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20 不審な男
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里香さんの顔に緊張が走り、振り返り入り口の外に目をやると、本当に大きな男が外でこちらの様子を伺っている。
「デカっ! 」
思わず声に出してしまうほど男は大きかった。身長百九十センチ越え、体重百キロ以上のスキンヘッドの巨漢が見張っている状況は怪しい視線どころか完全にバレバレなのだが。
大男は黒のタンクトップシャツ姿で筋骨隆々である。普通にしていても目立ってしょうがない存在の人間を見張りにするのは、どういうつもりなのだろうかと少し考えてしまった。
「あのデカい奴かい? いつも見てるのは」
俺は、俺達に見つかっても隠れようともしない黒タンクトップを指さした。
「あの人は、初めて見たわ」
彼女は引き攣った声で、嫌悪感からか、もしくは恐怖心からか真っ青になった顔をしかめている。
俺達が気づいた事を気にも留めずにふてぶてしくこちらを見張っている大男に少し腹が立った。
「ちょっと待ってて、あのデカいのに直接訊いて来るから」
俺は入り口に向かおうと立ち上がった。
「待って、危ないわ」
里香さんが心配そうに言った。
「里香ちゃん、ハルイチくんなら大丈夫だよ」
昨日の空手部との一件で、夏目は大いに俺へ信頼を寄せている。
俺が早足で真っ直ぐ入り口を目指すと、大男は少し焦った様子で俺から目を逸らし歩きだした。
入り口のドアを開け小走りで逃げる大男の背中を見つけ、俺は走って追いかけた。男は一度振り返り、俺を見て角を曲がった。
俺は男の曲がった角に来ると、男が待ち構えている事を想定して一呼吸置いてからゆっくり曲がり角を見た。道には誰も居なかった。
俺が撒かれるなどとは予想だにしなかった。トボトボ喫茶店に戻り男を見失った事を二人に話した。
先程見失った場所に全員で戻り探す事にした。何処かに隠れているにしてもあの巨体だ、必ず見つかると思っていたのだが、無理だった。
取り敢えず里香さんをアパートまで送って行く事にした。先程の大男の事を気にしているのだろう、里香さんは浮かない顔で歩く。
「アパートの場所を知られてるって事はないの? 」
俺は怖がらせるつもりは無かったが念の為確認しておいた。里香さんは更に泣きそうな顔になった。
「もし怖かったら、今日はハルイチくんに泊まって行ってもらったら? 」
歩きながらの夏目の一言に心臓が飛び出した。完全に飛び出した。
コイツは純粋に俺を信頼してくれているのであろう、だから尚更そんな事は出来ない。
「おいぃぃぃ! 何馬鹿なこと言ってんだ。俺は絶対変な事しない、しないと誓えるよ、だけど、そこは彼氏であるお前が泊まるべきだと思うよ、うん」
里香さんの部屋に泊まる想像をしてしまい狼狽えたが、なんとか息を整え夏目にハッキリ断った。気まずい空気の中、暫く三人の中で沈黙が続いた。
「えっと、里香ちゃんは俺の彼女じゃないけど………。中学校からの同級生ってだけで。俺にはちゃんと他に彼女がいますけど……」
「私、瞬くんと付き合ってないよ! 私、付き合っている人なんていません! 」
沈黙の後二人が一斉に喋り出した。二人の剣幕にビックリしてしまった。
何故もっと早くそんな重要な事を言ってくれなかったのか。衝撃の事実を今知らされた。(うおぉぉぉぉいっ!!! )
大和相国寺駅でのあの時のあの里香さんと夏目のやり取りはふつう誤解してしまうだろう。
そんな事なら、夏の始まりのあの時、里香さんの携帯番号を聞いて、夏休みどこかに遊びに行けたかもしれない。
そして今もっと仲良くなっていたかもしれないのに。それに俺だって「里香ちゃん」て呼びたかったのに。
この夏、打ちひしがれ、捻くれて過ごす必要も無かったのに。イヤ、今となってはそんな事などどうでも良い、夏目名人と里香さんが付き合ってないと言う事実を、彼女に恋人がいないということを知れただけでミラクルハッピーだ。
全ての元凶は怒らせ名人夏目だ。だが今までの全ての事を許そう。
そして今回の依頼の件、俄然やる気の出て来た俺は全力で解決する事をここに誓う!
