開きにした。

「お前らも、いつか分かるようになっから」

「とりあえず、私達も食べようか。フレールは、どれが良い?」

「もちろん、皇女の選んでくれたのにするわ」

ニコニコと微笑みながら、皇女の隣に並んだエルテル婦人の隣に、エルテル公爵が並ぶと、リリアンナが走り寄った。

「私も、キアちゃんのお菓子食べたい」

「僕も、リリのお菓子~」

「それで、どうやって食うんだよ」

リリアンナの隣で、テーブルに顎を乗せた子狼が、後ろに視線を向け、大きな狼が、大きな口を開け、皇后の摘んだクッキーが放り込まれると、ポリポリと器用に食べ、カップに顔を近付けた。

「なんて羨まし」

「自分で食え!自分で!」

ジーッと見つめて、エルテル公爵が呟くと、タラス公爵が、その頭を軽く叩いた。

「皇太子も。シューベルス父親の前で」

「リリ~、もうちょっと、カップ下ろして」

「どうぞ」

リリアンナは、ニコニコと微笑んで、カップを持って屈むと、子狼は、顔を近付けた。

「犬かよ」

デュラベルが呟くと、ローデンは、クスッと笑った。

「これは、これで可愛いね?」

「そうなんだよねぇ。パパは、ちょっと大きくて、瞳が赤いから怖いんだけど、お義兄は、瞳が、ママと同じハイグレーだし、小さいから、そこまで怖くないんだよねぇ」

モーガンと皇女が、一緒になって、頭や背中を撫でると、子狼が、ゴロゴロと喉を鳴らし始めた。

「こんな可愛いのに、男児系列にしか生まれないのよね」

「そうなんだ。ちょっと残念」

「抜け毛が、ひどいけどね」

「そんなに?」

「時期になると、パパ一人で、絨毯が出来そうなくらい抜けるの。だから、パパとお義兄は、一日に、二回から五回、ロムやフェルミナ達に洗われるのよ?」

「大変そうだね」

「あと、ちゃんと抜け替わったら、しばらくは、毛を切り揃えないと、すぐ伸びちゃうのよね」

「モサモサになるでしょ?」

「分かる?すんごい、モサってなって、お義兄なんか、ただの毛玉みたいになるの。あれは、あれで可愛いし、触り心地も良いんだけど、すぐ絡んじゃうの」

「確かに、髪を触った時も思ったけど、アスの毛って、手触りが良いよね」

「…キアも、ガンも、そろそろ、やめてくれない?」

「お義兄、眠くなってるでしょ?」

「分かってんなら、やめろよな」

「リリちゃん、お義兄が、この姿で暴れようとしたら、顎の下の、この辺をこうやって撫でると」

「おい。キア、あ、リリ、それは、やめてってぇ」

リリアンナが、皇女と一緒に顎の下を撫で始めると、子狼は、ゴロゴロと喉を鳴らしながら瞳を閉じた。

「可愛い~。ねぇ、パパ」

「ダメだ」

リリアンナが振り向くと、アルベル公爵は、視線を反らして、カップに口を付けた。

「もう!パパのケチ!」

「ケチで結構」

プクッと頬を膨らませたリリアンナを見て、モーガンは、苦笑いを浮かべた。

「リリアンナ、アルベル公は、犬や猫が近付くと、クシャミが止まらなくなって、毛に触れると、肌がかぶれて、酷くなると爛れてしまうんだよ」

「…え?そうだったの?」

「昔からな」

「知らなかった」

リリアンナが、瞳を大きく開き、口元に手を当てると、アルベル公爵は、ほんのり頬を赤くして頭を掻いた。

「プアンジェアでは、大変でしたもんね」

「なんで?」

「港があったので、ネズミ対策で、猫や犬を飼ってる人が多かったんですよ」

「ネズミなのに、犬を?」

「ネズミはネズミでも、人のネズミ、つまり、盗人だよ」

「そっか。番犬ね?」

「そう。アルベル公が泊まってた宿には、両方居たらしくて、話し合いも、上手くまとまらなくて、そこで、私の父が一部屋貸したんですよ」

「イーデン卿の所では、飼ってなかったの?」

「私の父は騎士で、母は魔導士なので、飼わなくても、大丈夫でしたからね。それに、母も父も、ネズミ対策として、猫や犬を飼うのが嫌だったらしく、飼うなら、ちゃんと家族として一緒に暮らすのが、理想だったそうです」

