丘を越えたり、下ったり(仮)

ムギオオ

文字の大きさ
18 / 79

19 夏目と秋吉

しおりを挟む
 楽しい気分で二人と別れアパートに帰った俺はベッドに寝転がり明日の事を考えて少し憂鬱な気分になった。里香さんに会いたいのだけれど、会いたくはない。前回の俺の自惚れ勘違いの恥ずかしさで少し気が重い。

 明日は前回の事など無かったことにして、爽やかに颯爽と登場しようなどと考えているうちにそのまま眠ってしまった。

 次の日、昨日の服のまま目覚めた俺はシャワーを浴び着替えると午後一時前に着くように待ち合わせ場所に向かった。

 今日は夏が最後の力を振り絞ったかのように暑い。真夏と言う程の暑さではないのだけれど。

 大和相国寺駅に着き、ホームの階段を上がると相変わらずの人混みの中、既に到着している二人を見つけた。仲良く二人で待つ姿を見て、少しモヤモヤした気持ちになった。

 二人は俺に気が付くと、夏目が大きく手を振り、隣で里香さんは小さく手を振っている。なんだかんだお似合いである。モヤモヤした気分を片手で振り払い、二人の元へ向かった。
 自分の中では颯爽と現れ挨拶したつもりだが、出来ていたかどうかは不明である。

「やあ、久しぶり」
 俺は片手を軽く挙げ挨拶をした。

「二か月ぶりだね。来てくれてありがとう」
 もう手の届かない、いや元々手の届かない彼女の笑顔は俺には眩し過ぎる。

 久しぶりに見た彼女は長かった髪を肩口辺りまで短くしていた。長い髪も似合っていたが今回も凄く似合っている。彼氏である夏目の手前そのことを褒めるのは違うような気がしたので、心の中で褒めちぎり賞賛した。

「ハルイチくん昨日はありがとう。本当に助かったよ」
 夏目に改めて礼を言われ、少し照れた。
 三人が一度に各々話した後、理香さんのアパートのある、天野川六丁目駅に移動した。
 商店街の中にある割と広めの喫茶店に入り、一番奥のソファ席に通してもらった。二人は隣同士に、俺は二人の向かい側に座った。

 里香さんはアイスコーヒーを、夏目はアイスココアを、俺はコーヒーを飲むとタバコが吸いたくなるかもしれないと思いメロンソーダを注文した。
 禁煙は今のところ順調である。

 俺がメロンソーダを注文した後、夏目が「いやあ、やっぱり俺もメロンソーダにしようかな」と迷っていたが女性店員は行ってしまった。
 コイツの迷っていた声は絶対に聞こえていた筈だ、にも拘らず行ってしまった店員。
 注文しただけで既にあの店員をイラつかせたのかと思うと可笑しくて仕方なかった。
 そしてそんな人を腹立たせる名人夏目と付き合っている里香さんは俺の中で益々素敵な人になった。同時に名人は俺の中で憎めない奴になった。

 流石だな、夏目名人と微笑ましく見ていると里香さんと目が合い、彼女がクスッと笑った。俺は慌てて真顔になりストーカーの事を尋ねた。
「で、どんな奴なのかな? その、そいつは」
 俺が訊ねると彼女の顔から笑顔が消え、浮かない表情に変わった。

 里香さんの説明では、気付いたのは先月の終わり頃からだと言う。
 後をつけまわされると言うよりは、色んな場所で視線を感じる様になったと言う。そしてその視線の犯人は一人ではないそうだ。

 彼女の様な美人ならしょっちゅう沢山の視線を感じる事だろう。ただ彼女が言うには見ていると言うよりは見張られていると感じるそうだ、それも複数の人間に。そして何の為にそんな事をするのか全く見当も付かないそうだ。
 そんな立場になったら男の俺でも気味が悪いし、恐怖を感じるだろう。こんなに優しく可愛い彼女を怖がらせるなど絶対に許せないことだ。

「あの入り口の外にいる大きな男、ずっとこっち見てるんだけど………」
 夏目が俺の後ろ側にある入り口を見ながら教えてくれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜 あやめ
キャラ文芸
✨ キャラ文芸ランキング週間・月間1位&累計250万pt突破、ありがとうございます! 神木家の双子の妹弟・華と蓮には"絶世の美男子"と言われるほどの金髪碧眼な『兄』がいる。 美人でカッコよくて、その上優しいお兄ちゃんは、常にみんなの人気者! だけど、そんな兄には、何故か彼女がいなかった。 幼い頃に母を亡くし、いつも母親代わりだったお兄ちゃん。もしかして、お兄ちゃんが彼女が作らないのは自分達のせい?! そう思った華と蓮は、兄のためにも自立することを決意する。 だけど、このお兄ちゃん。実は、家族しか愛せない超拗らせた兄だった! これは、モテまくってるくせに家族しか愛せない美人すぎるお兄ちゃんと、兄離れしたいけど、なかなか出来ない双子の妹弟が繰り広げる、甘くて優しくて、ちょっぴり切ない愛と絆のハートフルラブ(家族愛)コメディ。 果たして、家族しか愛せないお兄ちゃんに、恋人ができる日はくるのか? これは、美人すぎるお兄ちゃんがいる神木一家の、波乱万丈な日々を綴った物語である。 *** イラストは、全て自作です。 カクヨムにて、先行連載中。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...