「俺の彼女だと思っていたのに今日きてくれたの? ハルイチくんは本当にいい人だね、里香ちゃん」
名人が関心したように里香さんに言う。
「うん。いつも、いつも、本当にありがとう」
里香さんが笑っている。
「ハハハ、もちろんいつも、いつでも助けるよ」
俺も久しぶりに彼女に心からの笑顔を返す事が出来た。
「それはそうと、暫く実家に戻るとか友人の家に泊めてもらうとかした方が良いんじゃないかな。大学はいつから始まるの? 」
俺が二人に訊ねると大学はもう既に始まっているそうだ。友人に迷惑をかけるかもしれないと言う里香さんの気持ちを汲んでアパートに戻る事となった。
名人はこれから彼女と会う約束があるそうで、商店街を出たところで別れた。奴は何故だか今度絶対に俺に彼女を紹介すると言って去って行った。
「デカっ! 」
思わず声に出してしまうほど男は大きかった。身長百九十センチ越え、体重百キロ以上のスキンヘッドの巨漢が見張っている状況は怪しい視線どころか完全にバレバレなのだが。
大男は黒のタンクトップシャツ姿で筋骨隆々である。普通にしていても目立ってしょうがない存在の人間を見張りにするのは、どういうつもりなのだろうかと少し考えてしまった。
「あのデカい奴かい? いつも見てるのは」
俺は、俺達に見つかっても隠れようともしない黒タンクトップを指さした。
「あの人は、初めて見たわ」
彼女は引き攣った声で、嫌悪感からか、もしくは恐怖心からか真っ青になった顔をしかめている。
俺達が気づいた事を気にも留めずにふてぶてしくこちらを見張っている大男に少し腹が立った。
「ちょっと待ってて、あのデカいのに直接訊いて来るから」
俺は入り口に向かおうと立ち上がった。
「待って、危ないわ」
里香さんが心配そうに言った。
「里香ちゃん、ハルイチくんなら大丈夫だよ」
昨日の空手部との一件で、夏目は大いに俺へ信頼を寄せている。
俺が早足で真っ直ぐ入り口を目指すと、大男は少し焦った様子で俺から目を逸らし歩きだした。
入り口のドアを開け小走りで逃げる大男の背中を見つけ、俺は走って追いかけた。男は一度振り返り、俺を見て角を曲がった。
俺は男の曲がった角に来ると、男が待ち構えている事を想定して一呼吸置いてからゆっくり曲がり角を見た。道には誰も居なかった。
俺が撒かれるなどとは予想だにしなかった。トボトボ喫茶店に戻り男を見失った事を二人に話した。
先程見失った場所に全員で戻り探す事にした。何処かに隠れているにしてもあの巨体だ、必ず見つかると思っていたのだが、無理だった。
取り敢えず里香さんをアパートまで送って行く事にした。先程の大男の事を気にしているのだろう、里香さんは浮かない顔で歩く。
「アパートの場所を知られてるって事はないの? 」
俺は怖がらせるつもりは無かったが念の為確認しておいた。里香さんは更に泣きそうな顔になった。
「もし怖かったら、今日はハルイチくんに泊まって行ってもらったら? 」
歩きながらの夏目の一言に心臓が飛び出した。完全に飛び出した。
コイツは純粋に俺を信頼してくれているのであろう、だから尚更そんな事は出来ない。
「おいぃぃぃ! 何馬鹿なこと言ってんだ。俺は絶対変な事しない、しないと誓えるよ、だけど、そこは彼氏であるお前が泊まるべきだと思うよ、うん」
里香さんの部屋に泊まる想像をしてしまい狼狽えたが、なんとか息を整え夏目にハッキリ断った。気まずい空気の中、暫く三人の中で沈黙が続いた。
「えっと、里香ちゃんは俺の彼女じゃないけど………。中学校からの同級生ってだけで。俺にはちゃんと他に彼女がいますけど……」
「私、瞬くんと付き合ってないよ! 私、付き合っている人なんていません! 」
沈黙の後二人が一斉に喋り出した。二人の剣幕にビックリしてしまった。
何故もっと早くそんな重要な事を言ってくれなかったのか。衝撃の事実を今知らされた。(うおぉぉぉぉいっ!!! )
大和相国寺駅でのあの時のあの里香さんと夏目のやり取りはふつう誤解してしまうだろう。
そんな事なら、夏の始まりのあの時、里香さんの携帯番号を聞いて、夏休みどこかに遊びに行けたかもしれない。
そして今もっと仲良くなっていたかもしれないのに。それに俺だって「里香ちゃん」て呼びたかったのに。
この夏、打ちひしがれ、捻くれて過ごす必要も無かったのに。イヤ、今となってはそんな事などどうでも良い、夏目名人と里香さんが付き合ってないと言う事実を、彼女に恋人がいないということを知れただけでミラクルハッピーだ。
全ての元凶は怒らせ名人夏目だ。だが今までの全ての事を許そう。
そして今回の依頼の件、俄然やる気の出て来た俺は全力で解決する事をここに誓う!
「俺の彼女だと思っていたのに今日きてくれたの? ハルイチくんは本当にいい人だね、里香ちゃん」
名人が関心したように里香さんに言う。
「うん。いつも、いつも、本当にありがとう」
里香さんが笑っている。
「ハハハ、もちろんいつも、いつでも助けるよ」
俺も久しぶりに彼女に心からの笑顔を返す事が出来た。
「それはそうと、暫く実家に戻るとか友人の家に泊めてもらうとかした方が良いんじゃないかな。大学はいつから始まるの? 」
俺が二人に訊ねると大学はもう既に始まっているそうだ。友人に迷惑をかけるかもしれないと言う里香さんの気持ちを汲んでアパートに戻る事となった。
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