「イーデン卿のパパとママは、とても優しいのね」

「犬も猫も命ですからね。飼うなら、ちゃんと責任を持たないと」

「だが、プアンジェアの人々は、ちゃんとしてたじゃないか」

「えぇ。ネズミは、鳴き声や匂いだけで分かりますからね。盗人も、犬が吠えれば、すぐに近くの警備隊が飛んで来てましたから」

「でも、パパ、クシャミしてないよね?」

アルベル公爵のすぐ隣に座る子狼を見下ろして、モーガンが首を傾げた。

「そういえば、さっきから、一回もクシャミしてないね?どうしてだろう?」

「見た目は狼でも、ドルとアスは、元は人だからじゃないかしら?ん~美味しい」

皇后が、テーブルに近付いて、ショコラマフィンを手に取り、一口噛じると、ぬっと、大きな赤い瞳の狼が、隣に顔を出し、モーガンは、静かに立ち上がった。

「なんだ。怖いか?」

「まぁ、少し」

モーガンが、ポリポリと頬を掻きながら、苦笑いを浮かべると、皇女も立ち上がった。

「ガン、リリちゃんの作ったお菓子食べよう」

「そうだね。確か、ショコラクッキーとベリーパイだよね?」

「そう。どっちがいい?」

「キアと同じで」

「じゃ、ショコラクッキー食べよ」

クッキーを噛った皇女とモーガンが、手で口を覆い、急いでカップを手に取った。

「…ゲホゲホ、キア、大丈夫?」

「コホコホ、だ、いじょうぶ。リリちゃん、味見した?」

「へ?なんで?」

「食べてみたら分かるよ」

リリアンナがクッキーを噛じると、眉間と鼻筋にシワを寄せて、急いで、カップを手にして、一気に飲み干した。

「にっが~い」

「リリちゃん、ショコラの量間違えた?」

「教えてもらった通りにしたよ?」

「そしたら、砂糖入れ忘れた?」

「ちゃんと、バターと砂糖を混ぜて使ったよ?」

「なら、なんでだろ」

「…もしかして、はちみつでも入れた?」

「分かりますか?砂糖だけじゃなくて、はちみつも入れたら、美味しくなるかなぁって」

「リリちゃん、はちみつって、入れ過ぎると、苦くなるんだよ」

「そうなんだ。なるほど」

納得したように、何度も頷くリリアンナを見てから、モーガンと皇女は、視線を合わせて、苦笑いを浮かべた。

「どうにか出来る?」

「そうだなぁ。ちょっと待ってて」

皇女は、クッキーを持って、別のテーブルに移動すると、侍女に指示を出し始めた。

「ごめんなさい。大丈夫だと思ったんですけど」

「大丈夫だよ。キアが、なんとかしてくれるみたいだからね」

「でも」

「リリアンナ、一人で大変そうだから、キアの手伝いをお願いしても良いかな?」

「…はい。行って来ます」

モーガンが、ニコッと微笑むと、リリアンナは、パーっと明るい笑顔を浮かべて、皇女の元に向かった。

「…王子って、ほんと素敵よねぇ」

皇后が、頬に手を当てて、ニコッと微笑むと、エルテル婦人も、ニコニコと微笑んだ。

「そうですね。ローデンやタラス公に爪の垢でも、煎じて飲ませたいですわ」

「ドルとアスにもね」

二人が視線を向けると、四人は、それぞれ視線を反らした。

「…ってことは、俺は、だい」

「論外よ」

「なんでだよ」

皇后が手を振ると、デュラベルは、ムッと仏頂面になった。

「お前は、剣以外に興味ないだろうが」

「俺だって、恋愛くらい」

「なら、デュラベルは、どんな子がタイプなの?」

モーガンが視線を向けて、瞳を細めると、デュラベルは、腕組みしながら、指で顎を撫でた。

「そうだなぁ…母上みたいに、元気で活発で、剣の話で盛り上がれるような、優しい人だな」

「ガルーシェさん、そんな女性ヒトいると思いますか?」

「私の知ってる限り、メアリー団長しか思い付きませんね」

「メアリー団長さんは、いくつなんですか?」

「今年で二十六だったかな」

「それなら、デュラベルを預けても、安心ですね」

「やめてくれ。俺が、メアリーに怒られる」

「確かに。でも、メアリー団長なら、一撃で大人しくさせれるんじゃないですか?」

「この程度なら、イーデン卿で充分なはずだが」

「私は、子供に甘いので」

「…俺、すっげぇ、バカにされてる?」

「今更気付いた時点で、君は、まだ子供なのよ」

皇后がクスッと笑い、デュラベルが、顔を真っ赤にして、頬を膨らませると、アハハハと笑い声が温室内に響き渡った。
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